山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ
楽天「Kobo Aura」
~ベゼルとの段差をなくして薄くなった6型E Ink端末
(2013/12/20 06:00)
「Kobo Aura」は、6型のE Ink電子ペーパーを採用した電子書籍端末だ。同社の電子書籍ストア「Koboイーブックストア」と連携し、電子書籍をダウンロード購入して楽しめる。従来モデルのKobo gloと同じく前面ライトを搭載しており暗所でも読書が楽しめるほか、ベゼルとの段差をなくすことで薄型化を図ったのが大きな特徴だ。
国内に投入される6型のKoboシリーズとして第3世代にあたる本製品は、機能的には従来の「Kobo glo」と極端な違いはないものの、E Ink端末につきもののベゼルとの段差をなくすことで、タップやスワイプといったタッチ操作を容易にするとともに、その副産物として本体の薄型化に成功している。約8.1mmという本体の厚みは、競合となる他社製品よりもおよそ1~2mm薄く、差別化ポイントとして大きい。
今回は同社ストアから購入したモデルを用い、従来のKobo glo、および競合となるAmazonの「Kindle Paperwhite」やソニー「PRS-T3S」と比べながら見ていこう。
薄型コンパクト化、メモリ容量倍増も価格帯はワンランク上
まずは競合製品との比較から。
Kobo Aura | Kobo glo | Kindle Paperwhite 2 | Reader PRS-T3S | |
---|---|---|---|---|
発売元 | 楽天 | 楽天 | Amazon | ソニー |
サイズ(最厚部) | 114×150×8.1mm | 114×157×10mm | 117×169×9.1mm | 107×160.5×9.5mm |
重量 | 約174g | 約185g | 約206g | 約160g |
解像度/画面サイズ | 758×1,014ドット/6型 | 758×1,024ドット/6型 | 758×1,024ドット/6型 | 758×1,024ドット/6型 |
ディスプレイ | モノクロ16階調 E Ink電子ペーパー | モノクロ16階調 E Ink電子ペーパー | モノクロ16階調 E Ink電子ペーパー | モノクロ16階調 E Ink電子ペーパー |
通信方式 | IEEE 802.11b/g/n | IEEE 802.11b/g/n | IEEE 802.11b/g/n | IEEE 802.11b/g/n |
内蔵ストレージ | 約4GB(ユーザー使用可能領域:約3GB) | 約2GB(ユーザー使用可能領域:約1GB) | 約4GB(ユーザー使用可能領域:約3.1GB) | 約2GB(ユーザー使用可能領域:約1.2GB) |
メモリカードスロット | microSD | microSD | - | microSD |
ライト | 内蔵 | 内蔵 | 内蔵 | 外付(別売) |
バッテリ持続時間(メーカー公称値) | 約8週間(ライトおよびWi-Fiオフ、約1分/1ページで1日30 ページ読書時) | 約1カ月、約30,000ページ(Wi-Fiオフ) | 8週間(明るさ設定10、ワイヤレス接続オフで1日30分使用時) | 約30,000ページ、最長2カ月(Wi-Fiオフ、1日30分読書時)、最長1.5カ月(Wi-Fiオン) |
電子書籍ストア | Koboイーブックストア | Koboイーブックストア | Kindleストア | Reader Store、紀伊國屋書店BookWeb |
価格(2013年12月8日現在) | 12,800円 | 7,980円 | 9,980円 | 9,980円 |
備考 | - | - | 3Gモデルも存在 | - |
Kobo gloと比較した場合の違いとしては、冒頭に述べたように、1.9mm薄くなったことが挙げられる。ベゼルの段差がなくなり、スクリーンと同じ高さになったことが主な要因だ。実はスクリーン面だけを比較すれば、従来のKobo gloと厚みはほぼ同等なのだが、ふだん端末を手に取る場合は縁を持つわけで、その部分が薄いことは体感的な違いにつながりやすい。段差がないことで使い勝手も大きく変化しているので、のちほど詳しく検証する。
天地が7mm短くなっているのも大きな違いだ。コンパクトなE Ink端末としてはソニーReader「PRS-T3S」があるが、PRS-T3Sは画面下にボタンを搭載するため天地が長く、そのぶん本製品の方がコンパクトに感じる。ただし幅は本製品の方が広いのと、軽さではPRS-T3Sに分があるので、持ち比べた限りでは両者譲らずといったところだ。ただし、Kindle Paperwhiteと比べた場合は、明らかにコンパクトかつ軽量だ。
内蔵メモリが2GB→4GBに増え、ユーザー使用領域が約3倍となったことにも注目だ。これまでもmicroSDカードを使えば容量は増やせたが、microSDカードは読み込み速度に難があるほか、保存先が違うことで取り扱いが面倒になるなどのデメリットがあった。その点、microSDカードに頼らずに、内蔵メモリが増える方向で進化したことはメリットだろう。ちなみに内蔵メモリ2GB→4GBという進化は、Kindle Paperwhiteの新モデルと同じである。
もう1つ、バッテリ持続時間が約8週間と伸びているのも目につくが、これは数値上はKindle Paperwhite 2と肩を並べたように見えて、実は測定条件が異なるので注意したい。本製品はライトオフ、Kindle Paperwhite 2はライトの明るさ設定10(およそ真ん中)での測定値なのだ。そのため、実際の利用シーンに近い状態で使うと、Kindle Paperwhite 2の方が長寿命と考えられる。もっともどちらもWi-Fiオフが前提での値なので、実利用においてはこれより寿命は短くなる。
ネックなのは価格で、他社の最新モデルが9,980円のところ、本製品は12,800円という、明らかにワンランク上のプライスとなっている。本体が軽く、かつライトを搭載しているといった相違点はあるとはいえ、ケタが1つ違うので、実際の価格差以上に割高に見える。しかも併売中の従来モデルKobo gloは7,980円という価格を維持したままなので余計目立つ。同じライト搭載の6型端末であるKobo gloよりも約5,000円も高価なだけの価値があるかは、以下でじっくりと見ていこう。
セットアップ手順は一般的ながらエラー発生で遠回り
セットアップの手順は、言語選択後にWi-Fiを検索し、SSIDを選んでパスワード入力、サーバーへ接続に行って新ソフトウェアがあればダウンロードして再起動、そのあと楽天のアカウントを入力してホーム画面が表示される。納品時にあらかじめアカウントが登録されているといったことはなく、手動で入力する必要があるが、プロセス自体はごく一般的なので問題はない。
と、いかにもスムーズに進んだように見えるが、今回のセットアップではWi-Fiパスワード入力からサーバーに接続する段階で原因不明のエラーが発生し、5回目の試行でようやく接続できた。その間、エラーのたびにWi-Fiパスワードが消えるので再入力を強いられるなど、かなりのストレスだった。
ちなみに試行中は自宅内の2台のアクセスポイントと、iPhoneによるテザリングの合計3台から接続を試み、最終的に自宅のアクセスポイントの1台から接続に成功したのだが、自宅の2台はSSIDやパスワードにおける英数字の割合や長さはほぼ同一、暗号化方式やステルスIDの有無といった条件も同じで、原因がつかみにくい。また本製品試用前に工場出荷状態に戻してから再セットアップしたKobo gloとKobo miniは、同一環境でこの症状は起こらなかったので、なおさら原因不明だ。
なお、セットアップがいったん完了したあとで工場出荷状態にリセットして最初からやり直したところ、当初うまくいかなかったアクセスポイントおよびiPhoneからも問題なく接続できたので、アクセスポイントやWi-Fiの問題ではなく、その先にあるサーバー側に一時的に問題があった可能性が高そうだ。このあたり、初期のKobo Touchのトラブルを彷彿とさせる挙動であり、初心者が同じ症状に遭遇した際にはやや不安が残る。単に「エラーが発生しました」と表示するだけではなく、それが何のエラーなのか、ある程度切り分けができるメッセージ表示を望みたい。
メニュー画面が一新。タイル表示の採用でわかりやすく
さて、Koboシリーズは今年に入ってからホーム画面のデザインが一新され、国内未発表モデルのKobo Aura HDのほか、従来モデルのKobo gloに関してもソフトウェアをアップデートすると新デザインへと差し替えられる。本製品もこの新しいデザインが適用されており、見た目は従来のKoboシリーズと大きく異なる。ざっと紹介しておこう。
新しいホーム画面では、いま読んでいる本や読了本、おすすめ、関連書籍、読書データといったさまざまな要素がタイル状に配置されている。タイルは縦3列に分かれており、左列が「いま読んでいる本」と「同期する」、中央列が「読了」「読書データ」「関連書籍」、右列が「おすすめ」「読みかけの本」という並びだ。
このうち「既読」「同期する」のタイルが並んだ左列は配置が固定されているが、中央列と右列についてはなんらかの操作をするたびに新しいタイルが追加されたり、位置が入れ替わったりする。新しいタイルが繰り上がるとほかのタイルが1つずつ下にずれ、はみ出すと次の列に移動する(もしくは押し出されて画面から消える)仕組みだ。
もっとも、メニューの呼び出し方や設定画面などはほぼ従来のままで、下段に「ライブラリ」「ストア」といった項目が表示されているのも変わらない。要するに入り口に相当する部分だけが変化した格好になるが、既読コンテンツが渦巻状に表示されていた従来のホーム画面に比べ、画面の広さを有効に使うことで情報量も増え、全体的に分かりやすくなっている。デザインを変更した意義は十分にあると言えるだろう。
「問答無用で全部ダウンロード」がなくなり個別ダウンロードが可能に
もう1つ、従来のKoboシリーズから大きく変わった点がある。それは従来の“問答無用で全部ダウンロード”が廃止され、コンテンツの個別ダウンロードが可能になったことだ。
これまでは、端末の「同期」をタップすると、購入済みコンテンツのうち、収納箱に入っていないコンテンツが全て端末上にダウンロードされてしまっていた。そのため購入済みコンテンツの数が多いと同期に時間がかかるだけでなく、容量不足のエラーが出て目的のコンテンツをダウンロードできないこともしばしばだった。とくに複数デバイスを使い分けている場合などは大きな問題で、例えばタブレットなどは全部ダウンロードしても容量に余裕があるが、microSDカードで容量を増やせないKobo miniでは常に満杯の状態、という状態に陥りがちだった。
本製品ではこの挙動は改良され、「同期」をタップした際は最近読んだ本や購入した本が5冊だけダウンロードされ、その他は個別にダウンロードできる仕様へと改められた。そのため、大量のコンテンツを所有している場合でも、同期を行なっただけで内蔵メモリの容量を使い果たしてしまうことがなくなり、最低限の容量で済ませられるようになった。ちなみに従来のKobo gloなどについてもソフトウェアのバージョンアップにより、この機能が利用できるようになっている。
こうした仕様変更の結果、読まない本をわざわざクラウドの「収納箱」に移す必要も薄れ、本の管理はずいぶんとしやすくなった印象だ。本製品は内蔵メモリが従来の2GBから4GBに増えていることもあり、セットアップ完了後の端末の容量もがら空きである。むしろこの仕様変更を前提とするのであれば、従来と同じく2GBのままで価格を下げた方がよかったのでは? と思わなくもないが、それはともかく全体的に使いやすい方向に向かっているのは間違いない。
ただし全体を見ると、若干整合性がとれていない部分はみられる。例えばストアを表示した際におすすめされるコンテンツの中には、すでに購入済みで端末上にないコンテンツが表示される場合がある。ここで購入ボタンを押すと購入プロセスに遷移し、最終的に「ダウンロード」ボタンが表示されるので、二重に買ってしまうことはないのだが、そもそも購入済みコンテンツを「おすすめ」として表示することに違和感がある。おすすめする前に候補から除外しておくべきだろう。
また、関連書籍を表示した場合も同様で、すでに購入済みの書籍であるにもかかわらず「購入する」ボタンが表示される場合がある。挙動を見ていると、単に端末上にデータがない場合は「ダウンロード」ボタン、クラウドの「収納箱」に入っていると「購入する」ボタンが表示されるようなのだが、後者も「ダウンロード」か、あるいは「収納箱から取り出す」というラベルにするのが正解だろう。
またコミックについては、読み終えた巻よりも前の巻、例えば5巻を読み終えたところで4巻がおすすめされるといったことがよくある。そもそも4巻を読み終えたからこそ5巻を読んでいるわけで、もちろんその時点で4巻は購入済みでデータはクラウド上にあるわけだが、そうしたことはおかまいなしだ。こうした細かい挙動については、Kindleストアなど他のストアとの差は未だ大きく、実際に使っていてストレスが溜まる部分だ。
ベゼルと画面の高さが等しくなり操作が容易に。ライトの調節もスムーズ
物理ボタンがなく操作は全てタッチで行なうという仕様はKobo gloおよびKobo miniと共通だが、本製品が画期的なのは、ベゼルと画面の高さが等しいことだ。スマートフォンやタブレットではごく一般的だが、E Ink端末では非常に珍しい。
ベゼルと画面が同じ高さにあることは、2つの利点がある。1つは画面の隅にタッチしやすいことだ。ベゼルの段差があると画面隅をタップするのが難しく、文字列にマーカーを付ける際にうまく端まで選択できなかったり、しおりをつける際に画面右上にうまくタップできないことがある。本製品ではそうしたこともなく、操作がスムーズに行なえる。キーボードの端の文字をタップするのも容易だ。
もう1つは、ページをめくる際のスワイプ操作がしやすいことだ。段差がある場合、スワイプの操作は画面の範囲内でのみしか行なえない。しかしベゼルが同じ高さだと、ベゼルの端から画面までを地続きに指先でなでることができる。つまりストロークの幅が広く取れるのだ。スマートフォンやタブレットでは当たり前のことではあるが、スムーズなページめくりにおいては、これが実に効果的だ。画面に擦り傷が付きやすくなる弊害はなくはないが、進化の1つの方向性として興味深い。
タッチ操作が容易になった副産物、というわけではないだろうが、本製品では前面ライトの明るさを2本指のスワイプで調節できる。メニューを表示せずに直感的に調節できるので、ロケーションに応じてこまめに調整でき、1度使うと手放せなくなる。他社の前面ライト搭載端末にも欲しい機能だ。
ただ、一方の指がほんのわずかでも離れてしまうと、ピンチイン/アウトだと認識され、フォントのサイズが変わってしまう(ちなみにこれも新機能である)。機能としては正しいのだが、実際に使ってみた限り、判定がややシビアなように感じられた。部屋の空気が乾燥していたり、乾燥肌である場合も、こうした症状が起こりやすい可能性があるので注意したい。スワイプで明るさをゼロ(つまり消灯)にした状態と、本体上部のボタンでライト自体をオフにした状態の区別がつかない点も、改善してほしいところだ。
ページめくり速度はKobo gloと同等ながらレスポンスは改善
動作速度については、しばらく使った限りでは「Kobo gloと同等」というのが筆者の結論だ。ネット上のカスタマーレビューを見ていると「本製品の方がKobo gloよりも高速」と述べている人が多いが、工場出荷状態に戻してセットアップし直したKobo gloと条件を揃えて比較すると、違いがあるようには感じられない。
ただしこれはページめくりの操作についてで、メニューの遷移などそれ以外のレスポンスは大きく改善されているほか、Kobo glo以前の端末に見られた突然のフリーズが、本製品では明らかに減っている(皆無ではない)ので、実際に使い続けていると本製品の方がストレスは溜まりにくい。もっとも、Kindle Paperwhiteと比べた場合、スワイプでページをめくる速度については、かなりの差を付けられているのも事実である。詳しくは以下の動画を参照されたい。
なお画面のリフレッシュについては、従来は6ページに1回だったのが、今回はデフォルトで「章単位」に改められ、オプションで1ページ、5ページ、10ページ単位を選択できるようになった。競合他社のE Ink端末と同様、パネルの進化によって改善された格好だ。
今後の課題となるのは、ソニーReader、およびKindle Paperwhiteの新モデルで実装されている、ページをぺらぺらとめくって移動できる機能だろう。Koboシリーズ全般に言えることだが、離れたページに移動するのがとにかく煩わしく、反復しながら読むタイプの書籍ではかなりの忍耐を必要とする。メニューの表示などがそこそこ高速になっただけに、次に手を加えるとすればそこだろう。
文字などのクオリティは従来と同等。全体的に色は淡め
文字や画像のクオリティについては「従来のKoboシリーズと同等」というのが筆者の見解だ。すなわち、明朝体はやや粗く、ゴシックにすると非常にコントラストがはっきりして見やすい、という評価である。写真で見るといくぶん明朝体が太くなり、横棒やルビがかすれにくくなったように見えるが、実際に読んでいる際の印象にそれほど違いはない。
実際に使っていて気になるのは、前面ライトをつけた際、画面全体が「淡く」なることだ。つまり、黒くベタ塗りされている部分まで明るく(つまりグレーに)なってしまうのだ。画像処理ソフトで表示できるヒストグラムで言うと、黒100%の部分がなく、山が全体に右に寄ってしまっている状態だ。
競合製品となるKindle Paperwhiteも黒100%から白100%まで均一に分布しているわけではないが、並べて写真を撮ってみると、Kindle Paperwhiteの方が明らかに黒が引き締まって見える。活字だとあまり気にならないが、ベタ塗りが多いコミックについては、Kindle Paperwhiteの方がコントラストがはっきりしており、本製品はおすすめしにくい。パネルがきちんと濃い黒を表示できることが前提になるが、「BookLive!Reader Lideo」のように、コントラストを調節できる機能がほしいところだ。
また、画面下部のにじみは、従来のKobo gloほどではないが、やはりある程度は目立つ。とくにページ下部については、横一直線に薄いグレーの帯が見えるので、テキストコンテンツを読んでいると気になることが多い。本製品はベゼルとスクリーンの段差がなくなっているため、影の発生する余地がなく、それゆえ余計に目立ってしまう格好だ。Koboと同様ににじみが指摘されていたKindle Paperwhiteが、新モデルでにじみをかなり解消しているだけに、さらなる改善を期待したいところだ。
ハードはよいが価格がネック。ソフトやサービスの改善も課題
以上ざっと見てきたが、ハードとしてはよくできている印象だ。従来のKobo gloと同じ画面サイズ、ほぼ同じ解像度ということで、文字や画像のクオリティは従来とそれほど変わらないが、ベゼルの段差がなくなったことによる操作性の向上、レスポンスの改善、さらに薄型軽量化など見どころは多い。画面が全体的に淡いとか、離れたページヘの移動がしにくいといった操作性の問題は、競合製品と比較しなければ分からないことなので、Koboシリーズしか知らないユーザーにとってはデメリットになりにくい。
ゆえに従来モデルからの買い替えに適した製品、と言いたいところなのだが、ここでネックになるのは12,800円という価格だ。Kobo gloに比べると約5,000円高い上、ソフトウェアアップデートを行なえばホーム画面も同等の仕様になることもあり、積極的に買い替える必然性があるかと言われると微妙なところだ。Kobo Aura HDのようにスクリーンサイズが大きかったり、解像度が高いわけでもないのでなおさらだ。
ページめくりの検証に関する項でも述べたように、Kobo gloはいったん工場出荷状態に戻して再セットアップし、端末内のコンテンツを減らせばもっさり感がかなり解消されるので、Kobo gloを所有するユーザーは、まずはそちらを行なってみることをおすすめする。その上で、キャンペーンやクーポンなどで本製品がもう少し割安に入手できる機会を見つけて、あらためて検討するのがよいのではないかと思う。せめて9,980円に下がれば、考慮する余地はあると思う。
一方、Kobo以外の競合製品と比較した場合は、仕様比較などに出てこない細かい挙動がまだまだ未完成で、一言で言うと「気が利かない」製品という印象が強い。中でも、すでに持っている本をおすすめとして紹介してくる点や、コミックを読み終えると前の巻を紹介してくる点などは、簡単に修正できると思うのだが、未だ挙動に変更はない。このあたり、実際に使って気づかないわけがないので、それを製品に反映する体制がないのか、優先度が低いのか、はたまた実際に使っていないのか、理解に苦しむところだ。
ソニーReaderなどにも言えることだが、端末のハードウェアが進化して使いやすくなっているのに、ソフトやサービスの側が追いついていないことで、ずいぶんと損をしている印象は強い。例え改善してもどれだけ売上に結びつくか見えにくい部分ではあるが、「読書を愛するすべてのお客様へ」とアピールするのであれば、競合製品と比較する際に傍目に分かりやすい機能の有無やスペックばかりを追求するのではなく、細かい使い勝手のブラッシュアップも切に願いたいところだ。