山田祥平のRe:config.sys

パソコンでできないことが増えている

 不便と便利は紙一重だ。スマホとPCは、互いを補完し、競合ではなく協調する。だが、その仕組みがチグハグすれば何もかもが破綻する。世の中のデジタル化を進めるためには、そこをしっかり考える必要がある。

プラットフォームとサービスの協調

 時刻などを常時表示しても1週間以上バッテリが持つスマートウォッチ/バンドが増えてきているので、個人的にもヘルス系の機能をオンにして毎日の活動量や睡眠状態、心拍などをモニタリングするようにした。

 現在は、評価継続中ということもあって、日常的に「Amazfit GTR 4」を着用、寝る前に「Google Pixel Watch」と交換し、朝起きた時点で元に戻すようにしている。スマートウォッチは四角い方がいいという持論は変わらないが、どうにも人気は丸型らしい。寝るときだけGoogle Pixel Watchにするのは、日常的な使用にバッテリ駆動時間が短すぎるからだ。

 これらの製品で測定された健康データは母艦としてのスマホに集積される。そして場合によってはクラウドサービスのデータとして預かられる。

 複数台のスマホで単一のウォッチを管理できないのは仕方がないようにも感じるし、ベンダーが同じなら、単一のスマホで複数のウォッチを管理できないことも不便なのだが、そういうパターンがほとんどだ。アプリが同じデバイスなら、複数デバイスを同期させつつ管理できるようにしておけば、売れる個数も増えそうなのにと思う。

 Amazfit系のウォッチはZeppアプリ、Google Pixel WatchはFitbitアプリをスマホにインストールし、それぞれにウォッチを登録する。それによって自分の健康データなどを眺めて健康管理に役立てるわけだ。

 ところがいろいろややこしい。

  • FitbitアプリはGoogleのFitアプリと同期しない
  • FitbitアプリはAppleヘルスケアアプリと同期しない
  • ZeppアプリはGoogleのFitアプリと同期する
  • GoogleのFitアプリはAppleヘルスケアアプリと同期する

 どういうことかというと、AndroidスマホのGoogle Fitアプリにしても、iPhoneのAppleヘルスケアアプリにしても連携が不完全なのだ。それに連携ができたとしても、デバイス固有のデータなどは閉じている。歩数程度の連携ではあまりうれしくない。

 しかも、これらの収集データはWebで確認するのが難しい。昨夜の睡眠データがどうなっていたのかを確認するにも、スマホの小さな画面に表示させるしかないのだ。だから大きく重いスマホが欲しくなるのだろうなと思いつつも、これで本当にいいのだろうかと感じる。

 Fitbitはクラウドサービスサイトが用意されていて、かなりのことがWebで分かる。どんな体系でもこのくらいのことはできるようになっていてほしい。ここはGoogle、さすがだと思う。

 Googleが正式にGoogle Pixel Watch運用に際してFitbitで行くと決めた以上、Google Fitのサービスは縮小していく傾向にあるのかもしれない。健康情報という極めてセンシティブな情報だけに、複数サービスでデータを使い回すといったことは、あまりやりたくないのだろうなというムードも感じる。

スマホだけにこだわるアプリ

 スマートウォッチが収集するのは健康データだけではない。たとえば、ウォーキングやジョギング、サイクリングなどでは、その軌跡や、心拍数、消費カロリー、時速などの情報をあとで振り返るのは楽しい。それらを地図上で確認したいと思うし、Zeppアプリなどはそれができる。これからウィンターシーズンがやってくるが、スキー/スノボ対応しているウォッチも増えてきているので、この冬にはその進化も早く確認したい。

 ただ、これらについてもスマホの画面で見るしかない。目の前に大画面のモニターディスプレイがあるのに、6型をちょっと超えるくらいのサイズのスクリーンでガマンしなければならない。

 ちなみにZeppアプリはAndroidタブレット非対応だが、Fitbitはタブレットでも大丈夫だ。地図を使ったダイナミックな運動軌跡表示もできるが、Googleの各種地図サービス連携はできない。保存したスター付きの位置などが表示されないのだ。

 そういえば、WindowsではAndroidアプリも使えるようになったではないかと、アプリストアで確認するも、今のところFitbitやZeppアプリは見つからない。

 ウォッチの管理はできなくても、アプリを各デバイスにインストールして、同じアカウントでサインインすればデータの確認はできるのがせめてもの救いだ。

 このあたり、自宅で愛用しているオムロンの機器についても、最近になって「OMRON connect」がリニューアルされて使いやすくなった。いつの間にか、複数機器にインストールしてデータの同期もできるようになっている。これなら日常的にはスマホで管理し、医師にみせるときにはタブレットでといったこともカンタンにできる。また、介護対象の家族の状態を把握する用途にも使えそうだ。

 ただし、タブレットは公式にはサポートされていないし、今なおPCのWebブラウザを使ってデータを眺めることはできない。

カンタンなのはスマホだけとは限らない

 PCに対してスマホはカンタンだというのが定説だった。使うのに知識が必要なPCと違って、スマホは誰でも気軽に使えるということで、世の中はあらゆるものがスマホ対応を急いでいった。各種センサーやカメラ、NFCなどのデバイスを備えていて、それらを使えるというのも大きい。

 その結果、スマホは難しくなってしまった。かろうじて有利なのは、誰もが日常的に手元に携行していることだ。ほぼほぼ2分の1の確立で、AndroidスマホかiPhoneのユーザーにあたる。だから多くの疑問は誰かに聞けば解決する。

 それでも6型の世界観と24型の世界観は違う。特に、シニアはスマホの小さな画面に大きな文字を表示しようとするので、1画面で得られる情報量が少なくなる。大きな画面に表示するだけで解決することも少なくないのにだ。

 20年くらい前、複数台のPCを使おうというムーブメントを起こそうと、個人的にいろいろがんばっていた時期があった。ベンダー各社にもいろいろと支援いただいたが、1人1台も難しいのに、1人複数台は無理でしょうとも言われた。複数デバイスをまたいだ同期のソリューションも未熟な時代の話だ。

 でも、今は違う。スマホも浸透した。PCも当たり前の存在になった。スマートライフなど、ビジネス用途以外の使い方への親和性も高くなったのではないか。それなのになんとなく敬遠されているPCがちょっとかわいそうに感じる。