山田祥平のRe:config.sys

ありがちのType-C、まさかのType-C

 ここのところUSB Type-C周辺が賑やかだ。AC充電器やモバイルバッテリ、ケーブルなども充実しはじめている。サイプレスなどのPDコントローラを供給するメーカーの熱心な活動によって、規格を遵守した安全なリファレンスができあがり、それをさまざまなエンドユーザー製品メーカーが利用できるようになってきているのかもしれない。今回は、PC側のType-C事情について考えてみる。

Type-C 仕様のここに注目

 最新の多くのPCがType-C端子を装備するようになった。外観としては同じように見えても、個々の仕様は異なるので、自分のPCのType-C端子がどのような仕様になっているかを確認しておくことが重要だ。

 Type-Cの仕様でPCを選ぶというのはありえないだろうし本末転倒的かもしれないが、どちらの機種にするべきか悩んだときに、そこが決め手になるということはあるかもしれない。

 さらにレガシーなType-A用のポートの有無や仕様についても本当に必要なのかどうかも含めて気にしておこう。もはやType-Aなどいらないと考えるユーザーも出てきているくらいだ。ちゃんとしたType-Cポートがあるなら、ハブですませることができるかもしれない。

 チェックしておくべきポイントは4点ある

1.ポートの数
2.ポートのUSB仕様
3.ポートのPD対応とその仕様
4.Thunderbolt 3、DisplayPortなどのオルタネートモード対応の有無

 1についてはいうまでもない。ただし、複数のポートがすべて同じ仕様であるとは限らない。このことは2~4とあわせて知っておく必要がある。加えて新しい製品でもType-CポートがまさかのPD非対応のものもあることを知っておきたい。

2ポートで仕様が異なる場合も

 今、手元にある富士通クライアントコンピューティングの「LIFEBOOK UH95/D2」は2つのType-Cポートを装備している。その仕様を確認すると、

・USB 3.1(Gen2)Type-C×1(左側面奥(USB Power Delivery対応、DisplayPort Alt Mode対応))
・USB 3.1(Gen1)Type-C×1(左側面手前(USB Power Delivery対応)
・USB 3.1(Gen1)Type-A×2(左側面×1(電源オフUSB充電機能付)、右側面×1)

と記載されている。

 ここからわかるのはType-CポートとType-Aポートを2つずつ装備していることだ。しかも、2つあるType-Cポートの仕様が異なることもわかる。

 注釈を確認すると、

・最大5V/1.5A 給電です。USB Power Delivery 対応機器への充電が可能です。
45W(20V/2.25A)以上を供給可能な機器であれば、本体に充電が可能です。
・最大5V/1.5A 給電です。USB Power Delivery 対応機器への充電が可能です。映像出力など、USB以外の拡張機能はありません。

と書かれている。

 USB 3.1でもGen1とGen2の違いがあり、さらにDisplayPort対応は片方のみ。両方ともPD給電はできるが、充電は片方だけで、45WのPDPを持つ充電器が必要だということ、そして、Thunderbolt 3はどちらのポートも非対応といったことがわかる。

 また、仕様には記載されていないが、45W PDPの充電器でも、PDOに20V/2.25Aがなければ充電ができないことにも注意が必要だ。一部のメーカーの45W充電器には、20Vをサポートしない製品も存在する。

さすがの全部入りType-C

 一方、パナソニックのレッツノートの定番、「SV8」はどうか。仕様を見ると、

・USB3.1(Gen1/2)、USB Power Delivery、Thunderbolt 3、DisplayPort Alternate Mode に対応しています。

とあり、Type-Cポートを1つ装備する。1つだけなのでわかりやすいが、PDの仕様についてはスペック表からはわからない。

 以前に取材したときに(レッツノートにUSB PDを入れた男たち)紹介したレッツノートのPD仕様は次のようになっている。各社ともにこのくらい細かく公開して仕様表に記載してほしいと思う。パナソニックの場合も公開するのは好ましいが、仕様として明確に記載されていないのでは意味がない。

電源オフ時
・接続デバイスPDP 15W以上:満充電可能
・接続デバイスPDP 15W未満~7.5W以上: 充電可能 ただし満充電手前で充電停止(LED橙点滅)
・接続デバイスPDP 7.5W未満: 充電禁止(2.5Wアダプタなど、LED消灯)

電源オン時
・接続デバイスPDP 27W以上: 満充電可能
・接続デバイスPDP 27W未満: 充電禁止(LED消灯)

 この仕様からわかることは、7.5Wの充電器があれば電源オフ時に充電できるが、27Wあれば電源オンでもなんとか充電はできる可能性が高いということ。昨今の10,000mA程度のモバイルバッテリは、18WでのPD充電をサポートしているものが多いが、それがあれば緊急時の充電ができると判断できる。10,000mAというのは37Wh程度なので、それなりの容量だが、ロスなどもあり、過度な期待はしないほうがいい。

 また、27W以上の充電器があれば利用しながらの充電ができることになっているが、実際に使いながらの充電ではやはり45W程度、理想的には60WのPDPがないと心許ない。バッテリ保護のために頻繁な充電のオンオフが回避されているため、小さなPDPでは継続的な充電は不可能で、本体バッテリを減らさない程度の期待しかできないからだ。

まさかのDisplayPort非対応

 ではNECパーソナルコンピュータのLAVIE Pro Mobileはどうか。こちらも仕様を見てみよう。

 こちらはType-Cポートが2つある。

・USB 3.1(Type-C)×1
・USB 3.0(Type-C)×1 (USB Power Delivery 3.0対応、ACアダプタの接続ポートを兼用)

注釈を見ると、

・(双方ともに)USB以外の拡張機能はありません(映像出力等)。
・最大5V/1.5A給電です。USB Power Delivery対応機器へ充電できます。USB Power Delivery対応の15W以上のACアダプタやモバイルバッテリからPCへの充電が可能です。
・ACアダプタに接続している場合は、最大5V/3Aでの給電が可能です。バッテリ動作時は、電源ON時は5V/3A、スリープ時は5V/0.9A、休止状態/電源OFF時は給電を行えません。本体への充電はできません。

とある。また3つ目の注については、仕様書にどのポートの仕様か記載がないのだが、片方のポートにACアダプタ接続時のもう片方のポートのPD仕様だと思われる。15WのPDPで充電が可能と、かなり低い値をサポートしていることがわかるが、現実的な利用では45W超の充電器が欲しくなるだろう。

 さらに、両ポートともにDisplayPortがサポートされていないため、以前紹介した「ThinkVision M14」のようなモバイルディスプレイは使えないということがわかる。

仕様ははっきり明確に

 このように、見かけはポート数程度しか違いはなくても、PCごとにポートの仕様は各社各様で異なる。最新となる各社の3機種を見ただけでも大きな違いがあることがわかった。

 PDの普及によって、ノートPCとスマホで電源環境を共有できるようになったのはうれしいことだ。ノートPCを携行するユーザーは、おそらく必ずスマホも携行するだろうからだ。とはいうものの、PD対応の充電器やモバイルバッテリは、まだスマホ前提のものが多い。今のところ、スマホの充電なら18W PDPで十分だからいいが、ノートPCで使おうとすると「大は小を兼ねる」的なことを考える必要がある。ただ、「大は重い」というのが現実だ。

 個人的にはType-Cが2ポート装備され、ノートPCとスマホ1台の同時充電ができ、ポート指定、あるいはオートで45W+18Wの電力共有ができる充電器やモバイルバッテリがあればいいのにと思う。

 モバイルバッテリの場合は、大電力での高速充電ができるかどうかも気にしよう。今、手元にあるモバイルバッテリで、大電力をサポートする製品としては、レノボの「USB Type-C ノートブックパワーバンク(14,000mAh)」と、ベルキンの「BOOST↑CHARGE 20100mAh モバイルバッテリー」がある。入出力とも前者は45W、後者は30Wをサポートしている。多くの製品が入出力とも18Wにすぎないのに対して、大きなアドバンテージだ。

 もっとも、モバイルバッテリを昼間の活動時に消費した場合、ノートPCとスマホの充電中に、翌日の活動に備えたモバイルバッテリの充電はどうするのかというジレンマもある。ということは充電器には3ポートが必要なのか、それともベッドサイドでスマホを充電しながら眠れるように18Wのコンパクトな充電器を1個追加すればいいのかどっちなんだろう。かくしてモバイラーの荷物はまた1つ増えたり、重量がかさんでいったりする。それもまた過渡期の楽しさだ。

 いずれにしても、各製品のType-C PD対応はうれしいことだが、その仕様は一目でわかるようにきちんと明記してほしい。最低限でもPDPと各PDOについては列挙しておいてほしい。また、モバイルバッテリの容量についても、PDPとあわせてリチウムイオンバッテリの3.7V前提のmA表記ではなく、Whでの表記または併記を求めたい。

 これらの仕様は、製品本体に小さな文字で記載されていることは多いのだが、公式サイトのカタログページや、アマゾンなどのECサイトではわからないことが多いのには閉口する。賢い買い物をするためにエンドユーザーがちょっと深掘りして商品を調べたときに、その期待に応えられるだけの情報提供をしてほしいものだ。こういう状況がいつまでも続くとType-D仕様が出てきてしまいそうだ。