山田祥平のRe:config.sys

TwoNoteとOneNote

 会議や打ち合わせに出席してメモをとる。そのメモは、いつでもどこでも参照できて、いつでもどこでも修正できなければならない。そのための最適なソリューションはなんだろう。そう思って四半世紀悩み続けている。

複数デバイスでの同期を重宝

 Microsoft Officeアプリのなかでも最新参者といっていいOneNoteだが、One Note 2016、つまり、Win32版のサポート終了が発表されている。2020年の秋でサポートは終了、それまでも、新機能は追加されずオプション提供の扱いになっている。

 データはいつでもどこでも参照できるべきだし、かぎりなく汎用性の高いデータ形式でと思っていた。その考え方は今も変わっていないが、さすがに世のなかのトレンドには勝てず、5年ほど前に、いろいろ検討し、議事録や会議メモを記録する手段をOneNoteに変更した。

 テキストファイルの汎用性はなくなったが、その代わりに得たものとして、

  • (1)排他制御を気にすることなく異なるデバイスで同じデータを開いていても書き込み競合がなくなった
  • (2) 画像を貼りつけることができるようになった
  • (3) Webページ内のオブジェクトを貼りつけると、そのURLも貼りつくようになった
  • (4) Outlookの予定表の予定を右クリックして、そのコンテキストメニューから新しいメモを作成できるようになり、そのメモから予定にリンクされている
  • (5) 必要ならファイルでも音声でも貼りつけられる。音声とメモの同期録音も可能
  • (6) AndroidやiOSのデバイスでも文字化けせずに編集できるようになった

といったものがある。

 (6)についてはいまだにテキストファイルの内容をまともに表示できないOneDriveはなんとかならないかと思う。ただ、とくに、(1)については画期的だった。

 東京の自宅にいても、出張先にいたとしても、基本的に部屋で落ち着いて使うPCと、取材フィールドで使うPCは別のものだ。必然的に外出先ではOneNoteを開きっぱなしで、拠点では別のPCでそのメモを開きたい。

 OneNoteなら、複数デバイスで気にせずにメモを追記しても、拠点に戻ってPCを見れば、出先で使うPCと拠点で開いているOneNoteのメモが同期されるので、すべての変更が反映され、拠点で取材用に使っているノートPCを開いて操作する必要がない。

 拠点に戻ったらスリープから起こして放置するだけで、Wi-Fiにつながり、同期がはじまって充電も開始される。翌日出かけるときには、そのまま持ち出せばいい。

 もともとテキストファイルでメモをとっていたときにも、ファイルそのものはWindowsの標準ファイル同期機能を使っていたが、競合の問題だけはどうしようもなかったので、この仕様はとくに便利に感じた。

TwoNoteがOneNoteになることの不便とは

 こうしてメモ用アプリとして、OneNote 2016を愛用してきたのだが、それがなくなるという。乗り換え先はストアアプリのOneNote for Windows 10の一択だ。もうテキストファイルに戻ることは考えられない。膨大なメモをテキストファイルに移す手間は考えたくない。

 OneNote for Windows 10で、なにが不便になるかというと、ぼくの場合は、

  • (1) Outlookの予定表の予定アイテムの右クリックで、新規ノートを作れない。同じことをするには、OneNote側から挿入コマンドで予定を選択して作成する必要がある
  • (2) テキストは大丈夫だが、Webページから貼りつけた画像にURLが添付されないなど、なんとなくバギー
  • (3) 保護されたストアアプリなので、Windowsでのキーアサイン変更などが無効になってしまう

といった点で日常のワークフローの変更を強いられるようになってしまう。

 とくに、(3)は致命的で、メモをとるときにはテキストエディタを使い、会議が終わったらその内容をOneNoteのメモに貼りつけるという方法をとっている。

メモアプリに求めるシンプルな要件

 メモをとるためのアプリとして、個人的に求める条件は、次の2点だ。

  • (1) ページの概念がないこと
  • (2) 1行文字数の概念がないこと

 印刷を前提にしているわけではないので、(1)についてはそのほうが使いやすい。(2)については、ウィンドウの幅を調整すれば、それにしたがって文字列が折り返すので、モバイルノートPCのせまい画面に複数のアプリを開かなければならない場合に便利だ。

 いい加減にWordを使ったらどうかという声がきこえてきそうなので弁解しておこう。WordもWebレイアウトや下書き表示を使えばページや1行文字数の概念をなくすことができるのでいちおうの要件は満たす。だが、文書ごとに設定しなければならなかったり、競合の判定が厳密すぎてその解決のために、けっこう手間がかかってしまう点で却下している。

 もっとも、最近は、ドキュメントの受け渡しでコメントや修正履歴が必要になることが多いので、そういうときにはWordを使わざるをえないが、ゼロから文章を書くときは、テキストエディタを使っている。Word文書は、テキストエディタで書いた文章を貼りつけて送付するためのコンテナ的な使い方をしているわけだ。

AIならもっと便利になるはずが……

 そうこうしているうちに、Windows標準のSticky Notesのベータテストがはじまった。いわゆる付箋だ。オマケくらいにしか思っていなかったが、複数デバイスでの同期機能が追加され、ちょっとした工夫でうまく使えそうな印象だ。こちらは、もう少し使い込んで、その使い道を考えたいと思っている。

 Google KeepやEvernote、Dropboxなど、いろんなメモアプリを使ってきたし、Google Keepは今も愛用している。OneNoteでとるまでもない些細なメモはこちらを使う。

 新しくプロジェクトをはじめるときには、Windowsのファイルシステムのなかで、専用のフォルダを作り、そこに新しいファイルを追加していくのだが、メモが別フォルダになっているとなにかと不便だ。

 そういうときのためのショートカットなのだが、今のところは、プロジェクトごとのフォルダ内に、logというテキストファイルを作り、そこにミーティングなどの内容を日付つきで時系列で書き込んでいる。こうしてメモが必然的に複数アプリ、そしてフォルダに分散していくことになる。ただ、Windowsのファイルシステム内にあれば、検索ができる。ファイルがどこにあったとしても、検索機能さえしっかりしていれば、すぐに探し出せるのだ。

 これからの世のなかは、AIがいろいろとめんどうを見てくれるようになるようだが、長年の経験をフォローアップしてくれるようになるまでには、まだ時間がかかりそうだ。勝手にファイルを書いて放置しておいてもなんの不便もないファイルシステムがほしいと思う。