山田祥平のRe:config.sys
USB Type-Cディスプレイ、その技あり一本
2018年7月20日 06:00
USB Type-Cポートは、電源供給のためのUSB Power Deliveryで使うと便利なのはもちろん、本来のUSBによるデータ転送、そして、DisplayPort Altモード(Alternate Mode)と呼ばれるUSBとは別規格の信号を流す機能も、その付加価値を大きく高める。今回は、デルのUSB Type-C対応新ディスプレイ製品「P2419HC」を試してみた。
USB Type-C対応ディスプレイの普及はじまる
「P2419HC」は23.8型液晶フルHDディスプレイだ(デル、小型台座と薄型筐体でデスクを広々使える21.5/23/23.8/27型液晶参照)。このディスプレイに大きな付加価値をもたらすのが、製品に実装された1つのUSB Type-Cポートだ。
USB Type-Cポートを持ち、それを使って映像を入力できるディスプレイは各社から発売されているが、この製品は、最廉価とも言える税別27,800円という価格設定。きっと4KやWQHD解像度への対応を見送ることなどでのコストダウンに成功しているのだろう。
高嶺の花に近かったUSB Type-C対応ディスプレイの価格破壊と言っていいかもしれない。販売開始は7月25日だ。 現時点では細かい仕様を確認できなくなっているが、検索するとユーザーガイドの日本語版がヒットするので、その内容でスペックなどがわかる(PDFへのリンク)。
一般的なノートPCがUSB Type-Cポートを持つ場合、Thunderbolt 3に対応しているかいないかに二分できるが、このディスプレイはThunderbolt 3には対応していない。
両端がUSB Type-CのケーブルでPCとディスプレイを接続すると、実際にはDisplayPort Altモードで映像信号が送られて画面に映るようになっている。つまり、USB Type-Cは、信号の規格というよりはプラグ形状の規格と考えたほうがわかりやすいと言える。なお、ケーブルは3.1 Gen1以上に対応している必要がある。
ケーブル1本でノートPCの拡張完了
接続は非常に簡単だ。
仮に、デルのノートPC「Latitude 7390 2-in-1」とこのディスプレイを接続するにはどうすればいいかというと、付属のUSB Type-Cケーブルの片側をLatitudeに接続、もう片側をディスプレイに接続する。それだけだ。
もっとも電源ケーブルを接続して別途ディスプレイに電源を供給する必要はある。電源回路そのものはディスプレイ本体に内蔵されているので邪魔になるACアダプタはない。こちらもケーブル1本でACコンセントに接続するだけだ。
こうしてケーブル1本で接続するだけで、Latitudeはディスプレイから65WのPD(Power Delivery)電源供給を受けて充電を開始、そして、ディスプレイは拡張モードなどでセカンドスクリーンとして機能する。これはPD対応のUSB Type-Cポートを持つノートPCならほぼすべてが同じ挙動となる。
ディスプレイ本体には一般的なUSB Type-Aメス端子が4個装備されている。背面にUSB 2.0端子が2個、左側面に3.1 Gen 1端子が2個だ。残念ながらUSB Type-C端子はない。
USB 2.0ポートに無線マウスやキーボードのレシーバを装着したり、側面のUSB 3.0(3.1 Gen 1)ポートにはSDカードリーダや光学ドライブなどの速度を要求するデバイスを接続しておけばいいだろう。
通常はオフィスや書斎のデスクにディスプレイを置きっぱなしということが多いはずだ。外出から戻り、カバンから出したノートPCを開いてスリープから復帰させ、ディスプレイから生えたUSB Type-CケーブルをノートPCに接続すれば、それで充電がスタートし、ディスプレイに接続された各種のデバイスが機能しはじめる。ケーブル1本の接続でそれができるのだ。PDによる充電もそれでOKというのはうれしい。
外部ディスプレイ表示をはじめたノートPCは閉じてしまって本体の液晶表示はなしで使ってもいいし、キーボードは外付けしないで本体+拡張ディスプレイという状態で使ってもいいだろう。あるいはLatitudeのように液晶部分を裏返せるPCならテントスタイルで立てかけて、そちらをサブディスプレイとして使ってもいい。
デイジーチェーンを試す
今回は、「P2419HC」を2台調達し、そのデイジーチェーンも試して見た。ディスプレイにはType-Cケーブルに加えてDisplayPortケーブルが1本付属する。ディスプレイ本体には、DisplayPortの出力と入力の端子が装備されているので、2台の「P2419HC」をDisplayPortケーブルで接続すると、それだけで3台目のディスプレイとして機能するようになる。これも超絶簡単だ。
3辺超狭額縁を謳うだけあって、並べたディスプレイの境目も最小限で使いやすい。これも普通はつなぎっぱなしにしておくだろうから、外出から戻ってUSB Type-CケーブルをノートPCに接続するだけで、一気に3画面のマルチディスプレイ環境ができあがる。仕様的にフルHDまでという制限があるが問題はないだろう。
ディスプレイは、付属のアームスタンドにワッタッチで取りつけることができる。一般的なVESAマウントでもあるのだが、特殊な機構が実装され、ボタンを押しながら簡単に着脱ができるようになっている。上下左右のチルト、高さの調整幅も大きく、さらには回転もできるので、まさにオールマイティだ。
とにかく、たった1本のケーブル接続でリッチな環境が手に入るという点で、USB Type-C対応ディスプレイのアドバンテージは大きい。実際に使ってみてそれを痛感した。先日発売されたSurface GoのようなコンパクトなPCでも、オフィスや書斎では大きく使うといった用途にはピッタリかもしれない。
ノートPCは、ニーズのオールインワンが求められることが多く、それゆえに15.6型等の余裕のある画面サイズが求められてきたが、こうしたソリューションが浸透していくことで、求められるサイズ感は、少し小さめのものにシフトしていく可能性もあるかもしれない。
モバイルディスプレイとしてもあり
たぶん、この連載を読んでくださっている方のなかには、23.8型サイズの「P2419HC」が モバイルディスプレイ (※編注 山田氏個人の見解です。参考記事 : 24型液晶ディスプレイをモバイルしてはいけない)として使えるのかどうかを気にする方もいるかもしれない。
実際にやってみた。先日の海の日の連休に、タイ・バンコクにでかけたが、そのときにこのディスプレイを持参してみたのだ。
アームスタンドそのものは1.6kgと重いので持ち運びはつらい。バラバラにすることもできないのでカバンへの収まりも悪い。
試して見たところ、100均ショップで調達したタブレット用のスタンドを2つ使えば、なんとかディスプレイ本体が自立することを確認できた。さらに、付属の電源ケーブルは太くて取り回しが悪いので、極細ケーブルを別途調達した。
短い滞在だったので、いつもよりは小さいスーツケースででかけたのだが、そのなかにもスンナリ入った。衣服類で保護し、ほかの荷物を入れた状態でガタガタとしないように小物でサポートして成田空港まで運び、搭乗便へのチェックイン時にカウンターで預けた。
今回はバンコクへの直行便だったので、乗り継ぎ時の積み替えなどで乱暴に扱われる心配もあまりない。
バンコクの空港に到着し、出てきたスーツケースを受け取り、宿泊先のホテルに移動して、案内された部屋でディスプレイを取り出してみたところ、外観上のダメージは認められなかったので、ケーブルを接続して電源を入れた。そして、ノートPCを接続すると、いつもとおりのマルチディスプレイ環境がアッという間にできあがった。
デルのType-C対応モニタ「P2419HC」をタイ・バンコクまで持って来た。スーツケースには普通に入るし壊れなかった(笑)。100均で買ったタブレット用のスタンドで立てかけられるし、PDでPCに電源も供給できる。4つあるUSBポートが意外に便利で今回のキーボードは有線。これが全部ケーブル一本で完結する。pic.twitter.com/YUZ4F0Xcl9
— 山田祥平(syohei yamada) (@syohei)2018年7月14日
パネルのみの重量は3.52kgとされている。ちょっと重いかなという印象はあるが、電源内蔵、しかも、Power Delivery電源になるので、ノートPCの電源アダプタを兼ねられるというメリットを考えるとがまんできる重量だ。
ディスプレイが拡張するPCの使い勝手
「P2419HC」をモバイルディスプレイとして使うかどうかはともかく、最低限のケーブル接続で手に入るリッチな環境という点では、USB Type-Cディスプレイは、いわばPCを拡張する高性能ハブでもある。あるいはドッキングステーションと言ってもいい。
USB Type-Cディスプレイを実際に使ってみたのは初めてだったが、「P2419HC」のような製品が出てきたことで、その導入のハードルは一気に下がったように感じている。これから購入するディスプレイとしてUSB Type-C対応なしというのは、もはや考えられないとも思うようになった。一般的なHDMI端子も装備するので汎用性は高い。
ノートPCにディスプレイを追加するだけで、その使い勝手は大きく高まる。その環境に慣れてしまうと、ノートPCだけで作業をするのがつらくなって、かえって普段の作業の効率が下がるという考え方もある。それはそれで正しい。だが、ラクができるところではラクをしたい。そう考えるのもありではないか。