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AI導入、在宅勤務、サイバー脅威。経営層がイマ意識すべきITのポイントとは?

~社内情シスの役割が重要になる理由

 現在、個人/企業を問わず生成AIへの注目が集まっており、実際すでに、日本の大手企業や官公庁でも活用する取り組みが始まっている。

 企業における生成AIの活用の仕方は多岐に渡るが、Excelデータを分かりやすく集計してくれる、Web会議の音声をテキストにしてくれる、さらにその会議の議事録をまとめてくれるなど、人的リソース/コストを削減したり、生産性をすぐにでも上げてくれるものがいくつもある。

 また、昨今では新型コロナのパンデミックにより、大企業から中小企業まで、仕事のやり方が否応なしに急速にデジタル化された。

 そういったDX(デジタルトランスフォーメーション)やAI導入など、企業のデジタルな諸々の面倒を見るのが、情報システム部門、略して「情シス」の仕事である。従業員が使うPCから、社内ネットワーク、インターネット接続、ファイルサーバー、あるいは業務システムまで、社内のさまざまなIT関連を整備して保守運用し、企業で働く人に使ってもらうわけだ。

 コロナ禍以降では、テレワークのため、VPNなど自宅などから企業のネットワークに接続する仕組みの用意や保守運用も重要な仕事だ。さらに最近は、SaaSと呼ばれるようなクラウドベースのアプリケーションも業務利用されるようになっており、そのお守りも情シスの役割となっている。

 このように、企業のDX化を推進して支えることで、企業の生産性を向上させ、働き方を変えていく。それが情シスの役割である……、はずだ。しかし、実態はどうだろうか?

企業のDX化とともに、情シスに重くのしかかる問題

 世の中の企業で働く人は、「PC Watch」読者のようにPCなどのデジタルスキルの高い人ばかりではない。むしろ、そのような人の方が少ないだろう。

 昔は、仕事は紙とペンと電話でするもので、PCなんて嫌々触るもの、という人も年配の人の中には見られた。そこまでは行かなくても、PCではExcelなど決まった作業ぐらいしかしないという人も結構いる。一方最近は若手でも、SNSなどを使いこなしているようでいて、それはすべてスマホでやっており、PCはあまり得意ではないという層もいる。

 そして、経営者がDXを推し進め、そうしたPCを使うスキルがあまり高くない人たちにも業務でPCを活用してもらうのは当然の流れだ。だが、するとどうなるか? 情シスに毎日のように問い合わせがやってくるのである。

 筆者は今回、Webマーケティング企業で情シスを担当しているA氏(仮名)に話を聞いた。いわゆるIT系企業だ。そのような企業でも、「PCがまったく動きません」と言われて、確認しに行ってみると、ワイヤレスキーボードやマウスの接続が切れていただけということがあったとのこと。また、PCが重くなったときに、知識がある人では強制終了や再起動を試みるが、そこまで行きつかない人も多いという。

 そうした苦労に拍車をかけたのが、コロナ禍にともなう全社テレワーク化だった。

 A氏の企業では、社内のデスクトップPCはそのままに、社員にリモートデスクトップ接続用のノートPCを配布し、そのノートPCをいわばシンクライアントのようにして社内のデスクトップPCに接続する方式を採った。そのノートPCを急いで、しかも少ない予算で手配するのに奮闘した。

 そして実際にテレワークが始まってみると、まず各自の自宅の回線が問題となった。その時点で自宅に固定回線を引いていた人は約6割で、残りの約4割の人はモバイルルーターやスマホのテザリングなどを利用。その上で速度が遅く「なんとか速くしてくれ」という要望が来たりするのが辛かったという。

 「回線を引くにも大家さんの了解が必要で、引けないという人もいて、困りましたね。あと、回線は引いているが、マンションの共用回線で速度が出ないという人もいました」とA氏は頭をかいた。

 固定回線を引いている人についても、自宅のWi-Fiルーターの設置場所についてアドバイスしたり、LEDで示されたルーターの状態などを確認したりと、A氏は細かいサポートをした。このように、テレワーク化により新しい問題が出てきたうえに、直接でなくリモートで対応しなくてはならないという困難もあって、A氏は悪戦苦闘続きだったという。

 A氏のような話はおそらく企業の規模を問わず、どこでも起き得るものと思われる。こうなると情シスは、企業のデジタル化を推進するという前に、日常的な対応に追われてしまう。そのため、「企業のデジタル化を推進して支えることで、企業の生産性を向上させ、働き方を変えていく」ということは難しくなる。ひいては、DXによる企業の生産性向上の足枷にもなってしまうわけだ。

サイバー脅威への備えも、もはや企業の必須対応

 他方、ITに関して、活用以外の点で経営者が考慮すべきは、各種サイバー脅威への対策だ。ランサムウェアなどのサイバー脅威は、もはや企業の大小を問わず広がっている。そして、ひとたび被害に遭うと、信用の失墜、業務停止に伴う損失など、甚大な損害を生じる。

 サイバー脅威を未然に防ぐための1つの方向性は、社内のPC運用を外部のSIerなどに丸投げせず、自社の情シスを活用していくことだ。

 社内の情報シスがクライアントPCを管理することで、データ漏洩のリスクを軽減できる。適切なアクセス制御やデータ保護ポリシーを策定し、継続的に適用/監視することが重要だからだ。

 また、経営層から従業員まで全員がセキュリティ意識を持ち、対策に取り組む組織文化を醸成することも大切だ。経営層が率先してセキュリティ対策を推進し、従業員にもその重要性を理解させることで、組織全体でセキュリティ対策が進む。それには、まず経営層が社内の情シスを重用する必要がある。

 ゼロトラストといった対策が求められる昨今、ネットワークの状況やアクセスログをリアルタイムで監視し、異常なアクティビティがあれば迅速に対処できるようするためにも、社内でしっかり管理、運用する必要がある。

キーワードはインテルvProテクノロジー

 以上のように、さらに加速するDX化、AI対応、サイバー脅威対応だけを見ても、経営層は社内の情シス部門を重用していくことが大事であり、それによって会社全体の効率や生産性を向上できるようになることを頭の片隅に入れておく必要がある。

 一方、情シス側としては、どのような対応が必要なのだろうか? もちろん、ケースバイケースで柔軟に対応していく必要があるが、方法論の1つとして言えることは、「インテルvProテクノロジー」が手助けになるということだ。

 インテルvProプラットフォームに準拠したPCは、在宅勤務中の社員のPCもリモートからOSが起動する前にBIOS(UEFI)レベルでの制御ができる。また、強固なセキュリティ機能を併せ持ち、さまざまな脅威に備えることができる。加えて、性能も高く、エンドユーザーがストレスなく業務を遂行できるようになる。

 続く記事では、いくつかの具体的テーマについて、企業の経営層と情シスそれぞれに向けた対応方法などをより詳細に紹介していく。