レビュー
Raspberry Pi 400日本語キーボード版の開発秘話とファーストインプレッション
2021年8月6日 10:12
おさらい、Raspberry Pi 400とは
Raspberry Pi 400については、もともとRaspberry Pi Foundationの創始者、Raspberry Pi LTDのCEOであるEben氏が、コモドール64やBBC Micro、PC-98に特別な思い入れがあり、キーボード一体型のレトロチックな一体型PCを作る、ということで、彼を中心に始まった開発プロジェクトだったと昨年(2020年)の内部イベントでの説明があった。
Eben氏はBBC Microが初めてのパソコンで、この時のプログラミング経験を契機に学生向けにRaspberry Piを開発したのだが、どうもその思い入れの強さと、意外にも純正キーボードのウケがよかったことだろうか、本体と一体型ということで開発したらしい。
正直、突然のリリースとなった日本語版。正規代理店であるKSYもあまりにも突然すぎる入荷に驚いたらしい。ユーザーズグループ側も定期的にRaspberry Pi LTD側に問い合わせていたのだが、まだ分からないのままだったので、リリース日はまだ先思い込んでいた。なので今回のリリースについては正直寝耳に水といったところであった。なお、こういうリリースはマイナーバージョンアップにあたりアナウンスをしないことが多い。
約束されていた日本語版
日本語版のリリースは昨年(2020年)の英語版の正式リリース段階からセカンドバッチ(次のマイナーリリース)で発表されることは決められていた。ただ、日本語の準備には戸惑っていた。今回本体だけ出すのでなく、当初は『公式 Raspberry Pi ビギナーズガイド』の本の日本語版、電源も含めてセットリリースを予定していたからだ。
ユーザーズグループ側では彼らからの依頼に応じ、製品の化粧箱に書かれている説明の翻訳や、「公式 Raspberry Pi ビギナーズガイド」の翻訳のレビューを依頼され対応している。ただ、本などは短期でやるには、なかなか骨の折れる仕事で、メンバーはこのハードな状況をよくクリアしてくれたと思っている。
「製品の命運がかかっている」
そんな中、Eben氏から突然に検証の依頼があった。日本市場での成功を収める製品だからこそ、ミスが許されない。そう彼からキツい要求で、かついつもながらのド短期での検証は正直頭が痛かった。
ユーザーグループ側では翻訳と並行して少人数での体制を立て、検証はRaspberry PIのエンジニア陣と密にコミュニケーションをとりながら行なった。フィードバックのクオリティも上げる上で人員も投入し、英語でのやり取りの精度をかなり上げての対応となった。本当にド短期で並行してやってくれたと、メンバーには思っている。
実際のリリース品を手に入れて
実際のリリース品についてはKSYのアナウンスの直後、技適の確認もかねて彼らと相談をし、このレポートに合わせるべく機材を早急にお送りいただいた。今回のインプレッションレポートにあたり供与いただいたKSYには感謝したい。
改善されている点はあるのか? 思ったのだが、あまりなかった。ほぼ製品版とテスト版とは、全く変わりがなかったと感じた。技適はステッカーとして、キーボードの裏側に貼付されている。
英語版をお持ちの方もいらっしゃると思うが、英語版はタイピングがペタペタといった感じではあるものの、使っていてもそれほど気にならない。ただ、日本語版はどこか安いキーボードのようなカタカタとした音が鳴ってしまう。これは課題としてRaspberry Pi側に挙げて改善をお願いしようと思っている。筆者のようなX端末世代になるとこのキーボードのスムーズさは気になる。
mozcを入れれば、日本語かな入力が可能
正直Linuxユーザーであればローマ字入力の方が多く、日本語かな/カナは入力として魅力的ではないところもあるが、日本語かなは写真の通り、mozcの設定画面で変更可能である。
Ubuntu 21.04 Desktopでは、さらにキーボード設定を記述する必要がある。
設定をすればこの通り打つことが可能。
```
pi@ubuntu-pi:~$ vi .config/mozc/ibus_config.textproto
engines {
name : "mozc-jp"
longname : "Mozc"
layout : "jp" ←defaultからjpに変更する。
}
```
ほかに気になったところ
最初テストをAnkerのUSB Hubから。英語版、日本語版2台と繋いでいたが、2台で既に不安定の状況にあった。これで仮定するに、消費電流は2A以上は最低で食っており、AnkerのガリウムベースのUSB Type-Cの電源供給アダプタが必要かもしれない。
今回、ギリシャなどほかの国の製品バージョンも出てきて、かなり多くのものが誕生してきているが、日本では一部の他国と同様英語ベースで日本語を利用するケースが多く、実際Macなどがその典型とも言える。今後英語版について技適を取るのかなど、確認を取っておきたいと思う。
また、「公式 Raspberry Pi ビギナーズガイド」が付いたRaspberry Pi 400 kit日本語版も近日中に正規代理店から発売予定であることをお話ししておきたい。これは初心者向けにRaspberry Piの使い方からプログラミングまで、主に教育向けに編集されたものだ。昨今Raspberry Piは教育用のコンテンツにかなり力を入れていてその内容も分かりやすい。ご期待いただきたい。
今リリースされている言語以外のバージョンもサードバッチで出てくる可能性もある。余談だが、日本は昨年のリリースと同時にセカンドバッチでやるといったのは、そこそこそ大きなRaspberry Piの市場でありながら、技適など法令諸手続きや翻訳の事情から遅延する可能性があったからという経緯がある。実際技適にあたる規格が日本以上に基準が厳しい国はあり、それで遅れているところもある。
最後に
今回の検証にあたり、大内明さん、藤田里香さんを中心にユーザーグループメンバーにはほんとこのド短期で翻訳レビュー、検証とこなしてくれて、ここでお礼をしておきたい。また、急ぎの依頼ながら機材を快く提供いただいたKSYにもここで感謝をしたい。
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