レビュー

ドイツ発のRGBイルミネーション付き水冷「SILENT LOOP 2」。冷却液補充も可能

SILENT LOOP 2

 ドイツの自作PCパーツメーカーbe quiet! の簡易水冷CPUクーラー「SILENT LOOP 2」は、2020年10月に投入した「PURE LOOP」に続くラインナップだ(2021年3月発表)。まだ日本国内で販売開始になっていないが、サンプルが編集部に送られてきたので、簡単にレポートしたい。

 最新のCPUは温度に合わせてクロックを調節する機能が充実してきているため、CPUクーラーで温度を抑えることが性能を引き出す鍵となっている。特に、一般的な使い勝手に影響する短時間のブーストでは、CPU温度の上昇が緩やかな水冷が圧倒的に有利であり、ハイエンドCPUとの組み合わせるなら、事実上簡易水冷一択だ。

 ただ、水冷は経年によって冷却液が少しずつ蒸発し、それによって性能が劣化していくという弱点を抱えている。特にラジエータとCPUヘッドを結ぶホース部分から蒸発することが多いため、多くのメーカーは蒸発しにくい素材の開発など力を入れているものの、完全に防ぐことは難しい。

 そこで2020年10月に投入されたPURE LOOPは、ユーザーが冷却液を補充できる構造を採用し、この欠点を補った。この特徴はSILENT LOOP 2でも受け継がれ、製品寿命が長いという特徴を維持した。加えて、補充用の冷却液も添付し、安心感を高めている。

 ちなみに従来の補充口はラジエータを横置きした際に上にくる構造で、満タンにするにはやや難易度が高かったが、SILENT LOOP 2は側面となり、縦置きした際に上にくる構造となり、ギリギリまで補充できるようになったのもトピックである。

製品パッケージ
パッケージ内容物
RGB LED簡易コントローラが付属
補充用の冷却液と、補充用ポート

 その一方で、PURE LOOPの特徴であった、ポンプがホース上にあるという特徴は廃止され、オーソドックスな簡易水冷と同じCPUヘッド一体型となった。ただ、“革新的な”3チャンバー構造と6極3フェーズモーター、吸音材の多用により、高性能を実現しつつポンプの動作音を極限に抑えているという。実際に組み込んでみたが、かなり耳を近づけても騒音がほとんど聞こえなかった(部屋の空調やファンの方がうるさい)。

 付属するファンは、PURE LOOPが「PURE WINGS 2」であったのに対し、SILENT LOOP 2は「SILENT WINGS 3」となっている。前者はコストパフォーマンス重視のライフルベアリング(簡易流体軸受)で寿命8万時間なのだが、後者は流体軸受(FDB)で寿命30万時間を謳う。加えて、振動を吸収するネジマウントや6極モーター、ICによるモーターコントローラを備え、より静音性にこだわったものとなった。

今回試用したのは360mmモデル
ポンプ一体型となったCPUヘッド
ベース部の面積は一般的な簡易水冷より大きめ
付属するファンはSILENT WINGS 3という、PURE WINGS 2の上位モデル

 さらに、CPUヘッドのイルミネーションは、PURE LOOPがホワイトに光るだけだったものが、アドレサブルRGB LEDで光るようになった。対応マザーボードではユーティリティ上から発光を自由に変更できるほか、簡易コントローラが付属し、非対応マザーボードでも様々なエフェクトが楽しめる。これらのことから総合すると、SILENT LOOP 2はPURE LOOPの上位機種という位置づけで間違いないだろう。

 今回は、実際に編集部のRyzen Threadripper PRO 3975WXの環境でテストしてみた。ちなみにSILENT LOOP 2の360mmモデルは、Ryzen ThreadripperやRyzen Threadripper PROを冷やしきる性能を持っているが、Ryzen Threadripperパッケージに付属するsTRX4/sWRX8水冷マウンタでは対応できない。専用のマウンタは別売りであり、今回はご用意頂いた上でのテストである。

sTRX4/sWRX8マウンタは別売り
Supermicro製のRyzen Threadripper PRO対応マザー「M12SWA-TF」に装着したところ。マウンタは1方向しか取り付けられないので、ロゴが逆さまになってしまうのが玉に瑕(トップ画像は180度回転)

 テストにはCinebench R23を利用し、10分間継続的に負荷をかけ、最後の1回でスコアを算出するというデフォルトの方式を採用。結果としては、最初の6分程度までは80℃まで少し余裕がある動作で、それ以降は概ね80℃で安定した。一時87℃前後までスパイクで上がることもあるが、Ryzen Threadripper PRO 3975WXの最大動作温度は90℃のためそれでもまだ余裕がある。非PROなRyzen Threadripper 3970X辺りならオーバークロックもできるであろうから、もう少しクロックは伸ばしても安定して冷却できるだろう。

Cinebench R23テスト中のCPUクロックと温度推移

 気になる騒音だが、さすがにいくら静音重視のファンと言っても、最大回転数は2,200rpmに達するスペックの「SILENT WINGS 3 120mm PWM high-speed」である。負荷時は2,000rpmまで上昇するため、軸音/風切り音含めて静かなわけではないが、2,000rpmで回転している120mm角ファンとしては静かな部類だ。ケースにほとんど騒音が伝わって来ないのはさすがだと感じた。

 現時点では国内価格が明らかにされていないが、360mmラジエータを備えた簡易水冷が1万円台からあることを考えると、2万円は切ってほしいと言ったところ。冷却液は補充できるので、ほかより長く使える付加価値は加味できるが、付属のファンはRGB LED非搭載のため差し引くと妥当ではないかとは思う。あとは国内での販売開始を待つばかりだ。

上品な佇まいがいい