レビュー

冷却液が補充でき、ポンプの振動音も抑えられる簡易水冷「PURE LOOP」

PURE LOOPパッケージの内容

 be quiet! が10月にリリースした「PURE LOOP」シリーズは、冷却液を補充できるCPU簡易水冷クーラーだ。国内での発売は未定だが、編集部にサンプルが送られてきたので、簡単に写真を交えつつご紹介したい。

 IntelのCoreでも、AMDのRyzenでも、冷却状況を判断しながら動作クロックを調整するターボの機能が備わっている。基本的に低い温度が維持できた分だけ高いクロックを維持でき、性能向上が図れる。このため、近年自作パソコン市場においてはとくに簡易水冷が人気だ。

 というのも、水は比熱容量が金属と比べて大きいため、温度上昇が緩やかだからである(下降も遅いが)。熱が飽和したさいの場合の温度(つまり負荷が長時間継続する場合)は、空冷も水冷も性能に大差はないのだが、ブーストが一定の短い時間で発生するような場合は水冷が有利だ。

PURE LOOPのパッケージ

 ただ、水冷には弱点がある。それは、経年によって冷却液が蒸発により減っていくことだ。冷却液が減ると当然比熱容量が低下し、性能が劣化するほか、ノイズやポンプ故障の原因にもなりうる。

 とくに、CPUヘッドとラジエータを結ぶホースの部分で発生しがちなため、メーカー各社は冷却液の蒸発が最小限に抑えられるようホースに工夫を凝らしているが、それでも完全に密閉することは不可能に近い。そのため冷却液が一定量まで減ってしまったら、簡易水冷は製品寿命を迎えると言える。

 そこでPURE LOOPは、冷却液を補充するための口と補充用冷却液を用意して、ユーザーが自身で補充できるようにし、製品をより長く使えるようにしたのである。ただ、じつはこの手の製品はすでにSwiftechThermalrightから販売されており、本製品ははじめてというではない。

PURE LOOPの冷却液補充口
付属の補充用冷却液

 ちなみに補充時は、ヘッドやラジエータをいったんケースから外して、補充口より低い位置にポンプを置いてラジエータを傾ける必要があるのだが、ボトルの口が補充口にねじり込むようなかたちとなっているので、作業でミスってしまうことを最小限に抑えている。

 その一方でほかにはない特徴としては、ポンプがヘッド一体型ではなく、ホースのラジエータ寄り側に単独で設置されていること。もちろん、Asetekの特許を回避する狙いもあるが、振動を発するポンプが硬いCPUと接することなく、柔らかいホースによってその振動が吸収されるので、動作音を抑える効果にも寄与する。

ポンプはラジエータ寄りのホースのあいだにある
水冷ヘッドはポンプ非内蔵のため薄型。CPUに接する部分の加工も丁寧だ

 ちなみに昨今、アドレサブルRGB LEDをポンプやファンに備えた簡易水冷も多いが、本製品はヘッド部がホワイトLEDで光るのみだ。ファンは「Pure Wings 2」と呼ばれる風圧重視のもので、光る要素はなくシックである。

 今回届いたのは140mm角ファンを2基備えた280mmラジエータタイプで、推奨はCore i7/Ryzen 7クラスとなっている(Core i9/Ryzen 9ではノイズレベルが上がり、オーバークロックも非推奨。今回編集部はCore i7/Ryzen 7環境を用意できなかったので性能テストを行なわない)。

 280mmのほかに、120mm、240mm、360mmラジエータタイプもラインナップで用意しており、このあたりはケースやCPUに応じて選びたいところ。なお、対応ソケットはいずれのモデルもLGA115x/1200/2066/2011(-3)、およびSocket AM3(+)/AM4。先述のとおり国内では発売時期も価格も未定だが、静音重視のユーザーは要注目な製品だと言える。

水冷ヘッドはホワイトLEDのストライプが光るだけで、RGBの要素はない
ラジエータの横にPURE LOOPのロゴ
今回入手したのは280mmラジエータのタイプ
ファンは「Pure Wings 2」で風圧重視
Pure Wings 2は最大1,600rpmに達する。簡易水冷に共通して言えることだが、静音重視よりも風圧/風量重視のものが同梱される傾向にある