レビュー
18年前の装いそのままに最新ゲーミングマウスへ生まれ変わった「Microsoft Pro IntelliMouse」
2019年7月23日 11:00
日本マイクロソフト株式会社は、Microsoft製のゲーミング有線マウス「Microsoft Pro IntelliMouse」を8月2日より発売する。直販価格は7,138円。
すでに予約受け付けが開始されているが、今回は同社より発売前の製品をお借りできたため、レビューを行なっていきたい。
往年の名機を復刻したゲーミングマウス
Pro IntelliMouseは、米国では5月末より発売されていた(往年の名機を復刻したゲーミングマウス「Pro IntelliMouse」)、USB 2.0接続の有線マウス。
本製品は2002年国内発売の「IntelliMouse Explorer 3.0 (以下IME 3.0)」(マイクロソフト、スキャン速度が向上した無線光学マウスなど)を復刻したマウスで、同じIME 3.0復刻版として「Classic IntelliMouse」が2018年に発売されているが、直線補正が無効にできないなど、ゲームでの利用はあまり考慮されておらず、ゲーマーからの評価はそれほど芳しくなかった。
Pro IntelliMouseは、同じくIntelliMouse Explorerの復刻版として、筐体設計はほぼClassic IntelliMouseを踏襲しつつ、最新の光学センサーとゲーミング向けのソフトウェア機能を備え、「ゲーミングマウス」を謳った製品となっている。
弊誌の読者諸兄には釈迦に説法ではあるが、光学センサーを搭載した「IntelliMouse Explorer」シリーズは、id Softwareの「Quake III: Arena」、Epic Gamesの「Unreal Tournament」、Valveの「Half-Life」や同ゲームのModから派生した「Counter-Strike」といった、往年の名作FPSのプレイヤー達に評価され、多くの愛用者が生まれた名機。
IME 3.0は、2003年の後継機としてチルトホイールなどを備えた「IntelliMouse Explorer 4.0」発売後、一旦生産終了となるも、2007年にマイナーチェンジされ再生産されており、当時の人気のほどが伺えるだろう。
2011年にIME 3.0の販売は終了しているが、今もゲーミングデバイスメーカー各社から、そのエルゴノミクス形状を模した“IME 3.0クローン”が発売されており、一部のプロゲーマーや愛好者は、予備機を買いだめしていたり、センサーなどをDIYで交換するなどして、今でも使っているという話もあるほどだ。
考えてみると、本製品がClassic IntelliMouseの筐体そのままにゲーマーの要望に応えた新仕様で投入されるというのも、IME 4.0と3.0再生産の流れに似ていて趣深い。
国内発売年 | 製品 |
---|---|
1997年 | IntelliMouse |
1999年 | IntelliMouse Explorer |
2001年 | IntelliMouse Explorer 3.0 |
2003年 | IntelliMouse Explorer 4.0 |
2007年 | IntelliMouse Explorer 3.0(復刻版) |
2018年 | Classic IntelliMouse |
筐体はほぼそのままに各パーツを最新世代へ更新
少々前置きが長くなってしまったが、Pro IntelliMouseの実機を見ていきたい。
本体形状はエルゴノミクス設計になっており、右手での利用に適したデザイン。メインボタン2つとホイールスクロールボタンのほか、左側面に2つのサイドボタンを備える。
後述するユーティリティを使うと、ボタン操作によるdpiの一時変更や切り替えが可能なのだが、外観だけでなくボタン数もIME 3.0と同じため、機能に対してボタンが足りていない印象を受けた。重量が増えてしまうなどの理由で却下された可能性もあるが、ホイール手前などにdpi変更用のボタンが追加されていると、より使い勝手が良かったように思う。
スクロールホイールはノッチがしっかり感じられるタイプ。チルト機能も省かれているので、ホイール周りの誤操作の心配はいらないだろう。
本体の側面は滑り止めのラバーコーティングが施されているほか、サイドボタンもゴム素材になっている。ボタンに突起があるため、指で触れたさいにボタン位置がわかりやすくなっている。IME 3.0では、サイドボタンがメインボタンに比べてかなり柔らかいクリック感だったのだが、本製品ではメインボタンに近い、マイクロスイッチらしいカチッとしたクリック感のある設計になっている。ボタンもゴム素材で滑り止めを図っていたり、クリック感の変更などはIME 3.0からの改善点と言えるだろう。
光学センサーには本製品向けにカスタムされたPixArt製センサー「PAW 3389 Pro-MS」を採用。読み取り解像度は200~16,000dpiで、最高リフレッシュレート12,000fps、最大トラッキング速度400ips、最大加速度50Gの性能を謳う。オリジナルのIME 3.0では400dpi固定となっていたが、本製品ではdpiを任意の値に設定できる。
USBケーブルは、Classic IntelliMouseではゴム被覆だったが、本製品では布巻きに変更されている。動きを阻害しないようにもっと柔らかいケーブルだと嬉しいのだが、本製品より硬いケーブルを採用しているゲーミングマウスも見受けられるため、比較的しなやかな部類ではある。
本体色はシャドウホワイトとシャドウブラックの全2色で、今回のレビュー機材はシャドウホワイトのモデル。Xbox周辺機器で人気が高いという落ち着いたグラデーションカラーリングを採用している。
ゲーミングマウスとしては珍しいデザインだが、職場で使っていても派手すぎず、個人的には好印象だ。
公称仕様では、本体サイズは約69×132×43mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約104g(ケーブル除く)。実測重量は107gだった。欲を言えば、もう少し軽量化して100g未満だと嬉しかったところ。
最近のマウスとしてはサイズが大きめで、男性向けの大きさだ。筆者は成人男性だが、手の大きい方ではなく普段は小ぶりのマウスを使っており、本製品は握ったときに「持つ」というよりは「掴む」という感覚だろうか。
基本的にマウスが大きい場合持ち上げにくくなるのだが、本製品はエルゴノミクスデザインのおかげか、あまり気にならない。
IME 3.0では、本体底尾に赤いLEDライトを備えていたが、本製品ではRGB LEDを搭載しており、後述する「Microsoft マウスキーボードセンター」アプリから任意の色に設定できる。
アプリで設定できる「Xboxダイナミック照明効果」は、プレイするゲームに合わせて色が自動で変わるというもの。
なお、色相は任意に設定できるが、明るさの段階などは設定できない。ただし、下記に掲載した写真のとおり、光は接地面に向けて放射されるため、マウスパッドが鏡面でもなければ眩しさを感じることはないだろう。むしろゲーミングマウスとしては控えめな光という印象で、弊社のオフィス環境(かなり明るい)では、パッと見では光っているのか分からないほどだ。
そもそもRGB LEDはゲームプレイに影響するものではないため、不要という意見もあるだろうが、“消灯”が選択できるのはIME 3.0にはない優位性と言えるだろう。
設定用アプリ「Microsoft マウスキーボードセンター」では、各ボタンの機能設定やLEDの設定、マクロ、dpi、マウスパッド表面からセンサーが反応する高さ(リフトオフディスタンス: LoD)の調整、直線補正の切り替え、ポーリングレート変更などが行なえる。
dpiの設定範囲は200~16,000dpiで、50ごとに変更可能。LoDは2mmと3mm、またはマウスパッドを読み取って最適化した値に設定できる。
アプリケーションごとに設定を自動で切り替える機能も備えており、最近のゲーミングマウスでメジャーな機能は一通り備わっている。
ここからは有志開発のソフト「MouseTester Software Reloaded (v1.5.3)」を使って、センサーの挙動を見ていきたい。
マウスの仕組み上、ポーリングレートが1,000Hzの場合、マウスからは1ms(0.001秒)ごとに移動量の測定データがPCへ送信されている。
たとえば、センサー設定を100dpiにした場合、「1インチ(2.54cm)の移動を100カウントとする」と指定したことになるため、センサーがカウントを「1」と報告したときは、1msの間に0.01インチ(0.254mm)の移動をセンサーが検知したことを示す。
MouseTesterでは、報告されたカウントの値を記録してグラフで表示できる。グラフの見方は、縦軸がセンサーの検知したカウント(移動量)、横軸が時間経過を示しており、青点がマウスの左右方向(X軸)の動き、赤点が前後方向(Y軸)の動きを表している。
今回の検証では、マウスパッドの左下と右上の2点間でマウスを高速で振っているため、波線状のグラフのうち、曲線の頂点がマウスがもっとも高速で移動していた瞬間を、カウント0付近がマウスを逆方向へ振り戻したとき(移動量が0)を表す。
点が実際の測定値で、点を結ぶ線は平均値を取ったもの。検証ではマウスを振り続けているため、平均値は曲線を描いており、実測値の点が平均線から極端に逸脱していなければ、優秀なトラッキング性能のマウスであると言える。
マウス設定はdpi以外共通で、直線補正オフ、LoF 2mm、ポーリングレート1,000Hzに設定している。
結果を見ると、設定できる最低値の200dpiでは、最高速付近でも大きなカウントの飛びが見られず、綺麗に追尾している。
実際に設定しているゲーマーが多いと思われる400~1,200dpiでも優秀な結果で、1,600~16,000dpiの極端な高dpi設定でも極端なズレは記録されておらず、昨今のゲーミングマウスと比べて、同等または優秀な追尾性能と言って良いだろう。
直線補正については、設定でオフにした状態で「Microsoft ペイント」を使って線を引いてみたが、補正が残っている様子は見受けられなかった。
筆者には残念ながらマウスの違いでプレイ結果に差が生じるほどの腕前がないため、あくまで主観での感想しか述べられないが、実際に「Apex Legends」や「Overwatch」、「Quake Champions」といったFPS、「Tom Clancy's The Division 2」などのTPSをプレイしてみたところ、手持ちのゲーミングマウス(Roccat製)使用時と遜色なく遊ぶことができた。
Pro IntelliMouseは、かつての名機のスタイルそのままに、最新のゲーミングマウスに相応しい性能を備えた製品だ。
2019年のゲーミングマウスとして十分な性能と完成度のマウスであり、元IME 3.0ユーザーだというゲーマーなら、握ったときに懐かしさを感じるというプライスレスな付加価値もあるので、手元に置くのに躊躇はいらないだろう。
オリジナルのIME 3.0を触ったことがないという場合は、一度実機に触れて大きさを確認したうえで購入することをオススメしたい。
Microsoftには、IME 3.0だけでなく、左右対称デザインの「IntelliMouse Optical」や「Wheel Mouse Optical」なども復刻してほしいところだ。