レビュー

還ってきた名機「Microsoft Classic IntelliMouse」レビュー

Microsoft Classic IntelliMouse

 2018年1月、「Microsoft Classic IntelliMouse」が発売された。PCフリークにはきっと思い出深い「IntelliMouse Explorer」ファン待望のリバイバル版である。もはや説明は不要かもしれないが、同シリーズは光学式マウスの草分け的であり、「IntelliMouse Explorer 3.0(IE3.0)」はコアゲーマーなどから強い支持をうけた。

 Classic IntelliMouseは極力その形状を踏襲しつつ、有線5ボタンマウスとして蘇った。センサーは青色LEDによる「BlueTrackテクノロジ」により、平滑な面やガラス面でも正確なトラッキングが可能としており、解像度は最大で3,200dpiとする。

 本稿では、発売からおよそ1カ月が経過した「待望のマウス」こと「Microsoft Classic IntelliMouse」を、ゲームに限らないさまざまな角度から見ていくことにしよう。ちなみに、価格は公式Web直販で4,300円だ。

スマートフォンを思わせるシンプルなパッケージ
中もスマホに似て、本体の下に多国語の簡単な説明書が付属する

「Classic IntelliMouse」はゲーマー向きなのか?

BlueTrackのセンサー部
コネクターはType-A形状

 多くの読者が気になるのは、本機が「ゲーマー向け」のマウスなのか? という点だろう。結論から言ってしまうと、「あえてゲーマーが選ぶ必要はない」ということになる。理由はズバリ、マウス自体のハード面での性能もそうであるが、IE3.0クローンを含めた他社のゲーミングマウス達と比較したさい、カスタマイズ性でも劣るためである。

 センサーは最大3,200dpiであり、実用性はともかく、ゲーミングマウスでは10,000dpiを超えるモデルが多くある現在、やはり多少厳しいと言わざる得ない部分がある。

 また、マイクロソフトが提供しているユーティリティ「Microsoft マウス キーボードセンター」は多くのカスタマイズ項目をもたない。ゲーミングマウスにありがちなリフトオフディスタンス(RoD)や、直線補正の設定、キャリブレーションなどといった機能はない。

 また、「ペイント」で試し書きをしたところ若干の直線補正が感じられた。極端にカーソルが引っ張られていくような感覚はなく通常の使用には不自由しないものの、これもオフにできないため気になるユーザーには気になるところだ。

試し書きをしたところ。操作の巧拙もあるが、慎重に操作すれば直線補正を利用して直線を引き続けることもできるだろう。

 ユーティリティで可能なのはdpiの設定、dpiステップの設定や各ボタンの割当などであり、その点ではまったく「普通のマウス」といった水準だ。

項目の表示にメリハリがなく、イマイチわかりにくいユーティリティ
設定可能な項目一覧
ボタンの機能割当に関しては細かく設定可能
400〜3,200の間でdpiを調整可能

Classic IntelliMouseは本当に「クラシック」なのか?

極めてシンプルなホイールまわり
サイドボタンは2基
右側にはサイドボタンはない
背面にはおなじみMSロゴ

 外観は、一般的なゲーミングマウスと異なり、金属感のあるグレーと、サイドのラバー部分がつや消し黒と落ち着いた印象だ。ロゴも主張が控えめだが、使用時にテールのLEDが自動で白色に発光する。

極端に眩しいということもないが、やはりオフにできないのは気になる

 気になったのはこの発光機能で、どうやら机などに置き、入力可能な状態であると発光するようなのだが、あまり意味が感じられない。また、ユーティリティから調光したり、オフとする設定項目が存在しないため、暗い環境で使用する場合には気になると思われるので注意が必要だ。

 ボタンは標準的な主・副ボタンにサイドの戻る・進むボタン、ホイールクリックの5ボタン構成である。主・副ボタンはストロークがやや深く、押し心地はあまりタクタイル感もないため、その点も古いマウスのような感覚だ。前方の「戻るボタン」は、張り出しており、誤操作を防止する形状になっている。

 ホイールは極めてシンプルで、細い溝の切られたラバーホイール。サイズはやや控えめにも感じるが、これは指の長さなど、個人の好みにも大きくよるところだ。ちなみに、ケーブルはしなやかなラバーケーブルで、布巻きでこそないがクセなどはあまり気にならなかった。

「普段使いマウス」としての真価

「かぶせ持ち」したところ
「つまみ持ち」したところ。いずれでも無理は全く感じない

 しかし、使用するにつれ、本機にはゲーミング用途に限らない懐の深いよさを持っていることに気づかされる。

 それは、オリジナルのIE3.0から受け継いだ絶妙な形状であったり、ホイールのしっかり目の回し心地、ややストロークの深めのクリック、さらっとしたラバーコートといった細部による。それぞれ細部の意匠が優れていることで、ストレスのない使用感につながっているのだ。

 筆者は、本機購入以前IE3.0に類似した形状の「Razer DeathAdder 3500 Black Edition(DA3.5)」を使用していた。同機も定評のあるゲーミングマウス「DeathAdder」ブランドの1つで、IE3.0に似た形状をしたシンプルな5ボタンマウスである。

 比較してわかったことは、Classic IntelliMouseはより普段使いに適したマウスであるということだ。DA3.5は主・副ボタンともに端がやや反り上がっており、くぼみに人差し指がハマるような形状になっている。また、ホイールの溝は深く、回転もクリック感はあるが軽くまわるなど、あくまで「ゲーミングマウス」としてのアレンジがなされておりClassic IntelliMouseよりも硬派な使用感だ。

 Classic IntelliMouseはDA3.5よりも本体がつるっとした印象で、ポジションも幅がある。いわゆる「かぶせ持ち」、「つまみ持ち」を限定しないのはもちろんのこと、とっさに持ち換えるときも引っかかりを感じること無くポジションを変えることができるのだ。

総評

 言いたいことはあるが、筆者個人としては非常に気に入ったマウスである。硬派なゲーマーにとっては期待はずれかもしれない本機だが、筆者のようなカジュアルゲーマーや、シックな見た目から、「普通のマウスが欲しい」人にはおすすめできる製品だ。

 たとえば、先述のようなLEDテールライトのオン・オフ、DPI変更ボタンがないことなど、マイナーな不満点はいくつかあるのは事実だ。また、ユーティリティは機能的にも最低限のもので、インターフェイスもやや不自然に感じられた。

 しかし、たしなむ程度のゲーマーである筆者には極端な高性能マウスや、やたらに多機能であったりする必要はない。ユーティリティも不満はあるが、頻繁に調整しないことや、そもそも調整項目が少ないことを考えると許容範囲だ。

 むしろ、極力オリジナルを尊重して製品化されたことは素晴らしいといえるだろう。布巻きケーブルや、多ボタン化、高性能化もあり得たかもしれないが、蛇足となったり、そのほかのゲーミングマウスに埋没することを考えると、やはりこれでよかったといえるだろう。いずれにせよ、本機は優れた製品であると言えるのではないだろうか。