レビュー

CPU性能が強化されたVega GPU内蔵APU「Athlon 220GE/240GE」

Athlon 240GEとAthlon 220GE

 1月19日、AMDのエントリー向けAPU「Athlon 240GE」および「Athlon 220GE」が発売された。

 今回は、これらの製品の性能をベンチマークテストでチェックする。

Athlon 200GEのCPU性能を強化したエントリー向けAPU

 今回テストするAthlon 240GEとAthlon 220GEは、ZenベースのCPUコアとVegaアーキテクチャ採用GPUを組み合わせたAPU「AMD Athlon Desktop Processors with Radeon Vega Graphics」シリーズの新製品だ。

 同シリーズの製品としてはAthlon 200GEが2018年9月に発売されており、今回発売された2モデルはその上位モデルとなる。

 Athlon 240GEとAthlon 220GE、そしてAthlon 200GEのハードウェア構成は共通しており、2コア4スレッドのCPUコアと、GPUコアの「Radeon Vega 3」を備えている。

 各モデルの違いはCPUコアの動作クロックのみで、Athlon 200GEが3.2GHzであったのに対し、Athlon 240GEが3.5GHz、Athlon 220GEは3.4GHzで動作する。

 そのほかの仕様については以下の表のとおりだ。

【表1】Athlonシリーズのおもな仕様
モデルナンバーAthlon 240GEAthlon 220GEAthlon 200GE
製造プロセス14nm
CPUアーキテクチャZen
コア数2
スレッド数4
L3キャッシュ4 MB
ベースクロック3.5GHz3.4GHz3.2GHz
内蔵GPURadeon Vega 3
コンピュートユニット3基
ストリームプロセッサ192基
GPUクロック1,000MHz
対応メモリDDR4-2666 (2ch)
TDP35W
対応ソケットSocket AM4
税別販売価格8,580円7,280円6,480円
Athlon 240GEのCPU-Z/GPU-Z画面
Athlon 220GEのCPU-Z/GPU-Z画面

 AMD Athlon Desktop Processors with Radeon Vega Graphicsシリーズ共通の仕様として、上位モデルとして存在するAPU「Ryzen G」に比べ、利用可能なAPU内蔵PCI Expressレーンの数が少ないという制約が存在している。

 この制約によって、今回のテストに用いた「ASUS PRIME X470-PRO」では、ビデオカード接続用のPCI Express x16スロット(PCIEX16_1)で利用できるレーン数がx4に制限されたほか、M.2_1スロットで、PCI Express接続のSSDが利用できなかった。

 利用できなくなる機能はマザーボードによって異なるため、Athlonと組み合わせるマザーボードを選定するさいは、利用制限が生じる機能について事前に調査しておきたい。

Athlon 240GEを搭載したASUS PRIME X470-PROのPCI Express x16スロットは、レーン数が「x4」に制限される
ASUS PRIME X470-PROのM.2_1スロットは、Ryzenなどを搭載したさいにはPCI Express 3.0 x4接続のNVMe SSDが利用できるが、Athlon 240GEを搭載するとSATA SSDしか認識できなくなる

 なお、ASUS PRIME X470-PROの最新版UEFI(4207)には「CPU PCIe Lanes Unlocked」という項目が用意されており、これを有効化することで、上位APUのRyzen Gシリーズと同等のPCI Expressレーンが利用可能となる。

 実際に試してみたところ、ビデオカードとの接続レーン数はx8に増加したほか、M.2_1スロットでもPCI Express 3.0 x4接続のSSDを利用可能になった。

 なかなか面白い機能ではあるが、仕様外の動作であるため、なんらかの不具合が生じる可能性もある点には注意が必要だ。今回は、このような機能を提供するマザーボードが存在することの紹介までに留めておく。

ASUS PRIME X470-PROのUEFIに設けられたAthlon向け設定項目「CPU PCIe Lanes Unlocked」。有効にすると上位APU「Ryzen G」と同等のPCI Express 3.0 レーンが利用可能となる。
CPU PCIe Lanes Unlockedを有効にした結果、PCI Express x16スロットで利用できるレーン数は「x8」に増加した。

テスト機材

 Athlon 240GEとAthlon 220GEの比較対象には、下位モデルとなるAthlon 200GEと、競合モデルとなるPentium Gold G5400を用意した。各CPUのおもな仕様と、テスト機材の詳細については以下のとおり。

【表2】各APU/CPUのおもなスペック
モデルナンバーAthlon 240GEAthlon 220GEAthlon 200GEPentium Gold G5400
製造プロセス14nm14 nm
CPUアーキテクチャZenCoffee Lake
コア数22
スレッド数44
L3キャッシュ4MB4MB
ベースクロック3.5GHz3.4GHz3.2GHz3.7GHz
内蔵GPURadeon Vega 3Intel UHD Graphics 610
対応メモリDDR4-2666 (2ch)DDR4-2400 (2ch)
TDP35W58W
対応ソケットSocket AM4LGA1151
【表3】テスト機材一覧
APU/CPUAthlon 240GE/220GE/200GEPentium Gold G5400
メモリDDR4-2666 8GB×2 (2ch/19-19-19-43/1.2V)DDR4-2400 8GB×2 (2ch/17-17-17-39/1.2V)
マザーボードASUS PRIME X470-PRO (UEFI: 4207)ASUS TUF Z390-PLUS GAMING (UEFI: 1002)
GPURadeon Vega 3 (iGPU)Intel UHD Graphics 610 (iGPU)
システム用ストレージIntel SSD 760p 256GB (PCIe 3.0 x2)Intel SSD 760p 256GB (PCIe 3.0 x4)
アプリケーション用ストレージSanDisk Ultra 3D SSD (1TB SSD/SATA 6Gbps)
電源玄人志向 KRPW-TI700W/94+ (700W 80PLUS Titanium)
CPUクーラーAMD純正クーラー(付属品)Intel純正クーラー(付属品)
グラフィックスドライバRadeon Software Adrenalin 2019 Edition 19.1.1 (25.20.15011.1004)DCH 25.20.100.6519
OSWindows 10 Pro 64bit (Ver 1809/Build 17763.292)
電源設定高パフォーマンス
室温約27℃
Athlon 200GEのCPU-Z実行画面
Pentium Gold G5400のCPU-Z実行画面

 なお、システム用SSDに利用したIntel SSD 760pはPCI Express 3.0 x4接続のNVMe SSDだが、Athlon系APUでは前述のPCI Expressレーンの制約によりPCI Express 3.0 x2接続での利用となっており、Athlon環境におけるSSDのシーケンシャルリード性能がPentium Gold G5400環境の半分近くにまで低下している。

 これについては、利用可能なPCI Expressレーンに制約のあるAthlonに対する、Pentium Gold G5400とIntelプラットフォームの優位性でもあるため、今回はこのままベンチマークを実行する。

 もっとも、今回実行するテストで、システムディスクの性能差が影響する可能性があるのは、アプリケーションの起動速度の測定を行なうPCMark 10のみであり、それ以外のテストではこの差を考慮する必要はない。

Athlon 240GE環境でのCrystalDiskMark実行結果
Pentium Gold G5400環境でのCrystalDiskMark実行結果

ベンチマーク結果

 今回実行したベンチマーテストは、「CINEBENCH R15(グラフ1)」、「HandBrake(グラフ2)」、「TMPGEnc Video Mastering Works 7(グラフ3)」、「PCMark 10(グラフ4)」、「SiSoftware Sandra(グラフ5~11)」、「3DMark(グラフ12~17)」、「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク(グラフ18)」、「フォートナイト(グラフ19)」、「オーバーウォッチ(グラフ20)」、「Forza Horizon 4(グラフ21)」、「リーグ・オブ・レジェンド(グラフ22)」、「Dota 2(グラフ23)」。

 CPUのCGレンダリング性能を測定するCINEBENCH R15では、1スレッドのみでレンダリングを実行したさいのスコア(Single Core)と、CPUの全スレッドを使ったさいのスコア(All Core)を取得した。

 Single Coreにおいて、Athlon 200GEのスコアを基準とした場合、Athlon 220GEは約6%、Athlon 240GEは約9%、それぞれ高いスコアを記録した。CPUクロックの高いモデルほど高いスコアを記録するという、きわめて順当な結果だ。

 All Coreでは、Athlon 200GEが356cbを記録したのに対し、Athlon 220GEは376cb(+約6%)、Athlon 240GEは380cb(+約7%)をそれぞれ記録。こちらもSingle Core同様、CPUクロックの高いモデルほど高いスコアを記録している。

 Athlonの競合となるPentium Gold G5400は、Single CoreとAll Coreの両方でトップスコアを記録しており、2番手のAthlon 240GEに対しては、Single Coreで約13%、All Coreでは約5%の差をつけている。

【グラフ01】CINEBENCH R15

 HandBrakeでの動画エンコードテストでは、約1分の動画をH.264形式とH.265形式へそれぞれ変換するのにかかった時間を測定した。

 H.264形式への変換では、Athlon 200GEのエンコード時間が181秒だったのに対し、Athlon 220GEは12秒速い169秒、Athlon 240GEは17秒速い164秒でエンコードを完了した。もっとも速かったのはPentium Gold G5400で、2番手のAthlon 240GEより9秒速い155秒を記録している。

 H.265形式への変換では、Athlon 200GEが記録した343秒に対し、Athlon 220GEは17秒速い326秒、Athlon 240GEは30秒速い313秒を記録。こちらも最速はPentium Gold G5400で、2番手のAthlon 240GEより13秒速い300秒でエンコードを完了している。

【グラフ02】HandBrake (v1.2.0)

 TMPGEnc Video Mastering Works 7では、x264やx265を使ったソフトウェアエンコードに加え、各GPUが備えるハードウェアエンコーダを使った場合のエンコード時間を測定した。

 ソフトウェアエンコードの結果は、Athlon 200GEのエンコード時間を基準とした場合、Athlon 220GEは約94~95%、Athlon 240GEは約92%の時間でエンコードを完了している。最速のPentiun Gold G5400のエンコード時間は、Athlon 240GEの約95%となっている。

 ハードウェアエンコードでは、Athlon 200GEのエンコード時間に対し、Athlon 220GEは約95%、Athlon 240GEは約89~99%の時間でエンコードを終えている。Athlon各モデルのGPUは同一スペックだが、一部の処理をCPUが実行しているため、CPU性能の差がエンコード時間に反映されたようだ。

 IntelとAMDではエンコーダが異なるため、タイムの比較にはあまり意味がない。この結果からわかることは、どちらもかなり高速なハードウェアエンコーダが利用できるということ程度だ。

【グラフ03】TMPGEnc Video Mastering Works 7(v7.0.4.5)

 PCMark 10では、Athlon 240GEなどで一部のテスト(Rendering and Visualization)が正常に動作しない不具合が発生したため、これを用いないテストモード「PCMark 10 Express」のスコアを取得した。

 総合スコアのトップは、4,097を記録したAthlon 240GEで、以下Athlon 220GE、Athlon 200GE、Pentium Gold G5400の順となった。

 Pentium Gold G5400は、アプリケーションの起動速度などのテストを含む「Essentials」ではトップスコアを獲得しているものの、Office系アプリケーションのパフォーマンスを測定する「Productivity」のOpenCLテストで優れたスコアを記録したAthlonが、これを逆転した格好だ。

 なお、アプリケーションの起動速度測定が含まれるPCMark 10のEssentialsは、今回のテストにおいてシステムディスクの速度差がスコアに反映される可能性のある唯一のテストだ。しかし、Athlon各モデルのスコア差を見ると、CPUのシングルスレッド性能の違いが強く反映された結果のように見える。

【グラフ04】PCMark 10 Express (v1.1.1739)

 CPUの演算能力を測定するSiSoftware Sandraの「Processor Arithmetic」では、Athlon 200GEのスコアに対して、Athlon 220GEは約5~6%、Athlon 240GEは約9~10%高いスコアを記録した。

 トップスコアを記録したのはPentium Gold G5400で、2番手のAthlon 240GEを整数演算(Integer)で約13~16%、浮動小数点演算(Float)で約9%上回った。

 CPUのマルチメディア処理性能を測定する「Processor Multi-Media」では、Athlon 220GEは約6~7%、Athlon 240GEが約9~10%、それぞれAthlon 200GEを上回った。

 Pentium Gold G5400は整数演算ではAthlon 240GEを上回る結果もあるものの、浮動小数点演算ではAthlon 240GEの71~75%程度のスコアに留まっている。このあたりは、PentiumがAVX命令をサポートしていないことも影響していると考えられる。

 暗号処理性能を測定する「Processor Cryptography」では、暗号化/復号化(Encryption/Decryption)性能でAthlon 220GEとAthlon 240GEは、Athlon 200GEを約3%上回る11GB/sで横並びとなった。

 よりCPU性能差が反映されるハッシュ処理性能(Hashing Bandwidth)では、Athlon 220GEが約6%、Athlon 240GEは約9%、Athlon 200GEを上回った。また、このテストではAthlon系APUがPentium Gold G5400を圧倒している。

【グラフ05】SiSoftware Sandra v28.34 「Processor Arithmetic」
【グラフ06】SiSoftware Sandra v28.34 「Processor Multi-Media」
【グラフ07】SiSoftware Sandra v28.34 「Processor Cryptography」

 メモリ帯域を測定する「Memory Bandwidth」では、DDR4-2666メモリのデュアルチャネル動作をサポートするAthlon系APUが28~29GB/s程度の帯域を記録。DDR4-2400のデュアルチャネル動作までの対応となっているPentium Gold G5400よりも15%程度高速な結果となった。

 CPUのキャッシュ性能を測定する「Memory Bandwidth」では、Athlon系APUはCPUクロックの差に応じてキャッシュのデータ転送速度が変化していることが見てとれる。

 レイテンシを測定する「Cache & Memory Latency」の結果をみれば、Athlon系APUのキャッシュ領域におけるレイテンシはほぼ差のない結果であり、とくにキャッシュ周りの特性が変化しているわけではないことがわかる。

【グラフ08】SiSoftware Sandra v28.34 「Memory Bandwidth」
【グラフ09】SiSoftware Sandra v28.34「Cache Bandwidth」
【グラフ10】SiSoftware Sandra v28.34 「Cache & Memory Latency (nsec)」
【グラフ11】SiSoftware Sandra v28.34 「Cache & Memory Latency (Clock)」

 3DMarkでは5種類のテスト(Time Spy、Fire Strike、Sky Diver、Night Raid、Cloud Gate、Ice Storm Extreme)で各APU/CPUが備える内蔵GPUの3D描画性能を測定した。

 Athlon系APUが備えるGPUコア「Radeon Vega 3」は、全モデル同一のスペックであるため、GPU性能を重点的にテストする「Graphics Score」の差は、最大でも1%程度しかついていない。スペックのとおり、各Athlonが備えるGPUコアの性能は同等であるとみて良いだろう。

 競合製品のPentium Gold G5400については、総合スコアではAthlon 240GE比で約56~74%のスコアとなっているが、Graphics Scoreにかぎれば約51~65%とさらに低く、内蔵GPUの3D描画性能については、Athlonが大きくリードしていることがわかる。

【グラフ12】3DMark v2.7.6296「Time Spy」
【グラフ13】3DMark v2.7.6296「Fire Strike」
【グラフ14】3DMark v2.7.6296「Sky Diver」
【グラフ15】3DMark v2.7.6296「Night Raid」
【グラフ16】3DMark v2.7.6296「Cloud Gate」
【グラフ17】3DMark v2.7.6296「Ice Storm Extreme」

 ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマークでは、描画設定を「標準品質(デスクトップPC)」に固定して、720p~フルHDまでの画面解像度でテストを実行した。

 Athlon各モデルのスコア差は、最大で約1%という誤差レベルの差しかついていない。Athlonのベンチマーク評価については、720pで「とても快適」、900pで「快適」、フルHDで「やや快適」となっている。

 720pに関しては40fps弱の平均フレームレートを記録しており、画質面と解像度で妥協すればファイナルファンタジーXIVをプレイすることができそうだ。

 競合であるPentium Gold G5400のスコアは、Athlon 240GE比で約57~60%にとどまっている。ベンチマーク評価についても720pで「やや快適」(平均23.3fps)となっており、快適なプレイを望むのは厳しそうだ。

【グラフ18】ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク

 バトルロイヤルゲームの1つである「フォートナイト」では、描画設定プリセット「低」をベースにして、画面解像度および3D解像度を720p、900p、フルHDの3通りに設定してフレームレートを測定した。

 ここでもAthlon系APUのフレームレートは横並びとなっている。測定結果で56fps前後となっている720pについては、おおむね60fps前後でのプレイが可能であり、画質や解像度を妥協することでかなり滑らかな描画でゲームを楽しむことができた。

 Pentium Gold G5400のフレームレートは、Athlon系APUの約58%前後となっており、720pでも平均値で30fpsを超えるのがやっとという結果だ。プレイできないこともないが、描画の滑らかさにおいてAthlonとの間には大きな差が存在する。

【グラフ19】フォートナイト (v7.20)

 PvP専用FPSゲーム「オーバーウォッチ」では、描画設定プリセットを「低」に固定して、720p、900p、フルHDの3画面解像度でフレームレートを測定した。

 Athlon系APUのスコアが横並びなのはほかのゲームと同様だが、720pでもフレームレートは48fps前後にとどまっている。オーバーウォッチは30fpsからプレイ可能なタイトルなので、プレイすること自体は可能だが、描画設定や画面解像度を妥協しても60fps前後のような滑らかな描画を得るのは厳しい。

 Pentium Gold G5400のフレームレートは、Athlon 240GE比で64~66%程度となっており、720pで30fpsをわずかに上回る程度となっている。描画負荷の高いシーンでのフレームレート低下も目立っており、実際にプレイするなら画質面でさらなる妥協が必要だろう。

【グラフ20】オーバーウォッチ (v1.32.1.1.54255)

 オープンワールドレースゲームの「Forza Horizon 4」では、描画設定プリセットをもっとも低い「ベリーロー」に固定して、3通りの画面解像度でベンチマークモードを実行した。

 なお、今回のテスト環境においては、Pentium Gold G5400でベンチマークモードを正常に動作できなかったため、同CPUのスコアは未取得となっている。

 ほかのタイトル同様、Athlon系APUのベンチマーク結果は横並びで差がついていない。720pでの平均フレームレートは33fpsとなっており、一応30fps前後での動作は期待できる結果ではある。

 とはいえ、画質的にはかなり妥協した設定でも滑らかさを欠く描画であり、Athlon系APUでForza Horizon 4をプレイするのはおすすめできない。

【グラフ21】Forza Horizon 4 (v1.239.620.2)

 マルチプレイヤーオンラインバトルアリーナ(MOBA)の定番タイトルの1つ「リーグ・オブ・レジェンド」では、描画設定プリセットを最高の「非常に高い」に設定した上で、アンチエリアス設定を有効化した高画質設定にて、3通りの画面解像度でフレームレートを測定した。

 ここでもAthlon系APUのフレームレートはほぼ横並びだ。Athlon系APUはフルHDでも60fpsを超えるフレームレートを記録しており、リーグ・オブ・レジェンドに関しては、高画質設定であってもフルHD解像度で60fps以上で快適にプレイできる。

 Pentium Gold G5400のフレームレートは、Athlon 240GE比で67%前後だった。Athlon系APUとの差はやはり大きなものだが、720pでは60fpsを超えている。描画品質や画面解像度を妥協すれば、リーグ・オブ・レジェンドをプレイできる実力を備えている。

【グラフ22】リーグ・オブ・レジェンド (9.2)

 MOBAの定番タイトルのひとつ「Dota 2」では、画面解像度をフルHDに固定し、4とおりの描画設定プリセットごとにフレームレートを測定した。なお、グラフィックスAPIにはDirectX 11を利用している。

 このタイトルではAthlon系APUのフレームレートが横並びにはなっておらず、描画設定「低」以下では、Athlon 200GEに対し、Athlon 220GEが約8~9%、Athlon 240GEは約12~13%、それぞれ高いフレームレートを記録した。なお、GPU負荷が高い「高」以上の描画設定では、Athlon系APUのフレームレートは横並びとなっている。

 Athlon系APUのフレームレートがCPU性能に応じて変化したことからわかるように、描画設定「低」以下では、CPU性能がフレームレートに大きく影響しており、最軽量の「最低」ではPentium Gold G5400がAthlon 240GE比で88%のフレームレートを記録している。

【グラフ23】 Dota 2 (v7.20e)

 ワットチェッカーを利用して、アイドル時消費電力とベンチマーク中のピーク消費電力の測定結果をまとめたものが以下のグラフだ。

 アイドル時消費電力については、Athlon系APUは25Wで横並びとなっている。Pentium Gold G5400は比較製品中もっとも低い19Wを記録しているが、これはマザーボードやメモリの消費電力差も含んだ結果である点に注意したい。

 ベンチマーク中のピーク消費電力でもっとも高い数値を記録したのは、Athlon 240GEだった。CPU系ベンチマークテストであるCINEBENCH R15やTMPGEnc Video Mastering Works 7では、Athlon系APUでは唯一50Wを超える消費電力を記録している。

【グラフ24】システムの消費電力

 Athlonには、70mm角ファンとアルミニウム製ヒートシンクを組み合わせた純正CPUクーラーが付属している。冷却ファンはPWM制御に対応しており、フルスピード時の回転速度は約3,400rpm。今回は、この純正CPUクーラーを使った場合、Athlonがどれくらい冷却できているのかを確かめてみた。

Athlonに付属する純正CPUクーラー。70mm角ファンとアルミニウム製ヒートシンクを組み合わせた簡素なもの
CPUと接するベース面にはサーマルグリスが塗布されている

 モニタリングソフト「HWiNFO v6.00」を用いて、アイドル時とベンチマーク中のCPU温度を測定した結果が以下のグラフだ。冷却ファンのPWM制御を100%と50%に固定した場合の2通りで温度を測定した。

 冷却ファンをフルスピードで動作させた場合のピーク温度は、Athlon 220GEが51.4℃で、Athlon 240GEが53.6℃だった。ファンスピードを50%(約2,200rpm)まで絞ったさいのピーク温度は、Athlon 220GEが53.5℃、Athlon 240GEは61.0℃だった。

 ファンスピードを絞ったさいに、Athlon 240GEが60℃を超えているものの、サーマルスロットリングの作動基準温度は95℃であり、この結果は純正クーラーでも十分な冷却が可能であることを示すものだ。ファンノイズも、50%時であればそれなりに静粛であり、純正クーラーの実力は実用的なものであると言える。

【グラフ25】CPU温度 (HWiNFO v6.00)

CPU性能と価格を天秤に掛けて選ぶことになるエントリー向けAPU

 Athlon 240GEとAthlon 220GEは、スペックが示すとおり、Athlon 200GEのCPU性能を強化したAPUだ。CPUクロックの差に応じて高いスコアを示したCPU系ベンチマークの結果と、Athlon 200GEとほぼ同等の結果となった3Dベンチマークの結果がそれを示している。

 Athlon Desktop Processors with Radeon Vega Graphicsシリーズ最大の魅力は価格にある。Athlon 200GEから向上したCPU性能と価格差を天秤にかけ、それが釣り合うと思えるか否かが、Athlon 240GEやAthlon 220GEの価値を判断する材料となるだろう。

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