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ゲーマー向けのハイエンドSSD「WD Black SN750 NVMe SSD」を試す

Western Digital「WD Black SN750 NVMe SSD」 1TBモデル

 Western Digitalは、同社フラッグシップSSDの新モデル「WD Black SN750 NVMe SSD」を発売した。

 2018年に登場した自社開発の独自コントローラと64層3D NANDを採用する「WD Black NVMe SSD」の進化モデルで、ハードウェアはほぼ同じながらさらなる高速化を実現している。

 今回は、WD Black SN750 NVMe SSDの1TBモデルを取り上げ、簡単に仕様や性能をチェックする。

従来モデル同様に自社開発の独自コントローラと64層3D NANDを採用

 WD Black SN750は、M.2 2280フォームファクタで、接続インターフェイスがPCI Express 3.0 x4、プロトコルがNVM Express 1.3に準拠するSSDだ。従来モデル同様、Western Digital製SSDのハイエンドモデルとして位置付けられ、とくにハイエンドゲーマーをターゲットとしている。

 容量は250GB、500GB、1TB、2TBをラインナップしており、250GB、500GB、1TBの3モデルから販売を開始し、2TBモデルは2月以降の発売を予定している。

 また、WD Black SN750には、EKWB製のヒートシンクを標準で装着するモデルも用意される。基板ほぼ全体を覆うヒートシンクを装着することで、コントローラやNANDフラッシュメモリの発熱に対応する。

 ヒートシンク装着モデルは3月以降の発売を予定しており、容量は500GB、1TB、2TBの3モデルをラインナップする。

 WD Black SN750のハードウェアの仕様は、従来モデルから大きく変わっていない。コントローラには自社開発の独自コントローラを採用。コントローラの詳しい仕様は未公表だが、NANDフラッシュメモリの一部をSLCキャッシュとして活用することでTLC NANDのアクセス性能を向上する「nCache 3.0」へも引き続き対応しており、仕様はほぼ同等だ。

 NANDフラッシュメモリも従来モデル同様で、東芝と共同開発され、四日市工場で製造されている64層3D NAND(BiCS3)を採用している。セルあたり3bitのデータを保存できるTLC仕様となる点も同様だ。

 このようにハードウェアの仕様は従来モデルから大きく変わっていないが、アクセス速度は従来モデルから向上。表1にまとめたのがWD Black SN750のおもな仕様だが、従来モデル(速度が大幅向上したWD製の第2世代ハイエンドSSD「Black 3D NVMe SSD」)と比べてみると、容量によって多少上下はするものの、シーケンシャルライト速度やランダムアクセス速度が向上していることがわかる。

 ただ、いずれも大幅な速度向上とまではいかず、ファームウェアの最適化を進めることによって性能向上を実現しているものと考えられる。

 耐久性は従来モデル同様で、総書き込み容量は250GBモデルで200TBW、2TBモデルでは1,200TBWに達している。また保証期間も従来モデルと同じ5年間となる。

表1: WD Black SN750のおもな仕様
容量250GB500GB1TB2TB
フォームファクタM.2 2280
インターフェースPCI Express 3.0 x4
プロトコルNVMe 1.3
NANDフラッシュメモリ64層 3D NAND(BiCS3) TLC
コントローラWestern Digital自社製コントローラ
DRAMキャッシュ容量非公開
シーケンシャルリード(QD32/Thread1)3,100MB/s3,470MB/s3,400MB/s
シーケンシャルライト(QD32/Thread1)1,600MB/s2,600MB/s3,000MB/s2,900MB/s
ランダムリード(4KB/QD32/Thread1)220,000IOPS420,000IOPS515,000IOPS480,000IOPS
ランダムライト(4KB/QD32/Thread8)180,000IOPS380,000IOPS560,000IOPS550,000IOPS
総書き込み容量200TBW300TBW600TBW1,200TBW
平均故障時間(MTTF)175万時間
保証期間5年
上が従来モデル、下がWD Black SN750。製品ラベルのデザインが新しくなっている
WD Black SN750は、従来モデル同様に独自コントローラとTLC仕様の64層3D NANDを採用する
基板裏面にはチップ類は搭載されず、2TBモデルも含めて片面実装となる
ヒートシンク装着モデルも3月以降発売予定。ヒートシンクはEKWB製
製品ラベルを剥がした状態
従来モデルと同じ自社開発の独自コントローラを採用。型番も従来モデルのものと同じだった
NANDフラッシュメモリも、従来モデル同様に四日市工場で製造されている64層3D NAND(BiCS3)を採用している

常にピークの性能を発揮する「ゲームモード」に設定可能

 WD Black SN750では、従来モデルにはない「ゲームモード」と呼ばれるモードを設定できる点が大きな特徴となっている。

 このゲームモードに設定した場合には、SSDの省電力機能が無効化される。これによって、ディスクアクセス状況によらず、常にSSDのピーク性能が発揮されるようになるため、ゲームプレイ時のディスクアクセス性能が高められ、最高のゲームプレイ環境が得られるという。

 ゲームモードを利用するには、WDがSSD用ユーティリティとして配布している「WD SSD Dashboard」を利用する。WD SSD Dashboardを起動し、ステータスメニューからゲームモードをオンにしたあと、PCを再起動するとゲームモードが有効となる。

 ただし、省電力機能が無効化されることで、発熱への対策は通常よりもシビアになるだろう。ヒートシンク装着モデルが用意されるのは、ゲームモードを有効に活用するためのものと考えられるが、ヒートシンク非装着モデルについても、ゲームモード利用時にはマザーボード付属のSSD用ヒートシンクを利用したり、空冷ファンの風がしっかり当たるようにするなどの配慮が必要となるはずだ。

WDのSSD用ユーティリティ「WD SSD Dashboard」
WD SSD Dashboardでゲームモードをオンにすると、SSDの省電力機能が無効となり、常にピーク性能が発揮されるようになる

シーケンシャルライトで性能向上を確認

 では、アクセス速度をチェックしよう。今回は、「CrystalDiskMark 6.0.2」と、「ATTO Disk Benchmark V4.00.0f2」の2種類のベンチマークソフトを利用した。テスト環境は以下にまとめたとおりで、検証に利用したのはWD Black SN750の1TBモデル。ゲームモードは無効にして計測している。比較用として従来モデルとなるWD Blackの1TBモデルも用意し、同様のテストを行なった。

 なお、検証はマザーボードをケースに装着しない、いわゆるバラックの状態で行なっている。ただし、SSDをマザーボードのM.2スロットに装着するだけでなく、マザーボードに用意されているM.2 SSD用ヒートシンクを装着するとともに、ヒートシンクにファンの風も当てるなど、冷却も考慮して行なっている。

テスト環境
マザーボードASUS TUF Z390-PLUS GAMING
CPUCore i5-9600K
メモリーDDR4-2666 16GB
システム用ストレージSamsung SSD 840 PRO 256GB
OSWindows 10 Pro

 CrystalDiskMark 6.0.2の結果を見ると、シーケンシャルリードは3,400MB/s超を記録してるが、従来モデルと比べても大きな違いはない。それに対し、シーケンシャルライトは3,000MB/s超と、従来モデルからの明確な速度向上が確認できた。

 ただし、データサイズを32GiBに設定した場合には、シーケンシャルライトが2,600MB/sに届かなかった。これについては、nCache 3.0で確保されているキャッシュ領域が尽きたことによる速度低下が影響しているものと思われる。

 また、ランダムアクセス速度に関しては、今回のテストでは従来モデルからの大きな速度向上は確認できなかった。とはいえ、ハイエンドSSDとして申し分ない速度が発揮されており、全く不満はない。

CrystalDiskMark 6.0.2 データサイズ1GiBの結果
WD Black SN750 1TB
WD Black 1TB
CrystalDiskMark 6.0.2 データサイズ32GiBの結果
WD Black SN750 1TB
WD Black 1TB

 ATTO Disk Benchmarkの結果もほぼ同様で、リードはほぼ従来モデル同様の速度が発揮されているのに対し、ライトは明確な速度向上が見られた。

ATTO Disk Benchmark V4.00.0f2の結果
WD Black SN750 1TB
WD Black 1TB

 ところで、NANDフラッシュメモリの一部をSLCキャッシュとして活用する「nCache 3.0」の効果を確認するため、HD Tune Pro 5.70を利用して、150MBのデータを連続で書き込んだ場合に速度がどのように変化するかをチェックしてみた。

 すると、12GBほどで書き込み速度が1,500MB/sほどに大きく低下した。このことから、WD Black SN750 1TBモデルでは、容量12GBほどのSLCキャッシュが確保されるものと考えられる。競合製品に比べるとややSLCキャッシュ容量が少なく、用途によっては速度低下が頻繁に感じられる場合もありそうだ。

 ただ、一般的なPCでは、動画データなどを扱う場面などを除いて、大容量の書き込みが続く場面はそれほど多くなく、あまり気にしなくても良いだろう。

HD Tune Pro 5.70で150GBのデータの連続書き込みを行ったところ、約12GB手前から書き込み速度が1,500MB/sに低下した

【お詫びと訂正】初出時に、「HD Tune Pro 5.70で150GBのデータの連続書き込みを行ったところ、80GB手前から書き込み速度が160MB/Sec弱にまで低下した」としておりましたが、正しくは「HD Tune Pro 5.70で150GBのデータの連続書き込みを行ったところ、約12GB手前から書き込み速度が1,500MB/sに低下した」となります。お詫びして訂正させていただきます。

 続いて、ATTO Disk Benchmark実行中のSSDの温度変化を見てみよう。こちらは、マザーボード付属のSSD用ヒートシンクを外すとともに、空冷ファンの風も当たらないようにした状態で、PCのハードウェア情報を取得するツール「HWINFO64」を利用し、S.M.A.R.T.で得られるSSDの温度情報を記録することで取得している。計測時の室温は20℃ほどだった。

 結果を見ると、従来モデルとの温度変化の違いはほとんど見られなかった。また、室温が20℃前後とやや低かったこともあるが、もっとも温度が高くなった状態でも70℃前後と、ハイエンドSSDとしてはまずまずの低温となっており、従来モデル同様に扱いやすいSSDと言えるだろう。

ATTO Disk Benchmark V4.00.0f2実行時の温度変化

 最後に、ゲームモードを有効にした状態でのベンチマーク結果も紹介する。結果を見ると、ゲームモード無効時とほぼ違いの見られない結果となった。

 ただ、ベンチマークテスト実行中はSSDへのアクセスが集中し、省電力モードに移行するタイミングはないと考えられるため、結果に違いがなくても当然だろう。

ゲームモード有効時のCrystalDiskMark 6.0.2 データサイズ1GiBの結果
ゲームモード有効時のATTO Disk Benchmark V4.00.0f2の結果

ゲーマーが選択するハイエンドSSDとして魅力が向上

 WD Black SN750は、ハードウェアの仕様は従来モデルから大きな違いはないものの、性能向上を実現するとともに、容量も新たに2TBモデルを追加したり、ヒートシンク装着モデルを用意することで選択肢が充実している。

 ハイエンドPCIe/NVMe SSDは、SATA SSDと同様に、インターフェイスの速度上限にほぼ達しつつあり、メーカー間の差が小さくなってきている。そういった中、WD Black SN750では、独自のゲームモードを用意することで、ゲーマーが選択するSSDとしての魅力が向上したと言っていいだろう。

 もちろん、ゲーマー以外の高性能SSDを利用したいと考えている人にもおすすめだが、とくにハイエンドゲーマーにお勧めしたい製品だ。