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Apple WatchとPixel Watchを使い比べて分かった、Apple Watchの優位さ

2024年に発売されたスマートウォッチの新機種、「Apple Watch Series 10」(右)と「Pixel Watch 3」(左)

 今では多くの人が利用するスマートウォッチだが、中でもAppleの「Apple Watch」シリーズとGoogleの「Pixel Watch」シリーズは、搭載するOSや利用できるプラットフォームが違っているとはいえ、機能やサービス面では近しい部分も多いことから競合関係にあることは間違いない。

 そして2024年にも、それぞれスタンダードモデルの新機種「Apple Watch Series 10」と「Pixel Watch 3」が発売されている。そこでここでは、実機から両機種の進化ポイントや特徴などを改めて確認しながら比較してみたい。とりわけPixel Watchは後発ということもあり、Pixel Watch 3でどこまでApple Watchに追いついたのか?というにも重点を置いて確認してみよう。

どちらも2モデル展開に、Apple Watch Series 10はより薄く

 まずはハード面から両機種を確認してみよう。 中でもPixel Watchシリーズが3になって大きく変化し、なおかつApple Watchシリーズに追いついた点が、サイズの異なる2つのモデルが用意されたことだろう。

 実際、Pixel Watch 3は従来サイズの41mmモデルに加え、新たに大画面の45mmモデルが追加、画面サイズや手首回りに応じてモデルを選べるようになった。それに加えてバンドだけでなくカラーも複数から選べるようになっており、ファッション性が増したこともメリットだ。機能面だけでなく腕時計としての側面でも、GoogleがApple Watchを積極的にキャッチアップしてきていることが分かる。

Pixel Watchは3で2モデル展開を実現。従来サイズの41mmモデル(左)に加え、新たに大画面の45mmモデル(右)が追加された

  ただApple Watch Series 10を見ると、やはりPixel Watchシリーズより先行していると感じさせる部分が多い。 その一つがボディ素材で、従来アルミニウムとステンレススチールの2種類を採用していたのが、iPhoneに合わせてかステンレスモデルのほうがチタニウムへと変更、高級感を維持しながら軽量化を実現している。

 前機種「Apple Watch Series 9」のステンレススチールモデルと比較した場合、こちらは45mmモデルで重量が51.5gであったのに対し、Apple Watch Series 10のチタニウムモデルは、46mmのモデルで重量が41.7gと、およそ10gも減少している。

 もちろんより軽さを重視するのであれば、アルミニウムモデル(46mmモデルで36.4g)を選ぶことも可能で、こちらはPixel Watch 3(45mmモデルで37g)と大きな違いはない。

 スマートウォッチは常時腕に装着しているだけに、重さの違いは疲労感にも大きく影響してくる。新たな素材で高級感を維持しながら軽量化を進めたApple Watch Series 10の優位性が光るところだ。

Apple Watch Series 10も従来通り、42mmモデル(左)と46mmモデル(右)の2モデル展開。左の46mmモデルは高級感と軽さを両立したチタニウムモデルとなっている

  そしてもう一つ、Apple Watchが優位と言えるが、画面サイズを大きくしながら薄型化している点だ。 同じくApple Watch Series 9の45mmモデルとの比較で言うと、こちらはサイズが38×45×10.7mm(幅×奥行き×高さ)であったのに対し、Apple Watch Series 10は39×46×9.7mm(同)となっており、大画面化の影響で縦横のサイズは1mmほど大きくなったが、厚さは逆に1mm減っていることが分かる。

Pixel Watch 3の45mmモデル(左)とApple Watch Series 10の46mmモデル(右)を比べてみたところ。画面の形状に違いがあるため一概に比較するのは難しいが、Apple Watch Series 10は一層の大画面化が進んでいる

 これをPixel Watch 3と比較した場合はどうか。やはり45mmモデルで比べると、Pixel Watch 3は直径41mmとなっていることから、円形ということもあってサイズ的に言えばApple Watch Series 10より画面サイズは小さくなる。一方で厚さは12.3mmなので、こちらもApple Watch Series 10に分がある。

ベルトを外して側面を確認したところ。右側のApple Watch Series 10のほうが薄くなっていることが分かる

  加えてバンドの選択の幅もやはりApple Watch Series 10のほうが充実しており、依然大きな優位性を保っている。 Pixel Watch 3でキャッチアップが進んだとはいえ、腕時計としての洗練度はやはりApple Watch Series 10に分があるだろう。

バッテリはPixel Watch 3で大幅に改善

 では機能・性能面はどうか?とりわけ多くの人が気にするのはバッテリの持続時間ではないかと思われるが、Apple Watch Series 10は「通常使用時で最大18時時間」「低電力モードで最大36時間」と謳う一方、Pixel Watch 3は「常に表示状態のディスプレイで最長24時間使用可能」「バッテリー セーバーモードで最長36時間使用可能」とされており、 公称値ではPixel Watch 3のほうがやや長持ちするように見える。

 ただPixel Watchシリーズは、Pixel Watch 3で大幅に改善がなされたとはいえ、バッテリの持続時間には非常に不満が多かった要素でもある。それだけに、本当にApple Watchシリーズを上回るバッテリの持ちを実現できるのか?という点は大いに気になる所だ。

 そこで実際に、Apple Watch Series 10の46mmモデルとPixel Watch 3の45mmモデルを対象として、実際にバッテリを100%充電した状態から0%になるまでのおおよその時間を測定してみた。いずれもディスプレイ表示や省電力機能などは初期状態で使用している。

 その結果は以下の通りで、Pixel Watch 3のほうがバッテリの持続時間が長いという結果になった。とはいえこれには理由もあり、Pixel Watch 3は初期状態で、睡眠時に画面を消したり、通知を消音したりする「自動おやすみ時間モード」が設定されているほか、バッテリが15%を切ると自動的に「バッテリセーバーモード」へ移行する設定となっている。

Apple Watch Series 10とPixel Watch 3のバッテリ駆動時間の比較

 一方でApple Watch Series 10も、就寝スケジュールを設定しておけば自動的に「睡眠」集中モードがオンとなり常時ディスプレイ表示がオフになるほか、バッテリが10%を切った場合に通知が現れ省電力モードへの切り替えが促される。ただ自動的に省電力機能に切り替わるわけではないので、そうした違いが持続時間にもやや影響したと言えるだろう。

Pixel Watch 3は標準で、バッテリが15%を切ると省電力機能「バッテリセーバー」が自動でオンになるよう設定されている

 それゆえ設定の変更、そして日々の行動によってバッテリ消費は変わってくる部分もあり、双方のバッテリ持続時間に決定的な違いはないと考えられる。ただそのことを加味しても、 従来のPixel WatchユーザーからするとPixel Watch 3のバッテリ持続時間の大幅な改善にはやはり驚かされるだろう。

 Pixel Watch 3は前機種の「Pixel Watch 2」と比べ、ハード性能的に大きな違いがあるわけではないだけに、電力の制御の大幅な改良がバッテリ持続時間の向上に大きく影響したと言えそうだ。

 一方で、 Apple Watch Series 10にも優位性のある進化ポイントがあり、それは充電速度である。 Apple Watch Series 10は従来同様無接点充電となるが、新しい充電コイルの搭載によって充電効率が向上しているそうで、約30分で80%の充電ができるとされている。

 こちらも46mmモデルを使って、実際に0%から100%まで充電される時間を確認してみたのだが、その結果が下になる。Apple Watch Series 10は確かにおよそ30分で80%充電がなされ、1時間で100%に達するという結果にいたった。一方で、充電器に接点があるPixel Watch 3の45mmモデルで確認したところ、およそ1時間20分で100%という結果で、80%までの充電時間も約50分となっている。

Apple Watch Series 10とPixel Watch 3の充電時間の比較

Apple Watch Series 10は本体のみで音楽再生も

 ではバッテリ以外の機能・性能はどうか?新機能の中でApple Watch Series 10が優位性を持つポイントの一つとなるのは、本体のスピーカーで音楽などを再生できるようなったことだろう。

 従来のApple Watchシリーズでは、iPhoneなどほかのデバイスでの音楽再生をコントロールすることはできたが、Apple Watchで直接音楽を再生することはできなかった。 だがApple Watch Series 10は、本体のスピーカーを使って直接音楽を再生できるようになったのである。

 とはいえ外出先での活用は難しいだけに、活用シーンはどの程度あるのか?という点に疑問を抱く人もいるかと思う。ただ実際に使ってみると、スピーカーを用意する必要がない上に耳元をふさがず、それでいて音質は悪くないことから、自宅で仕事や勉強、あるいは家事などをしながら音楽を聴くのに意外と役立つと感じた。

 そしていくつかの音楽アプリを試してみたのだが、「Apple Music」はもちろんのこと、「radiko for Watch」なども本体で直接再生することが可能だった。一方で「Spotify」「YouTube Music」などは、少なくとも筆者が確認した限りでは本体から直接再生する方法が見つからなかった。直接再生にはアプリ側でも何らかの対応が必要となる場合もあるようなので注意したい。

本体のスピーカーで音楽を再生することも可能。「Apple Music」であれば「AirPlay」の設定で「Apple Watch」を選ぶことで本体から直接再生できるようになる

 そしてもう一つは健康管理に関する機能である。 Apple Watch Series 10は、新しい「watchOS 11」で追加された「バイタル」機能など、健康管理をよりやりやすくする機能がいくつか追加されているが、中でも新機能として注目を集めたのが睡眠時無呼吸の兆候を知らせてくれる機能だ。

 これは加速度センサーを用いて手首の動きから呼吸の乱れを検出するというもので、データから睡眠時無呼吸の兆候が見られた場合に通知してくれるという。睡眠時無呼吸の可能性がある、という人は大いに気になる機能となるだろうが、実はこちらの機能はApple Watch Series 9でも利用できる。すでにApple Watch Series 9を持っているなら、この機能のためだけに買い替える必要はないので注意したい。

Apple Watch Series 10は呼吸の乱れの検出に対応。iPhoneの「ヘルスケア」アプリからその状況を確認でき、乱れが続き睡眠時無呼吸の兆候が見られると通知が届くようだ

 一方で、 Pixel Watch 3の新機能としてはフィットネス関連、さらに言えばランニングに関する機能が強化ポイントとなっている。 それ以外の機能としては、主としてスマートフォンの「Pixel」シリーズの ボイスレコーダ機能との連携や、「Home」アプリでGoogle製スマートホーム機器の制御ができるなど、自社製デバイスとの連携強化が主となっている。

 ただこうした連携は、Apple Watchシリーズでは以前より実装してきたものでもある。キャッチアップを進めてきたとはいえ、やはりApple Watchの優位性を揺るがすにはいたっていないというのが正直な所だ。

Apple Watchが依然優位だが、どちらも旧機種からの差異が少ない

 こうして見ると、ハード面を中心としてPixel Watch 3が急速にApple Watchシリーズのキャッチアップを進め、完成度を高めてきている様子を見て取ることができる。ただそのぶんApple Watch Series 10も着実に進化を遂げており、依然その差はまだ大きいというのが正直なところだ。

 日本で正式に認可を得て提供している心電図測定機能や、圧倒的な強みを持つ「Apple Pay」、そしてApple Watch Series 9から追加されているダブルタップでのジェスチャー操作など、従来備わっている機能も考慮すると、一層その差は大きいと感じる。

  一方で、両機種ともに気になったのが、実は前機種と比べた場合、機能面での大きな進化に乏しいことである。 確かにいずれもハード面では一定の進化を遂げたと感じるものの、睡眠時無呼吸関連の機能がApple Watch Series 9でも利用できてしまうなど、OSをアップデートしてしまえば機能面での差は従来モデルと比べあまり多いとは言えないのである。

 それだけに、とりわけ1世代前の機種を持っている人が積極的に買い替えるべきモデルか?と言われると、そうとは言いにくいのも正直なところである。2025年も両シリーズの新機種登場が予想されるが、その際にはより革新的な進化を遂げたモデルの投入も期待したい。