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“1日持たない”が大幅改善。バッテリ強化の「Pixel Watch 3」を初代&2代目と使い比べてみた
2024年9月10日 06:20
Googleが8月14日に発表した、スマートウォッチ「Pixel Watch」シリーズの新モデル「Pixel Watch 3」。新たにサイズの異なる2モデルが用意されるなどいくつかの変化が見られるが、とりわけすでにPixel Watchシリーズを使用しているユーザーからすると、「買い替えるべきなのか?」という点が非常に気になるところではないだろうか。
では実際のところ、Pixel Watch 3は従来の「Pixel Watch」「Pixel Watch 2」と比べどこが変わったのだろうか。買い替えるべきかどうかを含め、3機種を使って検証してみたい。
なお、今回使用したPixel Watch 3はいずれも発売前のものということもあり、アプリやサービスなども発売前のバージョンでの評価となっている点をあらかじめご了承いただきたい。
(1) より大画面で見やすい45mmモデルが追加
(2) Pixel Watchの常識を覆すバッテリの持ち
(3) 既存のGoogle製デバイスとの連携が一層強化
(4) 性能は「Pixel Watch 2」と大きく変わっていない
より大画面で見やすい45mmモデルが追加
まずは改めてPixel Watch 3の特徴を確認しておくと、従来機種と最も大きく変わった点は冒頭で触れた通り、サイズの異なる2モデルが用意されたことだろう。従来のPixel Watchシリーズは直径が41mmの1モデルのみだったが、Pixel Watch 3は41mmモデルに加え、新たにより大画面の45mmモデルが用意されている。
Googleによると、Pixel Watch 3の45mmモデルはPixel Watch 2と比べ40%以上大きくなったとされており、実際に手に装着すると大きいと感じる。ただ重量は37gと、41mmモデルやPixel Watch 2の31gと比べ数グラムの違いしかなく、初代Pixel Watch(36g)とは1グラムしか違わない。それでいて厚さ(高さ)は12.3mmと変わっていないことから、装着感は悪くない。
一方で大画面のメリットが生きるのは、やはり表示が見やすく、操作がしやすくなることだろう。とりわけ「Gmail」など多くの情報量を扱うアプリや、細かな地図を表示する「Googleマップ」などはかなり使いやすくなったと感じるので、スマートウォッチ上でのアプリ利用が多い人には便利だ。
ちなみにPixel Watch 3は、41mmモデルもサイズ的に大きな違いはないがベゼルが狭くなっており、GoogleによるとPixel Watch 2と比べ10%以上大きくなったとのこと。屋外での視認性を高める上で重要なピーク輝度も1,000cd平方/m(nit)から2,000cd平方/mに向上していることも考えると、ディスプレイは全体的に見やすくなったと言えるだろう。
Pixel Watchの常識を覆すバッテリの持ち
もう1つ、実際に使ってみて大きく変わったと感じるのがバッテリだ。Pixel Watchシリーズはバッテリの持ちの悪さが大きな課題とされており、使い方にもよるが「1日持たない」という声が少なからずあった。
ではPixel Watch 3はどうか。 実際に数日間装着して使ってみて驚いたのは、ディスプレイを常時表示の状態にしながらも、バッテリが1日は余裕で持つということ。 公称ではディスプレイを常時表示して最長24時間使えるとされているが、体感では2日持つかどうかというくらいで、従来と比べるとかなり長持ちする印象だ。
バッテリの持ちが良くなった要因の1つとして考えられるのが省電力機能の強化で、中でも効果が大きいのは「自動おやすみ時間モード」ではないだろうか。睡眠時を邪魔しないよう、ディスプレイを消したり、通知などを消音にしてくれたりする「おやすみ時間モード」は従来のPixel Watchシリーズにも搭載されていたのだが、切り替えは手動でする必要があった。
だがPixel Watch 3には、マシンラーニングの活用で睡眠を検知すると自動的におやすみ時間モードに移行し、起床すると解除してくれる、自動おやすみ時間モードが搭載。これによって睡眠時には自動的に画面が消灯することから、睡眠時のバッテリ消費を大幅に抑えられる。
そしてもう一つ、バッテリが15%を切ると、自動でバッテリセーバーモードに移行する仕組みが新たに用意されており、こちらもバッテリの持続時間を伸ばす大きな要因となっている。ちなみに、バッテリセーバーモードに移行しても健康やフィットネスの記録や安全機能などは利用できることから、切り替わっても不自由を感じることは少ないだろう。
ただ、そうした省電力機能を除いても、ベースのバッテリ性能自体大幅にアップしている印象を受ける。実際、設定で画面常時表示をオンにし、自動お休み時間モードやバッテリセーバーモードへの自動移行などをオフにするなど、全モデルともに共通の設定にした上で、バッテリが100%から0%になるまでの持続時間を測定してみた。
すべての機種を異なるタイミングで装着して測定していることから、その日の行動によってバッテリの減り具合に違いがある点はご了承いただきたいのだが(今回の測定ではPixel Watch 2よりPixel Watchのほうが、バッテリが持つ結果となっている)、下のグラフを見ていただければ分かる通り、Pixel Watch 3シリーズはいずれも過去機種より明らかにバッテリが持続。1日半をも超える結果となったのには驚きがある。
45mmモデルはバッテリ容量自体が420mAhと大幅にアップしているだけに、バッテリが長持ちするのは理解できるのだが、41mmモデルの容量は307mAhと、Pixel Watch 2(306mAh)と大きく変わっていない上、詳しくは後述するがPixel Watch 2と性能も大きく変わってはいない。それでいてこれだけのバッテリの持ちを実現しているのだから、パフォーマンス改善のためのチューニングにかなり力を入れていると推測される。
既存のGoogle製デバイスとの連携が一層強化
ハード面で大きな改善がなされたPixel Watch 3だが、それ以外の機能強化は主にフィットネス関連が多くを占めている。とりわけ強化がなされているのがランニング関連の機能で、ランニング中のガイダンスやパフォーマンス分析などが可能となっていることから、日頃ランニングをしている人の利便性は向上したようだ。
ただフィットネスに重きを置いていない人に向けてもいくつかの機能強化がなされており、具体的に言えばほかのGoogle製品との連携施策が増えている。
ボイスレコーダー搭載
スマホの「Pixel」シリーズとの連携に関して言えば、カメラでの撮影をPixel Watch 3からコントロールできるのに加え、新たに「ボイスレコーダー」アプリを搭載している。
これを使えばPixel Watch 3で直接音声を録音できるだけでなく、Googleアカウントで同期してPixelシリーズのボイスレコーダーアプリと連携することも可能。後から内容を文字起こしすることもできる。
ちなみに文字起こしはPixel Watch 3上からはできず、連携するPixelスマホのボイスレコーダーアプリ上からする形となる。ただ発売前の環境では文字起こしがうまくいかないケースが多かったことから、発売後の改善に期待したいところだ。
Homeアプリ経由での連携
また、「Home」アプリを経由することで、「Google TV」や、「Google Nest Cam」「Google Nest Doorbell」などとの連携も可能。Google TVの場合Pixel Watch 3から再生や音量調節などが可能なほか、デバイスのオン・オフもできる。
ただ、リモコンのすべての機能が利用できるわけではなく、カーソルキーや決定キーなどの利用はできないことから、あくまでリモコンが離れたところにある時のサブ用途ととらえておくべきだろう。
性能は「Pixel Watch 2」と大きく変わっていない
一方でPixel Watch 3は大きな変更が加わっていない部分も多く、ラウンド上でリューズを備えたデザインはそのままであるし、41mmモデルは従来機種とサイズも大きく変わっていない。そのぶんバンドの仕様は共通しているので、41mmモデルであれば従来機種で使っているバンドを流用できる。
また、背面のセンサーや端子の配置もPixel Watch 2と共通していることから、Pixel Watch2の充電ケーブルも流用可能だ。Pixel WatchとPixel Watch 2とでは充電ケーブルが流用できなかったことで落胆を招いただけに、この点は安心感がある。
性能面でも、搭載するSoCはQualcomm製の「SW5100」で、「Cortex M33」のコプロセッサを備える点もPixel Watch 2と変わっていない。RAMは2GB、ストレージは32GBとこちらもPixel Watch 2と変化はない。
新たに超広帯域無線(UWB)を備えた以外、センサーや無線通信関連以外でも大きな違いはないし、日本で心電図アプリが使えない点も従来機種と同様だ。FeliCaを搭載し決済機能にも対応するが、こちらも従来と大きな違いはないようだ。
それに加えて同じウェアラブルデバイスながら、Tensor A1を搭載し、Geminiとの連携を強化した「Pixel Buds Pro 2」と比べると、AI関連機能の強化もあまり進められていない。利用できる音声アシスタントも、Pixel 9シリーズやPixel Buds Pro 2が対応する「Gemini」ではなく、従来の「Googleアシスタント」のままである。
そうした内容を考慮すると、Pixel Watch 3はPixel Watch 2のバリエーションを増やし、バッテリの改善やフィットネス関連の機能強化を進めたマイナーチェンジ版という印象が強い。
ゆえにPixel Watch 2のユーザーであれば、「画面の大きなモデルが欲しい」「どうしてもバッテリの持ちが不満」というのでなければ、無理に買い替える必要はないだろう。
一方で初代Pixel Watchの場合、元々Pixel Watch 2以上にバッテリの持ちが悪い上、ユーザーが購入した時期を考慮するなと経年劣化でバッテリの持続時間が一層落ちていると考えられる。加えてSoCの性能も違っていることからパフォーマンスも全体的に低く、Pixel Watch 3と比較すると動作が重く感じることが多い。
そうしたことを考えると、初代Pixel WatchユーザーはPixel Watch 3に買い替えても良いタイミングと言えそうだ。 あいにく充電ケーブルは共用できないものの、41mmモデルを選べば普段使用しているバンドが共用できる点は、乗り換える上でもメリットに働くのではないだろうか。
なお、買い替えに際して、41mmと45mmのどちらのモデルを選ぶかに関してだが、スマートウォッチをスマホのコンパニオンデバイスとして利用するのであれば、広い画面で表示できる情報量が多い大画面の45mmモデルをおすすめしたい。
ただ、画面サイズが大きい分サイズも大きくなるので、コンパクトさが重要だという人や、フィットネスに重きを置いている人などはコンパクトな41mmモデルのほうが使い勝手がよいのではないだろうか。
昨今の円安が影響して、価格は従来のPixel Watchシリーズと比べ高騰しており、41mmモデルで5万2,800円から、45mmモデルで5万9,800円からとなっている。Pixel Watchシリーズの場合、日本では下取りなども展開されていないのが残念なところだが、分割払いや各種キャンペーンを活用して上手に購入したい。