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Pixel Watch 4はバッテリがさらに持つぞ!前世代からの買い替え価値は?競合のGalaxy Watch8との差は?まとめて比較

Pixel Watch 4(中央の2機種)、Pixel Watch 3(右2機種)、Galaxy Watch8(左2機種)を並べてみたところ

 米Googleの新しいスマートウォッチ、「Pixel Watch 4」が10月9日に発売された。Googleが力を入れるAI「Gemini」に対応するなどさまざまな新機能が追加されたPixel Watch 4だが、気になるのはやはり、以前の機種や競合のモデルと比べてどうなのか?ということだろう。

 実際、Pixel Watchシリーズは、前機種「Pixel Watch 3」で41mmと45mmの2モデル構成となり、バッテリの持続時間が大幅に延びるなど、大幅な改善が図られている。それに加えて最近では、Samsungの「Galaxy Watch」シリーズも、Pixel Watchシリーズと同じ「Wear OS by Google」(Samsungでは「Wear OS Powered by Samsung」と呼称)を搭載しており、Androidスマホユーザーがスマートウォッチを選ぶ際には、こちらも選択候補に入るだろう。

 そこで、ここではPixel Watch 4と、前機種となるPixel Watch 3、そしてGalaxy Watchシリーズの最新モデルとなる「Galaxy Watch8」を比較し、その違いや優位性などについて確認したい。

ベゼルが狭いドーム状のディスプレイで表示は大きく

 まずは本体のサイズとデザインについて確認すると、Pixel Watch 4も基本的にはPixel Watch 3を踏襲している。それゆえ41mmと45mmの2モデルが用意されているほか、デザインも従来のPixel Watchシリーズと同様、円形で側面にも丸みのあるデザインとなっており、バンドも共通して利用可能だ。

Pixel Watch 4は今回も41mmモデル(左)と45mmモデル(右)の2モデル構成。好みのサイズを選ぶことが可能だ

Pixel Watch 3と比較

 厚さは両モデルともに12.3mmで、重量は41mmモデルが約31g、45mmモデルが約36.7gと、Pixel Watch 3(41mmモデルが約31g、45mmモデルが約37g。厚さはともに12.3mm)と比べても大きな違いはなく、リューズやボタンのサイズや配置も変わっていない。ただ大きく変わっているのがディスプレイで、ベゼルがより細くなり表示エリアが10%拡大している。

45mmモデルのPixel Watch 4(左)とPixel Watch 3(右)を側面から見たところ。見た目にはPixel Watch 3のほうがやや厚そうに見えるのだが、実際の差はそこまでではない

 それに加えて中央に向かって画面がやや盛り上がっているドーム型のディスプレイを採用していることから、Pixel Watch 3と比較すると、表示がより大きくなった印象を一層強く受ける。画面の明るさも3,000cd/平方mと、Pixel Watch 3の2,000cd/平方mから向上しており、屋外でより見やすくなっている。

同じく45mmモデルのPixel Watch 4(左)とPixel Watch 3(右)の表示比較。ベゼルをより細くしたことに加え、ディスプレイがドーム型に盛り上がっていることで、画面表示がより大きく見えるようになった

Galaxy Watch8と比較

 Galaxy Watch8と比べた場合、こちらも40mmと44mmの2モデルが用意され、重量は40mmモデルが約30.1g、44mmモデルが約33.8gと、Pixel Watch 4と比べ若干軽いとはいえ、やはり大きな違いがあるわけではない。

 一方で大きく異なるのが厚さとディスプレイである。Galaxy Watch8は両モデルともに厚さが8.6mmで、ディスプレイもフラットなことからPixel Watch 4より薄くスリムと感じる。ただGalaxy Watch8はディスプレイの側面にフレームのあるデザインを採用しており、見た目にはやや大きく見えてしまう。

Pixel Watch 4の45mmモデル(左)とGalaxy Watch8の44mmモデル(右)との比較。画面サイズに大きな違いはないが、Galaxy Watch8は側面のフレームが目立つデザインとなっている
Pixel Watch 4の45mmモデル(左)とGalaxy Watch8の44mmモデル(右)を側面から見たところ。薄さはGalaxy Watch8に軍配が上がる

 なおGalaxy Watch8にはリューズがないが、兄弟モデルの「Galaxy Watch8 Classic」にはベゼルを回転させて操作できる仕組みが備わっている。より機械的な操作を求めるならこちらを選ぶのがいいだろう。

OSアップデートでSoCの違いが操作にもやや影響

 では性能面はどうか。

 まずはSoCを確認すると、Pixel Watch 3がQualcomm製の「Snapdragon W5 Gen 1」、Pixel Watch 4が同じQualcomm製の「Snapdragon W5 Gen 2」で、より新しいものを採用。Galaxy Watch8はSamsung製の「Exynos W1000」を搭載している。

 一方で、メモリとストレージはそれぞれ2GB、32GBと共通しており、容量面で大きな違いはないようだ。

 スマートウォッチの特性上、ヘビーなアプリを動作させる需要もあまりないだけに、SoCの違いで重要になってくるのは、通常の操作を快適にこなせるかどうかだろう。実際にそれぞれの機種を操作してみると、Pixel Watch 4やGalaxy Watch8はスムーズに操作できるが、Pixel Watch 3ではスクロール時に“引っかかり”が生じるなど、やや操作にもたつく場面が出てきたように感じる。

 これにはOSのアップデートが大きく影響しているだろう。GoogleはPixel Watch 2とPixel Watch 3に向けて、2025年10月8日より最新の「Wear OS 6」のアップデートを提供しており、これを適用すれば後述する新しいユーザーインターフェイスなど、Pixel Watch 4で利用できる機能の多くが使えるようになった。

 ただ新しいOSでは負荷も大きくなっていると考えられ、古い世代のSoCを搭載しているPixel Watch 3は以前と比べ、操作がやや重いと感じるシーンが増えたと感じる。今後さらにOSのアップデートが進むことを考慮するならば、パフォーマンス面では新しいPixel Watch 4のほうが優位であることに間違いない。

Pixel Watch 4(左)とPixel Watch 3(右)の画面を比較。Pixel Watch 3も新しいOS「Wear OS 6」が利用できるようになったが、SoCが古い分、アップデートで操作にやや遅さを感じるようになった

バッテリが強化、初期状態では3日近く持つ場合も

 では、スマートウォッチで最も重要な要素とされるバッテリはどうか。

 Pixel Watch 4のバッテリ容量は41mmモデルが325mAh、45mmモデルが455mAhとなっており、Pixel Watch 3(41mmモデルが307mAh、45mmモデルが420mAh)より増量されている。Galaxy Watch8は、40mmモデルが325mAh、44mmモデルが435mAhと、薄さの影響もあってか大画面モデルの容量がやや少ない。

バッテリ駆動時間

 それらの違いが実際の利用にどう影響してくるのか。本体が初期設定の状態でそれぞれの機種を装着し、バッテリ100%状態から、電源が切れるまで装着してどの程度長く利用できるのかを比較してみた。

 なお、Galaxy Watch8はバッテリが0%になると、スマートフォンとの接続を切ってスマートウォッチとしての機能が失われ、時計としてのみ利用できる「時計専用モード」に移行することから、そのタイミングを電源が切れた状態と判断している。また筆者1人で装着比較している都合上、各機種を装着している日には違いがあり、装着している日の行動によってバッテリ消費にも違いがある。それゆえ数値は厳密なものではなく、大まかな傾向を捉えるためのものと解釈願えればと思う。

Galaxy Watch8には時計以外の機能をすべてオフにし、長期間の利用を可能にする「時計専用モード」が備わっている。

 測定の結果が以下のグラフになるのだが、やはりバッテリ容量が大きく、新しいSoCを積んでいるPixel Watch 4のほうが、Pixel Watch 3より長時間利用できることは明白だ。45mmモデルは3日近く、41mmモデルは2日近く利用できるようで、一層の改善がなされているようだ。

 一方で、バッテリ容量が大きく変わらないはずのGalaxy Watch8が、Pixel Watch 3より持たないのはなぜか?と気になる人もいるかと思うが、その理由は省電力機能の初期設定にある。

 Pixel Watch3/4は初期状態で、バッテリが15%になると「バッテリセーバー」モードに自動的に移行し、なおかつ睡眠を検出するとディスプレイを自動的に消す「おやすみ時間モード」がオンになるなど、省電力機能を積極活用する設定がなされている。

3機種6モデルのバッテリ持続時間比較(初期設定状態)

 だがGalaxy Watch8は、初期状態でそこまで省電力機能を積極的にオンにする設定とはなっておらず、省電力設定の差が持続時間に大きく影響しているわけだ。Galaxy Watch8の場合、同種の機能「省電力モード」「睡眠モード」は手動でオン/オフする形が取られており、それらを活用すれば持続時間が大きく変わるわけではないことは付け加えておく。

Galaxy Watch8にも「睡眠モード」などの機能はあるが、いずれも手動でオン/オフする形が取られている

充電時間

 もうひとつ、バッテリに関連して気になる要素が充電だ。Pixel Watch 4は充電の仕組みが“また”変更されており、背面に充電端子のあったPixel Watch 3とは異なり、充電端子が側面に移っている。

Pixel Watch 4の充電端子は背面から、左腕に装着した状態で左側面に移動している

 それに伴い充電器の形状も、スマートウォッチを横に立てて置くものへと変化している。これにより、バンドを締めた状態でも充電ができ充電器の設置場所の省スペース化が可能になったほか、充電中にも据え置きの時計として活用できるようになったのはメリットだ。

Pixel Watch 4を充電器に置いたところ。側面から立てて設置できることから、バンドを締めた状態で充電ができ、省スペース化が図られるなどのメリットが生まれている

 それに加えて充電速度も大幅に向上している。こちらも全機種を対象に、バッテリが切れた状態から100%に充電されるまでの時間を確認してみたのだが、Pixel Watch 4はともに40分前後で充電できたのに対し、Pixel Watch 3やGalaxy Watch8はより長い時間がかかっている。

3機種6モデルの充電時間比較

 ただ充電の仕組み自体が変わったことで、Pixel Watch 4は従来機種の充電器が使い回せなくなった。しかもPixel Watchシリーズの充電器が共通して利用できたのは、現在のところPixel Watch 2とPixel Watch 3だけであり、新機種に買い替える度に充電器も変えなければならないのはユーザーの立場からすると不満が募る。明確に改善を求めたいところだ。

充電器の比較。Pixel Watch 4用(左)とPixel Watch 2/3用(右)とではまったく異なる形状であることが分かる

目玉機能のGeminiや心電図は過去機種でも利用可能

 続いて機能面を確認すると、Pixel Watch 4で大きく変化したのはユーザーインターフェイスだろう。Googleの新しいユーザーインターフェイス「Material 3 Expressive」を採用したことで、ユーザーの操作によってアイコンが動的に変化し、より見やすく分かりやすくなった感がある。

Pixel Watch 3
Pixel Watch 3のアプリ一覧画面。スクロールするとアイコンサイズがやや変化するものの、動きには乏しい
Pixel Watch 4
「Material 3 Expressive」を採用したPixel Watch 4のアプリ一覧画面。操作によってアイコンサイズがよりダイナミックに変化し、狭い画面でもより分かりやすくなった

 また、標準のAIアシスタントが「Googleアシスタント」から、生成AIによる「Gemini」に変更されたことも大きな変化だ。スマートフォンの「Pixel」シリーズだけでなく、ワイヤレスイヤフォンの「Pixel Buds」シリーズも、2024年発売の「Pixel Buds Pro 2」でGeminiへの対応が進められ、Pixel WatchシリーズだけがAIの進化から取り残されていただけに、ようやくといった感もある。

音声アシスタントはようやく「Googleアシスタント」から「Gemini」に変更。音声で話しかけ、より多様な操作が可能となっている

 使い方はGoogleアシスタントと同様、「OK、Google」と話しかけるか、サイドボタンを長押しし、そのままGeminiに聞きたいことを話して伝えればよいが、Pixel Watch 4では装着している手を口元まで持ち上げることで、Geminiを起動できる「手をあげて話す」が利用可能だ。Geminiに変わったことでGoogleアシスタントではできなかった多様な操作や指示が可能となり、より利用シーンが広がったことは間違いない。

 そしてもう1つ大きな変化となるのは、日本で心電図アプリが利用できるようになったことだ。心電図を計測する機能自体はPixel Watch 2から用意されていたのだが、これまでは国内での認可を取っておらず、利用できなかった。

 だがPixel Watch 4からは正式に認可を得て、発売当初から日本でも心電図測定機能を利用できるようになった。測定はPixel Watch 4を装着した手とは反対の手の指で、リューズに触れて30秒ほど待てばよく、先行して対応が進んでいるAppleの「Apple Watch」シリーズなどと使い方に大きな差はない。

日本で心電図アプリの利用が可能に。Pixel Watch 4を装着した腕とは反対の手の指でリューズに触れ、30秒待てばよい

 ただGeminiや心電図測定などの機能は、実はPixel Watch 3でもOSアップデートにより、すでに利用可能となっている。Pixel Watch 4だけで利用できる機能は、腕を口元に持ち上げるとGeminiが立ち上がる「手をあげて話す」など、意外と限定的だ。

 またGalaxy Watch8と比べた場合、最新モデルだけあってGeminiが利用できる点は共通しているが、ユーザーインターフェイスはスマートフォンの「Galaxy」シリーズと同じ「One UI」を採用しているという明確な違いがある。そして心電図アプリは日本で認可を得ていないことから利用できず、この点はPixel Watch 4のほうが強みを持つだろう。

Galaxy Watch8はSamsung独自の「One UI」を採用しており、ユーザーインターフェイスにもかなり違いがある

 ただGalaxy Watch8は、ボタンに指をあてて体組成を測定したり、センサーを親指で押すことで果物や野菜の摂取割合を確認できる「抗酸化指数」を測定できたりする機能が備わっている。健康管理という側面で言えば、Galaxy Watch8のほうが充実している感もある。

Galaxy Watch8は健康に関する測定機能が充実しており、新機能として背面のセンサーを押すことで「抗酸化指数」を測定できる機能が追加された

実はかなり違いがあるPixel WatchとGalaxy Watch

 ほかにもGPSの精度向上やフィットネス機能の強化など、いくつかの進化ポイントが備わっているが、スマートウォッチとしての大きな進化点は、やはりバッテリ性能の向上だろう。省電力機能をフル活用しているとはいえ、45mmモデルで3日近く利用できるというのは、「バッテリが持たない」との声が非常に多かった初代Pixel Watchから比べれば隔世の感がある。

 ただPixel Watch 3もOSアップデートでかなり多くの機能をキャッチアップしている。バッテリ、そしてアップデート後の操作に大きな不満がないのであれば、積極的に買い替える理由に乏しいのも正直なところだ。一方で、Pixel Watch 3はPixel Watch 2からバッテリの持続時間が大幅に改善していたことを考えると、Pixel Watch 2やそれ以前のモデルから買い替えるのには適しているだろう。

 では、同じWear OS by Googleを搭載するGalaxy Watch8と比べてどちらを選ぶべきか。両機種は身体測定に関する機能や、ユーザーインターフェイスなどに大きな違いがあるものの、主要な要素は共通しており大きな違いはないと感じる。ただ注意すべきは、両機種を管理するスマートフォン側のプラットフォームが共通していないことだ。

 実際、Pixel Watchシリーズを管理するのは「Google Pixel Watch」アプリ、Galaxy Watchシリーズを管理するのは「Galaxy Wearable」アプリと異なっている。また健康管理のプラットフォームもPixel Watchシリーズは「Fitbit」、Galaxy Watchシリーズは「Samsung Health」と、明確な違いがある。

Google Pixel Watch
Pixel Watchシリーズの接続や管理に用いるのは「Google Pixel Watch」だ
Galaxy Wearable
Galaxy Watchシリーズの接続や管理には「Galaxy Wearable」という別のアプリを用いる必要がある

 それゆえ、たとえばこれまでPixel Watchシリーズを利用していた人が、Galaxy Watch8に乗り換えた場合、Fitbitで蓄積してきた身体データは基本的に使えなくなるといった問題が生じる。それだけに両デバイスは、OSが同じとはいえ異なるプラットフォームのデバイスと考えて選んだほうがよく、すでにPixel Watchシリーズを利用している人の乗り換えには意外と大きなハードルがあることを覚えておきたい。