特集
Apple Watchに対抗できるスマートウォッチはあるのか?有力候補のPixel Watch 2とGalaxy Watch6で比較してみた
2024年2月22日 06:22
Appleの「Apple Watch」シリーズが、現時点のスマートウォッチで最も充実した環境を提供しており、なおかつ多くのユーザーから支持を得ていることは確かだ。だがApple Watchを利用できるのはiPhoneユーザーに限られるため、Androidユーザーは蚊帳の外に置かれているという現実もある。
それだけにApple Watchにはおよばないが、それに引けを取らない機能・性能を備えるスマートウォッチが欲しいと考えている人も多いことだろう。
そこで候補に挙がるのは、Googleの「WearOS by Google」を搭載した機種。身体情報管理だけでなく、通信や決済などApple Watchが押さえている主要機能もしっかりカバーしており、なおかつAndroidと同様Googleが開発していることから、アプリのエコシステム面でも充実度が高いからだ。
Google Pixel Watch 2/不足要素もあるが機能面の充実度は高い
WearOS by Googleを搭載した代表的なスマートウォッチと言えば、やはりGoogle自身が提供している「Pixel Watch」シリーズとなるだろう。2024年1月現在、同シリーズの最新モデルは「Pixel Watch 2」となることから、こちらを対象にApple Watchとどの程度の違いがあるのかを確認してみたい。
まずは本体についてだが、Apple Watchシリーズはいずれも四角形のボディとディスプレイを採用しているのに対し、Pixel Watch 2はより時計であることを意識した、円形のボディとディスプレイを採用している。
画面サイズは「Apple Watch Series 9」の45mmモデルと比べればやや小さく感じるが、41mmモデルと比べれば大きな差はないサイズ感と言える。
ボディサイズは1種類だが、Google Storeで購入できるPixel Watch 2は、本体とバンドの色違いで4種類が用意されている。
オプションで販売されているバンドの種類は、Apple Watchシリーズと比べればさすがに少ないが、スポーツに適した「アクティブスポーツバンド」や、伸縮して無段階の調整が可能な「ストレッチバンド」など、Google Storeで9種類、カラーの違いも含めれば34種類(執筆時点)のバンドを用意しており、ほかのスマートウォッチと比べると充実度は比較的高い方だ。
機能面に目を移すと、最近のスマートウォッチで最も力が入れられているセンサー類に関しては、Apple Watchシリーズと比べ引けを取る要素はない。心拍数センサーはマルチパス対応となり精度が高められているほか、電気センサー(cEDA)や皮膚温度センサーなどが追加され、ストレス検知機能を中心とした強化が図られている。
もちろんGPSなどの位置情報システムにも対応するし、センサーを活用した転倒の検出や、緊急時の連絡や必要な情報の通知などといった機能もしっかり備わっている。いくつかのApple Watchで利用可能な心電図機能が、機能的には実装しているものの日本では利用できない点が弱みと言えるが、基本機能を見る限り、Apple Watchと大きな差があるわけではない。
ちなみにPixel Watch 2は身体情報管理のプラットフォームとして、Googleが買収した「Fitbit」を採用、Fitbitアプリで身体情報の一元管理ができる。Apple Watchの場合、iPhone上での身体情報管理は「フィットネス」と「ヘルスケア」の2つに分かれている上、Apple Watch上ではさらにアプリが細分化されているため身体情報を一元的に確認できないのが弱みと感じるだけに、スマホとスマートウォッチの双方で、1つのアプリで身体情報を管理できる点は強みと見ることもできよう。
一方で決済に関してはまだまだ弱さがあり、「Suica」は利用できるが定期券やオートチャージなどは本体で設定・利用ができず、登録可能なクレジットカードの数や種類もApple Watchと比べればかなり少ない。
とは言え決済機能に対応するスマートウォッチ自体数が少ないだけに、AndroidでもSuicaやFeliCaベースの電子マネー、そしてNFCベースのクレジットカード決済が利用できる点が、ほかのスマートウォッチと比べ大きな優位点となっていることは間違いない。
同様に、LTE対応モデルが用意されているのもほかのスマートウォッチと比べた場合の大きな優位性だ。とりわけスマートウォッチ単体で外出することが多い人にとっては、Apple Watchと同様にNTTドコモの「ワンナンバーサービス」など、1つの電話番号をスマホとスマートウォッチの両方で利用できるサービスを活用できる点を、メリットに感じることが多いのではないだろうか。
そしてもう1つ、アプリに関してもApple Watchほどではないが充実が進んできている。とりわけGoogleがOSを提供しているだけあって、「Gmail」などGoogleのサービス関連のアプリが充実していることは、Pixel Watch 2をはじめとしたWearOS by Google搭載スマートウォッチの魅力を高める大きな要因と言える。
Samsung Galaxy Watch6/本体サイズも選択可能でより時計らしさあり
同じWearOS by Googleを搭載したスマートウォッチの中でも、よりApple Watchの直接的な対抗馬となり得そうなのはSamsungの「Galaxy Watch」シリーズではないだろうか。
実際Samsungは、WearOS by Googleの基礎となったOS「Tizen」を開発していた(それゆえSamsungでは、Galaxy WatchシリーズのOSを「WearOS Powered by Samsung」としている)など、Googleよりもスマートウォッチの経験が豊富だ。
それだけにGalaxy Watchシリーズならではの強みもいくつかあり、その1つはラインナップの豊富さである。現行の最新モデル「Galaxy Watch6」シリーズを見るとスタンダードモデルの「Galaxy Watch6」と、より大画面かつベゼルを回転させて操作できるギミックを備えた「Galaxy Watch6 Classic」の2モデルが用意されている。
それに加えて両モデルとも、Apple Watch Series 9や「Apple Watch SE(第2世代)」などと同様に2種類のサイズから選択することが可能だ。いずれもカラーは2種類用意されていることから、バンドの選択肢こそ少ないものの、自身が求める機能や嗜好、腕のサイズに合わせてモデルを選べる点は、Apple Watchに対抗し得る大きなポイントと言えるだろう。
一方の機能面に関してだが、Galaxy Watch6のセンサーもやはりApple Watchシリーズ、そしてPixel Watch 2とも大きな違いはなく、決定的な差があるわけではない。心電図機能は搭載されているが、日本では利用できない点もPixel Watch2と共通している同じだが、体組成を測定できるなどGalaxy Watchシリーズならではの独自機能も備わっている。
なお身体情報は、Samsung独自の「Samsung Health」で一元管理する仕組み。中でもGalaxy Watch6シリーズとの連携で睡眠に関する充実した機能が利用できるのが大きな特徴で、スマホを置いて寝ることでいびきの検出ができるほか、7日間続けて装着することにより睡眠傾向を動物で表わしてくれる、睡眠コーチング機能などが用意されている。
また、以前の機種ではNFCベースのタッチ決済しか対応が進んでいなかった決済機能に関しても、Galaxy Watch6シリーズでようやくFeliCaに対応し、Pixel Watchシリーズ同様FeliCaベースの「Suica」「iD」「QUICPay」が利用できるようになった。中身はPixel Watchシリーズと同じなのでApple Watchと比べれば機能的に劣る部分は多いのだが、それでも日本で利用する上で、FeliCaベースの決済が利用できることの意味は非常に大きい。
そしてこちらもLTEによる通信に対応したモデルが用意されている。ただし日本でLTE対応モデルが提供されるのはGalaxy Watch6のみで、なおかつNTTドコモとKDDIの「au」ブランドからの販売となる点には注意が必要だろう。
WearOS搭載機種以外の対抗馬は存在するのか?
ここまでApple Watchの対抗馬として、WearOS by Google搭載機種を紹介してきたが、これらはApple Watchと同様に利用できるプラットフォームが限られており、要はiPhoneに接続して利用することができない。
そこで最後に、iPhoneとAndroid、両方のスマホに接続可能なスマートウォッチで、なおかつApple Watchの対抗馬となり得るものはあるのかも考えてみたい。
Apple WatchやWearOS by Google搭載機種に共通している要素としては、多くのスマートウォッチが力を入れている身体情報の管理に加え、
- FeliCaにも対応した決済機能
- LTE通信に対応したモデルの存在
- アプリを追加して機能強化できる
といった要素が挙げられるのだが、現状ほかのスマートウォッチで、これらすべての条件を満たすものはほぼ存在しないと言っていい。とりわけ対応が難しいのが決済とLTE通信で、そもそも対応している機種がごく少数しか存在していない。
LTE通信機能を備えるスマートウォッチは、先に紹介した機種を除くと「HUAWEI WATCH 4」くらいだ。こちらはeSIMを搭載しておりLTEによる通信ができることから、eSIMに対応したモバイル通信サービスの利用が可能となっている。
一方で、日本では携帯各社が提供するワンナンバーなどの機能に対応しておらず、スマホと同じ電話番号を共有できないのは弱点だ。
その分、特定の通信サービスに縛られないことから、ワンナンバーに類するサービスを提供する、携帯4社のメインブランド以外のサービス、具体的にはサブブランドやMVNOのサービスも利用できるので、自由度の高さという意味では利点とも言えるかもしれない。
FeliCaベースの決済機能を搭載したスマートウォッチも、Googleが買収したFitbit製のものを除けばGarmin製の「Garmin Pay」に対応したものに限られる。
Garmin PayはSuicaやNFCベースのタッチ決済に対応するものの、Suicaは機種変更時に残高を移せない、NFCベースの決済は対応するのがごく一部のDebitカードだけと、WearOS by Googleより一層制約が多いのが弱点だ。
多くのスマートウォッチがスマホのコンパニオンデバイスとしての高機能化より、健康やフィットネスなど身体情報管理の高度化に力を入れていることを考えると、健康管理に注力し、ほかの機能を削ぎ落とす傾向が強まっていることはやむを得ない。
だが、スマートウォッチが特定のスマホプラットフォームに依存している現状は、スマホの機種変更にも大きな影響を与えてしまう。それだけにオープン志向ながらも、Apple Watchに対抗し得る高度な機能・性能を備えたスマートウォッチが増えることにも期待したいところだ。