特集
数あるスマートウォッチの中でApple Watchが“最強”である理由
2024年1月31日 06:25
国内のスマートウォッチ市場で圧倒的シェアを持つ、Appleの「Apple Watch」シリーズ。最近では多くのメーカーがスマートウォッチの市場に参入しており、製品数は増えているものの、街中で頻繁に見かけるのはやはりApple Watchを装着している人であり、その人気の高さをうかがい知ることができる。
Apple Watchの人気が高い要因の1つとしては、もちろん国内のスマホ市場でAppleの「iPhone」シリーズが圧倒的シェアを獲得していることが挙げられる。
そもそもApple Watchは、AndroidといったiPhone以外のスマホと接続できないので、iPhoneのシェアの高さ、そしてiPhoneとの一体感の高さがApple Watchの支持を高めていることは間違いない。
だがGoogleの「Pixel Watch」シリーズなど、OSに「WearOS by Google」を搭載したスマートウォッチでなければ、大半のスマートウォッチはiPhoneに接続して利用できる。にも関わらず、多くのスマートウォッチより値段も高いApple Watchが選ばれるのにはほかにもいくつかの理由がある。
そこでここでは、主な競合スマートウォッチとして、WearOS by Googleを搭載した「Pixel Watch」「Galaxy Watch」シリーズを中心に比較しながら、Apple Watchシリーズの強みを改めて確認したい。
(1) 本体サイズや素材も選べる選択肢の豊富さ
(2) 機能・性能より使い勝手が魅力
(3) 決済とエコシステムは圧倒的
本体サイズや素材も選べる選択肢の豊富さ
Apple Watchシリーズの強みの1つとして挙げられるのが、本体やバンドの選択の幅が豊富でカスタマイズ性が非常に高いことだ。
多くのスマートウォッチは本体のサイズや素材が1種類しか用意されていないが、Apple Watchは最上位の「Ultra」シリーズを除いて本体サイズを2種類から選ぶことが可能だ(Apple Watch Series 9の場合は41mmと45mm)。
それに加えて一部機種では本体の素材を選ぶこともでき、Apple Watch Series 9ではアルミニウムとステンレススチールの2種類から選択できる。
またApple Watchシリーズは、標準で付属するバンドの選択肢も非常に豊富だ。Apple Watch Series 9を例に挙げると、最もスタンダードな樹脂製の「スマートバンド」から、伸縮性があり手首をくぐらせるだけで装着できる「ソロループ」、金属製の「ステンレススチール」や、ナイキとのパートナーシップで提供されるバンドに至るまで、非常に幅が広く、それぞれのカラーも豊富だ。
それに加えて機能面においても、LTEによる通信機能の有無を選択できる。そうしたことを考えると、いかにApple Watchシリーズのカスタマイズの幅が広いかが理解できるのではないだろうか。
では一体なぜ、Apple Watchシリーズが選択肢を増やすことに力を入れているのかというと、腕時計は実用ツールとしてだけでなく、ファッションアイテムの側面も持ち合わせているからだろう。
バンドの選択肢が豊富なことは、それだけ日々のファッションに合わせやすいことを意味しているし、サイズに合わないものを身に着けることは使い勝手だけでなく、ファッションコーディネートのバランスにも影響を及ぼしてくる。そうしたことからApple Watchシリーズは当初から、機能だけでなくファッションやデザインにかなり重点を置き、選択肢を豊富に用意してきた経緯がある。
ほかの主要なスマートウォッチを確認しても、本体サイズを選べるのはSamsungの「Galaxy Watch」シリーズくらいであるし、素材を選べたり、バンドの種類がApple Watchほど豊富に用意されていたりするスマートウォッチは存在しない。
機能だけでなくファッション性も追求した選択肢の幅の広さが、Apple Watchの強みの1つであることは間違いない。
機能・性能より使い勝手が魅力
一方で機能・性能面に目を移すと、Apple Watchシリーズはアウトドアの過酷なシーンでも利用できるタフな性能を備えたUltraシリーズを除けば、Pixel WatchシリーズやGalaxy Watchシリーズなど、実は他社のハイエンドのスマートウォッチと比べ大きな違いがあるわけではない。
ベースの性能に影響する要素としてチップを確認すると、最新のスタンダードモデルである「Apple Watch Series9」はApple独自開発のスマートウォッチ向けSiP(System in Package)である「S9」を搭載。それとは別にマシンラーニング処理をこなす4コアのApple Neural Engineを搭載することで、音声入力の精度向上や、新機能の1つ「ダブルタップ」のジェスチャー操作などに生かされている。
一方で競合の例を挙げると、Pixel Watch 2はQualcomm製の「Qualcomm 5100」、「Galaxy Watch 6」はSamsung製の「Exynos W930」など、やはりスマートウォッチ向けの新しいSoCを搭載することで性能強化が図られている。
ただスマートウォッチはスマホやパソコンなどと違って、利用できる機能やその性能の違いがセンサーなど別の部分に依存していることも多く、チップの性能だけでその優劣を付けるのは難しい。
そこでセンサー類を確認すると、コンパスや加速度センサー、心拍数センサーといった基本的なものから、皮膚温センサーや血中酸素ウェルネスセンサー、さらには心電図などを測定できる多目的の電気センサーなどは、Apple Watch以外の主要なスマートウォッチに概ね搭載されている。個々のセンサーの性能に違いはあるだろうが、決定的な違いがあるとは言い難い。
現時点でApple Watchシリーズに大きな優位性があるとすれば、心電図の測定機能に対応するだけでなく、日本で正式に認証を取得して機能を利用できるようにしていることくらいだ(ほかの機種でも海外では心電図機能を利用できるものが多い)。
ただセンサーを活用した転倒検知やSOSといった機能も最近はApple Watch以外のスマートウォッチが対応を進めているだけに、主力の健康管理に関して機能面での大きな差は付きにくくなっていると言えよう。
だが各機能を使いやすくするための工夫やインターフェイスなどに関しては、実際に使ってみるとApple Watchシリーズに優位性があると感じることが多い。
たとえば睡眠状態を記録する「睡眠」アプリで睡眠のスケジュールと起床時のアラームの有無を設定しておけば、寝る時間を知らせたり、起きる時間にアラームを鳴らしたりするだけでなく、通知やディスプレイの表示をオフにして睡眠に集中できる環境を自動で整えてくれたりする。
こうした仕組み自体はもちろんほかのスマートウォッチでも実現できるのだが、そのためには別々の設定が設定必要だったり、手動での操作が必要だったりすることが多い。ダブルタップなどの新しい操作だけでなく、豊富な機能を簡単な設定や操作で使いやすくする細かな配慮という点でも、やはりApple Watchシリーズが一枚上手だと感じるところでもある。
決済とエコシステムは圧倒的
もう1つ、スマートウォッチで重要となりつつある決済関連の機能に関しても、Apple Watchシリーズが大きな強みを持つ要素となっている。ほかの多くのスマートウォッチがスマホと決済機能が共通していないのに対し、Apple WatchシリーズはiPhoneと同じ「Apple Pay」に対応しており、幅広いタッチ決済を利用できるからだ。
その詳細については以下の関連記事で取り上げているのでそちらを確認いただきたいが、Apple WatchシリーズはNFCベースのクレジットカード決済だけでなく、交通系ICの「Suica」を始めとした多くのFeliCaベースの電子マネーサービスにも対応する。
登録可能なクレジットカードの種類が非常に豊富だというのも、Apple Watchシリーズの大きな優位性と言える。
それに加えて「PayPay」「au PAY」など一部のQRコード決済サービスは、Apple Watchシリーズに向けては専用のアプリを提供している。それらを含めれば、Apple Watchで利用できる決済手段がほかの追随を許さない状況にあることは間違いない。
また、アプリやウォッチフェイスなどのソフト面から、そして交換用バンドなどのハード面に至るまで、サードパーティによるエコシステムがうまく機能して充実した環境が整えられていることも、Apple Watchシリーズの人気を高めている大きな要因の1つと言えるだろう。
とりわけ交換用のバンドは、非正規品も含めれば高級品から格安なものまで非常に幅広く販売されており、ケースでほかのスマホを圧倒したiPhoneと同様エコシステムの強みを発揮し、ファッションにこだわるユーザーを惹きつけているようだ。
そうしたエコシステムは短期間で構築できるものではないだけに、戦略のブレなく長年にわたってシリーズを継続してきたApple Watchならではの強みと言え、競合がその領域に追いつくのは決して容易ではない。
ただ競合のスマートウォッチも、機能や性能面ではApple Watchを急速にキャッチアップしてきていることは確かであり、エコシステムなどの強化が図られることでApple Watchシリーズのシェアを脅かす存在として育つことにも期待したい。