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電子マネー対応スマートウォッチ完全攻略。現状を整理し、おすすめを紹介
2024年6月13日 06:12
「スマート」の名をを冠したデバイスとして、スマートフォンに次ぐ市民権を得た感のあるスマートウォッチ。最近ではガジェット好きのアイテムとしてだけではなく、スポーツシーンやフォーマルなシチュエーションでも当たり前のように見かけるようになった。
多彩な機能を持つスマートウォッチの中でも利便性が高い大きな魅力の1つが決済機能だ。手首をかざすだけで電車やバスに乗ったり、買い物ができる手軽さに慣れてしまうと、支払いのためにスマートフォンを取り出すだけでも面倒に感じてしまうほどだ。
今回はスマートウォッチの決済機能に焦点を当て、スマートウォッチで利用できる決済方法や対応製品を紹介したい。
スマートウォッチの決済サービスと対応端末をまとめ
まずはスマートウォッチで現在利用できる決済方法と対応端末を簡単にまとめておく。スマートウォッチで利用できる決済方法は電車やバスの乗車や支払いに利用できるプリペイド型の「Suica」、クレジットカードと連携して後払いができるポストペイの「iD」と「QUICPay」が主流だ。
このほか昨今普及が進むコード決済やSuica以外のプリペイド型電子マネーもスマートウォッチに対応しているが、これらサービスに対応する製品は今のところ「Apple Watch」のみに限られる。
決済対応のスマートウォッチとしては、スマートウォッチとしてももっとも普及する看板的な存在であるApple Watchが有名だが、最近ではAndroid対応のWear OS搭載スマートウォッチ(以下、Wear OS)もSuicaを始めとする決済サービスに対応。具体的にはGoogleの「Pixel Watch」、Samsungの「Galxy Watch」が挙げられる。
このほか、ほぼSuicaのみの対応ではあるがが、FitbitやGarminのスマートウォッチにもSuica対応の製品がラインアップされている。
Suicaやクレジットカード、コード決済など多彩なスマートウォッチ対応決済
ここからはスマートウォッチに対応した決済サービスの詳細を説明する。
Suica(鉄道・バス系)
決済対応のスマートウォッチが対応するサービスとしてデファクトスタンダード的な存在が、JR東日本の交通系ICであるSuicaだ。Apple WatchとWear OS、GarminやFitbitなど多くの製品が対応するが、同じSuicaでもスマートウォッチによって細かく機能が異なる。
もっとも機能が充実しているのはApple Watchで、電車やバスの利用や支払いといった基本機能に加えて、オートチャージや定期券、指定日と指定エリアで乗り放題といった特典が利用できる「おトクなきっぷ」といった機能に対応。紛失時も手続きを行なうことで再発行が可能だ。
一方、GarminやFitbitもSuicaに対応した製品がラインアップされているが、利用できるのは「乗車」と「支払い」という基本機能のみ。オートチャージや定期券などは非対応だ。紛失時の再発行などもできないため、基本的にはカード型のSuicaとほぼ同等の機能と考えた方がいい。
Apple Watchとスマートバンドの中間的な存在がWear OSで、定期券やおトクなきっぷは非対応だが、オートチャージについてはAndroidスマートフォンでSuicaのアプリをインストールしてオートチャージを設定し、そのアカウントをWear OSで再度設定することで利用可能。筆者もこの方法でWear OSをオートチャージで利用している。また、Apple Watchと同様、紛失時の再発行も可能だ。
なお、新幹線の乗車はSuicaのID番号を切符に紐付けるだけなので、Suica対応のスマートウォッチであればどの機種でも利用が可能だ。
Suica以外の交通系ICでは、関東エリアの鉄道やバスで使える「PASMO」、JR西日本の「ICOCA」もスマートフォン向けにアプリを提供しているが、スマートウォッチで利用できるのはApple Watchのみで、Wear OSなどその他のSuica対応スマートウォッチでは利用できない。
iD/QUICPay、NFC決済
事前にチャージが必要なプリペイド型に対し、チャージ不要で支払えるデビットカードやクレジットカードに対応するのがiDとQUICPay。この2サービスはApple WatchおよびWear OSが対応している。iDかQUICPayかはカードごとに決められており、カードを設定するとiDかQUICPayどちらかが自動的に設定される仕組みだ。
なお、登録できるカードは端末によって異なる。たとえばドコモのdカードはApple Pay対応のためApple Watchでも利用可能だが、Google Payには非対応のためWear OSはもちろんAndroidスマートフォンでも利用できない。
また、iD/QUICPayに似て非なる非接触決済として、NFCを利用したタッチ決済(以下、NFC決済)がある。技術的にはどちらもNFC(Near Field Communication)ではあるのだが、iD/QUICPayは「FeliCa」と呼ばれる「Type-F」ベースなのに対し、NFC決済は「Type-A/B」とNFCの方式が異なる。ユーザー向けにも「Visaのタッチ決済」、「Mastercardタッチ決済」といった名称で提供され、iD/QUICPayとは異なるサービスとして提供されている。
利用時の見分け方としては、iD/QUICPayはそれぞれのロゴマーク、NFC決済はVisaやMastercardのロゴにワイヤレスを示すアイコンが表示されていれば利用可能だ。
前置きが少し長くなったが、NFC決済についてはApple WatchとWear OSに加えてFitbitやGarminでも利用可能だが、Suicaのように端末によって利用できる機能やサービスが異なる。
Apple WatchはクレジットカードがiD/QUICPayとNFC決済に対応していれば、1つのカードでどちらの支払い方法も利用可能だ。
一方、Wear OSはiD/QUICPayかNFC決済か、いずれか1つの支払い方法のみとなる。また、Wear OSでNFC決済が利用できるのはエポスカードやRevolut、ソニー銀行や千葉銀行などごく一部のカードに限られている。NFCのタッチ決済自体は三井住友カードや楽天カードなどがAndroidスマートフォン向けに提供しているものの、Pixel Watchでは現状まだ利用できない。
FitbitとGarminはNFC決済に対応してはいるものの、利用できるのはデビットカードのみで、FitbitはPayPay銀行とソニー銀行、Garminはこの2つに加えて三菱UFJ銀行に対応する。前述のまとめでFitbitとGarminを「ほぼSuicaのみ」の対応としたのはこれが理由だ。
コード決済
昨今普及の進むコード決済のうち、PayPayとau PayはApple Watchに対応。どちらもアプリをApple Watchにインストールすると、Apple Watchのディスプレイに支払い用のコードを表示できる。なお、支払い方法はコード表示のみで、店舗のコードをカメラで読み取っての支払いはApple Watchがカメラ非搭載のため当然ながら利用できない。
Wear OSもポイントカードを表示する機能自体は備えているのだが、筆者がWear OS搭載のPixel Watchをコンビニのセルフレジで試した限り、バーコードが認識されず利用できなかった。今後機能の改善を期待したいところだが、現状はポイントカードの利用が利用できないほか、コード決済にも対応していない。
モバイル決済に対応したスマートウォッチ
決済方法ごとに使える端末をまとめたところで、ここから先は決済機能を搭載したスマートウォッチとその特徴を紹介する。
Apple Watch
決済に対応するスマートウォッチとしては最強と言えるApple Watch。前述の通りSuicaは定期券やオートチャージなどフル機能が利用でき、iDやQUICPayなどのクレジットカード決済、WAON、nanacoのプリペイド型電子マネー、PayPayやau PAYなどコード決済にも対応する。
現行販売されているApple Watchならすべてのモデルが電子決済に対応しているため、廉価モデルのApple Watch SEや大画面のApple Watch Ultraシリーズなど好みの製品を選べるのもポイント。決済以外にも健康管理機能やiPhoneの通知連携、心電図や緊急時のSOSなど多彩な機能を備えている。
ただし、当然ながらApple Watchを利用できるのはiPhoneユーザーのみでAndroidでは利用できない。Androidユーザーは後述のWear OSか、iPhoneとAndroid両対応のスマートバンドから選ぶことになる。
Pixel Watch
Googleが手がけるWear OS搭載スマートウォッチ。初代モデルおよび第2世代どちらも電子決済の対応は同一で、SuicaおよびiD/QUICPay、NFC決済に対応する。
Pixelという名前だが、スマートフォンはPixelシリーズ以外のAndroidでも利用可能。決済以外にも健康管理のFitbitアプリ、Google アシスタントによる音声操作、Google マップ連動のナビなど機能が充実している。
Pixel Watchならではという機能は多くはなく、サイズも1種類のみとWear OS搭載スマートウォッチとしてはシンプルなスマートウォッチだ。
Galaxy Watch6
SamsungのWear OS搭載スマートウォッチ「Galaxy Watch」シリーズは、最新モデルの「Galalxy Watch6」がシリーズで初めて電子決済に対応。Pixel Watchと同様にSuicaとiD/QUICPay、NFC決済に対応する。
サイズが1種類のPixel Watchに比べると、40mm、44mmという2サイズがラインアップされているほか、ディスプレイ周りのベゼルで操作できる回転ベゼルを搭載した「Galaxy Watch6 Classic」というモデルも用意されているなど、デザイン面での選択肢が多い。
Google アシスタントやGoogle マップなどWear OSの基本機能はPixel Watchと同様に搭載、FitbitではないもののGalaxy Watch独自の健康管理アプリも搭載しており、機能面でもPixel Watchと遜色はない。デザインや本体サイズ、回転ベゼル機能などがPixel Watchと比較する際のポイントだろう。
Fitbit
Google傘下となったFitbit。Googleでは同名のアプリをPixel Watchに搭載しているが、スマートウォッチとしてのFitbitも引き続き販売しており、一部のモデルはSuicaに対応している。
Apple WatchやWear OS搭載スマートウォッチと比べると、Suicaやごく一部のNFC決済にしか対応していないが、そのぶんバッテリ駆動時間の長さが魅力。Apple Watchは最大サイズのUltra 2が最大36時間、Pixel Watch 2がディスプレイ表示状態で24時間に対し、Suica対応モデルであるFitibit sense 2、Fitbit Versa 4ともに6日以上のバッテリ駆動時間を公称する。
sense 2とVersa 4の違いは、sense 2が継続的皮膚電気活動(cEDA)センサーによるストレスマネジメント機能を搭載するほか、本体サイズやデザインなども多少異なる以外の基本的な機能はほぼ共通。健康管理や睡眠管理、スマートフォンの通知を受け取る、スマートフォンを探すといった機能が利用できる。
決済はSuicaが利用できれば十分というユーザーであれば、バッテリ駆動時間が長く本体も軽量なFitbitを選ぶのもいいだろう。
GARMIN
GARMINのスマートウォッチもSuicaに対応。Fitbitと比べるとゴルフ向けの機能を搭載した「Approach S70」など、よりよりスポーツに特化したモデルがラインアップされている。
価格帯も10万円台、20万円台など高価なモデルがラインアップされているが、価格の分ソーラー充電機能や30日以上のバッテリ駆動時間など機能が充実。一方でファッション性を高めた「vívoactive 5」は4万円を切る価格など、ラインアップが非常に幅広いのがGARMINの特徴だ。
Fitbit同様、健康管理や睡眠管理、スマートフォンの通知連携といった機能も搭載。価格よりも機能に拘りたい、デザインが気に入ったなどのユーザーにお勧めの製品だ。
スマートウォッチの基本機能となりつつある決済機能。今後のサービス拡充に期待
ここまで細かくサービスや対応端末について述べてきたが、決済対応のスマートウォッチの選び方自体はとてもシンプルだ。というのもApple WatchはiPhoneのみ、Wear OSはAndroidのみに対応しているので、使っているスマートフォン次第で選べるスマートウォッチが決まってしまうからだ。
あとは支払い方法として何を使いたいか。Suicaだけでなくクレジットカードのようなポストペイを利用したい場合は、必然的にApple WatchかWear OSを選ぶことになる。Suicaだけ対応していれば十分、というユーザーであれば、Apple WatchやWear OSを選んでもいいし、バッテリ持ちが良くより軽量なモデルも選べるFitbitやGarminの中から予算に合わせて選ぶといいだろう。
数年前までスマートウォッチの決済と言えばほぼApple Watchの独壇場だったが、Pixel WatchがSuicaに対応し、その後もiD/QUICPayといったポストペイに対応したことで、決済対応スマートウォッチの選択肢は広がった。Galaxy Watchも決済サービスに対応するなど、今後はスマートウォッチにとって決済サービスは基本機能となっていくだろう。
スマートフォンそのものに比べるとまだ対応していない決済サービスも多いが、電車やバスに乗るためのSuica、クレジットカード感覚で使えるiD/QUICPayがあればほとんどの利用シーンで不便を感じることはない。普段からスマートウォッチでの決済を積極的に使っている筆者としても、スマートウォッチ以外での決済は「三井住友カードの特典で7%を貯めたい」場合か、「iD/QUICPayには対応していないがNFC決済には対応している」というレアケースくらいだ。
最近普及が進むコード決済もApple Watchは対応が進みつつあり、Wear OSも機能自体は備えているだけに今後は正式に対応していくのだろう。コード決済もスマートウォッチで可能になれば利便性がさらに上がるので、サービス各社のスマートウォッチ対応を期待したい。