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東京海洋大学、死んだ魚から子孫を作ることに成功

 国立大学法人 東京海洋大学は14日、死んだ魚から卵と生殖幹細胞を単離し、別の魚に移植することで卵や精子分化へと誘導する技術の開発に成功したと発表した。

 今回の研究では、死後12時間から24時間経過したニジマスから、卵と精子のおおもとの細胞となる生殖幹細胞を単離し、別のニジマス個体(代理親魚となる宿主)に移植。その結果、死後12時間経過後のニジマスの生殖幹細胞であっても、正常に宿主の卵巣や精巣へと取り込まれ、その後増殖して卵や精子へと分化していく様子が観察されたという。

 この分化の効率は、死後直ちに移植を行なった場合と比較しても全く遜色がなかったといい、死後24時間経過後であっても、移植効率が低下したものの同様に宿主の卵巣や精巣内で増殖、分化されたのだという。つまり、死後12~24時間以内であれば、代理親魚技術を応用することで、子孫を残すことが可能であることを示唆しているという。

 この技術の開発の背景は、希少魚の飼育継代である。これまで、見回り頻度が少ない夜間に、疾病や停電/設備破損といった設備トラブルによって希少魚を失う事故は高い頻度で起きているという。

 この際、朝になって発見した場合、水中に死亡個体を長時間放置することになり、この間に体内の酵素などによってタンパク質が分解され、細胞劣化が進む。そのため、死後時間が経った魚の遺伝子資源を次世代に繋げることはこれまで不可能だと考えられ、継代を諦めざる得なかった。

 本研究により、死んでしまった希少魚の子孫を作出できる可能性が示され、今後、希少魚の遺伝子資源のバックアップ技術として貢献できることが期待される。