【COMPUTEX 2012】【Microsoftカンファレンス編】
組み込み、クラウド、Windows 8がテーマ
~富士通製液晶着脱式Windows 8ノートも披露

Steven Guggenheimer氏

会期:6月5日~6月9日(現地時間)
会場:Taipei World Trade Center Nangang Exhibition Hall
   Taipei World Trade Center Exhibition Hall 1/3
   Taipei International Convention Center



 米Microsoftは6日、COMPUTEX TAIPEI Microsoft FORUM 2012を開催した。この中で同社OEM事業部担当副社長のSteven Guggenheimer氏は、コンポーネントおよびPC OEM/ODMが多数集まる台湾企業に向けたOEM関連の発表とともに、先だって製品候補版に当たるRelease Previewの提供を開始したWindows 8の新機能の紹介などを行なった。

 まずGuggenheimer氏はエコシステムについて語った。5年前まで、PC、携帯電話、TVといった機器は、それぞれ異なる企業が受け持っており、それゆえエコシステムも分断されていた。しかし近年では、テクノロジーの進化やトレンドの変化により、それらの分野でプロセッサ、プラットフォーム、開発、製造が融合され始めているという。

 例えば、x86 CPUはこれまでPC専用だったものがスマートフォンに採用され、モバイル専用だったARMプロセッサは今後Windows RTに入っていき、ODMはそれらの製造を一手に引き受けるといった具合だ。これにより、それぞれのデバイスのエコシステムも融合し始めており、Guggenheimer氏はここにこれまでにないイノベーションが起きる可能性が生まれつつあると述べた。

 さて、ここでPC、携帯電話、TVというデバイスを引き合いに出したのは、当のMicrosoftがそれらを手がけている(TVについてはIPTVを含む)からだが、Apple、Googleも同じようにそれらのデバイスに進出しており、この業界には3つの大きなエコシステムが存在していることになる。これについてGuggenheimer氏は、ハードウェアメーカーのブランド構築/差別化、一貫性という点において、MicrosoftはApple/Googleにない付加価値をパートナーに提供できるとの見解を示した。

これまではPCやTV業界ではプレイヤーが別れていた
だが現在ではそれらのエコシステムが融合されているそんな中Microsoftのエコシステムでは、AppleやGoogleと違い、パートナーが自社のブランドで差別化をできると説明

Microsoftはプライベートとパブリック双方に対応でき、スケールアウトも可能なクラウドソリューションを提供可能

 また、Guggenheimer氏はサーバーの分野が他社にはないMicrosoftの強みを説明。これまで同社は長年にわたってオンプレミス向けサーバー製品を提供してきたが、現在ではパブリッククラウド上にHotmail、Xbox LIVEといった大規模なコンシューマサービスを展開している。他方、AmazonやGoogleはパブリッククラウドでは実績があるが、プライベートクラウドは提供しておらず、Oracleなどはオンプレミス向けでは強みを持つがパブリッククラウドにまではスケールアウトできずといった具合で、Microsoftだけが双方にまたがったソリューションを提供しているとした。

 あわせて同氏は、プライベートクラウド構築ソリューションとしてサーバーハードウェアメーカーと共同で展開している「Private Cloud Fast Track」用に台湾Quantaが次世代サーバーを提供することを発表した。

 次ぎにGuggenheimer氏は、組み込みに話題を転じた。サーバー同様、組み込み製品にはユーザーが店頭に行って購入する類いのものは少ないが、その市場は多岐にわたり、年間に出荷されるチップの枚数は数十億に上る。組み込み機器と言っても、現在ではネットワークにつながり、エンドポイントとして膨大な量の情報を収集しクラウドへと送信している。そのため、組み込み機器にもインテリジェンスや使い勝手の良さが求められており、15年以上組み込み向けOSも手がけてきたMicrosoftとしても、事業領域を広げていきたいと考えている。

Windows Embedded Standard 8の2番目のCTPを提供開始

 この領域における発表は2つあった。1つは、車載端末用システム「Sync」を搭載するFord製自動車が台湾でも発売になること。そしてもう1つは、Windows Embedded Standard 8の2番目のCommunity Technology Previewが提供開始になったこと。Windows Embedded Standard 8は、Windows 8をベースにした組み込み向けOSで、メトロUIやInternet Explorer 10などの最新機能/技術のうち、利用したいものだけをコンポーネントレベルで選択/実装できる。なお、産業機械などには、従来のWindows CEであるWindows Compactが用意される。

 続いてGuggenheimer氏は、コンシューマ関連の最新アップデートについて説明した。

 Windows Phoneは、次期メジャーバージョンアップが控えており、新しいニュースはないとしながらも、現在アプリ数が88,000にまで増え、Microsoft自身も音声/文字のどちらにも対応した翻訳アプリを提供するなど、アプリ/サービスの強化に余念がないことを強調した。

Bing翻訳アプリこういったメニューなども一括して翻訳できる

 また、これはWindows Phoneに限ったものではないが、直前にE3で発表された、XboxとのPCおよびスマートフォンの連携機能についてのデモも実演。PCで見ていた動画の続きをXboxで視聴したり、スマートフォンをXboxのリモコンとして使ったりできる。この詳細については、僚誌AV Watchにレポートがあるので、詳細はそちらを参照されたい。

 Windows 8については、まずその本体を構成するハードウェアコンポーネントレベルでの革新について事例紹介を行なった。Windows 8はタッチ操作に特化したUIを採用するが、クラムシェル型のノートでは、タッチで操作すると本体が起き上がってしまう。これについて、COMPALではヒンジをやや手前に移動させて、本体が倒れることを防いでいる。また、すでに発表があったように、Acerでは位置は従来と変わらないが、指で押しても液晶が傾かないヒンジを採用している。

 タッチについては、シャープの「IGZO」を使った液晶パネル+タッチセンサーが紹介された。IGZO液晶は、画面の書き換えがないときに、駆動を休止できる特性を持ち、これにより駆動ノイズが大きく低減されるため、タッチセンサーと組み合わせた際に、タッチの検出精度を大幅に向上させられる。実際、従来の静電容量式タッチパネルでは指先でないと反応しないが、Guggenheimer氏はIGZOパネルに普通の鉛筆や、軍手をした手でも操作できることを示した。

Windows 8ノートはタッチ対応品も増え、ヒンジもそれに対応する改良が加えられるIGZO液晶は静電容量式でありながら鉛筆のような先の細いものでも操作可能

 Windows 8については、Windows & Windows Live担当シニアディレクターのAidan Marcuss氏が実際にデモしながら説明した。

 まず、Marcuss氏はWindows 8のメトロUIについて、すでにWindows Storeに多数のアプリが存在し、それらをタイルとして好きなようにピン留めできることや、ピンチイン/アウト操作で拡大縮小できる様子、旧来のデスクトップにもシームレスに移動できることなどを紹介。

 また、SkyDriveとの統合により、クラウドでのデータ同期だけでなく、別のPCに保存したデータにもンターネット越しに簡単にアクセスできる点、メトロアプリとOSの検索機能の融合、コンテンツやデータのアプリ間での共有などの特徴的な部分をデモした。

 さらにWindows 8では、ユーザーアカウントの切り替えにより、同じ端末であってもユーザー毎に異なる環境に切り替えられる点、高性能なCPUやGPUを活用した強力なアプリ、Flashの完全サポートといった競合製品に対する優位点があることが強調された。

Aidan Marcuss氏Windows 8スタート画面も拡大縮小可能
旧来のデスクトップ画面も健在SkyDriveによって、別のPCへのインターネット越しのアクセスも簡単にWindows 8ではアプリやネットを横断的に検索可能
コンテンツやデータをアプリ間で共有する仕組みも実装ユーザーアカウントが変更できるのも強み強力なハードウェアを活かして、WebカメラでKinectのようなゲームもプレイ可能

 前述の通り、Windows 8はRelease Previewが公開されたが、Guggenheimer氏は、パートナーに対しても、Assesment and Deployment Kit(ADK)、Windows Hardware Certification Kit(WHCK)、Windows App Certification Kit(WACK)といったツールを用意し、Windows 8製品版に向けたエコシステムが準備できていることを示した。

 最後に、Guggenheimer氏は、富士通製の液晶着脱式Windows 8ノートを含む各社の最新製品の試作機を一挙に紹介するとともに、台湾のエコシステムコミュニティに謝辞を述べて講演を締めくくった。

左からAcer、ASUSTeK、Lenovoの液晶一体型未発表の富士通の液晶着脱式ノートWindows RTについては、ASUSTeKのTablet 600が簡単に紹介されるにとどまった

(2012年 6月 7日)

[Reported by 若杉 紀彦]