シャープ、6.1型2,560×1,600ドット液晶や13.5型4K有機ELを公開
〜500dpi超のパネル量産体制を確立

6月1日 発表



 シャープ株式会社は1日、株式会社半導体エネルギー研究所との共同開発による酸化物半導体(IGZO)に関する新技術用いた超高精細パネルの試作品を公開した。

 今回公開されたのは、2,560×1,600ドット表示対応6.1型液晶(498dpi)、720×1,280ドット表示対応4.9型液晶(302dpi)、3,840×2,160ドット表示対応13.5型有機EL(326dpi)、540×960ドット表示対応3.4型フレキシブル有機EL(326dpi)の4つの試作品。

2,560×1,600ドット表示対応6.1型液晶 写真表示例 文字表示例
720×1,280ドット表示対応4.9型液晶 写真表示例 文字表示例
3,840×2,160ドット表示対応13.5型有機EL 文字表示例 その部分拡大
540×960ドット表示対応3.4型フレキシブル有機EL 精細なだけでなく、このような曲がるフィルム状の製品も実現できる
4月に発表されたノートPC向けの2,560×1,600ドット表示対応10型液晶 拡大写真。左が1,280×800ドットで150dpi、右がIGZOの300dpi
こちらは32型の比較 左が1,920×1,080ドットで70dpi、右がIGZOの3,840×2,160ドットで140dpi

 1日に行なわれた発表会では、シャープ副社長執行役員技術担当兼オンリーワン商品・デザイン本部長の水嶋繁光氏と、半導体エネルギー研究所代表取締役社長の山崎舜平氏が新製品の狙いや技術的背景について説明した。

水嶋繁光氏 山崎舜平氏

 シャープはすでにIGZOを使った液晶の生産を開始しているが、IGZOの大きな特徴は、1)移動度(オン電流)の高さ、2)オフ性能の高さ、3)生産性の高さの3つが挙げられる。

 IGZOはアモルファスシリコン(a-Si)と比べ、電子の移動度が20〜50倍高いため、TFTの小型化と配線の細線化が可能となる。具体的には、同等の透過率で2倍の高精細化が可能。

 オフ性能はa-Siの100倍、低温ポリシリコン(LTPS)の1,000倍高い。これによって、IGZOでは1フレーム描画したのちに、画面に変化がない場合、駆動を休止することができる。休止できる時間は、表示内容に依存するが、IGZOはパネルの消費電力を1/5から1/10にまで低減できる。現在、携帯端末の消費電力のうち、50%は液晶パネルと言われているため、このことがバッテリに与える影響は大きい。IGZOによって、長時間駆動はもちろん、駆動時間が同じであれば、バッテリを小型化でき、より薄くて軽い端末が開発できるようになる。

 これに加え、タッチパネルでは、パネルを常時駆動させることによるノイズによって、精度が低くなる問題があるが、IGZOは駆動休止によってノイズを低減させ、タッチの検出精度を高めることもできる。同社によるとタッチパネルのS/N比は従来の5倍に達するという。

 もう1つ重要なのが生産性の高さで、IGZOはa-Siと同等のシンプルなプロセスで生産が可能。a-Siでは現在G10と呼ばれる第10世代のマザーガラスを製造しているが、LTPSではG6までとなっている。IGZOではG8以上の対応が可能で、安価な製造ができる。

 今回発表された新技術は、山崎氏が2009年に偶然発見した結晶構造を新たに採用したもの。その結晶構造とは、酸化物半導体結晶相の、結晶系に分類されるもので、「CAAC」(C-Axis Aligned Crystal)と呼ばれている。

 CAACは単結晶ともアモルファスとも異なり、C軸(Z軸)方向から見ると六角形構造で、C軸に垂直な方向から見ると層状構造となっている。これまで薄膜IGZOは、原子の配列が無秩序なアモルファス構造を持ち、結晶化は不可能とされていたが、CAACを実現できたことで、光照射BTによる影響を低く抑え、信頼性を改善でき、より安定なTFT作成を実現できた。これにより、CAAC IGZO(新IGZO)は、500dpiを超える高精細化や、プロセスの簡略化が可能になった。

IGZOの3大特徴 同等の透過率で2倍の高精細化 駆動の休止により消費電力を1/5〜1/10に低減
また、タッチパネルのS/N比も上げられる 生産性も高い 新IGZOはCAAC構造で500dpiを超えるさらなる高精細化が実現された

 新IGZOは、従来のIGZO製品同様、モバイル向けに特化した製品化を行なう。現在スマートフォンでは、高精細なもので300dpi級。新IGZOを採用する製品が市場投入されるのは半年〜1年以上先になるものと思われるが、6.1型液晶の試作品の例のように、すでに500dpi級の製造体制が確立されたことになる。実際、顧客との間では、4型級でフルHDといった話も進んでいるという。また、解像度を据え置いた場合でも、消費電力の面で従来製品に対して優位性を持つ。

 今回の試作品は、4つのうち2つが有機ELであるが、これは技術的に製造可能であるということを見せる意味合いであり、水嶋氏は現状の有機ELについて経済的および量産設備に対する投資効果の面で課題が残ることから、品揃えの1つとして持つことは必要だが、全ての液晶に置き換わるものではないとの考えを示した。また、従来のa-Si液晶は大型TV、CGシリコン液晶は高機能モバイル向けと位置づけ、製造を継続する。

 なお、新IGZOの応用範囲はディスプレイデバイスにとどまらず、新たな種類のフラッシュメモリや、イメージセンサー、さらには極省電力のCPUといったものも実現可能だという。

(2012年 6月 1日)

[Reported by 若杉 紀彦]