イベントレポート

ハンドヘルドや部材高騰、MacBook Neo対策にAI開発まで、ASUSの今を幹部陣に聞いた

 昨今のゲーミングPC市場やAIの盛り上がり、部材の高騰、日本市場のことなど、今のASUSは何を考え感じているのか。今回、COMPUTEX TAIPEI 2026の開催にあわせて実施された報道関係者向けのグループインタビューを通じて直接伺う機会をいただいた。

 インタビューに応じてくれたのは、ASUSシステム部門APACジェネラルマネージャーのPeter Chang氏、ASUS JAPAN代表取締役社長のAlvin Chen氏、ASUS JAPANシステムビジネスグループコンシューマービジネス事業部統括部長のDavid Chu氏の3名だ(以下、敬称略)。

ハンドヘルドゲーム機は好調。成長分野で投資も継続

Peter Chang氏

――ハンドヘルドゲーム機市場に各社が参入してきていますが、その中でASUSがフォーカスしていることについて教えてください。

Chang ASUSはWindowsエコシステム向けにいち早くハンドヘルドゲーム機を投入しました。引き続きこの分野に投資し、市場の中でもポジションを維持していきます。また、PCゲーミング市場はここ数年でさらに成長しており、今後も伸びていく分野だと考えています。一方で、製品の多角化にも気を配っており、さまざまなニーズにあわせた製品を継続的に投入していきたいと考えています。

――Xboxとの協業で投入した「ROG Xbox Ally」シリーズについて、日本やAPAC地域からの反響やユーザー層、現時点での評価などについて教えてください。

Chang 協業によってよい製品を生み出せたことで、今のところ結果は非常に好調です。当初は若年層が主なターゲットだと考えていましたが、実際には20~40代、さらには40代以上の方にも購入いただいており、仕事で忙しい人が自分の時間で遊ぶための「セカンドデバイス」としても人気があったようです。外出先で遊ぶ、家でドックにつなぎコンソールゲーム機のように遊ぶなど、さまざまな使い方で楽しまれています。一方で、コスト上昇にともなう価格の調整が現状の課題となっています。

Chu (Peterも言及した通り)ハンドヘルドゲーム機の市場は拡大しており、セカンドデバイスとして購入されるユーザーも多いです。今回はXboxとの協業により、ゲームを楽しむことを第一に考えた設計にできたことが高評価につながっていると感じています。また、ハンドヘルドゲーム機市場はますます拡大していくと考えていますが、それにともなってライバルが増え、CPUや価格の競争も激化していることから、そういった点も考慮しながら事業を進めていきたいと思います。

David Chu氏

――ハンドヘルドゲーム機への投資は継続するとのことですが、スマートフォン分野の今後の展望についても伺えますか。

Chang 当然、既存ユーザーへのサポートは継続していきます。その上で、ASUSとしてはAIの波に乗っていく必要があると考え、今後2年間はAI開発にリソースを集中するという判断を下しました。これにともない、モバイルデバイスについては、今後数年間の明確なプランはありません。ただし、AIトレンドの流れを見つつ、さまざまなフォームファクターの検討は続けていきます。

Chen ASUS全体としてAI開発にリソースを集中するという判断は非常に難しいものでした。すでに発表している通りではありますが、ROG Phone、Zenfoneともに2030年までサポートは継続的に行なっていきます。

Alvin Chen氏

日本のゲーミングPC市場には大きなポテンシャル

――日本のゲーミングPC市場について、特有のニーズや魅力、近年の動向について教えてください。

Chang 日本は世界的なゲームのパイオニアであり、コンソールゲーム市場をけん引してきました。一方で、ゲーミングPC市場はほかの地域と比べるとやや出遅れている印象があります。しかし近年は徐々に市場が成長してきており、大きなポテンシャルを感じています。また、優れた製品を展開することでROGブランドのアイデンティティを確立できており、日本市場に対しても親和性の高い製品を投入していけると考えています。

Chu 日本特有のニーズについては、品質や性能に対するこだわりが非常に強く、ASUSとしてもそれに応える製品を投入してきました。特にハンドヘルドゲーム機のニーズは高く、今後これがゲーミングPC市場全体にも波及していくと考えています。また、日本の豊富なゲームIPをPCで遊べるようになることで、さらなる需要も見込めるでしょう。

――日本市場において重要だったと感じる製品はありますか。

Chang 日本は特に携帯性を重視する傾向が強いです。そういった意味では、タブレット製品や2in1の「Transformer」、UMPCの「Eee PC」などはほかの地域と比べても日本で好評だったように思います。2025年に投入した「Zenbook SORA」はまさにこの傾向に鑑みて投入した製品になります。

――日本市場で今後特に伸ばしていきたいジャンルを教えてください。

Chang 日本はグローバルで見ても重要な市場の1つで、今後はPCだけでなくAIソリューションやAIサーバーなど、さまざまなソリューションに注力していきます。日本的な要素も取り入れながら、自社の戦略にあわせつつ日本での展開も進めていきたいと考えています。

Chen ASUSでは現在、PCからサーバーまで、すべての製品にAIを組み込んでいくことが大きな戦略です。難しい部分もありますが、AIを含むかたちでの製品作りを続けていきます。

部材高騰による影響は?

――AI需要によるメモリやストレージの不足/高騰が続いていますが、そのリスクについての考えを聞かせてください。

Chang この状況がどのぐらい続くかは不透明ですが、メモリ不足や価格高騰のプレッシャーは今後数年間続くと予想しています。ASUSではサプライヤーと長期契約を結んでいますので、メモリ、SSDともに現時点では深刻な供給不足には直面していません。しかし、値上げは避けられない状況にあります。

 ユーザーに対しては、透明性を持って情報を開示し、価格をできるだけ安定させられるよう努めていきます。一方で、現在最もボトルネックとなっているCPUの供給についても、ベンダーと協力しながら対応を進めています。

――特に日本においては円安や部材高騰の影響がありますが、日本市場における戦略や今後の見通しを教えてください。

Chu メモリについては長期契約による安定供給を図っておりまして、製品発売に際してはチャネルパートナーと協力して十分な在庫を確保できるよう取り組んでいます。また、価格改定については、可能な限り値上げ幅が小さくなるように努力しています。

Chang 加えて、価格高騰への対応としてマシンの再設計も進めています。ユーザー体験を損なうことなく、コストを最適化できるポイントをR&Dチームが調査しており、そうした製品は2026年後半に投入される見込みです。

20周年を迎えたROGのこれまでとこれから

――20周年を迎えたROGですが、20年間での成功や変化などについて伺えますか。

Chang パワーユーザー向けで始まったROGブランドは、その後ノートPC市場に参入しました。当初こそ順調でしたが、一時期はノートPCの一部門として扱われてしまい、フォーカスがズレてしまうこともありました。しかし、数年前にゲーミング部門として独立させたことで業績が改善し、独自の製品開発が進んだことはターニングポイントの1つだったと感じています。

 昨今では、クリエイター向けを想定した製品など、ピュアなゲーミングの分野から一歩出た製品も展開しています。ハンドヘルドゲーム機もその一環でして、今後もゲーマーのニーズをしっかり分析し、それに応える製品を投入することが、ROGブランドとしての鍵になると考えています。

――次の10年の展望について聞かせてください。

Chang 最終的なプロダクトがどういうものになるかは分かりませんが、今後はAIが重要な役割を果たしていくと考えています。ゲームにAIを活用するケースだけでなく、AI目的でゲーミングPCを使うといったケースも出てくるでしょう。また、今後は携帯性がさらに高まることで、タブレットやノート、ハンドヘルドといった境界線が徐々になくなっていくと思います。

――2画面ノートのような奇抜なアイデアと、実用性のバランスについてはどう考えているのでしょうか。

Chang ASUSには「Design Thinking」という設計思想があり、ユーザーが欲しいと思うか(Desirability)、実現可能か(Feasibility)、コストが見合うか(Viability)の3つを厳しく評価し、製品を設計しています。たとえば2画面ノートの例だと、フォルダブルディスプレイも検討しましたが、画面の凹みが気になることから、2画面を1画面のように使えるデザインを採用しました。実用性と購入可能な価格を維持しつつ、今後も新しい製品の開発に取り組んでいきます。

MacBook Neoは注視しつつも、まず目指すのはWindowsでの勝者

――Appleが投入した「MacBook Neo」についてどう感じていますか。

Chang 競合として注視はしていますが、まずは自分たちがやるべきこととして、Windowsエコシステムの中でリーダーとなることに集中しています。Design Thinkingの考えに基づき、実用性を見極めつつ、ユーザーが求める製品を投入していくことが重要です。2026年後半には、MacBook Neoと同ジャンルの製品を投入予定ですが、あくまでも重要なのはWindowsエコシステムで勝者となることだと考えています。

――「Snapdragon C」についての考えを聞かせてください。

Chang ASUSでは、Zenbookシリーズなどの開発を通じてQualcommと密接な協力関係を築いており、これまでにもミドル/ハイエンドクラスの製品を投入してきました。Snapdragon Cを搭載する製品も現在開発を進めていて、近いうちに市場に投入できる見込みです。

 Arm版Windowsへの評価についても、当初は印象が悪かった部分もありましたが、現在は社員が日常的に問題なく使用できるような状況にまで改善しており、一般的な用途においてはまったく問題ないと感じています。

AI開発注力に舵を切ったASUS

――各メーカーがAIを動かすPCやソフトウェアなどを打ち出してくる中で、ASUSとAIとの距離感について教えてください。

Chang ASUSはPCメーカーとして製品を展開し、進化を続けてきましたが、会長(Jonney Shih氏)が「AIのゴールデンタイムを迎えている」と述べているように、ここ数年はAI技術が急速に進歩しています。また、エージェントAIや生成AIの登場によってPCの用途自体も変化していくと思います。ですので、今後数年はAIを中心に据えた製品開発を進めていくことになると考えています。

 一方で、バッテリや画面解像度などといったPCの基礎技術もASUSにとっては重要なポイントであり、おろそかにはできません。ASUSとして最も大切にしているのは「ユーザーにとって使いやすいもの」です。薄さや軽さなどPCに求められるスペックを満たした上で、最高のAI体験を提供できることを重視して製品を開発していきたいと思います。