イベントレポート

ファーウェイが欲しがったキャリア展開、北米と日本の泣き笑い

ファーウェイブースで熱心にMate 10 Proをさわる米国人たち

 CES開幕の直前、日本でauが「HUAWEI nova 2 HWV31」を扱うことを発表した。

 auとしては初のファーウェイ製スマートフォンになるという。日本のファーウェイとしては悲願に近い快挙だ。

 この発表会が開催されたのが、日本時間1月9日火曜日の午後で、CESの開催されている米ラスベガスの太平洋時間では、1月8日月曜日夜の21時頃にプレスリリースが配信された。

 そしてその17時間後、CESの基調講演に、ファーウェイコンシューマービジネスグループCEOのリチャード・ユー氏が登壇し「Mate 10 Pro」の米国展開を発表した。

 日本ではキャリア展開、北米ではオープン市場展開という正反対の発表が、ほぼ時を同じくして行なわれているわけだ。

 リチャード・ユー氏によれば、北米のスマートフォンの9割はキャリア経由で販売されているという。にもかかわらず、今回のMate 10はオープン市場に投入し、より多くのユーザーにその存在をアピールしたいというのが、基調講演での論理だった。

 この経緯について、ユー氏は多くを語らなかったが、米国の大手キャリアでの販売が、直前にキャンセルになったことと無関係ではあるまい。

ファーウェイブースの様子

 端末がキャリア経由で9割を販売しているという点では、日本も同様だ。

 そのために、なんとかキャリアに扱ってもらいたいと、ファーウェイの日本法人はずっと積極的に営業活動を続けてきた。その成果が実って今回のauによる販売につながったわけだ。

 この時期の発表は、3月の商戦期を狙ったもので、だからこそ若者をターゲットにしたnova 2が選ばれた。

 auとのこれまでの7~8年に渡る付き合いの中で、日本のオープン市場において、ブランド力を着実に培ってきたファーウェイを、auというキャリアに扱ってもらうことで、さらに多くのユーザーに知って欲しいという目論見があると、ちょうどCESで渡米中だったファーウェイ・ジャパンで端末部門を統括するデバイス・プレジデントの呉波氏は語る。

 呉波氏によれば、auがファーウェイ製品を扱うことで、売れる数は桁が1つ違うくらいに売れるはずだという。つまり、オープン市場で扱う場合に比べて、10倍は売れるということだ。だからこそ、この協力関係は長期的なものとして継続し、単発で終わるようなことにはしたくないと呉波氏は言う。

 呉波氏はこうも言っている。auは、ファーウェイよりもずっと日本の消費者を理解している。だからこそauの知見にしたがって売ってもらうのだと。だが、このビジネスは、SIMロックフリースマートフォンの延長線上にあるとも言う。

 メーカーが端末を売る際にキャリアと組む場合、2つのやり方がある。1つはAppleやソニーのように、全キャリアに同じ端末を売るやり方、もう1つは、海外メーカーのようにキャリアごとに異なる端末を売るやり方だ。この時、その決定権はキャリア側にあるという。ファーウェイは後者を選ぶ。

 それでも、ファーウェイが日本のSIMロックフリー市場を今後さらに拡大する方針であることには間違いなく、日本のオープン市場を捨てるわけでもない。フラグシップ端末を、少しでも早期に日本のオープン市場に届けられるように務めるという。

 呉波氏は、自分がこの立ち位置を離れても後任者がその方針を引き継ぐと言っている。

 グローバルのビジネスとしても、オープンマーケットがメインで、グローバルモデルは、必ずオープンマーケットの異なるユーザー層に向けたものが確実に用意される。それをいち早く日本のオープン市場に投入するには、キャリア展開よりもオープン市場の方がやりやすい。

 ただ、日本の市場は学ぶことが多く、たとえば、ソフトバンクの孫正義氏が考案したデジタルフォトフレームなどは、まさにその典型だと呉波氏はいう。

 だからこそ、今回の扱いを機に、auからさらに多くの消費者ニーズを学び、それをオープン市場に活かして、ビジネスをさらに拡大する。それを日本のファーウェイの成功につなげたいと呉波氏は語った。

 本当は、リチャード・ユー氏もこの展開でMate 10をアピールしたかったのかもしれない。

ファーウェイ・ジャパンで端末部門を統括するデバイス・プレジデント呉波氏