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UIの刷新と機能追加、性能向上が図られた「Radeon Software」
(2015/11/24 22:01)
日本AMD株式会社は24日、AMDの新ソフトウェア「Radeon Software」についての詳細な情報を公開した。
その説明会にはAMD Global Head of VR & Software MarketingのSasa Marinkovic氏、AMD Software Strategy Senior Manager/Software Engineering Terry Makedon氏が登壇し、Radeon Softwareについて語った。
AMDは、9月9日に同社GPU部門の組織再編を行ない、新組織「The Radeon Technologies Group(RTG)」を設立している。
Marinkovic氏によれば、RTGのトップとなったRaja Koduri氏は、まず最初に「ハードウェアを最大限活用するためにはソフトウェアが必要不可欠で、ソフトウェアをより重視し、ハードウェアと同等の重要度として扱うべき」と述べ、以降、RTGでは、Catalystに替わる新たなソフトウェアスイートの開発を行なってきたという。
そして11月2日、AMDは、Radeon Software最初のリリースバージョン「Crimson Edition」の投入を発表した。名前のCrimsonは日本語で深紅を指すが、今後のバージョンも赤の色味から命名される予定だという。
Marinkovic氏は、今回CatalystからRadeon Softwareへと移行するのは、没入型コンピューティング時代の到来を見据え、今が最適な時期であると判断したためだと述べた。
Marinkovic氏は、13年間に渡り提供してきた「Catalyst」について、安定性と性能、多くの機能を備えたものとして、有効に活用されてきたと述べ、中でも2014年に提供されたOmega Driverは、ダウンロード数6,000万回を数え、ユーザーの満足度も19%以上向上するなど、非常に好評であったという。
以前のCatalystは、毎月アップデートを公開していたが、ユーザーから「頻度が高すぎる」というフィードバックが多数寄せられたことを受け、2015年のメジャーリリースは、Omegaの公開とWindows 10対応アップデートのための計3回のみとなっている。
それらを踏まえ、2016年以降では、最大で年6回程度の公開を限度に、バランスを考えつつ決定していくとした。
ゲームへの最適化については、2015年には9本のベータドライバを提供し、Grand Theft Auto VやStar Wars: Battlefront、Call of Duty: Black Ops 3などのタイトルに対して発売前から対応を完了するなど、サポートを強化しており、今後も同様に、必要に応じベータ版を公開していくという。
安定性/信頼性を重視したRadeon Software
Marinkovic氏は、Radeon Softwareは、安定性と信頼性という基盤の上に、ユーザー体験(UX)、多数の機能、性能向上、省電力性を備えた「革新的なソフトウェアスイート」とした。
まず安定性について、Catalystでもテスト項目を増やしていたが、Crimson Editionでは、Catalystからさらに自動化テストを2倍、マニュアルテストを25%、環境別テストを15%増やし、公開前時点での高い安定性を実現しているという。
また、もし問題が発生してしまった場合には、レポートを送信してもらえれば可能な限り迅速に対処するとした。
UXの改善については、従来のCatalyst Control Center(CCC)からUIが大きく変更され、ナビゲーションが向上したほか、CCCが起動に6~8秒必要だったのに対し、Radeon Settingsでは0.6秒と、10倍以上高速化されている。
Radeon Settingsは、C++ベースのアプリケーション開発フレームワーク「Qt」を採用し、1から再設計されており、このQtの採用で前述の大幅な高速化を実現できたという。
Radeon Settingsだけでなく、ディスプレイの初期化についても、従来の11秒から3秒へ高速化し、ドライバやファイル、レジストリも含め完全に削除可能な「クリーンアンインストールユーティリティ」も提供される。
多くの機能が追加されたCrimson Edition
新機能については、Makedon氏による解説が行なわれた。
まず1つ目はVR向けSDK「LiquidVR」で、マルチGPU環境での最適化や、非同期シェーダによる低レイテンシ描画などへ対応したという。ただし、非同期シェーダはGraphics Core Next(GCN)搭載GPUでのみサポートとなっている。
2つ目はFreeSyncの拡張で、HDMI経由でのFreeSync対応、新たにCrossFire構成時のDirectX 9ゲームをサポート、「Low Framerate Compensation」(LFC、低フレームレート補完)機能が搭載された。HDMIケーブルでのFreeSyncに対応したディスプレイは現時点では存在しないが、ドライバ側でサポートすることで対応製品も登場するだろうとしていた。
LFCは、ゲームなどのアプリケーションの実行フレーム数が、ディスプレイの最低リフレッシュレートを下回った場合でも、アルゴリズムにより最適化を行ない自動でGPUとディスプレイのリフレッシュを同期させるというもので、FreeSyncと組み合わせた場合、ティアリングの無い滑らかな映像となるが、FreeSync非対応ディスプレイとの組み合わせでも、ティアリングやブレが低減されるという。
3つ目は、マルチGPU環境での描画を安定させる「フレームペーシング」のDirectX 9対応で、DirectX 9動作のタイトルが多いeスポーツなどに効果的とした。
4つ目は、カスタム解像度の作成対応で、ユーザーの要望に応えたもの。タイミングやピクセルクロックも設定可能だという。例えば1,920×1,080ドット表示の液晶ディスプレイに対し、2,560×1,440ドットの解像度を設定し、擬似的に高解像度表示して作業領域を拡張することもできる。
5つ目は、各種ビデオ向け機能の拡張と新機能の搭載で、APUの対応と、モーションブラーの低減やシャープネス補正、“ビデオ版アンチエイリアシング”と言えるAdaptive Directional Filtering、ビデオ単位でのダイナミックコントラスト調整機能などを新たに備える。
6つ目は、シェーダのキャッシュ機能の搭載で、通常、アプリケーションを終了すると破棄されてしまうコンパイル済みのシェーダを、ローカルストレージにキャッシュとして保存しておくというもの。ゲームのロード時間の短縮や、コンパイルタスクによるカクつきの低減などに繋がるという。実際にStar Wars Battlefrontでは、ロード時間が33%高速化したほか、Witcher 3でのカクつきの低減を確認したとしている。
DirectX 12やLinuxへの最適化で性能向上
性能向上の面では、最適化によりDirectX 12ベンチマークで20%のスコア向上を実現したほか、Fable LegendsやAshes of the Singularity、Call of Duty: Black Ops 3、Star Wars: Battlefrontなどの最新タイトルで最大15%ほど性能が向上。
Linuxでの最適化も進めており、OpenGL動作のDOTA2やPortal 2、Total Warなどのタイトルで性能が向上しているという。
「Flip Queue Size」の最適化で、DirectX 9/10/11動作のアプリケーションにおいて、マウスやキーボードの入力が反映されるまでの時間が短くなっているとした。
省電力機能については、アプリケーションの実行フレームレートを指定することで、必要とされる電力を抑える「Frame Rate Target Control(FRTC)」を搭載。ゲームを90fpsで動作させていた場合の消費電力が175Wなのに対し、FRTCで55fpsへ制限することで61Wまで削減できるという。なお、FRTCでは30~200fpsまで指定可能。
またビデオ視聴時の電力消費も、最適化により21%削減しているという。