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薄型ノートでゲーミングを可能にするIntel Xe GPUまとめ
〜ゲーム認証プログラムが日本国内でも開始
2020年11月17日 18:06
インテル株式会社は17日、オンラインでクライアント向け新製品に関する記者説明会を開催。このなかでTiger Lakeこと第11世代Coreに関する説明が行なわれたほか、そのCPUに内包している「Xe」アーキテクチャのGPUについても解説された。
Xeアーキテクチャの概要についてはすでにこれまでPC Watchで説明しているが、ここで改めて整理しておくことにしたい。
そもそもなぜIntelがGPUを作るのか
IntelはこれまでもCPUに統合されるGPUについては継続的に開発してきたし、LarrabeeやXeon PhiといったGPUに近い感じのプロセッサを開発してきたが、コンシューマが使えるディスクリートGPUとしても利用できるアーキテクチャは、じつにIntel 740以来となる。
その根本にある考え方が、製品のデザインがトランジスタ主導のものからニーズ主導に、アーキテクチャがCPU主導のものからXPU主導のものに、そしてソリューションが単なるシリコンからシリコン+ソフトウェアに変化したことだ。つまり、多種多様なワークロードに対しスケーラブルに対応できるソフトウェアのニーズが生まれたからだ。
たとえばCPUが得意とする処理はもちろんあるが、GPUやFPGA、専用アクセラレータが得意とするワークロードも存在する。各々の処理に特化/最適化した半導体を提供して、効率よく処理してこそ、ソリューションを提供したことになるというのがIntelの考え方。そのうちの1つとしてGPUを用意する必要があり、それを実現するための切り札がXeというわけだ。
もちろん、IntelはXeという半導体だけを提供しても無意味だと考えている。CPUとGPU、アクセラレータとFPGAが混在するシステム(つまりXPU)は効率よく処理をこなせるが、各々で動くコードが異なるのでは、開発者にとって負担になる。
そこで同社が提唱しているのが「oneAPI」。「Data Parallel C++」という言語で記述しておき、動作するターゲットのプロセッサの1行だけ書き換えれば、自動的にそのプロセッサ上で動作するバイナリにコンパイルされて実行でき、最適化が容易に行なえるというわけだ。
もっとも、これらはサーバーやデータセンター向けのスケールの大きい話で、一般消費者にはあまり関係がないように思うかもしれない。しかし昨今、コンシューマでもAIを使ったソフトウェアが多く登場してきており、そのためにIntelはAI処理に特化した命令セットや仕組みをCPUに取り入れている。
さらに、PhotoshopのようなアプリケーションではGPUを多用しており、昨今PCゲーミングが生活や文化、コンテンツの一部となっているような状況下では、ますますGPUの重要性が高まっている。そこをビジネスチャンスだとしてIntelは捉えており、コンシューマのニーズからデータセンター、高性能コンピューティングまでをカバーできるGPUアーキテクチャを開発するに至り、それがXeであるというわけだ。
Intelだからこそできた、Iris Xe MAXとTiger Lakeとの高い統合性
前置きが長くなってしまったが、Xeのバリエーションと詳細について改めておさらいしておこう。Xeは現時点で4つのラインナップが予定されており、提供開始した第11世代Coreに内包されているものと、ディスクリートGPUとして出荷されている「Xe-LP」だ。
Xe-LPは96EUを搭載したコンパクトなGPUである。機能面では可変レートシェーディングや、Intel DLBoost命令「DP4A」、AV1のデコード、エンドツーエンドの12bit処理、PCI Express 4.0に対応する。CPUに内包されているものの周波数は1.35GHz、ディスクリートGPUに当たるIris Xe MAXは1.65GHzで動作。後者は専用のメモリを4GB搭載し、バンド幅は68GB/sとなっている。
Iris Xe MAXは現時点では第11世代Coreとの組み合わせでのみ出荷されている。特徴としては、CPU内包GPUのドライバも、Iris Xe MAXのドライバも1つのパッケージになっていること。これによって高い統合性「Deep Link」を謳っている。
たとえば、CPUとディスクリートGPUをノートに収めた場合、熱設計や電力はCPUとGPUが共有することになる。他社のソリューションでは、CPUの負荷が高い場合、GPUの電力や熱処理の余力をCPUに回すことが難しく、CPU/GPUの電力は固定値に設定するしかない。それが第11世代Core+Iris Xe MAXだと、各々のプロセッサの負荷に応じて、負荷がかかっていないほうの余った電力と熱処理能力をかかっているほうに回せる「ダイナミックパワーシェア」という仕組みによって、各プロセッサの性能を最大限に発揮できる、という具合だ。
また、先述のとおりGPUもDP4A命令を処理でき、共通のソフトウェアフレームワークで動作しているので、CPU内蔵GPUとうまく協調動作でき処理速度を高速化できる。さらに、エンコード処理に関しても並列処理が可能なため、GeForce RTX SUPERの2倍スループットを達成できるとした。なお、この並列エンコード機能は現在実装されておらず、2021年上期の投入を目指している。
ちなみにIris Xe MAXの性能は、1080p解像度の環境下においてGeForce MX350+α程度。これには先述のダイナミックパワーシェアのおかげというのもあるだろう。Intelとしても第11世代Core内蔵のXeも含めて、ヘビーゲーマー向けではなく、エントリーゲーミングとして位置づけており、ゲームの裾野を広げる役割を担ぐことになる。
すると当然、初心者にとって「どのゲームがIris Xeで動作するの?」という疑問と不安が湧くわけだが、インテルでは日本でも「Iris Xeグラフィックス検証サポート・プログラム」を開始し、認証済みタイトルおよび検証済みパソコンの情報を同社のサイトで公開していくとのことだ。
この検証プログラムはIris Xe MAX発表時に、バンダイナムコやコナミ、コーエーテクモ、セガなどが賛同していたが、このたび新たにカプコンが加わり、「ストリートファイターV」も認証済みゲームタイトルとして登録された。このほか、国内タイトルでは「ライザのアトリエ」も認証済みとして登録している。海外のゲームタイトルとしては「Apex Legends」や「フォートナイト」、「PUBG」といった人気のバトルロワイヤル系が入っており、今後こうしたゲームをカジュアルに楽しむだけなら、薄型ノートで十分ということになる。
なお、検証サポートプログラムに賛同しているパソコンメーカーとしては、ASUS、Dynabook、富士通クライアントコンピューティング、HP、NECパーソナルコンピュータ、ユニットコムを挙げており、実機をインテルに貸し出して動作検証を行なっている。よって、上記のタイトルはこれらのメーカーの第11世代Core搭載ノート上では問題なく動作するという認識でいいだろう。
Xe-LPはエントリーゲーミングの需要を十分に満たせるものなのだが、これはXeのはじまりにしか過ぎない。本格的なゲーミングが可能な「Xe-HPG」についても現在ラボで動作している段階で、2021年中に投入される見込みだ。