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「Google for Education」が変える遠隔学習の在り方。多彩なツールが授業を支援

 Googleは、「Google for Education」を活用した遠隔学習の活用状況などについて、オンライン会見を行なった。

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、遠隔授業の導入や、デジタルツールを活用した学習指導管理が進展するなど、教育現場でも大きな変革がはじまっている。同社では、Google for Educationが、こうした教育分野の大きな変革を支えていることを強調する。

Google for Education APAC統括のColin Marson(コリン・マーソン)氏

 Google for Education APAC統括のColin Marson(コリン・マーソン)氏は、「Google for Educationは、日本における教育の変革にコミットしている。学習は生徒中心であり、インタラクティブであり、魅力的なものでなくてはいけない。そして、どこにいても、いつでも学べることが大切であり、いまこそ、その実現が求められている」と前置きし、次のように続けた。

 「Google for Educationでは、Chromebookのような教育現場に最適な端末と、G Suite for Educationによる管理がしやすいツールを提供している。

 現在、世界中で、数百万人の生徒や教員が、Chromebookを使用しており、米国やニュージーランド、スウェーデン、カナダ、オランダでは、Chromebookがもっとも使われているデバイスになっている。

 また、強力なコラボレーションツールであるG Suite for Educationは、教室内での利用だけでなく、遠隔授業にも利用できる。G Suite for Educationで提供されるGoogle Classroomでは、宿題の採点やGoogle Meetを利用した生徒とのコラボレーション環境も実現できる」などとした。

Google Classroomの画面
Google Classroomの特徴

 授業支援アプリの「Google Classroom」では、課題の一元管理やルーブリック評価、成績のエクスポート、保護者との連携、各種アプリとの連携機能などが特徴で、新型コロナウイルスの感染拡大以降、新たにGoogle Meetとの連携機能を追加。Google Classroomから、すぐに遠隔授業が開始できるようにしているという。

 また、Google Classroomと同様に、G Suite for Educationに含まれるGoogleフォームでは、自動採点や自動集計機能、児童生徒の理解度の可視化や、意見のリアルタイムでの可視化も可能にしており、遠隔授業における学習効果の向上と効率性を実現している。

Googleフォームの特徴
Googleフォームで作成した質問
Googleフォームで生徒の健康状態を確認する

 同社によると、Chromebook は、世界で約4千万台が教員や生徒によって利用されているほか、G Suite for Educationは1億2千万人が利用しているという。2020年3月はじめのGoogle Classroomの利用者数は5千万人だったが、3月末時点では1億人と2倍に増加。アジアでは、国が主導するかたちでG Suite for Educationのアカウントを取得し、ひとりひとりの生徒に付与するといったこともはじまっている。

 「新型コロナウイルスの感染が拡大する環境下において、Google for Educationが提供するさまざまなツールが、教育現場で活用されていることが裏づけられている。これらのツールは、教育体験を変革する上で役に立つことができる。作業時間の削減やコラボレーションの強化にも使うことができ、同時に生徒の好奇心を刺激するものになっている」とした。

 一方、日本では2020年3月から、GIGAスクール構想に対応したGoogle GIGA School Packageの提供を開始(Google、管理などの無駄な時間を減らし4万5千円以下で提供可能な「Google GIGA School Package」を開始参照)。

 「文科省のGIGAスクール構想は、Googleのヴィジョンとも一致している。日本全国の自治体から関心が寄せられており、1人1台にChromebookを提供し、教育変革に貢献できることをうれしく思う。GIGAスクール構想を支えていきたい」と述べた。

 さらに、2020年4月には、ユネスコ教育情報工学研究所とともに、「家から教えよう」と呼ぶサイトを立ち上げ、日本語を含む世界28カ国語で展開。教員が遠隔授業を行なう上で活用できるツールや情報を提供していることも紹介した。

 「『家から教えよう』は、Google主導で立ち上がったサイトであり、先生が自宅から教えるさいに役に立つ情報やノウハウ、ツールがまとまっている。世界中の先生に、さまざまなリソースを届けたいと考えている。家から教えることは、ニューノーマルになる。このサイトは、今後もアップデートを続けていく」とした。

 また、「Google for Educationは、教員の意見を反映し、改善を加えている。コロナ禍ではプロダクトが新しいかたちで使われており、教員からの意見を反映する取り組みは継続しているだけでなく、加速している」などと述べた。

 今回の会見では、Google for Educationを活用している教育現場の事例も紹介された。

埼玉県立越谷南高等学校の勝部武教頭

 埼玉県立越谷南高等学校では、2月28日からの3カ月間にわたって休校が続いたが、4月7日に発令された緊急事態発言から2日後の4月9日には、Google Classroomを活用して教育を再開することを決定。4月13日には、担任教員が順次、Classroomを開設。14日には、教科指導のための動画配信、課題配信が開始された。

 埼玉県立越谷南高等学校の勝部武教頭は、「これだけ早いタイミングでGoogle Classroomを活用できたのは、教員の強い使命感と、埼玉県の教育ICT整備事業を有効活用してきた背景がある。ICTを活用した授業の実践によって、教員の意識と指導スキルの改善を図ってきた成果である」とする。

越谷南高校でのClassroomの活用例

 2019年度には44台のタブレットを活用して、教員に活用方法の研究を働きかけたほか、BYODの実証研究校として、教科指導とクラス経営の研究を行ない、ICT活用のための校内研修会も実施した成果を挙げる。

 「校内研修会で採用したのがGoogle for Educationの教育ツールだった。こうした取り組みが、本校におけるICT活用スキルを向上させるきっかけとなっており、休業対応に追われる前から、全教員がG Suite for Educationを知っていた。これが大きなアドバンテージとなった」と振り返る。

越谷南高校のICTへの取り組み
越谷南高校の取り組み

 もちろん、当初はすべての教員が、デジタルツールを使いこなしていたわけではなかったが、先行してClassroomを開設した教員の事例を見たり、教員同士が情報交換を行なうなど、職員室内でもツール活用に関する情報交換が活発化。これによって、教員の間で、G Suite for Educationの活用が一気に広がった。

 「ゴールデンウイーク明けには、Google for Educationのさまざまな機能を活用して、課題資料の共同作成や、自己紹介動画の作成、スケジュール機能を活用した生徒自らの予定管理、テレビ会議機能による生徒の個別相談に対応するといったこともはじまった」という。

越谷南高等学校の平原雄太教諭

 越谷南高等学校の平原雄太教諭は、「新学期になり、自己紹介する動画を作り、Classroomで公開したり、進路指導調査票をClassroomを通じて生徒に配布。Google Meetを使用してWeb面談も行なった。また、教科指導では、解説や実験などの動画を作ったり、生徒の学びを止めないため、授業動画も配信した。また、Googleフォームには理解度や授業評価を入力し、生徒の状況を見える化するとともに、教員自身の学びにもつなげることができた」と述べた。

 5月末時点で、教科指導のために作成した動画配信数は319本に達したほか、学校業務のさまざまな場面においてもClassroomが活用されたという。

越谷南高校での動画教材の例
越谷南高校では数多くの動画を作成し配信した

 越谷南高校の勝部教頭は、「これまでは生徒の主体性を育みたい、生徒が進んで学んだり、行動してほしいと思っているが、時間をかけた学習ができず、全員に理解させなくてはいけない、失敗させられないといったこともあり、効率重視の教え込み型授業にとどまるなど、既習の手立てを変えられなかった。

 だが、ICTの活用による新たな教育環境が実現したことで、学ばせ方の見直しと学び方の見直しにつながり、生徒が自分のペースで学習を進めたり、生徒にわかりやすい動画を作るといった動きにもつながった。主体的な学びが実現できるようになり、これまで改善したくてもできない課題が解決できるヒントが見えた。新たな学びのかたちが芽吹きはじめた」とする。

 同校の教員からは、通常授業が再開しても、授業を補完する学習教材として動画を作り続けたいという声があがっており、今後も継続的にClassroomの活用を進める考えだ。

 一方、関西学院千里国際中等部・高等部では、3月の休校期間中にDistance Learning(遠隔授業)を実施。4月からは、時間割どおりに、オンラインを活用した授業を実施してきたという。

関西学院千里国際中等部・高等部の岡本竜平教諭

 関西学院千里国際中等部・高等部の岡本竜平教諭は、「午前8時~8時30分の間にGoogleフォームで出欠を確認し、ホームルームを実施。午前8時30分から午後3時30分まで授業を行なっている。すべての授業でClassroomを立てて、教員と生徒がコミュニケーションを取りながら授業を進めている。活用の仕方は教員それぞれであり、ずっとオンラインだけで学習をするというわけではない。そのため、Distance Learningという名称で呼んでいる」とする。

 4月29日には、オンライン上で授業参観を実施。5月23日には、高等部の生徒会が主催するかたちでFilm Festival(学園祭)をオンラインで開催。今学期中は、Distance Learningを継続する予定だという。

関西学院千里国際中等部・高等部でのClassroom活用の経緯

 同校では、2012年から、貸し出し用iPadを用意し、ワントゥワンコンピューティングを実現。2017年から、個人が所有するPCを授業で活用するBYODの仕組みを導入するなど、ICT活用には先進的だ。

 「授業参観では、生徒だけでなく、保護者にも授業に参加してもらい、一緒にゲームをやった。20人の教室に、保護者を含めて30人以上が参加するなど、オンラインの状況を有効に利用した授業参観ができた」とする。

関西学院千里国際中等部・高等部のICTへの取り組み
関西学院千里国際中等部・高等部は専用サイトを公開
関西学院千里国際中等部・高等部の授業参観では保護者も参加
関西学院千里国際中等部・高等部では保護者からの評価が高い

 また、生徒同士が、Google Meetを活用しながら、「光合成」を題材にした絵本を共同で制作。その取り組みを通じて学ぶという授業も実施したという。

関西学院千里国際中等部・高等部では生徒が共同で絵本を制作

 「生徒からは、遠隔でもグループワークができたことを喜んだり、絵本を作成することでより深く学ぶことができたといった声のほか、共同作業においてはスケジュールを守らなくてはならないため、責任感が生まれたといった声も上がった。

 また、保護者にアンケートを取ると、遠隔授業に対する評価は高く、5段階で4と5の評価の合計が79.7%に達した。家庭の協力がないと実現できない教育方法であり、生徒と保護者と教員(学校)が一緒になって作り上げていくものである。おたがいにリスペクトして教育活動を行なうことが大切である。さらに、それぞれの学校によって状況はさまざまであるため、最適な方法を考える必要がある」と述べた。

 その一方で、生徒のスクリーンタイムが長くならないように配慮したり、オンライン上に保健室やカウンセリングルーム、進路サポートセンターなどを開設して、生徒をケアしていることも重要だと指摘した。

 なお、同校では、Distance Learning専用サイトを開設しており、実践事例などを紹介しているという。