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Google、管理などの無駄な時間を減らし4万5千円以下で提供可能な「Google GIGA School Package」を開始
2020年3月17日 14:53
Googleは、文部科学省が推進する「GIGAスクール構想」に準拠した「Google GIGA School Package」を発表した。
Google GIGA School Packageは、Chrome OSを搭載した「Chromebook」、クラウドベースの教育向けプラットフォーム「G Suite for Education」で構成。また、教員向けに新たにKickstart Programを用意することを発表。無償で提供する。
Google GIGA School Packageの特徴
Google for Educationをグローバルに統括するグローバル ディレクターのジョン・ヴァンヴァキティス(John Vamvakitis)氏は、「Google GIGA School Packageは、GIGAスクール構想にうってつけのパッケージである。また、Kickstart Programの追加によって、地方政府や市町村も、教室のなかでツールを使い、効果を出すことに自信を持つことができる。1人1台のデバイス環境によって、教育が変革する。日本政府の取り組みは、Googleの教育ソリューションの方向と合っている」などと語った。
同社によると、2019年4月時点で、Chromebookは全世界で4,000万台が利用され、G Suite for Educationは9,000万人が利用しているという。
「Googleが目指してきたのは、教育を変革することである。教室の未来を考えたときに、テクノロジを使うことで教室を再構築し、教員も自信を持って教えられる環境を作ることを目指した。Google for Educationは、過去10年間にわたり、教育関係者とともに仕事をし、生まれてきたものである」とする。
また、「Google for Educationは、簡単に管理することができ、Chromebookをはじめとして手に入りやすい価格で、ツールを教室に届けることを目指している。そして、G Suite for Educationによって優れたコラボレーションを実現できる」と語った。
ヴァンヴァキティス氏は、Google for Educationの特徴を4つの観点から説明した。
1つ目は、クラスを簡単に管理できる点。IDCの調査によると、59%もの管理に関わる時間を短縮できるという。
2つ目は、手に入りやすい価格という点だ。GIGAスクール構想で示された45,000円以下の価格で整備でき、G Suite for Educationは無償で提供。3年間の全体コストを57%も削減できるという。
3点目には、クラウドベースの汎用性を実現し、いつでも、どこでも、どのデバイスからも、セキュアに、安全にアクセスできる点だ。デバイスを学生間で使い回しできることも特徴だとした。
そして、4つ目がインパクトを生み出す点。時間やコストの削減だけでなく、子供たちがもっと興味を持ち、学習成果が出ていることを示した。
「スウェーデンでは、Google for Educationを導入した学校の小学校3年生が、それを導入していない学校の児童と比べて、国語と算数の学力テストにおいて、成績が20%高いという結果が出た」という。
日本では、埼玉県や神奈川県、町田市、姫路市などでGoogle for Educationが導入されていることも紹介した。
「ここ数年で、日本でも多くの学校でGoogle for Educationが利用されている。町田市では、Google for Education を導入してから6カ月以内に、教員が1日1時間の時間削減が可能になり、年間で200時間の余裕ができた」という。
町田市でのGoogle for Education導入事例
会見では、Google for Educationを導入し、小中学校のICT化を推進している町田市教育委員会の事例を紹介した。
町田市教育委員会 指導室長の金木圭一氏は、「町田市は、2017年度からChromebookの導入を開始し、今年度には小中学校全62校に対して、児童生徒用が40台、教員用に1台の環境が整った。Chromebookを選択したのは、子供たちには将来キーボードが必ず必要であること、低学年の児童が使うにはタブレットを兼ねることが必要であること、教員にはも1人1台を配布すること、クラウドで管理でき、教員の働き方改革にもつながり、HDDに情報が残らない点も評価した。また、保守点検の費用が不要であること、本体が廉価であることが理由。児童生徒が、社会に出て活用できる将来を見据えて選択した」と述べた。
さらに、「同時編集が可能」、「共有が容易」、「可視化が短時間」、「編集履歴が残る」、「場所を問わない」、という5つのメリットがあるとする。
また、「協働学習のやり方が変わり、全員で作業をしても、履歴をもとに、誰に指導をすればいいのかがわかるようになった。LTEとChromebookとの組み合わせで導入をしていることから、場所を問わない働き方ができる。
これまで、導入校による研修を行ってきたが、全員を集めた教員教育には限界がある。ICTマスターを認定したり、モデル校による授業公開や集合研修を行なっている。15分程度で学ぶことができるパッケージがあると教員に対する研修を実施しやすい。
ICT機器はツールであり、目的ではない。大切なのは教員が授業をデザインする力を持つことであり、それができなければ、Chromebookの1人1台環境となっても教育は変わらない。文房具と同じようにChromebookを活用できる教員を育てたい。
児童生徒の学び方の変化、指導方法の改善、物理的環境変化のほか、これからは保護者との連携や、保護者負担という課題もある。そしてデジタル教科書をどう活用していくのかというテーマもある。1人1台による変化を捉えて、現場とともに課題解決に取り組んでいく必要がある。活用アイデア集の活用や、学校と家庭の連動などにも取り組んでいく」などとした。
現在の臨時休校時におけるChromebookの活用については、「現時点では1人1台の環境が整っていないこと、家庭において通信環境が整っていない現状も課題だ。GIGAスクール構想が実現しても、家庭内の通信環境が整わないと学校だけの学びに終わってしまう。家庭での学びとの連動性や継続性を大事にしたいと考えている。
LTEを活用した研究活動をはじめているところである。一方で、G Suite for Educationが自宅でも利用できること、校務支援システムとの連携もできているため、教員に対しても3月2日には、自宅勤務を指示することができた」などと述べた。
一方、ヴァンヴァキティス氏は、Chromebookについても説明。「Chromebookは、過去3年以上にわたり、米国の教育分野においてナンバーワンシェアを獲得。60%以上のシェアを持つ。また、ニュージーランド、カナダ、スウェーデン、オランダなど、教育制度の進んだ国に広範囲に導入されている。シンプルなデザインで、汎用性があり、すぐに起動し、バッテリ駆動時間も長い。そして、安全である。教育にももっとも理想的であり、鉛筆やノートと同じぐらいに簡単な仕え、生徒、児童の学びの友になる」とした。
日本では、日本エイサー、ASUS、デル、日本HP、レノボ・ジャパン、NECの6社から、14製品が投入されている。
Chromebookには、MDM(Mobile Device Management)である「Chrome Education Upgrade」が搭載されており、どこにいてもクラウドから端末を簡単に設定および管理ができ、数クリックだけで、250以上のポリシーをカスマイズして設定できるとした。
G Suite for Educationについては、「無償で提供されるクラウドベースのパッケージで、教員の生産性を高め、生徒は共同で作業を行なったり、興味を持った効果の高い学びを享受できる。日本では、Canvaとの連携により、縦書き文字もサポートすることができる」と述べた。
さらに、Kickstart Programに関しても説明。Kickstart Programは、教育委員会の運用管理のセットアップ支援、教員の業務負担を軽減するためのスキルアップなどを無償で提供するものだ。具体的には、教育者向けに、授業に役立つ目的とレベルに合わせてコースを選択できる無料の「オンライントレーニング」、個人トレーナーや教員研修プログラムを提供する認定パートナーを通じて、導入サポート、IT サポートなどを提供する「トレーナーネットワーク」、テクノロジの活用で充実した教育を実現するために、教育者同士が学び合える場となる教育コミュニティ「GEG」などを提供する。
一方、文部科学省初等中等教育局情報教育・外国語教育課長の高谷浩樹氏は、「日本の学校教育がICT化から、かなりかけ離れており、自治体の理解も進んでいない。また、整備や活用には地域間格差も出ている。OECDの調査でも、日本の子供の情報活用能力は、世界的に見ても遅れが出ており、ゲームやチャットには使っているが、学びの場には使っていないという危機感がある。そこで、政府として、大きな予算措置をしたのがGIGAスクール構想である」とする。
そして、「整備にコストがかかるというイメージが自治体および現場に広がっていた。全国一斉に整備をすることから、端末自体もシンプルにして、ブラウザベースで動くようにし、クラウドを活用してもらうようにした。これにより、国が補助する45,000円で十分整備ができるというモデルを示している。
だが、まだ浸透しておらず、理解してもらっていない。そこで、GIGAスクール自治体ピッチを開催し、45,000円でどんな整備ができるのかを知ってもらう機会を設ける。いまは、自治体に、どう整備していいのかが伝わっていないのが問題である。学校現場や日本全体が、学びにICTを使うということが普通であり、それを知ってもらう必要がある」などと述べた。
経済産業省サービス政策課長および教員産業室長の浅野大介氏は、「経済産業省では、1人1台を前提にした『未来の教室』の実現に、過去2年間にわたって取り組んできたが、GIGAスクール構想の実現によって、これが全国に広がっていくチャンスが広がった。体験してもらうための未来の教室キャラバンも進めている。一方で新型コロナウイルスの広がりにあわせて、休校中の児童生徒のために、『#学びを止めない未来の教室』プロジェクトを進めている。今回のことをきっかけに、新たな学びの姿を体験してほしい。GIGAスクール構想の実現につながればと思っている」とした。