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理研ら、地球温暖化防止につながるバイオディーゼル燃料合成触媒を開発

シリコンナノ構造体担持ロジウムナノ粒子触媒(SiNA-Rh)の写真。(左)上から見たところ、(中)断面を走査型電子顕微鏡で見たところ、(右)透過型電子顕微鏡でさらに拡大したところ。黒い粒子がロジウムナノ粒子(平均粒径4nm)

 理化学研究所(理研)分子科学研究所中部大学東京工業大学九州大学らによる研究グループは、従来より高活性で再利用性の高い第2世代バイオディーゼル燃料合成用の固定化触媒を開発した。省資源かつ省エネルギーでカーボンニュートラルな燃料合成を実現する。

 バイオディーゼル燃料は化石燃料の代替品として期待されており、とくに炭化水素で構成される第2世代バイオディーゼル燃料は、第1世代が持つエンジンへの負担やエネルギー効率の問題点が大きく解消されている。しかし合成プロセスにおいて、高濃度の触媒(数モル%)を必要としながら触媒の再利用性が低いことや、反応を20~40気圧の水素下で行なう必要があること、製造に数百W程度の大きなエネルギーを要するなど、効率的な製造を行なう上で課題が多かった。

 同グループでは、第2世代バイオディーゼル燃料の製造に用いる新たな触媒「シリコンナノ構造体担持ロジウムナノ粒子触媒(SiNA-Rh)」を開発し、実際に合成実験を行なった。

SiNA-Rhを用いた第二世代バイオディーゼル燃料の合成

 SiNA-Rhは、シリコン基板を使って作製した太さがナノサイズの細長いワイヤー(シリコンナノ構造体)に、ロジウムナノ粒子を担持させた触媒。合成実験では、バイオマス由来の遊離脂肪酸「ステアリン酸」を基質とし、これに対して1/2,000モル当量(0.05モル%)のSiNA-Rhを用いて、40W程度のマイクロ波照射を通じで温度を200℃に保ちながら、水素雰囲気下で24時間還元反応を行なった。この結果、炭化水素(ヘプタデカン)が90%以上の高収率で得られた。

 さらに、この実験で用いたSiNA-Rhを20回再利用した場合でも収率は80%以上を維持しており、触媒活性の大幅な低下がみられなかったほか、合成プロセスにおいて、共生成物として一酸化炭素は生成されるものの、二酸化炭素は検出されなかった。

 一酸化炭素については、フィッシャートロプシュ法を通じた液体炭化水素合成の原料として利用できる上、合成に必要な水素は再生可能エネルギーを利用した製造が実現しつつあることから、同グループではカーボンニュートラルで省資源かつ省エネルギーでバイオディーゼル燃料の合成が可能であるとしている。

 なお、通常と同じように200℃(オイルバス)や300℃(サンドバス)の外部加熱で24時間反応を行なった場合や、マイクロ波照射条件で既存のロジウム触媒(Rh/C、Rh/Al2O3、Rh/Si、塩化ロジウム)を用いた場合は反応が進行しないことがわかった。この要因についてはまだ解明に至っていないという。

 一連の研究により、バイオマス原料と水素、マイクロ波を用いた省資源かつ省エネルギーな第2世代バイオディーゼル燃料の生成が可能となった。同グループでは、反応プロセスの改良により、触媒とマイクロ波を利用した新たな医薬品や有機半導体などの有機機能性物質の合成プロセスの開発につながるとしている。