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産総研と理研、柔軟性を制御できるバイオマス原料の機能性ポリマーを開発
2020年10月13日 06:10
国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研) 触媒化学融合研究センター 官能基変換チームおよび国立研究開発法人 理化学研究所 環境資源科学研究センター バイオプラスチック研究チームは12日、非可食性バイオマス原料を使用した新たな機能性ポリマーを開発したと発表した。
欧州を中心に、石油由来製品の規制やバイオ由来の製品を用いた代替などが進むなかで、バイオマス由来の素材開発が求められている。とくにバイオマス原料を使ったプラスチックは、カーボンニュートラルな素材として期待されている一方で、石油系プラスチックと比べると強度面で劣る点などを理由に、実用化製品があまり増えていないという。
今回研究チームでは、ヒドロキシ桂皮酸類(骨格上のメトキシ基数の異なるクマル酸、フェルラ酸およびシナピン酸を使用)とリシノール酸をあらかじめ縮合させた分子を調製し、その上で重縮合させてポリマーを合成した。前者はリグニン由来の桂皮アルコール類や米ぬかなどから、後者はひまし油などに含まれる。この手法で合成することで、単独重合体(ホモポリマー)やランダム共重合体(ランダムコポリマー)が副次的に生成されるのを抑え、2種類の機能性モノマー分子を交互に規則的に配列した共重合体(コポリマー)のみが得られる。
実験では、リシノール酸だけのホモポリマー(PRA)と、新たなポリマーとして、クマル酸を部分構造に持つP(CA-alt-RA)、フェルラ酸のP(FA-alt-RA)、シナピン酸のP(SA-alt-RA)を合成。PRAについては常温で液体となるが、残り3種類の場合は固体のポリマーが生成され、加熱プレスによる圧縮成形加工が可能。さらに、成形加工後のポリマーフィルムは無色透明で、繰り返し折り曲げられることが確認できた。
機械物性については、P(CA-alt-RA)、P(FA-alt-RA)、P(SA-alt-RA)の順に、一定速度で引っ張ったときの応力を示す引張強度は2.3MPa/0.4MPa/15.4MPa、断裂した時点の伸び率を示す破断伸び率は37%/800%以上/585%をそれぞれ示した(図1参照)。この結果から、ヒドロキシ桂皮酸骨格上のメトキシ基数の違いによって性質が大きく変化することが明らかとなった。また、P(SA-alt-RA)については、破断後にゆっくりと縮んで元の大きさに戻る形状記憶性を持つこともわかった。
また、熱物性についても検証を実施。ポリマーが冷却されたさいにゴム状態から固化状態に変化する温度を示すガラス転移温度は、順に-15℃/-4℃/-24℃となり、PRAの-73℃に比べて高くなった。これにより、ポリマーの主鎖に含まれるメトキシ基の数が増えると、ガラス転移温度も高くなる傾向であることが判明した。
さらに、熱分解挙動については、PRAが350℃付近で試料の約50%が分解して、450℃付近で完全に分解するのに対し、新たな3種のポリマーでは、350℃付近までは同様の挙動を見せるものの、完全分解するのは500℃付近となり、熱分解する温度が上昇していた。
今回開発したポリマーは、ヒドロキシ桂皮酸骨格上のメトキシ基数によって、合成されるポリマーの物性を調節可能なことから、安価で豊富なバイオマスベースの原料を100%使用した梱包やゴム材料などへの応用が期待できるという。同チームでは、生分解性などの評価を進めつつ、分子設計など実用化に向けた研究を進めていくとしている。