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データセンターが丸ごと海の中。Microsoftが研究開発中
2019年12月18日 12:57
日本マイクロソフト株式会社は17日、都内で記者説明会を開催し、執行役員 最高技術責任者 兼 マイクロソフト ディベロップメント株式会社 代表取締役 社長の榊原彰氏が、Microsoft全体の最新技術開発への取り組みを紹介した。
Microsoftではほぼ年間約120億ドル(1兆2,000億~1兆4,000億円相当)を、将来の役に立つ基礎技術研究開発に投資している。これはビル・ゲイツ時代から続く基礎研究開発へのコミットメントであり、その年の売上とは関係なく投資額を決めている。これはサティア・ナデラCEOになってからも継続している。榊原氏が紹介したのは、研究開発部門の近年の研究開発結果である。
まずはクラウドのAzureサービスについて、現在55の地域で約140カ国にサービスを展開しているが、データセンターへの投資も数千億円規模で継続しており、数年前と比較して大きく規模が成長しているという。これらのデータセンターでは消費電力も課題となっており、再生可能エネルギーの100%利用を目指してじょじょに設備を充実させつつあるとした。
こうしたクラウドのデータ消費は基本的に都市部で行なわれるため、データセンターは都市部に設置することが望ましいが、都市部は土地の単価が高く密集しており、大規模のデータセンターの設置は現実的ではない。そこでMicrosoftは世界の都市の多くが海岸線沿いに存在することに着目し、海底に沈められるデータセンターを実証実験する「Procjet Natick」を展開している。
データセンターは12ラック程度の小型ものもだが、実証実験では熱交換効率は良かったうえに、周囲の生態系にほとんど影響を与えることがなかったのだという。外部は塩による侵食を防ぐコーティングがされているが、中のハードウェアは基本的に汎用品。そこで塩による侵食を防ぐために、内部を窒素で充満させている。また、5年間の運用を見越しているが、ハードウェアが壊れたさいはそのままにしている。海底のためセキュリティ性が高いのも特徴だとした。
現在は実証実験のフェーズ2にあたり、スコットランド沖に沈めている。展開には90日程度を要している。今後展開するフェーズ3では、サッカーコート規模のデータセンターを沈める予定だ。
ユーザーのオンプレミス環境からAzureへの移行に際し、数百TBから数PB単位のデータ移行は、ネット回線を使うとネットワーク負荷が高まって現実的ではないため、物理的な移行手段として「Azure Data Box」を用意。物流を利用することで環境移行の速度や利便性を高められるとした。
また、深層学習を高速化する手段としてFPGAは非常に有効的だとしているが、「Project Brainwave」の稼働モデルでは、データセンターすべてに搭載されているFPGAを1つのワークロードに集中させ、非常に短期間で処理を終えられるようにしている。試算によれば、アメリカの東海岸の同社のデータセンターにあるすべてのFPGAを稼働させる場合、英語のWikipediaにある500万記事を、深層学習を使ってわずか0.9秒ですべてスペイン語に翻訳できるのだという。
このほか紹介されたのは「Ignite」や「障害者デー」での発表内容。石英ガラスにフェムト秒レーザーで3Dでデータを記録する「Project Silica」では、1,000年の寿命でデータの保管が可能。障碍者向けのXboxコントローラ「Xbox Adaptive Controller」も、近日発売予定だ。
また、体が完全に不自由な人でも瞳孔の開き方によってYesかNoかを判断できることに着目し、深層学習でそれらの人が意思表示できるようになるソフトウェア開発への協力や、統計テクニックを使った放射線治療の半自動化、深層学習を使った遺伝子編集のオフターゲット予測やRNA設計、量子コンピュータのプログラミングをVisual Studio上から行なえるようにするQ#言語の提供などについて語られた。