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ロボットが24時間稼働するパナソニックのスマートファクトリ

~レッツノートを生産するパナソニック神戸工場の内部を取材

パナソニック神戸工場

 パナソニックが、パナソニックコネクティッドソリューションズ社(CNS)神戸工場の見学会をプレス向けに実施した。モバイルソリューションズ事業部事業開発部長 鈴木宏記氏は、7つのカンパニーで構成されるパナソニックグループのなかで、CNSはモバイルワーカーの業務革新に貢献することをミッションとし、コアプロダクツ×ソリューションの両輪で事業を展開していることを冒頭で説明した。

匠の技とものづくり

 パナソニックのPCとして知られるレッツノートやタフブックなどの製品は、大阪・守口を拠点に研究開発が行なわれているが、それを具体的な製品として完成させるのが神戸工場の使命だ。

 CNSは、欧州でサプライチェーンビジネスを展開するZetesを買収し、配送の見える化や倉庫の見える化を具現化する手立てを手に入れることに成功、それをサービス事業として各社に提供することにも積極的で、しごとコンパス、配送見える化サービス、決済ソリューション、温度センシング/空間採寸、高精度測位システム、人物認証(海外)といった方法での現場業務改善、改革を支援するサービスをもつ。こうしたサービスは今後も強化していきたいとしている。

 また、同社のものづくりは神戸、佐賀、台湾で展開されているが、すべてのレッツノートとタフブックの一部を生産しているのが神戸工場だ。神戸工場長の清水実氏は、この工場が1990年に松下電器産業のワープロ工場として竣工し、翌年にPCの生産を開始してから28年目となる同工場について、すばやくダントツの品質を実現するこだわりで、ものづくりの考え方を昇華させ、9割以上が中国生産や水平分業となっている業界で、自社一環を基本としてお客さまにダイレクトにつながることにこだわるモットーをアピールした。

 柔軟/迅速を追求するために生産計画を毎日見直し、ワンフロアオペレーションを徹底、高品質高密度な実装のためにほぼ人がいない24時間稼働を実現している。最終的な製品の完成には人が一所懸命やる匠の技が求められるが、今や、その技もロボットが担うようになってきているという。

スマートファクトリー化への道

信頼性を担保するためにテストが繰り返される。

 過去においても神戸工場が公開されたことは何度もあるが、今回の公開では、同工場のスマートファクトリー化についてスポットライトがあてられた。

 納期短縮や受注即納品、一品一様のものづくりなど、多様な要望への迅速対応のために、自律型汎用ロボットをプログラムで切り替えることで、複数の工程での稼働を可能にしている。これによって、人の経験に頼らない高品質なものづくりに成功している。

キーボードの打鍵もロボットがテスト

 匠の伝承という点では、実装機と実装機がたがいにデータコミュニケーションし、状態データのフィードバックをM2Mで交信、微調整をしあうことで、これまで人間がやってきたカンによる調整を回避、また、カメラでの画像認識によるリアルタイム確認でポカヨケを実現、作業のモニタリングなどだけで、スマートな実装を成功させるなどの先進技術が紹介された。

 もっとも、レッツノートのとがった面を凝縮した製品を生産するには、どうしても人間の知恵とワザが必要だ。清水工場長は、おそらく100%の自動化は無理だろうという。できるとしても、7割くらいが精一杯で、そこまでいくのにも、この先5年間くらいが必要だろうと予測する。組立、完成についてはどうしても匠のワザが必要で、今は10%くらいしか自動化できていないとも。

 現在は、ネジ止めなどをロボットにゆだねることを試行中だ。もちろん、仮にできるとしても、投資対効果の問題もあり、なかなか完全無人のスマートファクトリーというのは難しそうだ。

 今回の工場見学では生産の過程として、完成したメイン基板に固有のバーコードやシリアル番号を印刷したシートに、わざわざノリをつけて貼り付けるロボットなども紹介された。本当にまるで二元だ。そのくらい繊細な作業ができるほどロボットは洗練されている。こんなことをするくらいなら、普通に基板に印字したほうが効率はいいはずだ。だが、あえてかつて人間が手作業でやっていたことをロボットにそのままさせることに意義があるらしい。

印刷されたシートにノリをつけるという繊細な作業をロボットが行なう
カメラというまなざしを持つロボットの振る舞いは、かつての人間による手作業を彷彿とさせる。現場で人間と共存し、人間に危害を与えず、邪魔をしないことも視野に入れてプログラミングされている。そのロボットを教育するノウハウも同社の強みだ。

 その一方で、実装過程の無人化で完成した基板を、筐体に入れて具体的な製品に仕上げる過程では、作業員が1つ1つの個体を手で愛でるように組み立てていた。工場フロアの半分が実装過程で無人化されているのとは対照的で、ものすごくたくさんの人がいるように見える。

 だが、この部分こそが、レッツノートを支える匠の技の象徴であり、品質、そして信頼性の高い製品の原点になっているという。それこそが同社の強みであり、進化したとはいえロボットにゆだねることは、当分は難しいだろうと清水工場長は語っていた。

組立工程には、まだ人間による匠の技が必須。完全無人化は今後の課題だ(写真は同社提供による資料)