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物流クライシス打開を目指す屋外配送ロボット

~経産省その他が官民協議会を発足

 経済産業省 商務・サービスグループ物流企画室は自動走行ロボットの社会実装に向けた取り組みを開始する。2019年6月24日には、三菱地所や楽天など、国内で屋外自動配送ロボット関連の取り組みを行なっている事業者やロボットメーカー、関連省庁をメンバーとする官民協議会を発足させた。

 ネット通販などEコマースの発達やドライバーの高年齢化を背景として日本の運送業界は人手不足に陥っており、「物流クライシス」と言われている。海外ではすでに屋外での配送ロボット活用が進みつつあるが、日本国内は遅れをとっている。そこで今回発足した協議会では、人との共存などの社会受容性、安全性、事故時の法的責任の整理、技術インフラ整備、必要なルールのあり方などを検討し、日本での活用を進める。

日米仏中のロボット5種類が集結

5種類の配送ロボット

 24日には経済産業省に5種類の自動走行ロボットが集結し、デモンストレーションを行なった。あいにくの雨天だったが、「雨天時も走行できないとデリバリーはできない」(経産省商務・サービスグループ 消費・流通政策課 消費経済企画室・物流企画室 室長補佐三藤慧介氏)ということで、ロボットたちは雨のなか、外に出た。揃ったロボットは日本・米国・フランス・中国とさまざま。

雨天のなかフタを開ける

 楽天が2019年2月から無人配送サービスでの活用を進めようとしている中国EC・京東商城(JD.com)を運営する京東集団の配送ロボットは縦171.5×幅75×高さ160cmと今回集まったなかではもっとも大きい。最大積載量は50kg。

楽天が活用を進める京東の配送ロボット
側面に引き出しがある
背面のタッチパネルから解錠して荷物を取り出す

 三菱地所株式会社が立命館や大手町地域で活用を進めているアメリカのMarble社製「Marble(マーブル)」とフランス
Effidence社製「EffiBOT(エフィボット)」は屋内外をシームレスに移動できる。

Marble。
多くのデプス(深度)センサー、RGBカメラが目立つ

 「EffiBOT」は最大300kgまで運搬可能なロボットで、人の後ろ(あるいは前)をついていくモードもある。なお三菱地所は近年、ビル施設管理を目的とし、清掃・警備・運搬領域へのロボット活用に非常に積極的に取り組んでいる。

「EffiBOT」。DHLなどが活用していることでも知られている
自律移動だけでなく人の前後についていく追従走行が可能な搬送ロボット

 今回のデモに参加したロボットのうち、日本製はZMPとHakobotだ。株式会社Hakobotは2018年5月に設立された宮崎市のスタートアップ。堀江貴文氏がアドバイザーを務めていることでも知られる。ロボット「ADR」は現在、三笠製作所と共同でプロトタイプを開発中。

Hakobot。後方はHakobot取締役社長の竹内貴紀氏
蓋を開けて物を入れたところ

 株式会社ZMPは、宅配ロボット「CarriRo Deli(キャリロデリ)」で参加。2017年7月に構想発表、2018年には小型化した新型を発表した。LEDによる目の表情で外部とコミュニケーションしながら走行できるところが特徴だ。

「CarriRo Deli」
LEDによる表情が豊か

ラストワンマイル配送を担うために年度内に実証実験開始

ロボットがラストワンマイル配送を担う

 これらのロボットは配送拠点から指定地点まで、いわゆる「ラストワンマイル」物流を担うことが期待されている。それぞれのロボットは指定された場所まで自動で走行し、目的地まで到着すると、受取人をスマートフォンなどで呼び出し、パスワードなどを使ってロボットの箱を開錠して、荷物を取り出す。そして配送拠点まで自動で戻る。動く宅配ボックスのような活用法だ。同様の使い方で集配も可能だ。

 ロボットが走る場所は車道なのか歩道なのか、時速何キロくらいが適当なのかといったことも協議会で検討する。道路を管理する警察への届け出などについても手続きを整える。2019年内に概要を定め、年度内に実証実験を行なう予定だという。