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ZMP、物流無人化ソリューションのショールームを公開

~無人化と遠隔化で感染症対策も

 自動運転や物流分野自動化を進める株式会社ZMPは、同社の物流無人化ソリューション「CarriRo」シリーズを集めたショールーム「CarriRoイノベーションセンター」を東京・潮見に7月1日に開設したと発表し、同社の台車型物流支援ロボットCarriRoシリーズ各製品と、無人フォークリフト「CarriRo Fork リーチタイプ」との連携デモンストレーションを公開した。

 連携することで物流倉庫内の「パレット搬送」と呼ばれる作業を無人化できる。公開は業界関係者向けに感染症対策を考慮してオンラインで行なわれたが、一部は報道関係者向けに実際に公開された。

 ZMPは2001年にロボットベンチャーとして創業。当時は二足歩行ヒューマノイドや音楽用ロボットなどを展開していた。その後、ロボット技術を活用して自動運転分野に参入。警備ロボットや宅配用ロボット、1人乗りロボットなどを開発している。

 さらに自動運転技術を物流支援ロボットへも展開し、2016年に台車型ロボット「CarriRo」を発表した後は、自律移動モデルやフォークタイプなど「CarriRo」ブランドで物流分野に力を注いでおり、現在では売上のおおよそ半分が物流分野だという。

ZMPのこれまで

 「CarriRo」シリーズは2016年8月から出荷をはじめており、2020年6月現在、200社以上に導入されているという。台車型ロボットは人のあとをついていったり、かご車を牽引することができる。無人フォークリフトは有人作業を無人化する。

 また建屋間搬送など、屋外で搬送できる「CarriRoトラクター」を今年(2020年)夏に公開、今年末から販売予定としている。ZMP CarriRo事業部長の笠置泰孝氏は「さまざまなラインナップを持つことで一貫したソリューションとして提供する。それによって導入コストを抑え、共通プラットフォームで扱うことができる」と語った。

物流向けロボット「CarriRo」シリーズのラインナップ
組み合わせることでソリューションとして展開
「CarriRoトラクター」を今年末発売予定
株式会社ZMP CarriRo事業部長 笠置泰孝氏

台車型ロボット「CarriRo AD」、「CarriRo AD+」

「CarriRo AD」

 「CarriRo」は「CarriRo FD」からはじまった。ビーコンをつけた人を追従する台車である。後ろをついてくるので、人が前を歩くだけで重いものが運べる。台車を複数台連結することで、さらに省人化することもできる。

 「CarriRo AD」は、「CarriRo」に自律移動機能を搭載したモデル。走行通路床面に「ランドマーク」と呼ばれるシールを貼り、カメラを使った画像認識で位置補正と走行指示情報を同時に受け取りながら目標地点まで到達する。ランドマークは「固定」と「可変」の2種類に大別でき、「可変」では走行指示をその都度、タブレットを使って変更することができる。コンクリート面に貼れるシールなので、倉庫でしばしば使われている磁気テープよりも柔軟な運用が可能になる。

 またLiDARを使ったSLAM方式と違って安価に導入でき、安定運用が可能だとしている。積載量は最大積載150kg又は牽引300kgに対応する。価格は5年リースで月額税別52,000円。

自律移動機能で省人化へ
ランドマークを使うことで安価かつ簡便な運用が可能
床面のランドマーク。コンクリート床に貼れる

 「CarriRo AD+」はパレット搬送を想定した高重量運搬用モデル。ハンドルがなく専用のパレット台車下に潜り込んで運搬できる「パレット積載タイプ」のほか、最大牽引600kg+最大積載200kgが可能な「台車タイプ」がある。基本はパレット積載である。タブレットを使った遠隔操作も可能だ。

 ZMPでは、フォークリフトが積み下ろしと搬送を兼ねている現場が多いが、フォークリフトは積み下ろしだけに特化し、搬送は「CarriRo AD+」を使うことで、トータルでフォークリフト数を減らし、省人化が可能だとしている。

パレット搬送用ロボット「CarriRo AD+」
「CarriRo AD+」の上面。黒い部分が競り上がって専用パレットを持ち上げる
「CarriRo AD+」は2種類のラインナップ
役割分担することで省人化可能
台車型「CarriRo」のラインナップと価格
操作用タブレットの画面

無人フォークリフト「CarriRo Fork」

「CarriRo Fork(キャリロフォーク)」リーチタイプ

 「CarriRo Fork(キャリロフォーク)」は2020年5月から出荷開始した無人電動フォークリフトだ。ベース車両は、Linde Material Handling社製で、ZMP が無人化したもの。移動方式は「レーザー誘導型」。壁や柱に反射ポールを設置して、フォーク本体上部に搭載している2次元LiDARを使って反射ポールの位置を検出し、自己位置を把握する。

 移動動作精度は±10mm〜20mm。コンパクトサイズの「ウォーキータイプ」と、国内で一般的に使われており5.6m高さまで対応する「リーチタイプ」の2タイプを展開している。リフターやエレベータなど工場内設備との連携も可能だ。

CarriRo Forkリーチタイプ
CarriRo Forkリーチタイプの設定画面
2DのLiDARを搭載。壁面に設置された反射ポールから自己位置を決定する
青い光は信仰方向を示すためのもの

 今回はじめて公開された「リーチタイプ」は、床に平置きで置いてあるパレットの自動ピッキングと指定場所まで決められたルートで荷物を搬送することができる。荷物を持ち上げる高さは5.6mまで搬送可能で、ツメの幅は8段階に調整でき、この動きにはZMPの制御技術が活かされているとのこと。縦積みしたラックへの荷揚げ・荷下ろしも行なえる。

 通路幅は3.2mあれば旋回できる。作業終了後は自動で駐車エリアに戻り自動充電する。充電時間は8時間で8時間稼働する。バッテリを外して単体で充電することもできる。

 価格は5年リースで月額税別33.8万円/1台。これは他社の無人フォークの半額くらいの金額だという。なお「ウォーキータイプ」は可搬重量は1,000kg〜1,400kg、移動速度は無積載時5.4km/h, 積載時3.6km/h。価格は5年リースで月額税別22.6万円/1台。

「CarriRo Fork(キャリロフォーク)」の機能比較
複数ロボットでパレット搬送を自動化

 今回はパレット搬送ロボット「CarriRo AD+」と「CarriRo Forkリーチタイプ」の連携がデモされた。

クラウド連携システム「ROBO-HI」

複数台のロボットを遠隔から運用・管理できる「ROBO-HI」

 複数のロボットを繋いでいるのがZMPのクラウド連携システム「ROBO-HI(ロボハイ)」、そしてその上で動作する「 ロジマネ」である。リアルタイムの稼働状況の遠隔監視、「CarriRo」を通じて収集したデータを使った生産性レポートのアウトプットなどの機能がある。複数台同時連携については呼び出し、すれ違いなどの制御が可能になる。

 また、APIを経由して倉庫のWMS(Warehouse Management Sysytem、倉庫管理システム)とつながることができ、エレベータや自動ドアなどの外部設備機器との連携、バース管理・自動制御が可能となっている。ZMPでは「従来は分断化されていた搬送業務がシームレスにつながり、自動化できる範囲が大きく拡張。物流現場全体のオペレーションを効率化することができる」としている。

 なおCarriRoは単体でも用いることができるので、「ROBO-HI」の利用はあくまでオプションとのこと。

「CarriRo」を通じて収集したデータを使った生産性レポート
複数台を運用するときのルール設定などをWeb上から行なえる

新型コロナウイルス対策としての物流ロボット

CarriRoと笠置氏

 今回のデモでは新型コロナウイルス対策という側面も紹介された。CarriRo事業部長の笠置氏は「新型コロナウイルス発生前は、現場での密集にあまりケアがされていなかったが、今後は人手不足に加えて感染症対策も必要なので、距離をあけて業務を行なう必要がある。無人化ニーズは高まると予測されており、ZMPでもCarrIROを積極的に提案して無人でも業務が回ることを示したい」と語った。

 同社のロボットは佐川グループの大型物流施設「SGムービング」で用いられており、メディアでも物流での3密対策として紹介された。6台のCarriRoを用いることで8人が必要だった作業が2人で済むようになったという。笠置氏は「今後はさらに無人移載装置と連携することなどで、無人化と遠隔化の2つで感染対策も進めたい」と語った。

今後の物流ロボットのキーワードは無人化と遠隔化