笠原一輝のユビキタス情報局
誰でも「赤いザリガニ」を飼える時代来る?AI PC×OpenClawの可能性を探る
2026年5月25日 06:11
AI PCのキラーアプリケーションはこれかもしれない……そう感じるものが、最近米国で注目を集めている。それが「OpenClaw」だ。
OpenClawは、ピーター・シュタインベルガー氏が開発したオープンソースのエージェント型AI(あるいはフロンティア・エージェント)で、AIが自律的にさまざまな高度な処理を人間の代わりになってやってくれるソフトウェア。米国ではちょっとしたブームのように多くのAI開発者が注目している。
Dell Technologiesは、5月18日から5月20日(現地時間)に米国ネバダ州ラスベガス市で開催した年次イベント「Dell Technologies World 2026」(以下DTW 26)において、エージェント型AIを、デスクサイドに置けるサイズのワークステーションPCで開発/検証して、オンプレミスのデータセンターやクラウドなどにも展開できる仕組みの「Dell Deskside Agentic AI」を発表した。
今はまだ比較的高いスペックを要求するエージェント型AIだが、AI PC上でローカル実行できるような未来は来るのだろうか?
「赤いザリガニ」が注目を集める米国のAI界隈
今、米国のカンファレンスに来ると必ず見かけるものとして「赤いザリガニ」(英語でいうとCrayfish)のイラストがある。OpenClawというオープンソースのソフトウェアのキャラクターとして知られており、OpenClawが紹介されるときには赤いザリガニがイラストとして添えられるためだ。
OpenClawが注目を集める理由の詳細は前回の記事に譲るが、端的に言えば、ソフトウェア業界がAIエージェントの構築へ全力を挙げる大転換期にあるためだ。そうしたAIエージェントの自律的な動作をさらに進化させたのが、エージェント型AI(Agentic AI)やフロンティア・エージェントと呼ばれるものだ。プロンプトによる指令を元に、さまざまな処理を人間に代わって行なってくれる。
既にクラウドベースの有料ツールとして、Anthropicは「Claude Cowork」を発表しており、そのMicrosoft版となる「Microsoft 365 Copilot Cowork」やOpenAI版の「OpenAI Operator」なども続々登場。エージェント型AIの動向には大きな注目が集まっている。
分かりやすく言えば、それらの機能をオープンソースソフトウェアで構築できるものがOpenClawだ。
CoworkやOperatorを利用した場合には料金がかかるが、OpenClawと自前のGPUなどを組み合わせて実現できれば、ハードウェアのイニシャルコストと電気代というランニングコストだけで利用でき、結果的に安価だ。
また、セキュリティの観点から多くの企業が自社データをクラウドに上げていない現状を考えれば、オンプレミスにある企業データをオンプレミスのハードウェアで処理できることが、OpenClawのメリットだと言える。
そうした理由からOpenClawは熱い話題となっている。特に、3月のGTC 26でNVIDIAが、ガードレールの機能などを付加した「NemoClaw」を発表してからは、大企業の注目度は上がり続けている。
今回のDTW 26でも同様で、基調講演にOffline Ventures共同創業者、OpenClaw Foundation共同創業者兼取締役デーブ・モーリン氏がステージに呼ばれ、時間を割いてOpenClawに関する話題を取り上げたほか、展示会場では実際にNemoClawを試せる体験コーナー「NemoClaw Lab」が用意されるなど、高い注目度であることがうかがえた。
ワークステーションPCで開発したエージェント型AIをサーバーに展開して、セキュリティと低コストを実現する
今回Dellは会期初日に行なわれた基調講演において、「Dell Deskside Agentic AI」を発表した。ユーザーが開発したNemoClawなどのエージェント型AIを、Dellが提供するワークステーションPCでも、オンプレミスのサーバー群などでも動かせるようにする仕組みになる。
Dellがこうしたソリューションを展開する理由について、Dell Technologies CSG & オンラインマーケティング担当上級副社長ジョン・シーガル氏は「エージェント型AIで多くの企業が直面しているのがセキュリティとコストだ。OpenClawのようなエージェント型AIではガードレールのようなセキュリティ機能が重要で、NVIDIAがその部分を拡張したNemoClawが注目を集めている。
トークンの費用対効果の観点から見ると、今はトークン単価は下がったのに、使用量が増えることでコストが爆発的に増えている。そこで、NVIDIAと協業してこうしたエージェント型AIを、オンプレミスでセキュアに経済的に実行できる仕組みとしてDeskside Agentic AIを用意した」と述べ、企業側のニーズを捉えるためにこうした仕組みを用意したのだと説明した。
実際、DTW 26の2日目の基調講演の中で、あるエンジニアが1日の10のエージェント型AIを回し続けると、クラウドベースのコストは3,200ドルになるが、GB10ベースのワークステーション上で実行すれば、クラウドの利用料はかからず、電気代などのわずかなランニングコストのみで済む例を挙げた。なお、GB10ベースのワークステーション「Dell Pro Max with GB10」の米国での価格は6,332.18ドルであるため、(GB10が同じ速度で処理できればだが)クラウドのコストを2日で取り返せる計算になる。
Deskside Agentic AIに対応しているワークステーションPCは、NVIDIAのGB10を搭載したDell Pro Max with GB10、GB300を搭載している「Dell Pro Max with GB300」などのNVIDIA Grace BlackwellベースのAIワークステーション、さらにはXeon+NVIDIA RTX PROを搭載しているDell Pro Precisionブランドのタワー型ワークステーションとなる。というのも、処理するエージェント型AIのAIモデルが300億~1兆パラメータと非常に大きなモデルであるためだ。
それを処理するためには、それなりのGPUとメモリが必要になる。たとえば、GB10であれば1PFLOPS(NVFP4演算時)の演算性能を持ち、128GB(CPUとGPUが共有している)メモリを搭載している。GB300に関してはBlackwell Ultraが搭載されているため20PFLOPS(NVFP4演算時)という性能を持ちGPUのメモリが252GB、CPUメモリが496GBと、サーバー用のBlackwell Ultra GPUと同じようなスペックになっている。
そうした強力なマシン上でエージェント型AIを開発し、それを本番環境のオンプレミスのサーバー環境でも展開できるというのが、Deskside Agentic AIのコンセプトということになる。
AI PCへの実装課題はプロセッサとメモリ
それでは、このエージェント型AIを、一般的なノートPCなどで、完全にローカルで利用できるようになる可能性はあるのだろうか?より端的に言えば、今PC業界が全力を挙げて取り組んでいる「AI PC」で、OpenClawのようなエージェント型AIがローカルのLLMだけで利用可能になるかどうかだ。
この場合の論点は2つある。1つはAI推論性能であり、もう1つはメモリの容量だ。GB10の場合には、NVFP4で1PFLOPSあるいは1,000TOPSという性能で、メモリ容量は128GBであることが分かっている。
一般的にAI推論性能はINT8(8bit整数)利用時の数値で語られるため、直接の比較は難しい。仮にINT8利用時の性能が半分になると仮定すれば、GB10のAI推論性能は500TOPS前後だと考えられる。では、AI PC側のプロセッサの性能はどうかと言うと、各社のプロセッサのINT8の推論性能を見る限り、少なくともそこには達していない。
たとえばAMDのRyzen AI Max+ 395がSoC全体で126TOPS(NPUが50TOPSなので、CPU+GPUで76TOPS)だし、最近発表されたRyzen AI Max+ PRO 495ではNPUの性能が5TOPS増えているので、それを考慮に入れても131TOPSとなる。
Core Ultraシリーズ3では、アーキテクチャレベルでGPUが120TOPS、NPUが50TOPSで、CPUが5TOPSとなるので、SoC全体で175TOPSとなる。QualcommのSnapdragon X2シリーズでは、NPUは80TOPSと明らかにされているが、CPUとGPUに関しては非公表。そんなに高くないと考えると、やはり100台前半ぐらいだと考えられる。もちろんこの性能は、各社のハイエンドの性能で、メインストリーム向けに採用されているSKUだとその半分ぐらいになる。
もう1つはメモリ容量だ。巨大なAIモデルを実行するには大容量のメモリが必要になる。たとえばNVIDIAのGB10の場合には、128GBというメモリで、最大2,000億パラメータまでのAIモデルを処理できるというスペックになっている。一方、今のAI PCはメインストリームだと16~32GB、ハイスペックモデルで64GB前後だと考えると、そこまで大規模なAIモデルを実行するのは難しい。
実際、HPがローカル実行できるAIエージェント「HP IQ」で採用しているAIモデルは200億パラメータのGPT-OSSであり、300億パラメータを下限としているDell Deskside Agentic AIの下限に達していない。
幅広いスペック(有り体に言うと少ないメモリを搭載したモデル)に対応しないといけないAI PCで、より大規模なAIモデルをローカルに実行する難しさはまさにここにある。
ただし、OpenClawの実装上での工夫と小規模なモデル採用で突破できる可能性
PCメーカーとしてはこのあたりの動向に関してどう考えているのかについて、Dellのシーガル氏は「Deskside Agentic AIでは300億パラメータを超えるより大規模のAIモデルをターゲットにしているが、今後130億パラメータなどの小さめのモデルがさらに高性能になっていく。それらの小さいモデルはAI PCのようなハードウェアで動かせるので、AI PCにとって新しい展開になると考えている」と述べた。
つまり、プロセッサの性能強化もそうだが、同時により小型だが効率よく推論を実行できるAIモデルの開発が進めば、OpenClawやNemoClawのようなエージェント型AIを、AI PCでローカル実行できるような状況になると指摘した。
OpenClawをAI PCに実装することに興味があるのかについて、Dellの法人向けノートPCの製品責任者であるDell Technologiesコマーシャルノートブック&教育部門製品責任者のザック・ノスキー氏に聞いてみた。
「OpenClawが面白いのは、OpenAIやAnthropicなどの先端モデルに接続するコネクタ部分と、クラウドかローカルのどちらで実行するのかなどを調停するオーケストレーションという2つの側面があること。オーケストレーションの部分はかなり小さなAIモデルでも実行できる一方で、大量のトークンを消費するということが分かってきている。つまり、オーケストレーションをローカルで実行しトークンの消費を抑えながら、クラウド側でAIの処理を行なうという使い方が可能だ。我々が検討しているユースケースはそんな形になると考えている」と述べた。
つまり、もしAI PCへ実装するなら、ローカルの小型AIモデルでオーケストレーションを行ない、クラウド上の大規模なAIモデルでエージェント型AI処理を行なう、そうした形になる可能性が高いということだ。もちろん、将来的な実装を検討し始めたのが今の段階だと考えられるが、実装次第でOpenClawやNemoClawは搭載できるということだ。
なお、6月2日から、米国のサンフランシスコでMicrosoftの開発者向けイベント「Microsoft Build 2026」が開催される。Microsoftとて、こうした非常に進化の早いエージェント型AIに無関心でいるわけがない。Build 2026ではそうしたビジョンを説明する良い機会になるはずで、おそらくエージェント型AIのWindowsへの実装について何らかの発表があるものと考えられる。その意味でBuild 2026の動向にも注意を払いたいところだ。



























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