笠原一輝のユビキタス情報局

ZenFone 3がZenFone 2から厚さ30%、重さ10%削減を実現できた理由

~日本向けモデルは9月に発表予定

記者説明会が行なわれたのは、台北市北投区にあるASUSの本社

 台湾ASUSTek Computer(以下ASUS)は、TAITRAが主催している日本の報道関係者向けの取材ツアーの中で記者説明会を行ない、6月のCOMPUTEX TAIPEIで発表し、既に台湾などで販売を開始しているAndroidスマートフォン「ZenFone 3」の開発に関する説明を行なった。

 この中で同社は、ZenFone 3が前世代の製品となるZenFone 2に比べて厚さ30%、重さ10%の削減を実現できた理由を説明。また、同社の本社広報担当者は、9月に日本で発表会を行ない、ZenFone 3を日本市場に投入する予定であることも明らかにした。

Snapdragon 625を採用するZenFone 3、

 6月のCOMPUTEX TAIPEIにおいて、ASUSは同社のZenFoneシリーズの最新製品となるZenFone 3、ZenFone 3 Ultra、ZenFone 3 Deluxeの3製品を発表した(別記事参照)。

ASUSがCOMPUTEX TAIPEIで発表したZenFone 3

 このうち、何もつかないZenFone 3は、QualcommのSnapdragon 625(MSM8953)を採用したミドルハイクラスのスマートフォンとなる。Snapdragon 625は、モトローラ・モビリティ・ジャパンから日本でも販売が開始されているMoto G4 Plus、NuAns NEO/VAIO Phone Biz/MADOSMA Q601などに採用されているSnapdragon 617(MSM8952)の後継となるSoCだ。

 Snapdragon 617が28nmプロセスルールで製造されCortex-A53(オクタコア、1.5GHz)とAdreno 405というGPUの組み合わせであるのに対して、Snapdragon 625は14nmプロセスルールで製造されCortex-A53(オクタコア、2GHz)とAdreno 506というGPUの組み合わせになっている。プロセスルールが微細化され、CPUのクロック周波数が引き上げられ、GPUが上位グレードのSnapdragon 8xxシリーズで採用されているAdrenoの500番台という最新版に変更されたことで、消費電力が下がり、CPUもGPUも性能が向上しているのが特徴となる。

 メモリは3GB/4GBのLPDDR3、ストレージは32GB/64GB。ディスプレイはZenFone 2と同じサイズの5.5型のIPS液晶を採用している(解像度は1,920×1,080ドット)。このほか、1,600万画素のリアカメラと800万画素のフロントカメラ、3,000mAhのバッテリ、USB Type-Cコネクタなどのスペックとなる。

【表1】ZenFone 2(ZE551ML、日本販売モデル)とZenFone 3(ZE552KL、同社グローバルサイトでJPモデルとして発表されるモデルのスペック、現時点では日本では未発売)
ZenFone2(ZE551ML)ZenFone3(ZE552KL)
SoCIntel Atom Z3580/3560Qualcomm Snapdragon 625(MSM8953)
メモリ2~4GB LPPDDR33/4GB LPPDDR3
ストレージ32/64GB eMMC/microSDカード32/64GB eMCP/microSDカード
ディスプレイ5.5型 IPS(フルHD)5.5型 IPS(フルHD)
Wi-Fi/BTIEEE802.11ac/BT 4.0/NFCIEEE802.11ac/BT 4.2
LTEB1/2/3/4/5/6/8/9/18/19/28B1/2/3/5/7/8/18/19/26/28(FDD)、B38/39/40/41(TDD)
リアカメラ1,300万画素1,600万画素
フロントカメラ800万画素800万画素
外部I/OMicro USB/ヘッドフォンUSB Type-C/ヘッドフォン
バッテリー3,000mAh3,000mAh
サイズ152.5x77.2x3.2~10.9mm152.59x77.38x7.69mm
重量170g155g

ZenFone 2に比べて高級感のあるデザインを採用し、背面ボタンは指紋認証センサーに変更

 こうしたZenFone 3だが、従来のZenFone 2に比較して、いくつかの点で明らかに向上している部分がある。ASUSプロジェクトコンセプトデザイン部門上席エンジニアのロッシ・リン氏は「ZenFone 3では、ZenFone 2に比べて高級感がでるようなデザインを採用している。高級時計のようなイメージを意識して設計した。また、ZenFone 3ではZenFone 2に比べて厚さで約30%、重量で約10%程度減っており、より薄型軽量を実現している」と、説明する。

ASUSTek Computer プロジェクトコンセプトデザイン部門 上席エンジニア ロッシ・リン氏。右手(向かって左)に持つのがZenFone 3、左手(向かって右)に持つのがZenFone 2

 またZenFone 3では、前面の液晶面に装着されている2.5Dガラス(CorningのGorilla Glass 4)の下に刻印される形になっている(ZenFone 2ではガラスの上に刻印)。さらに背面も同じGorilla Glass 4で覆われる形になっているので、デザインの統一感がある。リン氏によれば両面をガラスにすることで高級感のあるイメージを出せるようにしたのだという。

ZenFone 3(左)とZenFone 2(右)の比較。カメラの下部がZenFone 3は指紋認証センサーになっているが、ZenFone 2はカメラの下部はボリュームになっていた

 また、これはデザインというよりは、使い勝手に影響する部分だが、背面のカメラの下にタッチ型の指紋センサーを入れることで、背面の指紋に触れるだけで、簡単にロックを解除して使うことができる。そうした製品はほかにもあるが、従来のZenFone 2では、この背面のカメラの下にボリュームボタンが来ていたので、大きなデザイン上の変更と言える。

 リン氏は「ロック解除とボリュームの変更、どちらを先にするかを考えると、まずはロック解除だと考えてこうした設計にした。もちろん社内では従来と同じく背面はボリュームにした方がいいのではないかという意見もあったのだが、お客様の意見なども参考にした結果ロック解除の方がより使い勝手に大きな影響を与えると判断した」と述べる。

ZenFone 3のタッチ型指紋認証センサー
ボリュームボタンはサイドへ移動している
USB Type-C端子

 そこに至るまでには、何度もモックアップを作ったりして、検討を加えたという。実際リン氏が公開したモックアップには、最終製品にはない前面のハードウェアボタンも用意されており、Samsung ElectronicsのGalaxyシリーズのように指紋センサーとホームボタンとして検討されていたが、最終的には採用しなかったとリン氏は説明した。

試作されたモックアップ。最終的なデザインとは異なり前面にボタンがあるデザイン案があった

背面は高品質なヘアライン加工に見えるようなガラス+フィルムを採用することで薄型軽量を実現

 ZenFone 3は両面にGorilla Glass 4を採用している。普通に考えれば、同じ強度であれば厚くなったり重くなったりする。ところが、実際にはZenFone 2の厚みと重さが3.2~10.9mm/170gに比較すると、ZenFone 3は7.69mm/155gとなっており、厚さ(最厚部比較)では約30%、重量では約8.9%削減されているが、同じ強度を維持している。また、ZenFone 2の背面カバーがプラスチックであるのに対し、ZenFone 3は両面とも金属筐体に見える。どのように軽量化したのか。

 スマートフォンを薄く、軽くしたい場合には、筐体素材にアルミニウムのような薄く軽い素材を利用するのが一般的だ。ただし、アルミニウムは電波を通しにくい素材であるため、LTEやWi-Fiなどのアンテナが入る上下の部分を切り欠いてプラスチックで埋めるなどの処理が必要になる。しかし、今回の製品ではアルミニウムではなく、ガラスを使っているという。リン氏によれば「今回は使って金属のような質感を出すデザインを採用した。具体的にはガラスの下にヘアライン加工のように見えるフィルムを入れ、それをアルミニウムのフレームで囲むことで強度を実現している」と説明した。

ZenFone 3の背面デザイン。ヘアライン加工がされているように見えるが、実はこれはガラスの下のフィルム上に描かれているデザイン
ZenFone 3の構造(筆者作成)

 ただし、アルミニウムのフレームとガラスを直接圧着すると、フレームに圧力がかかると、その影響を受けてガラスが壊れやすくなるので、それを受け止める樹脂が間に入っており、それで壊れないように工夫されていると言うことだ。また、この構造にすると、アルミニウムのようにアンテナ部分を切り欠く必要も無いため、デザインの一体感という意味でもメリットがある。

ASUSが試作したフィルムや背面カバーなど、こうした試作を経て最終製品になった

 リン氏は「問題は製造することができるか、そして金属のような高級感がでるかにあった。半年をかけて中国と韓国のサプライヤーと共に1,000枚以上のサンプルを作り研究した」とのことで、作るだけならできるが、ガラス+フィルムで金属のヘアライン加工のような高級感がでるデザインができるか、研究したという。ガラスの厚さや、ヘアライン加工のピッチや深さで反射や見え方は全く変わってくる。このため、ASUSのデザイナーとサプライヤーで何度もやりとりをして、最終的に現在のデザインが完成したということだった。

 なお、工程に関してはメガネのレンズのメッキ工程と同じだ、具体的な工法に関しては企業秘密ということだった。

米国での価格は249ドルからとお買い得価格、日本では9月に発表される予定

 このZenFone 3には、純正ケースとして2つの種類が用意されている。1つは、従来のZenFoneシリーズでも用意されていた、液晶カバー部分に円型の窓が空いていて、そこから各種の情報が表示されるタイプのケースで、こちらは既に台湾では販売が開始されている。

従来のZenFoneシリーズでも用意されていた円形の窓が用意されている純正ケース

 もう1つが液晶部分を完全に覆ってしまうが、着信や通知などがあると、周囲が光ってそれを教えてくれるタイプのケースで、こちらは今後発売予定となっている。前者のケースは従来から見たことがあるタイプのケースだが、後者はSF映画「トロン」のようなイメージでSF的に光るので、人とは違ったケースが欲しいという人には興味深い選択肢になりそうだ。

これまでとは異なる新しいタイプのカバー
着信や通知があると、このようにカバー前面の周辺部が点滅して知らしてくれる

 ZenFone 3は既に台湾では販売が開始されており、台湾の通信キャリアのショップなどで取り扱われていることが確認できた。気になる日本での販売に関してだが、ASUS本社の広報担当者から、9月に日本で発表会が行なわれる予定であると明らかにされた。米国での価格が249ドルからとなっているので、さほど高い価格にはならないと予想される。3万円前後の価格帯で高品質なSIMロックフリーなスマートフォンを探している人は、その9月の発表を要チェックだ。