福田昭のセミコン業界最前線
SSDの主役はPC向けからエンタープライズ向けに移行
~日本HDD協会セミナーレポート【SSD編】
2026年5月1日 09:20
HDD装置関連の業界団体である日本HDD協会(IDEMA JAPAN)は、2026年4月21日に市場動向に関するセミナーをオンラインで開催した。正式名称は「2026年4月オンラインマーケットセミナー」である。市場調査会社TrendFOCUSとテクノ・システム・リサーチ(TSR)のアナリストがそれぞれストレージ市場の最新動向を解説した。
なかでもTSRによるストレージ市場を展望した講演「Updated Storage(HDD and SSD) Market Outlook」がすごく参考になった。そこで本レポートでは、SSD(Solid State Drive)市場を中心に講演の概要をご報告する。講演者はTSRで第1グループのアシスタントディレクターを務める太田健吾氏である。
なお、本セミナーの講演内容は報道関係者を含めて録画や配布などが禁止されている。本レポートに掲載した画像(講演スライド)は、講演者である太田氏と日本HDD協会のご厚意によって掲載の許可を得たものであることをお断りしておく。
また太田氏の講演の中でHDD市場に関する部分は本コラムの前回でご報告した。ご興味のある方はご参照されたい。
SSDとHDDの出荷台数格差が拡大
始めはSSDとHDDの出荷台数を比較する。SSDの出荷台数(世界全体)は2009年以降、順調に増加してきた。2020年には出荷台数でHDDを超え、その後はHDDとの差を広げている。
SSDの出荷台数が前年と比べて初めて減少したのは2022年である。中国の景気後退と、SSD在庫の急増が出荷台数減の主な要因だった。在庫の調整は当時の予想よりも時間がかかり、2023年も出荷台数は前年比で減少した。2年連続のマイナス成長も初めてのことだ。
といっても2022年と2023年はHDDの出荷台数も大きく減少した。SSDとHDDの台数差は2021年におよそ1億2,000万台だったのが、2023年にはおよそ1億9,750万台に広がった。
2025年の出荷台数は3億7,500万台、2年連続で前年を上回る
SSDの出荷台数が増加に戻ったのは2024年である。3年振りのことだ。続く2025年も、出荷台数は前年を上回った。前年比6.7%増の3億7,501万台である。しかし2026年はわずかながらもマイナス成長になるとTSRは予測する。予測値は前年比0.9%減の3億7,156万台である。なお過去最高の出荷台数は2021年の3億8,302万台で、2025年でもこの水準には達していない。
2025年の出荷金額は467.2億ドル、2年連続で過去最高を更新
2024年から2026年までのSSD市場をもう少し詳しく見ていこう。2024年~2025年は実績、2026年は予測である。市場を構成する項目は「出荷台数」「出荷金額」「1台当たりの平均価格(ASP)」「総出荷記憶容量」「1台当たりの平均記憶容量」「GB当たりの単価」の6つになる。本コラムの前回でご報告したHDD市場の概要(2024年~2026年)を示す図面に対応する。
上述のように、「出荷台数」はすでに説明した。「出荷金額」そのほかの推移を以下に述べよう。出荷金額の実績は2024年が前年比59.9%増の388億8,850万ドル、2025年が同20.1%増の467億2,180万ドルである。出荷金額は2022年と2023年の2年連続マイナス成長を経て2024年に急増した。過去最高だった2021年の312億6,400万ドルを更新した。2025年も出荷金額が増加したことで、2年連続で過去最高を更新した。
2026年の出荷金額は前年比48.7%増の694億6,070万ドルと予測する。出荷台数はほぼ横ばいであるものの、ドライブ当たりの価格が1.5倍に上昇することが寄与する。
「ドライブ1台当たりの平均価格(ASP)」は2024年が前年比45.5%増の110.66ドル、2025年が同12.6%増の124.59ドルである。「ドライブ1台当たりの平均記憶容量」は2024年が前年比35.5%増の1,168.7GB、2025年が同14.2%増の1,334.8GBである。平均記憶容量は景気後退期の2022年と2023年も前年比で拡大しており、一貫して増加トレンドを維持してきた。2026年の平均価格(ASP)は前年比50.0%増の186.94ドル、平均記憶容量は同34.9%増の1,800.1GBになると予測する。
出荷台数と平均記憶容量の増加により、「総出荷記憶容量」は両者を超える高い比率で増加している。2024年は前年比48.9%増の410.68EB(エクサバイト: 10の18乗バイト)、2025年は同21.9%増の500.57EBとなった。2026年は同33.6%増の668.85EBに拡大すると予測する。
「GB当たりの単価(GB単価)」は2024年が前年比8.0%増の0.095ドルである。TSRが公表してきたGB単価は2016年以降、8年連続で下がり続けてきた。上昇するのは初めてのことだ。2025年は前年比2.1%減の0.093ドルとわずかに減少した。2026年は同11.8%増の0.104ドルに値上がりすると予測する。
GB単価は2015年から2023年まで、4年で2.25分の1のペースで急速に下がってきた。しかし2024年以降は、SSDのGB単価は横ばいとなる。市場のけん引役がPC向けSSDからエンタープライズ向けSSDへと移行しつつあることが、全体のGB単価を押し上げている。
2025年はすべての製品分野で出荷台数が増加
次は製品分野別の動向である。製品分野は5つあり、「エンタープライズ(Enterprise)」向け、「PC」向け、「外付け(Add-on)」向け、「ビデオゲーム機器(Game Console)」向け、「産業その他(Industrial and Others)」向けに分かれている。分野ごとに「出荷台数(100万台)」「出荷金額(100万ドル)」「1台当たりの平均価格(ASP)(ドル)」「総出荷記憶容量(EB: エクサバイト)」「1台当たりの平均記憶容量(GB)」「GB当たりの単価(ドル)」を推定、あるいは予測した。期間は実績推定が2018年~2025年、予測が2026年~2030年である。
出荷台数を前年比でみると2024年に増加した分野は「エンタープライズ」と「PC」「産業その他」、減少した分野は「外付け」「ビデオゲーム機器」と用途によって増減が分かれた。2025年はこれらすべての分野で出荷台数が増加した。
「エンタープライズ」向けは台数と金額が2年連続で過去最高を更新
ここからは2025年と2026年における製品分野ごとの内容(数値と前年比)を、主要分野である「エンタープライズ」向けと「PC」向けに絞ってお届けする。
「エンタープライズ」向けの出荷台数は2025年に前年比6.2%増の5,651万台となった。2024年に続き、2年連続で過去最高を更新した。SSD全体の出荷台数に占めるエンタープライズ向けの割合は15.1%である。2024年の15.1%と変わらない。
出荷金額は前年比12.6%増の276億4,180万ドルである。金額も2年連続で過去最高を更新した。SSD全体の出荷金額に占めるエンタープライズ向けの割合は59.2%である。2024年の63.1%から3.9ポイント低下した。
1台当たりの平均価格は2025年に前年比6.0%増の489.15ドルとなった。GB当たりの単価は2025年に0.104ドルである。2024年の0.114ドルから0.01ドル低下した。
2026年のエンタープライズ向けSSDは、出荷台数が前年比28.0%増の7,231万台、出荷金額が同80.6%増の499億3,000万ドルと予測した。1台当たりの平均価格は前年比41.2%増の690.50ドルと大きく上がる。GB当たりの単価は0.117ドルで、2025年の0.104ドルから12.5%上昇する。SSD全体の出荷金額に占めるエンタープライズ向けの割合は71.9%と拡大し、2025年の59.2%から11.7ポイント増加する。
PC向けSSDは出荷金額が過去最高を更新
「PC」向けの出荷台数は2025年に前年比5.2%増の2億3,050万台となった。2024年に続いて2年連続で増加した。ただし過去最高だった2021年の2億4,420万台は超えていない。SSD全体の出荷台数に占めるPC向けの割合は61.5%である。2024年の62.3%から0.8ポイント低下した。
出荷金額は前年比29.0%増の117億3,000万ドルで過去最高を更新した。それまでの最高値は2021年の107億4,480万ドルだった。SSD全体の出荷金額に占めるPC向けの割合は25.1%である。2024年の23.4%から1.7ポイント上昇した。
1台当たりの平均価格は2025年に前年比22.6%増の50.89ドルとなった。GB当たりの単価は2025年に0.076ドルである。2024年の0.068ドルから上昇した。GB当たりの単価が上昇するのは2年連続である。
2026年のPC向けSSDは、出荷台数が前年比7.5%減の2億1,330万台、出荷金額が同2.9%減の113億8,940万ドルと予測した。1台当たりの平均価格は前年比4.9%増の53.40ドルと上がる。SSD全体の出荷台数に占めるPC向けの割合は57.4%である。2025年の61.5%から4.1ポイント下がる。SSD全体の出荷金額に占めるPC向けの比率は16.4%となる。2025年の25.1%と比べて8.7ポイントとかなりの低下を予測する。
SSD市場を製品分野別にみると、台数のトップがPC向け、金額のトップがエンタープライズ向けという状態が続いている。PC向けは2026年以降、台数は横ばい、金額は微減で推移すると予測する。一方でエンタープライズ向けは2026年以降、台数と金額ともに小幅ながら上昇が続く。開発の重点はエンタープライズ向けにシフトしていくだろう。
























