福田昭のセミコン業界最前線

NVIDIA、IBM、Intelらが最新CPU/GPUをHot Chipsで技術解説

参加料金は前年と同じ価格を維持

 高性能プロセッサの最新技術を披露する国際学会「Hot Chips」の開催が迫ってきた。前年と同様に、リアル開催とバーチャル開催のハイブリッドイベントとして開催される。開催時期は2026年8月23日から25日、リアル開催の場所は前年と同じ米国カリフォルニア州パロアルトのスタンフォード大学である。

「Hot Chips」とは何か。Hot Chipsの公式Webサイトから筆者がまとめた

 現地開催の基本的なスケジュールは前年と変わらない。初日(8月23日)がチュートリアル(技術講座)、中日(8月24日)と最終日(8月25日)はカンファレンス(技術講演会)と基調講演、ポスター発表である。また日曜と月曜は夕方あるいは夜にレセプション(歓迎会)を予定する。

「Hot Chips 2026」の基本的な日程と開催情報。ポスター発表の日付は筆者の推定によるもの。Hot Chipsの公式Webサイトから筆者がまとめた

 Hot Chipsは、リアル参加とバーチャル参加で登録料金が違う。リアル参加の料金(主催団体であるIEEEの正会員の場合)はチュートリアルとカンファレンスのセットが815ドル、カンファレンスのみが650ドルである。バーチャル参加の料金(IEEEの正会員)は、チュートリアルとカンファレンスのセットで210ドルと、リアル参加に比べるとかなり安い。

 リアル参加の料金が割高なのは会場費、昼食代金、朝食代金、休憩の軽食代金、レセプション代金が含まれるからだろう。またバーチャル参加者と同様に、リアル参加者も講演スライド(PDFファイル)と講演ビデオをオンデマンドで視聴できる。また参加料金は前年と変わらない。最近は国際学会の参加料金も値上がりする傾向がある中で、価格維持の姿勢は高く評価すべきだろう。

「Hot Chips 2026」のリアル参加料金。カンファレンスだけの参加と、チュートリアルとカンファレンスの両方に参加するメニューから選べる。なおチュートリアルだけの参加枠は存在しない。Hot Chipsの公式Webサイトから抜粋したもの
「Hot Chips 2026」のバーチャル参加料金。こちらはチュートリアルとカンファレンスのセットだけとなる。発展途上国(Developing Country)の学生料金が5ドルと非常に低い。Hot Chipsの公式Webサイトから抜粋したもの

メモリ技術とRISC-V技術がチュートリアルのテーマ

 8月23日に予定するチュートリアルは、午前と午後に分かれる。午前と午後で異なる2つのテーマに関する技術講座を開催する。Hot Chipsのチュートリアルは伝統的に、時機を得たテーマを扱うことが多い。午前(「チュートリアル1」)のテーマはメモリ技術、午後(チュートリアル2)のテーマはRISC-V技術となっている。

チュートリアル(技術講座)の基本スケジュール(2026年8月23日実施予定)。朝食、昼食、レセプション、休憩(軽食)と十分な食事が提供される。Hot Chipsの公式Webサイトから抜粋したもの

メモリ技術の講座では著名アナリストや半導体メモリ大手3社などが講演

 午前の「Memory Technology(メモリ技術)」では、休憩を挟んで6件の講演を予定する。始めに半導体メモリの技術・市場アナリストとして知られるJim Handy氏が「Memory: Feeding AI’s voracious hunger for data(メモリ: 際限なくデータを欲しがるAIを満たす)」と題してAI(人工知能)時代におけるメモリの動向を説明する。

チュートリアル1(8月23日午前)の講演一覧。Hot Chipsの公式Webサイトから抜粋したもの

 それからMicron Technology、Samsung Electronics、SK hynixと半導体メモリ大手3社の代表者によるチュートリアル講演が続く。テーマはAI向けメモリ、HBMのロジックダイ(ベースダイ)、HBMのパッケージングである。

 休憩を挟み、Metaによる生成AI推論アクセラレータ(DRAMを活用)、OXMIQ Labsによる広帯域フラッシュ(HBF)モジュールの位置付けをテーマとする講演を予定する。

RISC-V技術の講座では標準規格更新、GPU連携、自動車用途などの講演を予定

 午後の「RISC-V」をテーマとする講座では、休憩を挟んで4件の講演を実施する。RISC-Vの標準規格と導入状況のアップデート、エンタープライズ向け64bitコンピューティング標準プロファイル、NVIDIA GPUと組み合わせるためのRISC-Vプロファイル、自動車向けRISC-Vのチュートリアルを予定する。

チュートリアル2(8月23日午後)の講演一覧。Hot Chipsの公式Webサイトから抜粋したもの

カンファレンス初日午前: IBM、Intel、NVIDIAが最新のCPU技術を公表

 カンファレンス(技術講演会)の初日(8月24日)は、4つの講演セッションと1件の基調講演を予定する。すべて単一のセッションであり、時系列で進む。まずは午前のプログラムを紹介していこう。始めは「CPU」のセッションが2つ続く。「CPU1」と「CPU2」である。

 「CPU1」は午前9時30分に始まる。最初はIBMが、次世代のIBM zおよびIBM Linux ONEプロセッサと次世代AI推論アクセラレータで構成するチップセットについて技術概要を述べる。続いてIntelがIntel Coreシリーズ3(開発コード名「Wildcat Lake」)プロセッサの技術概要を発表する。それからNVIDIAがArmアーキテクチャのCPU「Vera」を説明する。

カンファレンス初日(8月24日)の講演一覧(前半部分)。Hot Chipsの公式Webサイトから抜粋したもの

 休憩を挟んで「CPU2」が午前11時30分に始まる。最初に富士通が環境重視のAIデータセンターに向けた次世代のArmベースCPU「FUJITSU-MONAKA」を発表する。続いてArmがテラバイト/秒のメモリ帯域とコヒーレントな拡張性を提供するチップレットベースのサーバーSoC「Arn AGI」の概要を述べる。それからIntelが次世代のIntel Xeon CPU「Diamond Rapids」を説明する。

カンファレンス初日午後: 自動車とGPUの研究開発成果が相次ぐ

 昼食休憩の後は、基調講演で午後のセッションが始まる。開始予定時刻は午後2時15分である。WaymoのDaniel Rosenband氏が「Compute in Motion: Challenges of Autonomous Driving(移動するコンピュータ: 自動運転の課題)」のタイトルで講演する。

 続けて午後3時15分から「自動車」のセッションが始まる。このセッションでは2件の講演を予定する。最初に,BOS Semiconductorsが、チップレット構成の自動車AI向けSoC「Eagle-N」の概要を述べる。続いてWaymoが、同社が開発したセンサーフュージョンプロセッサの技術を発表する。

カンファレンス初日(8月24日)の講演一覧(後半部分)。Hot Chipsの公式Webサイトから抜粋したもの

 休憩を挟んで午後4時45分からは「GPU」のセッションを開始する。4件と多くの講演がある。始めにNVIDIAが最新世代のGPU「Rubin」の概要を述べる。続いてAMDが最新世代のGPU「MI400シリーズ」のアーキテクチャとシステムを2件の講演で説明する。最後にIntelがエージェンティックAI推論向けのGPU「Crescent Island」の概要を述べる。

カンファレンス2日目午前: AI推論向けコンピューティングインメモリ

 カンファレンス2日目かつ最終日の8月25日は、5つの講演セッションを予定する。最初の講演セッションは午前8時30分に始まる。テーマは「FPGA」である。2件の講演を予定する。いずれもAMDによる発表である。

 始めの1件では、フィジカルAIとデータセンター、ミッションクリティカルに向けたセキュアコンピューティングSoCの開発成果を報告する。続く1件では、A-D/D-A変換器とArm CPUコア、プログラマブルロジック、AIエンジンなどを内蔵する大規模なSoC「Versal RFシリーズ」を発表する。

カンファレンス第2日(8月25日)の講演一覧(前半部分)。Hot Chipsの公式Webサイトから抜粋したもの

 続いて午前9時30分からは「メモリ」のセッションを実施する。2件の講演を予定する。まず, Samsung ElectronicsがLPDDR5XベースのAI推論向けPIM(Processing in Memory)ソリューションを発表する。続いてXCENAがCXL準拠のコンピューティングインメモリデバイス「XCENA MX1」を報告する。

 休憩を挟み、次の講演セッション「ネットワークと相互接続」は午前11時に始まる。4件と多くの講演を実施する。最初にBroadcomがAIとHPCに最適化されたイーサネットNICチップ「Thor Ultra(トールウルトラ)」の概要を述べる。次にNVIDIAが、2件の講演を続ける。まずAIファクトリのOSを支えるDPU「BlueField-4」を報告し、続けてマルチプレーンのネットワークアーキテクチャ「Spectrum-X」を説明する。最後にMojo Visionが、超高密度のマイクロLED群を駆使した超並列光入出力回路を報告する。

カンファレンス2日目午後: Meta、NVIDIA、GoogleなどがAIチップを披露

 昼食休憩の後は、「人工知能(AI)」のセッションが2つ続く。「AI 1」と「AI 2」である。「AI 1」は午後2時15分に開始される。4件の講演を予定する。

 まずMetaが、「リコメンデーション(単なる推奨や提案など)」から、生成AIの活用による「デュアルマンデート(相反する条件を満たす最適化)」へ進化させたカスタムAIチップを発表する。

 次にNVIDIAが、ヘテロジニアスコンピューティング向けのAI推論アクセラレータ「LPU(言語処理ユニット)」の有効性をアピールする。

 それからCerebrasが、ウェハスケールのエンジンを収容するラックスケールのアーキテクチャを説明する。最後にはMicrosoftが第2世代のAI推論システム用アクセラレータ「MAIA 200」の概要を報告する。

カンファレンス第2日(8月25日)の講演一覧(後半部分)。Hot Chipsの公式Webサイトから抜粋したもの

 休憩を挟んで午後4時45分からは「AI 2」セッションが始まる。最初にSambaNovaが再構成可能なデータフローユニット(RDU)「SN50 RDU」とその拡張性を述べる。

 次にGoogleが第8世代のテンソルプロセッサファミリを発表する。学習向けチップと推論向けチップを開発した。

 最後にOpenAIが「あなたでもモノが・・・ではなく、チップが作れるようになりました」との個性的なタイトルで講演する。

ポスター発表では、次世代チップ設計者の育成課程に注目

 このほか、11件のポスター発表を予定する。ETH Zurich(スイス連邦工科大学チューリッヒ校)と東京大学がそれぞれ取り組んでいる、次世代チップ設計者の育成教育に関する報告が興味深い。

 ほかには高級言語Pythonのプログラムをシリコンに変換するコンパイラの開発成果、デジタルCMOSで製造可能な生成AI向け熱力学コンピューティングチップ、身体を有するAI推論エージェントに向けた視覚言語ナビゲーションプロセッサなどの研究成果が目立つ。

ポスター発表のプログラム(その1)。Hot Chipsの公式Webサイトから抜粋したもの
ポスター発表のプログラム(その2)。Hot Chipsの公式Webサイトから抜粋したもの
ポスター発表のプログラム(その3)。Hot Chipsの公式Webサイトから抜粋したもの

 残念ながら予算不足により、筆者はバーチャル参加となる。現地レポートとはならないものの、興味深い講演についてはレポートを後ほどお届けしたい。