福田昭のセミコン業界最前線
高性能プロセッサの祭典「Hot Chips」、デスクトップスパコン「GB10」やIntelとIBMの次世代CPUなどが登場
2025年8月19日 06:39
参加料金はリアルが815ドルと高く、バーチャルが210ドルと低い
高性能プロセッサの最新技術を披露する国際学会「Hot Chips」の開催が迫ってきた。昨年と同様に、リアル開催とバーチャル開催のハイブリッドイベントとして開催される。開催時期は2025年8月24日(日曜日)~27日(火曜日)、リアル開催の場所は米国カリフォルニア州パロアルトのスタンフォード大学である。もう少し詳しく説明すると、会場は「Memorial Auditorium」と呼ばれる、スタンフォード大学構内では最大規模の屋内施設となる。屋内は舞台と客席(二階建て)で構成されており、収容人員は1,714名に達する。
現地開催(リアル開催)の基本的なスケジュールは昨年と変わらない。初日(8月24日)がチュートリアル(技術講座)、中日(8月25日)と最終日(8月26日)はカンファレンス(技術講演)と基調講演、ポスター発表である。また24日と25日は夕方あるいは夜にレセプション(歓迎会)を予定する。
昨年と同様にハイブリッド開催となるHot Chipsは、参加登録料金がリアルとバーチャルでかなり違う。リアル開催の参加料は高く、バーチャル開催の参加料は安い。リアル開催の参加者には講演の聴講以外にも、ランチ(3日間すべて)やレセプション(ドリンクと食事が用意される)などのサービスが受けられる。また休憩時間にはドリンクとお菓子が提供される。そして参加者同士の交流という重要な機会がある。
主催団体であるIEEEの正会員だと、セット参加がリアルで815ドル、バーチャルで210ドルと非常に大きな差が付く。バーチャル参加が210ドル、IEEEの非会員でも255ドルというのは、かなり割安に見える。国際学会ではハイブリッド開催でもリアルとバーチャルで同じ料金(700ドル~900ドル程度)を設定している場合が少なくない。Hot Chipsの料金設定は非常に良心的だと思える。
ラック式データセンターとカーネルプログラミングがチュートリアルのテーマ
8月24日に予定するチュートリアルは、午前と午後に分かれる。午前と午後で異なる2つのテーマに関する技術講座を開催する。Hot Chipsのチュートリアルは伝統的に、時機を得たテーマを扱うことが多い。
午前(「チュートリアル1」)のテーマはラックマウント式データセンター、午後(チュートリアル2)のテーマはカーネルプログラミングとなっている。残念なことに今年は、チュートリアルの詳細がプログラムに掲載されていない。
カンファレンス初日午前: IntelとIBMの次世代マイクロプロセッサ
カンファレンスの初日(8月25日)は、5つの講演セッションと1件の基調講演を予定する。すべて単一のセッションであり、時系列で進む。午前のプログラムを紹介していこう。始めは「CPU」のセッションが2つ続く。「CPU1a」と「CPU1b」である。
「CPU1a」は午前9時30分に始まる。まずCondor Computing(RISC-Vプロセッサの開発企業)が、RISC-Vの最新プロファイル「RVA23」と互換のアプリケーションCPU IP「Cuzco(クスコ)」の概要を述べる。続いてPEZY Computing(日本のプロセッサ開発企業)が第4世代のMIMD(Multiple Instruction, Multiple Data)メニイコアプロセッサ「PEZY-SC4S」を発表する。IBMは、次世代のPowerマイクロプロセッサを開発した成果を披露する。
休憩を挟んで「CPU1b」が午前11時30分に始まる。Intelが次世代Xeonプロセッサの概要を紹介する。続けて次のセッション「セキュリティ」が正午にスタートする。このセッションではまずTsinghua Universityが、完全準同型暗号FHE(Fully Homomorphic Encryption)のアクセラレータ「Presto」を開発した成果を述べる。Microsoftは、クラウドサービス「Azure」のセキュアハードウェアアーキテクチャについて説明する。
カンファレンス初日午後: AMDとNVIDIAが最新のGPUを発表
昼食休憩の後は、基調講演で午後のセッションが始まる。開始予定時刻は午後2時15分である。GoogleのNoam Shazeer氏が「Predictions for the Next Phase of AI(AIにおける次のフェーズを予測する)」のタイトルで講演する。
続けて午後3時15分から「グラフィックス」のセッションが始まる。このセッションでは3件の講演を予定する。始めにAMDが、最新アーキテクチャ「RDNA 4」を搭載したGPU「RX 9000」を紹介する。
次にNVIDIAが、ニューラルレンダリング時代に向けて設計したGPU「RTX5090」の技術概要を述べる。それからMetaが、AR(Augmented Reality)およびMR(Mixed Reality)の「ワールドロックレンダリング」を低消費電力で実行するSoCを発表する。
休憩を挟んで午後5時15分からは「ネットワーキング」セッションを開始する。4件と多くの講演がある。まず、Intelがネットワーク関連の処理を担う最新IPU(Infrastructure Processing Unit)「Mount Mogan(マウントモーガン)」を発表する。
続いてAMDがUEC(Ultra Ethernet Consortium)互換のNIC(Network Interface Card)「Pensando Pollara 400 」の構造と応用について述べる。次にNVIDIAが、800Gイーサネットに対応するNIC「ConnectX-8 SuperNIC」を発表する。最後にBroadcomが、HPC/AI/ML向けの低遅延広帯域イーサネットスイッチSoC「Tomahawk Ultra」の技術概要を述べる。
カンファレンス2日目午前: 次世代フォトニクス向け相互接続技術
カンファレンス2日目かつ最終日の8月26日は、4つの講演セッションと1件の基調講演を予定する。最初の講演セッションは午前8時30分に始まる。テーマは「フォトニクス」である。4件の講演を予定する。
Celestial AI(光相互接続技術の開発企業)は、AI向けフォトニックファブリックモジュールを構築可能なインダイ光入出力SoCを発表する。続いてAyar Labs(光相互接続技術の開発企業)が、AIファブリックのスケールアップ用にUCIe光入出力リタイマーチップレットを開発した成果を述べる。
次にLightmatter(光相互接続技術の開発企業)が、AI向け3次元フォトニクスインターポーザ「Passage M1000」を発表する。最後にNVIDIAが、ギガワット級AI向けのコパッケージ・シリコンフォトニクススイッチを解説する。
休憩を挟み、次の講演セッション「電力/メソドロジー」は午前11時に開始される。このセッションは3件の講演を予定する。始めにFabric8Labs(3次元金属印刷技術の開発企業)が、AIデータセンター向けの3次元冷却構造を形成する「ECAM(Electrochemical Additive Manufacturing)」技術を公表する。
続いてEveractive(バッテリレス無線センサーの開発企業)が、エネルギー収穫機能と無線起動機能、エネルギー適応サブシステムを備えたSoCの開発成果を発表する。次にカリフォルニア大学バークレー校(UC Berkeley)が、Intel 16(1.6nm)プロセスを利用した3種類のチップ設計とテープアウトについて論じる。
カンファレンス2日目午後: スパコンチップ「GB10」と第4世代TPU「Ironwood」
昼食休憩の後は、前日と同様に基調講演のセッションとなる。午後1時45分に始まる予定だ。ラピダスの小池淳義氏が「Up and Running with Rapidus: How Japan and Cutting-Edge Technologies are Transforming Semiconductor Manufacturing(ラピダスの立ち上げと運営: 日本と先端技術はいかにして半導体製造に変身しつつあるか)」と題して講演する。
基調講演に続いて午後2時45分からは一般講演セッション「機械学習その1」となる。3件の講演を予定する。最初にMarvellが「メモリ: たぶん最も大切なこと」と題して講演する。続いてd-Matrix(AIアクセラレータの開発企業)が、AI推論の計算時間を短縮するインメモリ計算チップレット「Corsair(コルセア)」を発表する。
それからHuaweiが、次世代AIスーパーコンピュータ向け相互接続技術「UB-Mesh」を公表する。局所的階層化ネットワークを採用している。
休憩を挟んで午後4時45分から、最後の講演セッション「機械学習その2」が始まる。3件の講演を予定する。まず、NVIDIAがデスクトップAIスパコンを実現する「GB10」SoCの技術概要を説明する。
続いてAMDが、第4世代のGPUコア「CDNA」と同コア搭載のGPU製品「Instinct MI350」を紹介する。最後にGoogleが、学習と推論の両方で優れた「性能/コスト」と「性能/消費電力」を実現する第7世代のAI用TPU「Ironwood」を発表する。
このほか、12件のポスター発表を予定する。KAIST(韓国科学技術院)やETH Zurich(スイス連邦工科大学チューリッヒ校)、村田製作所などが研究開発成果を公表する。
上記のように、とても興味深い講演が多い。しかし残念ながら筆者は予算不足により、バーチャル参加となる。現地レポートとはならないものの、オンデマンド視聴による講演レポートを執筆する予定だ。ご期待されたい。




















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