福田昭のセミコン業界最前線
AI時代を担う次世代のDRAM技術とNAND技術が国際メモリワークショップに集結
2026年5月5日 06:00
開催地はベルギーの大学都市「ルーベン」
半導体メモリ技術の研究開発に関する国際学会「国際メモリワークショップ(IMW: IEEE International Memory Workshop)」が今年も5月中旬に始まる。2026年のIMW(IMW 2026: 正式名称は2026 IEEE 18th International Memory Workshop)は、ベルギー・ルーベンの「University Hall(大学ホール)」で2026年5月10日~13日に開催される。ルーベンにはベルギー最古の総合大学「KU Leuven(ルーベンカトリック大学)」(1425年創立)があることから、「大学都市」とも呼ばれる。
国際メモリワークショップ(IMW)は半導体メモリとその関連技術に特化した国際学会であり、毎年5月中旬~下旬に開催されてきた。開催地は隔年で米国(カリフォルニア州モントレー)、米国以外の年は欧州とアジアで交互に開催というのが通例となってきた。2024年はアジアでの開催、2025年は米国での開催だったので、今年は欧州での開催となる。なお前回の欧州開催は2022年、開催地はドイツのドレスデンだった。
3日間の技術講演会と前日イベントの1日間チュートリアル
IMW 2026は、5月11日~13日にメインイベントであるテクニカルカンファレンス(技術講演会)を開催する。技術講演会は口頭講演とポスター発表で構成されており、技術講演会初日の11日夕方にはポスター発表とレセプション(歓迎会)が同じ会場で実施される。
技術講演会の前日である5月10日には、プレイベントであるチュートリアル(技術講座)を予定する。なお参加登録料金は技術講演会とチュートリアルで別々なので、あらかじめ留意されたい。またチュートリアルだけの参加は認められていない。
技術講座の共通テーマは午前が「システム」、午後が「次世代メモリ」
技術講演会前日の5月10日はすでに述べたように、プレイベントであるチュートリアルが開催される。1日間の技術講座は2つのテーマを扱っており、午前の「チュートリアル1」と、午後の「チュートリアル2」に分かれる。それぞれのチュートリアルは3件の講演で構成される。
「チュートリアル1」の共通テーマは「メモリが実現するシステム(Memory Enabled Systems)」である。「複数の技術にまたがる協調最適化による密度と帯域幅の向上」「広帯域NANDフラッシュ」「コンピュートシステムのシステム製造協調最適化」の講演を予定する。
「チュートリアル2」の共通テーマは「最先端メモリ(Advanced Memory)」である。「メムリスタベースのコンピューティングインメモリ(CiM)」「二酸化ハフニウムベースの強誘電体デバイス」「モノリシックに積層可能な1T1C型3次元DRAM」の講演を予定する。
基調講演はAI向けメモリ、NANDフラッシュ、DRAMがテーマ
次は技術講演会(テクニカルカンファレンス)の概要と注目講演を紹介していく。初日である5月11日の技術講演会は、チェアパーソンによる開会挨拶から始まる。続いて基調講演(いずれも招待講演)を予定する。今年も昨年と同様に、3件の基調講演を予定する。
始めにMicron Technologyが、「Memory Technology: Enabling the AI Revolution(AI革命を実現するメモリ技術)」と題してメモリ技術の未来を展望する(講演番号1.1)。続いてSamsung Electronics(以降はSamsungと表記)が「NAND Flash Memory: Boundless Battle against Capacity and Performance(NANDフラッシュメモリ: 大容量化と高性能化の果てしなき競争)」と題してNANDフラッシュメモリの進化を解説する(同1.2)。最後に、CXMT(ChangXin Memory Technologies)が「DRAM Evolution and Position in AI Era(AI時代におけるDRAMの進化と位置付け)」と題してDRAM技術の将来を述べる(同1.3)。
DRAM関連の発表が増加し、NANDフラッシュ関連の発表が減少
基調講演に続いて休憩を挟み、一般講演が始まる。一般講演はすべてシングルセッション(単一のセッション)であり、パラレルセッション(複数のセッションを同時進行すること)は一つもない。このため、参加者はすべての講演を聴講できる。5月13日の昼まで、一般講演のセッションが続く。繰り返しになるが、月曜の夜にはポスター発表とレセプション、火曜日の夕方にはパネル討論会、火曜日の夜にはバンケット(晩餐会)を予定する。
プログラムの口頭講演をセッション名で分類すると、7つの一般講演セッションは「DRAM」が2つ、「NAND」が2つ、「次世代メモリ(Advanced and Emerging Memories)」が2つ、「メモリが実現するシステム(Memory Enabled Systems)」が1つという構成になっている。前回と比べ、「DRAM」セッションが1つ増え、「NAND」セッションが1つ減り、「次世代メモリ」セッションが1つ増えた。「メモリが実現するシステム」セッションは前回に存在せず、今回に新しく設けられた。そのほか前回の「インメモリコンピューティング」と「強誘電体」が今回はなくなった。
プログラムを精査すると、インメモリコンピューティングと強誘電体メモリ、クロスポイントメモリ、酸化物半導体メモリの発表が「次世代メモリ」セッションに含まれていた。
次世代DRAMを構成する要素技術の開発成果
ここからは注目の発表を簡単に紹介していこう。始めはDRAM関連の発表である。Samsung Electronicsは、次世代の高性能垂直チャンネルDRAMセルアレイトランジスタの設計で考慮すべき事柄を報告する(講演番号3.4)。Lam Researchは、人工知能/機械学習ベースと物理ベースのプロセスモデルを活用してDRAM製造歩留まりの上昇を加速する手法を解説する(招待講演、番号5.1)。
Samsung Electronicsはまた、次世代DRAMセルの浮遊ボディ効果とデータ保持特性を包括的に分析した結果を述べる(ポスター発表番号P2)。NaMLabは、ジルコニウム・ハフニウム酸化物による比誘電率が60と極めて高い誘電体膜を開発した(同P5S)。DRAMキャパシタへの応用を検討した。
3D NANDフラッシュメモリの高密度化、高速化、高効率化が進む
続いてフラッシュメモリ関連の注目発表をご紹介する。キオクシアは、超薄型モリブデン/多結晶シリコン積層の浮遊ゲート技術で書き込みと消去の効率を高めた3D NANDフラッシュメモリ技術を開発した(講演番号2.4)。Sandiskは、チャンネルの裏面エンジニアリングによってQLC方式の信頼性を高めた3D NANDフラッシュメモリを報告する(同2.3)。
Macronix International(MXIC)は、超高速入出力のSSDに向けた3D NANDフラッシュ設計の理想的なアプローチを開発した(講演番号2.2)。Sandiskはまた、3D NANDフラッシュのZ方向スケーリングを進める高誘電率メモリホール構造をアレイスケールで評価した結果を述べる(同8.1)。
HBM対抗の広帯域メモリ技術をSAIMEMORYが講演
最後に次世代メモリの注目発表である。SAIMEMORY(サイメモリ)が、「Zアングルメモリ」と呼ぶ広帯域DRAMを解説する(招待講演、番号6.1)。すでにいくつかのメディアで取り上げられてきた、注目の次世代メモリだ。
Micron Technologyは、単一カルコゲナイドのクロスポイントメモリにおける「スパイク」関連効果を包括的に評価した結果を述べる(講演番号4.2)。imecは、非破壊読み出し動作のFeRAMにおけるMFSM(Metal-Ferroelectric-Semiconductor-Metal)構造を持つ強誘電体キャパシタでメモリウィンドウと書き込み速度をバランスさせる手法を報告する(同4.3)。
またApplied Materials (AMAT)は、最先端酸化技術の改良によって次世代のメモリデバイスを実現する手法を発表する(ポスター発表番号P13)。
このほかにも興味深い研究成果が少なくない。幸いにして筆者は、リアル参加が可能になった。今後の現地レポートにご期待されたい。


























