福田昭のセミコン業界最前線

PCのHDD置き換えは近く飽和、次なる牽引役を模索するSSD市場

~国際ディスクフォーラム2021レポート【SSD編】

2020年のHDD市場とSSD市場の概要。いずれも実績値。括弧内は同年10月に公表された予測値。テクノ・システム・リサーチ(TSR)が過去に公表した数値から筆者がまとめたもの

 ハードディスク装置(HDD:Hard Disk Drive)関連の業界団体である日本HDD協会(IDEMA JAPAN)は、2021年9月にストレージとその応用に関する講演会「国際ディスクフォーラム(DISKCONJAPAN2021)」を開催した。COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の感染拡大により、2020年に続いて週1日のオンライン開催となった。

 2021年は9月8日、15日、22日、29日の水曜日にそれぞれ2件の講演とフリーディスカッションを実施した。開催テーマは「テレワーク拡大によるトラフィックの急増-それを支えるストレージ」である。

 本レポートでは初日である9月8日の講演から、市場調査会社テクノ・システム・リサーチ(TSR)によるストレージ市場を展望した講演「Updated Storage (HDD and SSD) Market Outlook」のSSD(Solid State Drive)に関する部分の概要をご紹介する。講演者はTSRでアナリストをつとめる楠本一博氏である。

 なお、本セミナーの講演内容は報道関係者を含めて録画や配布などが禁止されている。本レポートに掲載した画像(講演スライド)は、講演者である楠本氏と日本HDD協会のご厚意によって掲載の許可を得たものであることをお断りしておく。

2020年は史上初めてSSD市場が台数金額ともにHDDを抜く

 2020年の「国際ディスクフォーラム(DISKCONJAPAN2020)」でも楠本氏は、「Updated Storage (HDD and SSD) Market Outlook」と題してストレージ市場の最新状況を講演した。講演の概要は本コラムで2020年11月にご報告した通りだ。

 2020年のストレージ市場における最大のトピックスは、年間の出荷台数と出荷金額でSSDが史上初めて、HDDを上回ったことだろう。同年10月の楠本氏による講演では、この主役交代が確実視されていた。そして実際に、SSDの出荷台数と出荷金額はHDDを超えた。

 2020年のストレージ市場(世界市場)を確認しよう。出荷台数はHDDが前年比18.2%減の2億6,000万台、SSDが同33.7%増の3億1,546万台となった。出荷金額はHDDが前年比8.4%減の202億8,300万ドル、SSDが同34.9%増の279億8,770万ドルである。いずれもHDDが減少し、SSDが増大した。

SSD市場とHDD市場の格差が広がる2021年

 SSD市場の拡大とHDD市場の縮小は2021年も続く。出荷台数はHDDが前年比1%減の2億5,737万台、SSDが同23.2%増の3億8,880万台になると予測する。出荷金額はHDDが前年比10.7%増の224億6,100万ドル、SSDが同10.8%増の310億1,450万ドルになる見込みだ。

 出荷台数の格差は広がるものの、出荷金額の格差はあまり広がらない。平均単価(ASP)がHDDは上昇しているのに対し、SSDが下降していることが影響した。

2021年のHDD市場とSSD市場の比較(予測値)。出典:テクノ・システム・リサーチ(TSR)

2026年までの単価予測:安くなるSSD、高くなるHDD

 ASPは2020年までHDDが低く、SSDが高い状態が続いていた。HDDのASPは2013年~2017年に60ドル前後でほぼ一定を保っていた。それが2018年以降は、かなりの勢いで上昇が続いている。2018年のASPは66ドル、2019年のASPは70ドル、2020年のASPは78ドルだった。2021年のASPは87ドルに上昇すると見込まれる。

 これに対してSSDのASPは2015年~2018年に120ドル前後と、HDDの約2倍の水準で推移していた。それが2019年に88ドルへと低下し、2020年も89ドルとほぼ同じ単価を維持した。2021年にはSSDのASPは80ドルに下がる見込みだ。2021年はHDDのASPが初めて、SSDのASPを超える年となる。

 今後も、この傾向は続く。HDDのASPが少しずつ上昇していくのに対し、SSDのASPはほぼ一定を保つ。5年後の2026年には、HDDのASPは119ドルに達するとTSRは予測する。同年のSSDのASPは79ドルで、2021年とほとんど変わらない。両者の比率(HDD/SSD)は2021年の「1.09」から、2026年には「1.51」へと上昇する。

HDDとSSDの平均単価の推移(2011年~2026年)。2020年までは実績、2021年以降は予測。テクノ・システム・リサーチ(TSR)が過去に公表した数値から、筆者がまとめたもの

2026年までのドライブ当たりの記憶容量:急拡大するHDD、漸増のSSD

 HDDにおけるASPの上昇は、ドライブ1台が搭載する記憶容量(平均値)の増加が主な理由である。容量当たりの単価(GB単価)は下降するものの、それをはるかに上回るペースで記憶容量が増大するとTSRはみている。具体的には、2018年には2TB強だったのが、2021年には約5TBと2.5倍に増加し、5年後の2026年には14TBを超えると予測する。

 SSDのドライブ1台が搭載する記憶容量(平均値)も増加するものの、その勢いはHDDに比べるとはるかに弱い。2018年には約480GBだったのが、2021年には約670GBに増加し、5年後の2026年には約1,240GBに達すると予測する。この結果、1台当たりの記憶容量の違い(比率:HDD/SSD)は2018年の4.7倍から、2021年には7.6倍、2026年には12倍に広がると見込まれる。

HDDとSSDの1台当たりの記憶容量と容量比(HDD/SSD)の推移(2015年~2026年)。2020年までは実績、2021年以降は予測。テクノ・システム・リサーチ(TSR)が過去に公表した数値から、筆者がまとめたもの

SSDの四半期出荷台数は過去最高を更新しつつ増加

 話題を直近のSSD出荷台数に戻そう。SSDの出荷台数は、2013年に本格的な出荷が始まって以降、急速に伸び続けてきた。

 四半期ごとの出荷台数を2020年~2021年上半期でみると、2020年第1四半期はCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の影響と季節要因が重なり、前四半期比で9.4%減と落ち込んだものの、その直後である2020年第2四半期は前四半期比で35.2%増と急激に回復し、過去最高の出荷台数を更新した。その後も出荷台数は順調に伸びており、2021年第2四半期は前四半期比11.3%増で過去最高をさらに更新した。

 最新の実績数値である2021年第2四半期の出荷台数は9,582万台である。製品分野別(エンタープライズ向け、PC向け、アドオン向け、ゲームコンソール向け、産業その他向け)では、PC向けが最も多い。これも過去最高の6,280万台に達した。PC向けはSSD全体の約3分の2(66%)を占める。次いでアドオン向けが1,850万台で、全体の2割弱(19%)である。

 そのほかはエンタープライズ向けが842万台、ゲームコンソール向けが450万台、産業その他向けが160万台となっている。注目すべき分野はゲームコンソール向けだ。2020年に発売された新世代ゲームコンソールがSSDを標準搭載したことで、急激に新たな製品分野として立ち上がった。

SSDの四半期別出荷台数の推移(2018年第1四半期~2021年第4四半期)。2021年第2四半期までは実績、同年第3四半期以降は予測。出典:テクノ・システム・リサーチ(TSR)

2022年以降のSSD市場は成長が鈍化

 再び2026年(5年後)までのSSD市場を概観しよう。TSRは2026年のSSD出荷台数を4億1,080万台、SSD出荷金額を323億7,800万ドルと予測する。2021年の予測値(上半期は実績)が3億8,880万台と310億1,450万ドルなので、5年間の成長率はそれぞれ7.5%、4.4%となる。

 2021年の5年前、すなわち2016年にSSDの出荷台数は1億14万台、出荷金額は116億3,770万ドルだった。2016年から2021年までの5年間に出荷台数は3.9倍、出荷金額は2.6倍に急増した。年平均成長率(CAGR)はそれぞれ31%、22%といずれもかなり高い。

 ところが2021年以降の5年間では、出荷台数と出荷金額の伸びは過去5年間に比べると著しく低い。2021年~2026年の年平均成長率(CAGR)はそれぞれ1.4%、0.9%と、ごくわずかに過ぎない。

SSD市場(世界市場、年間)の推移(2015年~2026年)。2020年までは実績、2021年以降は予測。出典:テクノ・システム・リサーチ(TSR)

 今後5年間の市場予測を製品分野別に、もう少し詳しく見てみよう。

 出荷台数が今後5年間に増加する分野はエンタープライズ向けとアドオン向け、ゲームコンソール向け、産業その他向けである。大きく伸びるのはエンタープライズ向けで、2021年の3,500万台から、2026年には6,600万台へ増えると予測する。

 一方、出荷台数が今後5年間で減少する分野は、最大分野のPC向けである。年間出荷台数の予測値は、2021年の2億4,800万台から2026年の2億1,850万台へと3,000万台近く減少する。このことが、SSD全体の出荷台数を押し下げる。

PCのSSD搭載比率が飽和に近づく

 SSDにとって最大の応用分野であるPC向けの出荷台数が伸びなくなるのは、PCのSSD搭載比率が飽和しつつあるからだ。TSRはこのように分析する。

 まず、PCの出荷台数は漸減傾向にある。COVID-19の世界的な流行によって2020年と2021年(予測)のノートPC出荷台数は前年比で大きく増加したものの、一時的な需要の増大であり、2022年以降は漸減傾向に戻ると見る。またデスクトップPCはコロナ禍でも出荷台数の減少が続いた。

 SSDは過去、主にPCの搭載比率を上げることで、出荷台数を伸ばしてきた。言い換えると、PCストレージの主役だったHDDを置き換えることで、市場を拡大してきた。

 デスクトップPCだと、2017年には10.1%に過ぎなかったSSD搭載率が、3年後の2020年には67.3%と7倍近くに急増した。SSDの出荷台数は2017年の925万台から、2020年には5,250万台へと5倍強に急拡大した。この間、デスクトップPC自体の出荷台数は2017年の9,136万台から、2020年は7,800万台へと減少している。

 同じ時期のノートPCだと、2017年のSSD搭載率は39.2%とかなり高い。eMMC/UFSといった小型フラッシュストレージの搭載率は6.2%で、合計するとフラッシュストレージの搭載率は45.4%に達していた。3年後の2020年にはSSDの搭載率が63.9%に、eMMC/UFSの搭載率は17.8%に上昇した。合計するとフラッシュストレージの搭載率は81.7%となり、8割を超えた。

 フラッシュストレージの出荷台数は2017年の6,950万台(内訳はSSDが6,000万台、eMMC/UFSが950万台)から、2020年には1億6,970万台(内訳はSSDが1億3,270万台、eMMC/UFSが3,700万台)へと大きく増加した。

PC出荷台数とストレージ別搭載率の推移(2016年~2026年)。2020年までは実績、2021年以降は予測。出典:テクノ・システム・リサーチ(TSR)

 2021年にデスクトップPCのSSD搭載率は76%、ノートPCのSSD搭載率は73%になると予測する。それぞれ2020年に比べると8.7ポイント、9.1ポイントの上昇である。

 ここで重要なのはPC本体の出荷台数だ。デスクトップPCの出荷台数は2020年の7,800万台から、2021年には6,970万台へと減少する。このため、デスクトップPC向けSSDの出荷台数は2020年の5,250万台から、2021年は5,300万台へとわずか50万台の増加にとどまる。そして2022年には、デスクトップPC本体の出荷減により、同PC向けSSDの出荷台数は減少に転じる。

 ノートPCの出荷台数は2020年の2億780万台から、2021年には2億6,710万台へと増加する。本体が増加するので、SSDの出荷台数も増える。2020年の1億3,270万台から、2021年は1億9,500万台へと拡大し、2億台に迫る。しかし2022年にはノートPC本体の出荷減により、同PC向けSSDの出荷台数はデスクトップPC向けと同様に減少に転じる。いずれもSSD搭載率は上昇するものの、その幅はあまり大きくない。

 5年後の2026年にはどうなるか。デスクトップPC向けSSDの出荷台数は4,750万台、ノートPC向けSSDの出荷台数は1億7,100万台と予測する。いずれも、2021年よりも低い。SSD搭載率はデスクトップPCが89.3%、ノートPCが84.7%に達しており、搭載率の大きな上昇は期待できない。

今後はエンタープライズ向けと産業向けに期待

 今後5年間の製品分野別市場予測に再び戻る。今度は出荷金額ベースで見ていこう。2021年と2026年の出荷金額と増減率(2026年/2021年)は、以下のようになる。

 エンタープライズ向けSSDの出荷金額は2021年が127億7,500万ドル、2026年が194億7,000万ドルと予測する。増減率は52.4%増である。

 PC向けSSDの出荷金額は2021年が109億2,100万ドル、2026年が67億7,350万ドルと予測する。増減率は37.9%減である。

 アドオン向けSSDの出荷金額は2021年が45億7,250万ドル、2026年が38億5,400万ドルと予測する。増減率は15.7%減である。

 ゲームコンソール向けSSDの出荷金額は2021年が19億5,800万ドル、2026年が12億7,200万ドルと予測する。増減率は35.0%減である。

 産業その他向けSSDの出荷金額は2021年が7億9,700万ドル、2026年が10億850万ドルと予測する。増減率は26.5%増である。

 まとめると、金額ベースの市場規模が今後5年間で増加するのは、エンタープライズ向けと産業その他向けしかない。そして市場全体に大きく影響するのは、エンタープライズ向けだけだ。2021年の時点ですでに、製品別の最大市場はエンタープライズ向けであり、全体(310億4,150万ドル)に占める割合は41.2%に達する。それが2026年には、60.1%に拡大する。

 すでに述べたように、2021年以降のSSD市場は台数と金額ともに成長率が大きく鈍化する。台数の伸びはPC向け、金額の伸びはエンタープライズ向けが牽引してきたというのが、2021年までの構図だ。今後はPC向けの減少を、エンタープライズ向けの増加が補うという構図に変化する。

 市場をさらに拡大するためには、新たな成長分野の立ち上がりが望ましい。最近ではゲームコンソール向けが新しい応用分野となった。今後の市場探索に期待がかかる。