西川和久の不定期コラム

EPSON「EP-803AW」LEDが操作を導く「カンタンLEDナビ」を搭載!



EP-803AW

 エプソンは9月2日、インクジェットプリンタ「カラリオ」シリーズに8機種の新製品を発表した。その中で染料系6色インクを搭載するEP型番は4機種5モデルある。今回、ミドルレンジに相当する「EP-803AW」が送られてきたので、試用レポートをお届けする。

●EP-803AWの仕様

 同社の染料系インクジェット複合機のラインナップは、「EP-903F」、「EP-903A」、「EP-803A/AW」、「EP-703A」の4種類。EP-903FはEP-903AのFAX対応機なので、今回ご紹介するEP-803A/AWはラインナップ上、丁度ミドルレンジに相当する主力機種といえよう。同社のサイトにも「オススメはコレ!」と書いてあるほどだ。またEP型番としては唯一、ブラック(EP-803A)とホワイト(EP-803AW)のカラーバリエーションが用意されている。これも広い層に買って欲しいという意欲の表われだろう。主な仕様は以下の通り。

・染料6色インクシステム、MACH方式/5,760×1,440dpi
・主走査:2,400dpi/副走査:4,800dpi CISセンサー搭載
・自動両面プリント
・前面給紙カセット A4:最大120枚、ハガキ:最大20枚(上トレイ)/最大50枚(下トレイ)
・CD/DVDプリントトレイ
・自動両面印刷機能(オプション)
・L判写真プリントのスピード約14秒
・無線(IEEE 802.11b/g/n)/有線LAN(10/100Base-TX)/USB 2.0×2/IrDA
・446×385×150mm(幅×奥行き×高さ)/約9.0kg
・店頭予想価格:3万円前後

 インクシステムは染料系6色。エンジンとインクカートリッジは2009年のモデルと同じであるが、標準容量に加えて小容量のカートリッジが用意された。これによって、用途に応じてランニングコストを安く抑えることができる。ただし、標準インクの1枚当たり単価が約20.8円なのに対し、約26.7円とコストは上がってしまう。

 標準容量は、「IC6CL50」(6色パック)、「ICBK50」(ブラック)、「ICC50」(シアン)、「ICLC50」(ライトシアン)、「ICLM50」(ライトマゼンタ)、「ICM50」(マゼンタ)、「ICY50」(イエロー)。小容量は「IC6CL51」、「ICBK51」、「ICC51」、「ICLC51」、「ICM51」、「ICLM51」、「ICY51」という型番になっている。

 その他、100Base-TX/IEEE 802.11n、IrDAといった通信インターフェイスや各種仕様なども、去年モデルの「EP-802A」とほぼ同じ。自動両面印刷機能はオプションで、2種類の用紙がセットできる前面給紙カセットの最大枚数も変わらない。

 大きく異なるのは“LEDが操作を導く「カンタンLEDナビ」を搭載”した点だ。EP-802Aの操作パネルは、ボタンの上に[OK]などが単に印刷されているだけであったが、EP-803Aは、操作上有効な部分だけが光るように変更された。ちなみに、EP-903F/903A、EP-703Aも同機能を持っている。もともとボタンの数は少なめだが、これによって更にスムーズに操作できる。また、操作パネル自体がスッキリした印象を受ける。

 ボタンが光ると言う意味では、競合となるキヤノンの「PIXUS MG6130」も似ているが、こちらは機能的に無効なボタンの存在が分からなくなるのに対して、「カンタンLEDナビ」は、ボタンの存在自体は無効/有効に関わらず分かり、その上で有効なボタンの刻印のみが光る仕様になっている。どちらがいいかは好みの問題もあり、優劣付け難い。

前面。右下にコンパクトフラッシュにも対応しているメモリカードリーダ、USB 2.0×1、IrDAがある背面。左にUSBアップストリーム、Ethernet。右側に電源コネクタ。デザインはフラットだが、ケーブルがあるので壁にぴったりつけることはできない前面給紙カセット。下トレイと上トレイで例えばA4普通紙、L判光沢紙など、違った種類の用紙を2つセットできる
操作パネル周辺。光る「カンタンLEDナビ」が印象的だ。[CD/DVDトレイ]を押すとCD/DVDトレイがせり出してくるスキャナ部。左側奥が原点となる。PX-503Aと違って副走査は4,800dpiだインク部。スキャナ部を上げると右手前にインクカートリッジがある。これなら交換も容易だ

 箱から取り出し一番初めに気が付いたのは、顔料系のPX-503Aと同じスクエア型のボックスデザインであるものの、EP-803AWの背面は、電源/USB/Ethernetのコネクタがほぼ背面と同じ位置にあるため、コネクタやケーブルが邪魔してピッタリ壁につけることができない。オプションの自動両面印刷機能を取り付けると後ろが飛び出るため、無理に対応していないものだと思われる。

 また重量が約9.0kgと少し重めで、持ち上げた時の印象が結構違う。ただこれは良い面もあり、前面給紙カセットを入れる時、本体を手で押さえなくても動くようなことがなく、座りがいい。

 操作パネルはスキャナ部と水平になるまでチルトするため、設置場所によってアクセスしやすい角度に固定できる。またボディカラーがホワイトと言うのは、ここ数年、ブラックやグレーばかりだったので、斬新な感じだ。

●セットアップ

 対応OSは、Windows 2000/XP/Vista/7、Mac OS X 10.2.8以降。ドライバなどのセットアップは、Install Naviを使ってアプリケーションなども含め一括インストールできるのは従来通りだ。

Install Navi/簡単インストールInstall Navi/ソフトウェア一覧Install Navi/ネットワーク接続
Install Navi/プリンタとパソコンの設定(初回)Install Navi/無線LAN接続Install Navi/操作パネルで設定

 ただし、接続方法を無線LANにした場合、以降の手順が大幅に変わった。これは同社によると「設定がわからない」、「SSID、パスワードが何かわからない」、「無線LANの接続には何が必要か」……など、コールセンターへの問い合わせが多かったためで、簡単に無線LANへ接続する方法を新たに追加している。

 画面キャプチャの最後「本製品の無線LAN設定をソフトウェアで行ないますか?」を「いいえ:操作パネルで設定」にすると、これまで通り操作パネルからマニュアルでSSIDやパスワードを設定する手順になるが、「はい:ソフトウェアで設定」を選ぶと、以降9枚の画面キャプチャの流れとなる。

 この無線LAN簡単セットアップの肝は、画面キャプチャからも分かるように、いったんPCとUSBケーブルで接続し、必要な情報を自動的にプリンタ側へセットすることにある。ほぼ全自動で処理が行なわれ、答えるのは「検出されたSSIDの確認」、「メモリカードのファイル共有設定」の2点のみ。確かにこれなら無線LANのことが分からない一般ユーザーでも問題なく設定できそうだ。

USBケーブルを接続製品の確認ファイアウォール警告
プリンタ検索中自動接続するSSIDの確認接続確認中
メモリカードスロットのファイル共有設定ドライバの設定接続設定完了

●単独使用/プリント

 単独使用のプリントは写真専用となる。「用紙と印刷の設定」は、「用紙サイズ:L判/KGサイズ/2L判/ハガキ/六切/ハイビジョンサイズ/A4」、「用紙種類」、「フチなし設定:フチなし/フチあり」、「印刷品質:速い/標準品質/きれい」、「フチなしはみ出し量:標準/少ない/より少ない」、「日付表示:しない/年. 月. 日/月. 日. 年/日. 月. 年」、「情報印刷:なし/文字合成印刷」、「トリミング:する/しない」、「双方向印刷:する/しない」、「CD濃度調整:標準濃度/濃く/より濃く」。

 「写真の色補正」は、「自動画質補正:オートフォトファイン!EX/P.I.M/自動補正なし」、「補正モード:標準(自動)/人物/風景/夜景」、「赤目補正:しない/する/しない(全写真)/する(全写真)」、「フィルター:なし/セピア/モノクロ」、「明るさ調整」、「コントラスト」、「シャープネス」、「鮮やかさ調整」が行なえる。

 そのほかにも「手書き合成シートを使って印刷」、「オーダーシートを使って印刷」、「データ読み込み先選択」、「いろいろなレイアウトの印刷」、「CD/DVD レーベルに印刷」、「ナチュラルフェイス印刷」、「すべての写真を印刷」、「すべての写真をインデックス印刷」、「スライドショーを見ながら印刷」など機能は豊富だ。

 特に顔料系プリンタPX-503Aの「写真の色補正」は「赤目補正」だけだったので、随分項目が増えている。これだけあれば通常、PC側で補正する必要性は感じられず、ダイレクトプリントのみで十分だろう。液晶パネル左下にある[仕上がりview]ボタンを押せば、画面上で仕上がりのシミュレーションを行なうことができるのもGood。やはり染料系のEP-803AWは、写真印刷に力が入っており、より便利になっているのが分かる。

 肝心の画質は、顔料系のPX-503Aと比較すると、やはりEP-803AWの方が黒が浮いた感じも無く、更に写真に近い印象だ。ダイレクトプリントでこれだけのプリントになれば文句無し。ただ少し前に掲載したキヤノンの「PIXUS MG6130」と比較すると硬調で肌色など若干赤味が足らない感じもするが、逆に肌色自体は滑らかに感じる。この違いは昔から両社で見られる傾向で、また使う用紙によっても変化する。純正用紙に限らず、いろいろ試し、自分の好みのものを探すのもまた面白い。

写真を見ながら選んで印刷ここで回転やトリミングもできるL判/写真用紙/フチなし/標準品質/オートフォトファイン!EXで20秒

【動画】「カンタンLEDナビ」に注目

●単独使用/スキャナ

 スキャナは、「スキャンしてメモリカードに保存」、「スキャンしてパソコンへ」、「スキャンしてパソコンへ(PDF)」、「スキャンしてパソコンへ(E メール)」の4パターン選べる。PCへ転送する以外に、単独スキャンでメモリカードに「保存形式:JPEG/PDF」に対応しているのがポイントだ。メモリカードへ直接JPEGやPDFが保存できると、PCを経由するスキャンは余程の時のみとなる。

 そのほかの設定項目は「スキャン範囲:A4/自動キリトリ/最大範囲」、「原稿タイプ:文字/写真」、「保存品位:速度優先/画質優先」、「文章の向き・とじ位置」となっている。

スキャンしてメモリカードに保存保存形式にPDFも選択できるPDF/A4/文字/速度優先で40秒

●単独使用/コピー

 コピー機能もかなり豊富だ。「用紙とコピーの設定」は「レイアウト:標準コピー/フチなしコピー/A4-Bookを2アップ/B5-Bookを2アップ/ミラーコピー/Book両面*」、「倍率:任意倍率/等倍/オートフィット/A4→ハガキ/2L判→ハガキ」、「用紙サイズ:A4/B5/L判/2L判/ハガキ/KGサイズ/六切」、「用紙種類」、「原稿種:文字/文字・写真/写真」、「印刷品質:エコノミー/標準品質/きれい」、「フチなしはみ出し量:標準/少ない/より少ない」、「両面:しない/する*」、「文書の向き・とじ位置」、「両面・乾燥時間:標準/長い/より長い*」などの設定ができる。

*印のある項目はオプションの「自動両面ユニット」が必要

 加えて写真をスキャンして、焼き増し・引き伸ばしが簡単にでき、L判写真などを複数枚同時にコピーできる「写真コピー」、CDレーベルや写真をCDレーベルにコピーできる「CD/DVDコピー」、そして標準/フチなし/2アップ/Bookを2アップ/ミラーコピー/両面コピー*/両面2アップ*/Book両面*など「いろいろなコピー」にも対応。通常これだけあれば特に困ることは無いだろう。

標準コピーコピーメニューカラー/A4/普通紙/標準品質/等倍で27秒

●単独使用/その他

 [ホーム]メニューには、これまで解説した機能以外に、「塗り絵印刷モード」、「ノート罫線印刷モード」、「データ保存」がある。

 「塗り絵印刷モード」は、スキャンもしくはメモリカード上の写真やイラストを元データとして、輪郭だけを抽出したデータを作り出し、それを印刷する。オリジナルの塗り絵が出来るため子供などが喜びそうだ。

 「ノート罫線印刷モード」は、罫線(大)、罫線(小)、罫線(マス目)、便箋(写真背景・罫線なし)、便箋(写真背景・罫線あり)を無地の用紙に印刷する機能だ。原稿用紙や五線譜も欲しいところか。

 「データ保存」は、PCを経由せずに、前面のUSBポートに接続したUSBメモリやCD/DVDに、メモリカードのデータを保存できる。手軽なバックアップとして有効だろう。またメディア内のデータ削除、USB接続の外部記憶装置からの写真の印刷にも対応している。

塗り絵印刷モードノート罫線印刷モードデータ保存

●PCからの使い勝手

 セットアップの画面キャプチャから分かるように、「簡単インストール」を選択すると、「スキャナドライバ(Epson Scan)」、「プリンタドライバ」、「電子マニュアル」、「ネットワークガイド」、「EpsonNet Setup」、「Epsonプリンタウィンドウ!3」、「EpsonNet Print」が必須ソフトウェア。

 推奨ソフトウェアとして、文字認識の「読んde!ココ パーソナル」、フレームの登録/削除などができる「Epson PRINT Image Framer Tool」、CD/DVDレーベルプリント「Epson Print CD」、操作パネルからスキャンした時の処理を設定する「Epson Event Manager」、ダイレクトプリントより高機能なプリントツール「E-Photo」、ユーザー専用サービス「MyEPSON Connet」がインストールされる。

 これらの多くは以前から同社のインクジェット複合機には馴染みのものばかりだ。逆に言うと、2009年と比較してほとんど進化していない。過去何度もバージョンアップをしているので十分熟成しているのだろう。

MyEPSON ConnectE-Photo(1)E-Photo(2)
デバイスとプリンター>EP-803A(ネットワーク)Epson Event ManagerEPSONプリンターウィンドウ!3
EPSON ScanEPSON Print CD読んde!!ココ パーソナル

 なお、MyEPSONからWeb印刷アプリの機能を強化する「E-Web Print」、同社のWebからプロパティを開かずに簡単印刷できる「かんたん設定 for Office」がダウンロード可能だ。

 スマートフォン対応は、App Storeから「EPSON iPrint」(無償)、「ePrint」(350円)、Androidマーケットから「CyPria」(450円)をダウンロードできる。PCを経由せず写真などをダイレクトに印刷することができる便利なアプリで、例えばiPhoneで撮影、いろいろなエフェクトアプリで加工した写真をプリントし出すと結構はまってしまう。


 以上のように「EP-803AW」は、簡単に無線LANの設定ができ、カンタンLEDナビによる分かり易い操作系、そして豊富なファンクションなど、完成度の高いインクジェット複合機だ。両面印刷機能がオプションなのは残念なところであるものの、店頭予想価格3万円前後なので仕方ない部分だ。必要に応じて購入すればいいだろう。革新的な変化は少ないが、新規の機能は使いやすさの向上に向けられており、熟成された製品と言えるだろう。