西川和久の不定期コラム

使い勝手が上がったインクジェット複合機
エプソン「EP-802A」



EP-802A

 少し前にキヤノンの2009年版インクジェット複合機を紹介したが、今回は最近CMで頻繁に見掛けるようになった、エプソンのインクジェット複合機「EP-802A」をご紹介する。今年(2009年)は「使いやすさ~身近な存在・機能美の追及~」にこだわったと言う。どのように進化したのか興味深い。さっそくレポートをお届けする。

●EP-802Aの特徴

 まずデザイン面では、去年ピアノブラックでフラットなイメージへと、それ以前のモデルから大変身した。今年はそれを更に進め「ドットテクスチャーデザイン」を採用し、天板などに傷や指紋が付きにくくなった。確かに前モデルを評価した時、パッと見綺麗なのだが触るとあっちこっちに指紋跡が残るのがとても気になった。今回のモデルはいろいろな部分を触ってみたが気になるほどの跡は残らなくなっている。一見地味ではあるが、確実にユーザーの意見を取り入れてるのは好感が持てる。

 去年は最上位の901系に無線LANを搭載していたが、今年は標準モデルに当たるEP-802Aでも無線LAN(IEEE802.11b/g)が標準搭載となった。最近よく同社のCMで見掛けるように、これで「家じゅうどこからでもプリント」、「プリンタの置き場所が自由!」となる。実際、無線LANに対応したプリンタを使い出すと、ケーブルは電源のみである便利さが嬉しい。

 DNLAに対応し、DNLAサーバー、例えばデジタルTVやNASに入っている写真をPCを経由せずに印刷できる。PCレスでの用途が更に広がることになる。加えてCD/DVDトレイによるレーベル印刷機能もPCレスでできるようになった。また、無線LANなので、PCとプリンタが離れているケースが多いこともあり、プリンタの状態が遠くからでも見てわかるよう「LEDステータスバー」を搭載している。プリンタが作動中の時は、ブルーのLEDが点滅し一目でわかる仕掛けだ。

 印刷系は、下トレイと上トレイの2段式カセットで、前面給排紙となっている。下トレイは普通紙で最大120枚、専用紙で最大50枚、上トレイは専用紙が最大20枚セットできる。専用紙が後ろトレイのキヤノンと違い、普通紙と専用紙、どちらも専用トレイに入るため、見た目やホコリを気にしないで済むという利点がある。ただし、自動両面印刷はオプションだ。画像処理としてはノイズ除去、美肌補正などが強化された。インク自体は染料系の6色独立インク(つよインク200)で変わっていない。

 この時期の新モデルということで、Mac OS X 10.6(Snow Leopard)、そしてWindows 7対応となっている。その他の特徴などを下記にまとめたので参考にして欲しい。

・Ethernet(100BASE-TX)/無線LAN標準搭載(IEEE 802.11b/g)、高速赤外線通信ポート、Bluetooth(オプション)
・DLNA対応
・普通紙(最大120枚)と専用紙(最大20枚/上トレイ、最大50枚/下トレイ)2段式カセットを採用した前面給排紙、自動両面印刷(オプション)
・解像度5,760dpi、1.5pl、6色独立インク(つよインク200)/L判14秒の超高速印刷
・チルト式2.5型カラーTFT液晶
・薄型2400dpi CISスキャナ
・プリンタの状態が遠くから見えるLEDステータスバー
・内蔵CD/DVDトレイによりPC無しでレーベル印刷対応
・EpsonColor対応
・画像処理オートフォトファイン! EX。ノイズ除去、美肌補正、真ナチュラルフェイス機能(スリムモード)搭載(E-Photo経由)
・塗り絵印刷機能、手書き合成シート、ノート罫線印刷機能
・自動ノイズチェックシステム
・外部ストレージ対応
・Windows 7対応
・446×385×150mm(幅×奥行き×高さ)/約9.0kg

 また、メディアからのデータをダイレクトにUSBのストレージに保存できる。接続可能なデバイスを同社のサイトで確認すると、CD-R/DVD-Rドライブ、MOドライブ、USBフラッシュメモリ、USB HDDなど、いろいろな種類に対応している。これもPCレス化に必要な機能と言えよう。

 基本的にインクシステムが同じなので印刷クオリティには変化が無いものの、より使い易さに重点を置いて改良したモデルと言える。価格はショップにもよるが、3万円前後となっているようだ。

フロント。高さは約15cmと意外と薄い。また上の部分もフラットだ。操作パネル、前面給排紙、右下にメディアリーダーと、USB、赤外線ポートがあるリア。左側にUSBポートとEthernet、右側に電源コネクタがある。オプションの両面印刷は裏のパネルを外してセットする正面右手前にインク収納場所があるため、インクタンクの交換もスムーズだ
2.5型カラーTFT液晶を備える操作パネル。タッチパネル式ではないので、左右にボタン類が並んでいるが、比較的わかりやすくマニュアルいらずだ下が普通紙約120枚もしくは専用紙50枚、上が専用紙20枚スキャナ。蓋の部分がかなり薄く、閉めると上の部分はフラットになる

●セットアップ

 今回インクが入った状態で送られて来たので、セットアップはソフトウェア関係のみ解説する。インストーラが起動すると、「簡単インストール」と「ソフトウェア一覧(選んでインストール)」の画面が表示されるので通常は前者を選択する。その後はメッセージに従い操作するのみ、と非常に簡単だ。アプリケーションやドライバを一通りソフトウェアをインストールすると、次は接続先の設定となる。接続先としては「USB」、「ネットワーク接続・有線LAN/無線LAN」の3パターンだ。USB接続は単にドライバが組み込まれるだけなので特に説明の必要は無いだろう。

インストーラ。「簡単インストール」と「ソフトウェア一覧(選んでインストール)」の選択。今回は前者で行なったインストールするソフトウェア一覧。ここでもし不要なアプリケーションがある時は、チェックを外せば良いインストール中。途中、使用許諾などが表示されたりするが、基本的にはお任せコピー/セットアップとなる
接続方法の選択。接続をUSBかネットワーク(有線/無線)の選択をここで行なうネットワーク設定の選択。「プリンターとパソコンの設定」では、一旦USBでプリンタへ接続し、PCからネットワークの設定ができる。事前に操作パネルからネットワークの設定を行なった場合は、「パソコン側の設定のみ」を選ぶファイアウォール警告。ネットワーク接続の場合、そのプロトコルが標準でブロックされるため、ファイアウォールへ登録しブロックを解除する必要がある

 ネットワーク接続の場合、「本体の操作パネルからダイレクトに設定」する方法と「いったんUSBで接続し、パソコンから設定」の2通りが選べる。筆者の場合は事前に前者でセットし、インストールが始まってから後者の方法があることに気が付いたが、いずれにしても設定自体は簡単なものであり、特に迷ったり間違ったりする部分は無いと思われる。無線LANに関しては「WPS」に加え「AOSS」にも対応している。同社が実際にユーザー調査をしたところ「AOSS」を使っているユーザーが多かったそうだ。この機能をありがたく思うユーザーも多いだろう。

●単独使用/プリント

 プリントは「写真を見ながら選んで印刷」、「すべての写真を印刷」、「オーダーシートを使って印刷」、「CD/DVDレーベルに印刷」、「手書き合成シートを使って印刷」、「いろいろなレイアウトの印刷」、「すべての写真をインデックス印刷」、「ナチュラルフェイス印刷」、「スライドショーを見ながら印刷」と、多種多様だ。また左下にある「仕上がりview」をONにすると若干表示が遅くなるものの、各エフェクトを施した後の印刷イメージを表示する。

 画質調整は、「自動画質補正/オートフォトファイン!EX、P.I.M、自動補正無し」、「補正モード/標準(自動)、人物、風景、夜景」、「赤目補正ON/OFF」、「フィルタ/なし、セピア、モノクロ」、「明るさ±2」、「コントラスト/強く、より強く」、「シャープネス±2」、「鮮やかさ調整±2」の細かい設定が可能だ。これだけの調整があれば通常困る事はないと思われる。

印刷モードの選択。上記したようないろいろなモードで印刷できる写真を選ぶ。[-][+]キーで印刷枚数を指定する印刷設定の確認後、印刷開始。L判だと14秒ほどだった

●単独使用/スキャナ

 スキャナは、「スキャンしてメモリカードへ保存」、「スキャンしてパソコンへ」、「スキャンしてPDF」、「スキャンしてEメール(パソコンへ)」のモードを選べる。PDFでの保存はPCのみのように見えるが、メモリカードへ保存する時もJPEGかPDFかを選択できる。保存形式以外に設定できる項目は、「スキャン範囲」、「原稿タイプ」、「保存品位」などがある。

「スキャンしてメモリカードに保存」を選択保存形式をPDFへ変更スキャン中。「LEDステータスバー」が光っているのが解る

 ちょっと気になったのがモードの切替方法だ。どれを選ぶかは操作パネルの[<][>]キーで移動、[OK]キーで確定となる。写真印刷の場合は、例えば[>]キーをずっと押しているとループになるのだが、スキャナの場合は[>]キーを押し続けるとループにはならず一番端の項目で停止、それ以上移動できなくなる。どちらか一方に統一した方が違和感を覚えないだろう。

●単独使用/コピー

 コピーはコピーメニューから、「用紙とコピーの設定」、「写真コピー」、「CD/DVDコピー」、「いろいろなコピー」、「プリンタのお手入れ」、「困ったときは」などのモードが選択できる。主に使われる「用紙とコピーの設定」に関しては、「レイアウト」、「倍率」、「用紙サイズ」、「用紙種類」、「原稿類」、「印刷品質」、「フチなしはみだし量」が設定可能だ。

コピーで[メニュー]キーを押すといろいろな設定ができる用紙、カラー/モノクロなどを選択確認コピー終了

 普通紙でのコピー結果は、インク6色全てが染料系であり、顔料系インクを搭載した機種ほどのクオリティは得られなかった。コントラストが浅く、文字にニジミも見られるのは仕方ないところだろう。

●PCからの使い勝手

 以上のように、PCレスでかなりの処理ができるため、PCを使用する時は、写真やスキャンデータをより高度に加工・処理して印刷したり、スキャンデータの文字認識など、プリンタ単体では出来ないことをPCで行ない、その結果を印刷すると言った流れとなるだろう。

 同梱のアプリケーションでこれらに対応するのが「E-Photo」、TWAINドライバを含む「Epson Scan」、文字認識の「読んde!! ココ パーソナル」となるだろう。特に今回、E-Photoは、「ノイズ除去」、「美肌補正」、「真ナチュラルフェイス機能(スリムモード)」などを搭載し、パワーアップしている。いずれも同社の製品には以前から入っているもので、その完成度は非常に高く、安心して使うことができる。

E-Photo/写真の選択後。右上にある[画像補正]ボタンをクリックすると、美肌、美白、小顔などを調整できるパネルが開くE-Photo/画像補正。イメージビュアライザ/美肌モードをONにする。頬のニキビが消えた(写真中央参照)E-Photo/ナチュラルフェイス。変化が解るよう、美白、スリム共最大に設定した。結構自然に小顔・美白化している
オリジナル(オートフォトファイン!EX/人物)美肌美肌+美白+小顔 ※プリントしたものをスキャンしデータ化している
Epson Scan。モードは「全自動」「ホームモード」「プロフェッショナルモード」の3種類用意されている読んde!!ココ パーソナル。雑誌から文字認識をしているところ。それなりに認識しているEpson Print CD。プリンタ単体でもCD/DVDレーベルプリントができるものの、PCで設定した方がより細かい事ができる

 このほかに、Webページの幅を自動的に調整し印刷する「Epson Web-Tp-Page」、フレームの登録/削除などができる「Epson PRINT Image Framer tool」、操作パネルのスキャナービを実行したときの処理を設定する「Epson Event Manager」などが用意されている。

●iPhoneからダイレクトプリント

 App Storeから「ePrint Free」もしくは「ePrint」をダウンロードすることによって、iPhone/iPod touchからのダイレクトプリントに対応する。前者は無料版、後者は有料版(350円)だ。違いは「豊富な印刷フォーマット」、「複数印刷」、「ふち無しプリント」などに有料版が対応している点だ。iPod touchに関してはカメラ内蔵では無いものの、写真フォルダからのデータを扱うことができる。

 実は今回、EP-802Aを評価するにあたって一番面白かったのがこの部分だ。ご存知のようにiPhone 3Gは200万画素、3GSは300万画素のデジカメを搭載している。ただこれだけであればケータイのデジカメより解像度などの点で劣るが、特殊な画像処理、フィルター、文字入れ、合成、プリクラ風レタッチなど、数多くのカメラ系AppがApp Storeに並んでいる。これらを利用することで、iPhone単体でいろいろと加工できるのが最大のメリットだ。

 通常であれば、いったんUSB経由でPCへ写真をコピーし、PCから印刷を行なうが、このePrintを使うことによってダイレクトに印刷が可能となる。また、単に写真を印刷するだけでなく、カレンダーレイアウトがあったりと、いろいろ楽しめる内容に仕上がっている。

ePrint Free、ePrint、CameraKitePrint起動画面メニュー
プリンタの設定写真選択画面選択した写真の一覧
印刷サイズや条件を設定カレンダーレイアウト/月・曜日設定カレンダーレイアウト/レイアウト設定
プリント結果。フチあり、フチなし、カレンダー。iPhone単体でこれだけのプリントができるとかなり楽しめる

 さっそく写真フォルダに入っている写真をそのまま印刷したり、お気に入りのApp「CameraKit」を使って加工をしたものを印刷したりと試したところ、PCを経由しない分、気軽にプリントができ、あっと言う間にプリントの山となってしまった。印刷速度は結構速く、解像度的にもL版であれば問題無い。当初、無料版で試していたのだが、ふち無しプリントが欲しくなり有料版を購入した。少なくとも筆者の場合、普段気軽に撮っているスナップなどは、メディアから直接プリントをすることがほとんどで、作品的な写真でない限りPC経由で印刷することはめっきり減ってしまったが、これで更にPCレスが加速しそうな雰囲気だ。

 以上のように、EP-802Aは基本的な成り立ちは去年と変わらないものの、「AOSS対応」、「iPhone/iPod touch対応」など、その使い方や、PC以外の写真ソースの拡張、プリント結果などに関してはユーザーフレンドリーになった。去年は見送った方も、ぜひ店頭で検討して頂きたいモデルだ。