西川和久の不定期コラム

7万円切りで新Mac miniより小さく、コスパが優秀なRyzen 7ミニPC!「GEEKOM NUC A6」

 これまでミニPCをいろいろ触って来たが、小型なのはプロセッサがN100などパワーがないものが多かった。しかし今回ご紹介するGEEKOMの「NUC A6」は(ギリギリ)手のひらサイズでRyzen 7搭載。編集部より実機が送られて来たので試用レポートをお届けしたい。

Apple M4(Pro)搭載のMac minより一回り小さいミニPC!

 去年(2024年)3月、今回ご紹介するNUC A6の上位モデルに相当する「NUC A7」のレビューを掲載した。一番の違いはプロセッサだ。NUC A7はRyzen 9 7940HS搭載。従ってiGPUもRadeon 780Mと上位のものが乗っている。

 それ対してNUC A6のプロセッサはRyzen 7 6800H、iGPUはRadeon 680M。搭載メモリ32GBは同じでストレージが2TBから1TBに。その替わNUC A7は価格が(当時)約10万円だったが、本機では6.8万円と買い易くなっている。主な仕様は以下の通り。

GEEKOM「NUC A6」の仕様
プロセッサRyzen 7 6800H(8コア16スレッド、クロック最大 4.7GHz、キャッシュ L2:4MB、L3:16MB、TDP 45W)
メモリ32GB(SO-DIMM/16GB DDR5 4800MHz x2/最大64GB)
ストレージM.2 2280 SSD 1TB(NVMe対応)、M.2 2242 SSD (SATA/空き)
OSWindows 11 Pro(24H2)
グラフィックスRadeon 680M Graphics/HDMI 2.0 2基、Type-C 2基
ネットワーク2.5GbE、Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.2
インターフェイス前面:USB 3.2 Gen 2 2基、背面:USB 3.2 Gen 2、USB 2.0、USB 3.2 Gen 2 Type-C(USB PD対応)、USB4、SDカードスロット、3.5mmジャック
サイズ/重量112.4×112.4×37mm、438g(実測)
価格6万8,000円

 プロセッサはRyzen 7 6800H。8コア/16スレッドでクロック最大4.7GHz。キャッシュL2:4MB、L3:16MB、TDP 45W。Zen 3+アーキテクチャで2022年リリースと少し古め(Core i 12世代と同じ時期)だが、その分、安いと言うことなのだろう。

 メモリはSO-DIMMで16GB DDR5 4,800MHz x2の合計32GB。最大64GBまで対応する。ストレージは、M.2 2280 SSD 1TB(NVMe対応)。M.2は2242(SATA)となるがもう1つ空きがある。

 OSはWidows 11 Pro。24H2だったのでこの範囲でWindows Updateを適応し評価した。

 グラフィックスはプロセッサ内蔵Radeon 680M Graphics。外部出力用にHDMI 2.0 2基、USB Type-C 2基を装備する。

 ネットワークは2.5GbE、Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.2。そのほかのインターフェイスは前面:USB 3.2 Gen 2 2基、リア:USB 3.2 Gen 2、USB 2.0、USB 3.2 Gen 2 Type-C(USB PD対応)、USB4、SDカードスロット、3.5mmジャック。このタイプでSDスロットがあるのはありがたい。

 サイズ112.4×112.4×37mm、重量438g(実測)。これは小型になったM4(Pro)搭載のMac miniが127×127×5mmなので一回り小さいサイズとなる。

 価格は6万8,000円。5万円より少し上だが10万円を大きく割っており、買いやすいのではないだろうか。

前面。USB 3.2 Gen 2 2基、3.5mmジャック、電源ボタン
背面。電源入力、USB4、HDMI、2.5GbE、USB 3.2 Gen 2、USB 2.0、USB 3.2 Gen 2 Type-C、HDMI
裏面とiPhone 16 Pro。これまでハイパワーなミニPCは大きくなる一方だったが、かなり小さいのが分かる
付属品。ACアダプタ(サイズ約95×65×23mm、重量246g、出力19v/6.32A/120W)、HDMIケーブル、VESAマウンタ(+ネジ)
BIOS / Main。起動時[DEL]キーで表示
BIOS / Advanced
重量は実測で438g
いつものキーボード付きモバイルモニターへ接続。製品サイトにはHDMI 2基、USB Type-C 2基で合計4画面出力とあったが、筆者手持ちのキーボード付きモバイルモニターとの相性でどちらのType-Cも認識せず、HDMIとUSBでの接続となった。別のモニターでは動作した

 筐体はシルバー。112.4×112.4×37mm、438g(実測)と非常に軽量でコンパクトだ。ACアダプタと組み合わせてもかさばらず、重量も700gを切っているので、カバンに入れ楽々持ち運べる。

 前面はUSB 3.2 Gen 2 2基、3.5mmジャック、電源ボタン。M4(Pro)搭載Mac miniは電源ボタンが裏にあり物議を醸しているが、本機はご覧のように前面にある。背面は電源入力、USB4、HDMI、2.5GbE、USB 3.2 Gen 2、USB 2.0、USB 3.2 Gen 2 Type-C、HDMI。そして左サイドにSDカードスロットがある(扉の写真参照)。

 付属品は、ACアダプタ(サイズ約95×65×23mm、重量246g、出力19V/6.32A/120W)、HDMIケーブル、VESAマウンタ(+ネジ)。

 いつものキーボード付きモバイルモニターへの接続は、2つあるUSB Type-Cに接続しても反応しなかったため、HDMIとUSB Type-Aを使って接続した。これはNUC A7と同じ現象で、おそらく相性問題があったためだと思われる。ほかのモバイルモニターでは動作した。なお、BIOS表示は起動時[DEL]キーで入れる。

 裏は4角にゴム足と、中央周辺にVESAマウンタ用のネジ穴がある。内部へのアクセスは、このゴム足の下にネジがあるので外すとパネルが開く。が、更に内側にパネルがあり、これも4本のネジを外す。この時、1本ケーブルがつながっているので要注意。

 ストレージは装着済みがM.2 2280。その横、中央に未装着のM.2 2242。メモリはCrucial製が使われている。

四隅のゴムの下にネジがあるので4本すべて外すと簡単に裏蓋が開くが、更にもう一枚パネルがある
四隅のネジを外してパネルを開けるとストレージやメモリにアクセスできる。ストレージはM.2 2280とM.2 2242(空き)。メモリはCrucial製

 ノイズや発熱はベンチマークテストなどCPUに負荷をかけるとファンの音がし出すが、筐体に耳を近づけないと分からない範囲。熱はリアから少し暖かいエアーが若干出る程度……と、大したことはない。

スペック上の違いほど上位モデルとあまり変わらず!

 初期起動時、プリインストールのアプリや壁紙の変更などは特になし。少し前にご紹介したIntel N150搭載機と比べると、やはりいろいろキビキビ動く。普段使いでもこの程度は欲しいところ。

 M.2 2280 1TB SSDは「KINGSTON OM8PGP41024N-A0」。メーカーの資料は見つからなかったが、ここによると、シーケンシャルリード:3,903MB/s、シーケンシャルライト:2,781MB/s。CrystalDiskMarkの結果では、これを超える数値が出ている。C:ドライブのみの1パーティションで約925GBが割り当てられ空き903GB。BitLockerで暗号化されている。

 2.5GbEはRealtek Gamming 2.5GbE Family Controller、Wi-FiはMediaTek Wi-Fi 6E MT7922、BluetoohもMediaTek製だ。

初期起動時のデスクトップ。Windows 11 Pro 24H2標準
デバイスマネージャー/主要なデバイス。M.2 2280 1TB SSDは「KINGSTON OM8PGP41024N-A0」。2.5GbEはRealtek Gamming 2.5GbE Family Controller、Wi-FiはMediaTek Wi-Fi 6E MT7922、BluetoohもMediaTek製
ストレージのパーティション。C:ドライブのみの1パーティションで約9252GBが割り当てられている。BitLockerで暗号化
AMD Software Adrenalin Edition

 ベンチマークテストは、PCMark 10、3DMark、Cinebench R23。上位モデルのNUC A7(Ryzen 9 7940HS/iGPU Radeon 780M)との比較は、なぜかPCMark 10のPhoto Editing Scoreだけ本機が優っているっものの、他はワンランク下という感じだ。ただ大きな差ではなく、コストパフォーマンス的には良いのではないだろうか?

PCMark 10
3DMark
Cinebench R23
CrystalDiskMark 8.0.5
[Read]
  SEQ    1MiB (Q=  8, T= 1): 4064.022 MB/s [   3875.8 IOPS] <  2062.28 us>
  SEQ    1MiB (Q=  1, T= 1): 2168.838 MB/s [   2068.4 IOPS] <   483.12 us>
  RND    4KiB (Q= 32, T= 1):  428.875 MB/s [ 104705.8 IOPS] <   296.16 us>
  RND    4KiB (Q=  1, T= 1):   49.482 MB/s [  12080.6 IOPS] <    82.61 us>

[Write]
  SEQ    1MiB (Q=  8, T= 1): 3206.312 MB/s [   3057.8 IOPS] <  2610.46 us>
  SEQ    1MiB (Q=  1, T= 1): 2824.208 MB/s [   2693.4 IOPS] <   370.58 us>
  RND    4KiB (Q= 32, T= 1):  423.701 MB/s [ 103442.6 IOPS] <   306.19 us>
  RND    4KiB (Q=  1, T= 1):  169.601 MB/s [  41406.5 IOPS] <    24.05 us>

ギリギリ手のひらサイズ

 以上のようにGEEKOM「NUC A6」は、112.4×112.4×37mmのコンパクトな筐体に、Ryzen 7 6800H/32GB/1TBを詰め込んだミニPCだ。パフォーマンスも十分。これで6万8,000円はお買い得だろう。

 筆者手持ちのキーボード付きモバイルモニターにUSB Type-Cで映像出力できないのが若干気になるものの(A7の時もそうだった)、ほかは申し分ない完成度だ。比較的安価でパワーのあるミニPCを探しているユーザーに使ってほしい1台と言えよう。