西川和久の不定期コラム

サブディスプレイも結構使える縦折りスマホ!モトローラ「razr 40 ultra」

razr 40 ultra

 7月6日モトローラは、縦折りスマホ「razr 40 ultra」を発表、当初の予定より販売開始が少し遅れたものの、無事8月25日より扱い開始となった。編集部から実機が送られてきたので試用レポートをお届けしたい。

SIMフリーな縦折りスマホ!

 筆者は去年(2022年)、「Galaxy Z Flip4」を購入し、すっかり縦折りスマホユーザーだ。もちろん現在メインで使っている。利点は折りたたむとコンパクト、そしてサブディスプレイで情報を「ちょい確認」できること。本体をL字型にして机などに置きディスプレイで構図を確認しながらジャスチャーでシャッターを切れること……などだろうか。

 欠点はメインディスプレイの折り目が気になること、折りたたむことを考慮し薄型にするため容量控えめでバッテリ駆動時間が短めというところか。

 今年(2023年)に入り、「Galaxy Z Flip5」も含め数社から縦折りスマホが登場。今回ご紹介する「razr 40 ultra」もその1つだ。主な仕様は以下の通り。

モトローラ「razr 40 ultra」の仕様
SoCSnapdragon 8+ Gen 1 Mobile Platform(3.2GHz×1、2.75GHz×3、2.0GHz×4)、Adrenoを内包
メモリ8GB/LPDDR5
ストレージ256GB(UFS 3.1)
OSAndroid 13
ディスプレイメイン:約6.9型pOLED(2,640×1,080ドット)、リフレッシュレート最大165Hz、120% DCI-P3、ピーク輝度 400cd/平方m
サブ:約3.6型pOLED(1,066×1,056ドット)、リフレッシュレート最大144Hz、120% DCI-P3、ピーク輝度 1,100cd/平方m
ネットワークWi-Fi 6E、Bluetooth 5.3、NFC
SIMNano SIM、eSIM
対応バンド5G:n1/n3/n5/n7/n8/n20/n28/
n38/n41/n66/n77/n78/n79
4G(LTE):B1/B2/B3/B4/B5/B7/B8/B12/
B13/B17/B18/B19/B20/B25/B26/
B28/B32/B34/B38/B39/B40/B41/
B42/B43/B48/B66
3G(WCDMA):B1/B2/B4/B5/B8
インターフェイスUSB 2.0 Type-C、ステレオスピーカー
生体認証指紋認証、顔認証
センサー加速度計、近接センサー、環境照度センサー、ジャイロセンサー、eコンパス
位置情報GPS、A-GPS、GLONASS、Galileo、BeiDou
カメラ前面:約3,200万画素(F2.4)
背面:約1,200万画素(F1.5) | OIS、約1,300万画素(F2.2) | 超広角(108度)+マクロ
サイズ/重量約70.83×6.99×170.83mm(幅×奥行き×高さ)/約188g
折りたたみ時約73.9×15.1×88.42mm
バッテリ3,800mAh、30W TurboPower チャージ対応、Qi対応
防水IP52
カラーインフィニットブラック
価格15万5,800円

 SoCはSnapdragon 8+ Gen 1 Mobile Platform。3.2GHz×1、2.75GHz×3、2.0GHz×4の計8コア。GPUにAdrenoを内包している。2022年5月のリリースで、旧Snapdragon 8 Gen 1(+がない)と比較して、CPU/GPUともにパフォーマンスを10%向上し、30%の省エネを実現している。

 メモリは8GB/LPDDR5。ストレージは256GB(UFS 3.1)。最近のハイエンドとしては控え目だ。OSはAndroid 13。

 ディスプレイは折りたたみ式なので2つあり、メインは約6.9型pOLED(2,640×1,080ドット)、リフレッシュレート最大165Hz、120% DCI-P3、ピーク輝度 400cd/平方m。サブは約3.6型pOLED(1,066×1,056ドット)、リフレッシュレート最大144Hz、120% DCI-P3、ピーク輝度1,100cd/平方mとなっている。サブのピーク輝度が高いのは、常に表に向いているからだろうか。

 ネットワークはWi-Fi 6E、Bluetooth 5.3、NFC。NFCは残念ながらおサイフケータイには未対応となる。SIMはNano SIMとeSIM。対応バンドは表をご覧頂きたいが、ミリ波には非対応。

 インターフェイスはUSB 2.0 Type-C、ステレオスピーカー。microSDカードスロットや3.5mmジャックはない。この辺りは人によって評価が分かれそうだ。

 生体認証は指紋認証、顔認証。センサーは加速度計、近接センサー、環境照度センサー、ジャイロセンサー、eコンパス。位置情報はGPS、A-GPS、GLONASS、Galileo、BeiDouに対応する。

 カメラは前面が約3,200万画素(F2.4)。背面が約1,200万画素(F1.5)/OISと、約1,300万画素(F2.2)の超広角(108度)兼マクロを搭載する。別途まとめてあるので参考にして頂きたい。

 サイズは開いた時が約70.83×6.99×170.83mm/折りたたみ時が約73.9×15.1×88.42mm。重量約188g。防水IP52対応。防塵は構造上、やはり厳しいのだろうか。カラーバリエーションはインフィニットブラックの1色のみ。3,800mAhで30W TurboPowerチャージ、Qiに対応したバッテリを内蔵し、価格は15万5,800円。

 筆者が去年購入したGalaxy Z Flip4が14万円を少し切っていたので、それより若干高い。SoCは同じでストレージが2倍、サブディスプレイが大きく……など、一部スペックは上がっているものの、おサイフ携帯非対応など痛い部分もあり、何とも言えない感じでもある。

 興味深いのは、購入特典として「ディスプレイ破損1回無料サポート」が付くことだろうか(保証期間は購入日から1年間)。Galaxy Z Flip4も1回保護シート無料張替えがある。実際最近中央付近が浮いてきたので、原稿を書いてる間の週末に行ってきた。この辺りは折たたみ式固有の部分となる。

前面。パネル中央上に前面カメラ。折り目はディスプレイが明るいと分からない(真っ黒だと少し凹みがある)
背面(iPhone 13 Proとの比較)。幅はほぼ同じだが、高さが結構違い、その分、画面の縦横比も縦長になる。左上にカメラ群とサブディスプレイ
左/下。左側面上の方にNano SIMスロット。下側面にUSB Type-C
右/上。右側面に音量±ボタンと指紋センサー兼の電源ボタン。上側面は何もない
Nano SIMスロット付近。Nano SIMは1つのみ。イジェクトピン付属
重量は実測で190g
折りたたんだところ(Galaxy Z Flip4との2ショット)。Galaxy Z Flip4より奥行きが少しあるが若干薄い
L字型にしたところ。対応したアプリだと下側にコントロール系を表示する
付属のカバー。結構薄いのが付属。Galaxy Z Flip4の時はカバー探しに苦労しただけに、これが標準添付はありがたい

 筐体の色はインフィニットブラック。高級感のある質感も含めご覧のようになかなかシャープで同社の雰囲気が出ている。重量は実測で190g。200gオーバーのハイエンドが多い中(iPhone 13 Proは実測で205g)軽量級と言える。そして、扉の写真のように、手にすっぽり収まるサイズ感は1度使うと病み付きになる(笑)。

 前面はパネル中央上に前面カメラ。折り目はパネルが明るいと分からないが、真っ黒だと少し凹みがあるのが分かる。この点は折りたたみ式最大の弱点だ。左側面上の方にNano SIMスロット。下側面にType-C。右側面に音量±ボタンと指紋センサー兼の電源ボタンを配置。上側面は何もない。背面は左上にカメラ群とサブディスプレイ。

 付属品はアクリルカバーとイジェクトピンのみ。ACアダプタは付属しないので注意が必要。また3.5mmジャックがないので有線イヤフォンもない。

 メインディスプレイの約6.9型pOLED(2,640×1,080ドット)、は、リフレッシュレート最大165Hz、120% DCI-P3、ピーク輝度400cd/平方mと、明るさコントラスト、発色、視野角全て良好。また一般的なスマホより縦横比が縦長なので、1画面におけるネットやソーシャルなどの情報量が多くなる。

サブディスプレイの操作。通知パネル、アプリ起動、そして入力などサブディスプレイだけでも結構使える

 サブディスプレイは動画をご覧いただきたいが、時計だけでなく、アプリ一覧/アプリ起動(対応はアプリによる)、通知パネル、そして入力もできる。つまり開かずして閉じたままでさまざまな情報にアクセス可能だ。

 比較写真からも分かるように、Galaxy Z Flip4は背面の半分未満のサイズだが、本機はほぼ全面サイズ。この差は結構大きい。もちろんpOLEDなので映りは抜群だ。

 発熱は季節柄もあると思うが、連続撮影しているとそれなりに熱を持った。サウンドはスピーカーでの視聴となるが、横位置時ステレオ対応。スマホとしては結構鳴り、本体だけでも音楽や映像を楽しめる。

光学式の望遠はないものの実用十分な写り

 カメラは、前面約3,200万画素(F2.4)、背面約1,200万画素(F1.5) | OISと、約1,300万画素(F2.2)の超広角(108度)。超広角はマクロも兼ねる。出力画素数は前面カメラが2,448×3,264ピクセル、背面カメラが3,024×4,032ピクセルと超広角/マクロが3,120×4,208ピクセル。

カメラ。外側が超広角、内側が広角
超広角/0.5x
広角/1.0x
マクロ

 撮影モードは、スローモーション、動画、写真、ポートレート、プロ。詳細にスポットカラー、ナイトビジョン、パノラマ、スキャン、デュアル撮影、フォトブース、タイムラプス、スポットカラー(動画)、デュアル撮影(動画)。

 ポートレートモードは前面カメラが、スマート調整、スムージング、調色、大きな目、よりスリムな顔、よりスリムな鼻……といわゆる盛れる機能あり。背面カメラはボケ味の調整となる。

 設定は、縦折り式固有として、外部ディスプレイにプレビュー表示、被写体の注意を引くため外部ディスプレイにアニメーションを表示(子供向けだろうか?)がある。ほかはAI設定、写真(前面カメラの解像度、自撮りミラー表示)、ビデオ(H.264/H265、スマートノイズキャンセリング、シャッター音など)、撮影設定(ガイド、ジェスチャー)と言ったところ。

 表示/編集はGoogleフォトを使用。ポートレートモードで撮影した場合はサムネイルの右上にそれっぽい小さいアイコンが付く。

写真
ポートレート
プロ
詳細
前面 / ポートレート
設定

 以下作例を日中12点、夜12点の計24点掲載する。カメラの起動、AF、書込などのストレスは全くなく、サクサク撮れる。ただ季節柄もあるかも知れないが、連続で撮っていると少し熱を持つ。

 写りだが、ご覧のように結構シャープで色乗りも良い。夜もメインカメラだとOISがあるので手ブレしにくい。今回タイミング的に肌色の作例を用意できず申し訳ないが、前面/背面共に筆者の自撮りで試したところ色も自然で好印象。背面カメラ使用時にサブディスプレイで構図などを確認できるため、より画質の良い背面カメラが使えるのは、自撮り用としてポイントが高いのではないだろうか。

作例(元サイズのファイルが開きます)

Android標準+Motoアプリ

 ホーム画面は2画面。Dockに電話、メッセージ、Chrome、カメラ。上から下へのスワイプで通知パネル、下から上へのスワイプでアプリ一覧、壁紙長押しで壁紙のカスタマイズ…といったベーシックな操作ははAndroid標準。Androidは13。IMEはGboard。256GBのストレージは19GBが使用中だ。microSDカードが使えないため、大量の楽曲や映像を本体内に内蔵することは容量的に難しい。

ホーム画面(1/2)
ホーム画面(2/2)
アプリ一覧(1/2)
アプリ一覧(2/2)
通知パネル(1/4)
通知パネル(2/4)
通知パネル(3/4)
通知パネル(4/4)
設定 > デバイス情報
設定 > ストレージ

 アプリは、「アシスタント」、「インタラクティブ」、「ウォレット」、「カメラ」、「カレンダー」、「ゲーム」、「スプレッドシート」、「スライド」、「デバイスのヘルプ」、「デバイスを探す」、「ドキュメント」、「ドライブ」、「ニュース」、「フォト」、「マップ」、「メッセージ」、「レコーダー」、「時計」、「設定」、「電卓」、「電話」、「連絡帳」、「Booking.com」、「Chrome」、「Dolby Atmos」、「Facebook」、「Family Space」、「Files」、「Fit」、「Gboard」、「Gmail」、「Google」、「Google One」、「Google TV」、「Home」、「LinkedIn」、「Meet」、「Moto」、「Moto Secure」、「Moto通知」、「Playストア」、「Podcast」、「Ready for」、「Spotify」、「YouTube」、「YT Music」……といった具合。Googleのアプリと、若干のSNS系、そして同社Motoツール系と、結構シンプルな構成となる。

 Motoアプリは、カスタマイズ、ジャスチャー、セキュリティ、Razrヒント、ディスプレイ、プレイの項目に分かれており、たとえばカスタマイズはホーム画面の色やテーマ、ジャスチャーはクイック起動や3本指でのスクリーンショット、Razrヒントは折りたたみ型固有の機能設定/解説など、本機固有のものを集中させているため非常に分かりやすく、基本アプリなのでAndroid側に手を加える必要もない。

Moto(1/2)
Moto(1/3)

 認証は、なし、スワイプに加え、パターン、PIN、パスワード。これらの設定の後に、顔もしくは指紋認証の登録ができる。指紋センサーは電源ボタンが兼ねる。

設定 > セキュリティーとプライバシー
顔の登録
指紋センサーは電源ボタン兼
指紋登録中……

 SIMの設定は、設定 > ネットワークとインターネットで行なう。APNの設定場所が分かり辛く、インターネットでWi-Fiの接続先を選択する一番上に(今回の場合)NTT DOCOMOと出るので、それをタップするとAPN一覧が現れる。APNに関しては多く登録済。選べば再起動も必要なく、即利用可能になる。

設定 > ネットワークとインターネット > インターネット
APN一覧

バッテリ駆動15時間半!

 ベンチマークテストは簡易式だが、GeekBench 6とGoogle Octane 2.0、そしてバッテリ駆動時間はWi-Fi経由でフルHDの動画を輝度50%、音量50%で全画面連続再生した結果となる。

 まずGeekBench 6は、Single 1,814 / Multi 4,177。Vulkan 5,173。Google Octane 2.0は33,371。参考までに同じSoCを搭載したGalaxy Z Flip4は順に1,586 / 4,103 / 6,439 / 47,243だった。

 バッテリ駆動は約15時間半で電源が落ちた。Galaxy Z Flip5では約10時間だったので 5時間も伸びている。バッテリ容量3,800mAh vs 3,700mAhなので、ここまで差が付く理由はちょっと不明だが、12時間超えればOKだと思われる。

Geekbench 6 / CPU。Single 1,814 / Multi 4,177
Geekbench 6 / Vulkan。5,173
Google Octane 2.0は33,371
VLCが15時間34分作動した

 以上のようにモトローラ「razr 40 ultra」は、Snapdragon 8+ Gen 1 Mobile Platform/8GB/256GB、メインディスプレイに約6.9型pOLED、サブディスプレイに約3.6型pOLED(1,066×1,056ドット)を搭載した縦折り式スマホだ。カメラはマクロ/超広角/広角と望遠はないものの写りは十分。被写体がサブディスプレイで構図を確認しつつ撮れるのもGood。バッテリもテストで15時間以上とスタミナは抜群だ。

 Googleウォレットに対応するクレジットカードなどを登録すれば、NFCでタッチ決済ができ、QRコード決済がサブディスプレイで可能とは言え、個人的にはおサイフケータイ未対応が残念なところ。この点で評価が分かれるのではないだろうか。いずれにしても数機種出てきた縦折りスマホ。興味のある人は是非触って頂きたい1台と言えよう。