西川和久の不定期コラム

モバイル用最上位のRyzen 9 6900HXを搭載したミニPC!Beelink「GTR6 6900HX」

GTR6 6900HX

 Beelinkは、モバイル用Ryzen 6000Hシリーズ最上位のRyzen 9 6900HXを搭載したミニPC「GTR6 6900HX」の予約受付中だ。一足早く試用する機会に恵まれたので、レポートをお届けしたい。

Ryzen 9 6900HXを搭載したハイパフォーマンスミニPC!

 Beelinkのサイトを眺めると、シリーズ的には「GTR」、「GTI」、「SEI」、「SER」、「U Series」、「GK Series」、「T Series」と分かれている。この中で末尾RがRyzen搭載機となり、GTRは最上位シリーズだ。現在販売中は「GTR5 5900HX」。Ryzen 9 5900HXを搭載したミニPCで、32GB/500GBの構成が639ドルからとなっている。

 そして今回ご紹介する「GTR6 6900HX」は、型番からも分かるように上位モデルに相当する。Ryzen 9 6900HXを搭載し、メモリもDDR5を採用。ハイパフォーマンスが期待できる。執筆現在、11月15日出荷予定で予約受付中だ。主な仕様は以下の通り。

Beelink「GTR6 6900HX」の仕様
プロセッサRyzen 9 6900HX(Zen 3+/8コア16スレッド/クロック3.3~4.9Hz/キャッシュ L2 4MB, L3 16MB/TDP 45W)
メモリ32GB(16GB/DDR5-4800 SO-DIMM×2)/最大64GB
ストレージ500GB PCIe 4.0 NVMe SSD/M.2 2280×1、M.2 2280×1(空)
OSWindows 11 Pro(22H2)
グラフィックスRadeon 680M(12コア/RDNA 2)/HDMI×4(8K@60Hz、4同時出力対応)
ネットワーク2.5GbE、Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.2
インターフェイスUSB 3.0 Type-A×3、USB 2.0 Type-A×2、USB 3.0 Type-C×1、音声入出力、指紋センサー
サイズ168×120×43mm(幅×奥行き×高さ)
価格749ドル(ベアボーンは539ドル)

 プロセッサは6nm/Zen 3+アーキテクチャのRyzen 9 6900HX。8コア16スレッドでクロックは3.3~4.9Hz。キャッシュL2 4MB/L3 16MB、TDP45W。モバイル用Ryzen 6000Hシリーズとしては最上位のSKUとなる。後半のベンチマークテストをご覧いただきたいが、TDP 45Wとしてはかなり速い。

 メモリは16GB/DDR5-4800 SO-DIMM×2の32GB。最大64GBに対応する。本連載ではいろいろなミニPCをご紹介したが、DDR5なのは今回が初となる。ストレージはM.2 2280の500GB PCIe 4.0 NVMe SSD。M.2 2280スロットがもう1つ空きなので増設も容易だ。OSはWindows 11 Pro。22H2が入っていたのでその範囲内でUpdateを適応、評価している。

 グラフィックスはプロセッサ内蔵Radeon 680M。12コア/RDNA 2で最大2,400MHz作動。出力はHDMIが4ポート。8K@60Hzで4同時出力可能と強力なものだ。性能もiGPUとしては高く、ヘビーなゲーミング用途以外であれば十分以上と言ったところ。

 ネットワークは、2.5GbE、Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.2。その他のインターフェースは、USB 3.0 Type-A×3、USB 2.0 Type-A×2、USB 3.0 Type-C×1、音声入出力、指紋センサー。試したところType-Cからの映像出力は非対応のようだ。サイズ168×120×43mm(幅×奥行き×高さ)、重量は実測で822g(ACアダプタを除く)。

 現在予約受付中で、メモリ/ストレージ/OSなしのベアボーンが539ドル、今回届いた32GB/500GB/Windows 11 Proが749ドル。150円換算でも11万2,350円なので、構成を考えると安いと言えるのではないだろうか。

前面。電源ボタン、CLR CMOS、USB Type-A、USB 3.0 Type-C、3.5mmジャック
背面は電源入力、2.5Gigabit Ethernet、HDMI×4、USB 3.0×2、USB 2.0×2
底面。四隅のネジを外せばパネルが外れ内部にアクセス可能
内部とパネル1。内部にもう1枚ファンを含めたパネルがあり、これを外さないとM.2スロット×2とSO-SIMMスロット×2にアクセスできない
付属品はACアダプタ(サイズ約145×63×30mm、重量416g、出力19V/6.32A)、短いHDMIケーブルと長いHDMIケーブル、VSEAマウンタ
トップ(iPhone 13 Proとの比較)。同社のミニPCの中では大きめだが、それでもコンパクト。写真からは分かりにくいが左上に指紋センサー(扉の写真だと分かりやすい)
BIOS / Main。[DEL]キーで表示
BIOS / Advanced。USB Type-Cへの映像出力ON/OFFの項目もあったがONにしても出力しなかった
重量は実測で822g
いつものキーボード付きモバイルモニターへ接続。Type-Cは映像出力未対応。HDMI/Mini HDMIとType-A/Type-Cで接続

 筐体はブラック。前面に赤と緑のボタン、両サイドにGTRの文字が印象的なデザインとなっている。同社のミニPCとしては大きい方だが、iPhone 13 Proの比較写真からも分かるようにそれでもコンパクトだ。重量は実測で822g。

 前面に電源ボタン、CLR CMOS、USB Type-A、USB 3.0 Type-C、3.5mmジャック。背面に電源入力、2.5Gigabit Ethernet、HDMI×4、USB 3.0×2、USB 2.0×2。そしてトップパネル右手前に指紋センサーを配置。設定 > アカウント > サインイン オプション > 指紋認証で設定できる。マシンが机の上などにあれば、これでサクッとログインできるので便利だ。

 付属品は、ACアダプタ(サイズ約145×63×30mm、重量416g、出力19V/6.32A)、短いHDMIケーブルと長いHDMIケーブル、VSEAマウンタ。重量は本体とACアダプタ合わせて1,238gなので、行く先々にモニタとHIDがあれば、カバンに入れ持ち運ぶのもありだろう。

 内部へのアクセスは裏四隅のネジを外せば可能だが、内部にさらにファンを含めたパネルが1枚あり、これを外さないとM.2スロット×2とSO-DIMMスロット×2にアクセスできない。3カ所にネジがあり、これを外すとOKだ(写真参照)。この時、ファンにケーブルが接続されているので強く引っ張ったりしないよう要注意。M.2スロット×1とSO-DIMM×2は実装済だが、M.2スロット×1が空きなのが分かる。

内部とパネル2。ネジは手前左右に1つずつと、奥の中央に一つ。これらを外せば各スロットにアクセスできる。M.2スロット×1が空き

 ノイズや発熱は、通常時でも筐体へ耳を近づけると「ゴー」っと低いファンの音がし(この状態で発熱はない)、ベンチマークテストなど負荷をかけるとミニPCとしては大きめの音がする。また筐体も少し暖かいかな程度の熱を持つ。設置場所が机の上で且つ、耳に近い位置だと音は気になるかも知れないが、少し離せば問題ない範囲だと思われる。

電源/パフォーマンス作動時、プロセッサはM1 Pro(8C)に迫るパフォーマンス!

 初期起動時、特にプリインストールのアプリなどはなし。素のWindows 11 Proと必要なドライバ/ソフトウェア系が入っているだけだ。ベンチマークテストからも分かるように、プロセッサだけでなく、ストレージも速いため、かなりサクサク作動する。

 ストレージはPCIe 4.0 NVMe SSD 512GBの「KINGSTON SKC3000S512G」。仕様によると、シーケンシャルリード7,000MB/s、シーケンシャルライト3,900MB/s。CrystalDiskMarkの値もほぼそのまま出ている。C:ドライブのみの1パーティションで約476GB割り当てられ空き434GB。

 Wi-FiとBluetoothはRZ608、2.5GbEはIntel Ethernet Controller I225-V。Radeon SoftwareでVRAMは3,072MB割り当てられているのが分かる。iGPUなのでDDR4よりDDR5の方が有利となる。

初期起動時のデスクトップ。Windows 11 Pro標準。22H2で検索がタスクバー上になった
デバイスマネージャ/主要なデバイス。ストレージはPCIe 4.0 NVMe SSD 512GBの「KINGSTON SKC3000S512G」。Wi-FiとBluetoothはRZ608、2.5GbEはIntel Ethernet Controller I225-V
ストレージのパーティション。C:ドライブのみの1パーティションで約476GB割り当てられている
Radeon Software。VRAMは3,072MB。iGPUなのでDDR4よりDDR5の方が有利

 ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、Cinebench R23、CrystalDiskMarkを使用した。これらは電源/バランス。また結構速そうなので、Geekbench 5を使い電源/バランスとパフォーマンスでCore i9-12900、M1 Max、M1 Pro、M1との比較も掲載する。

 どのスコアもモバイル用プロセッサとしてはトップクラスだ。iGPUもヘビーなゲーミング用でなければ実用十分(以上)。SSDもかなり速く、全体のバランスが整っている。

 Geekbench 5は、ご覧のようにCore i9-12900は別格として、Ryzen 9 6900HXがかなり頑張っているのが分かる。シングルコアのスコアが130ほど足らないものの、電源/パフォーマンス時はM1 Pro(8C)に迫るスコアをシングル/マルチコア共に叩き出している。ただし上記したように、ファンが少しうるさく回り熱も持つので、この辺りがM1シリーズと異なるところか。

PCMark 10 v2.1.2574
PCMark 10 Score6,744
Essentials10,022
App Start-up Score12,741
Video Conferencing Score8,602
Web Browsing Score9,187
Productivity10,066
Spreadsheets Score12,130
Writing Score8,354
Digital Content Creation8,251
Photo Editing Score13,844
Rendering and Visualization Score8,564
Video Editting Score4,739
PCMark 8 v2.8.704
Home Accelarated 3.05,121
Creative Accelarated 3.0n/a (error)
Work Accelarated 2.05,802
Storage5,108
3DMark v2.25.8043
Time Spy2,720
Fire Strike Ultra1,798
Fire Strike Extreme3,266
Fire Strike6,373
Sky Diver21,959
Cloud Gate32,480
Ice Storm Extreme136,608
Ice Storm154,392
Cinebench R23
CPU11,759(4位)
CPU(Single Core)1,588(1位)
CrystalDiskMark 6.0.0
Q32T1 シーケンシャルリード7093.201 MB/s
Q32T1 シーケンシャルライト3947.265 MB/s
4K Q8T8 ランダムリード1585.014 MB/s
4K Q8T8 ランダムライト2305.544 MB/s
4K Q32T1 ランダムリード733.220 MB/s
4K Q32T1 ランダムライト387.897 MB/s
4K Q1T1 ランダムリード77.078 MB/s
4K Q1T1 ランダムライト238.777 MB/s
Geekbench 5のスコア

 以上のようにBeelink「GTR6 6900HX」は、Ryzen 9 6900HX/DDR5 32GB/512GBを搭載したミニPCだ。ベンチマークテストの結果からも分かるように、プロセッサ、グラフィックス、ストレージ……全てが速く、全体のバランスが非常に良い。2.5GbE、HDMI 8K@60Hz同時4出力対応も強力だ。

 プロセッサに負荷がかかると、少しファンがうるさく、また気持ち熱を持つものの、それ以外は魅力的なミニPCに仕上がっている。高いパフォーマンスでバランスしたミニPCを探しているユーザーに是非使って頂きたい1台と言えよう。