西川和久の不定期コラム

dGPU搭載でちょい高解像度な液晶を備えた「Yoga Slim 750i Pro」

Yoga Slim 750i Pro

 レノボ・ジャパン株式会社は1月19日、第11世代Core i7(もしくはi5)、そしてdGPUとしてGeForce MX450を搭載した14型2,240×1,400ドットのノートパソコン「Yoga Slim 750i Pro」を発表した。編集部から実機が送られてきたので、試用レポートをお届けしたい。

Tiger LakeとGeForce MX450、そして14型2,240×1,400ドット液晶を搭載

 連載の前々回で、同じレノボのYogaシリーズのハイエンドモデル「Yoga Slim 950i」をご紹介した。基本、Core i7-1165G7搭載でiGPUなのだが、本革仕様の天板や曲面エッジディスプレイやパネル性能など、プロセッサ以外にも工夫をこらしたモデルだ。

 対して今回ご紹介する「Yoga Slim 750i Pro」は、外観的には一般的なソリッドな雰囲気で普通だが、Tiger Lake搭載はもちろんとして、dGPUとしてGeForce MXを搭載し、第11世代採用ノートパソコンの中でも、頭1つ抜けて高性能を目指したマシンとなる。

 第11世代CoreプロセッサはIris Xe Graphicsを内蔵しているため、以前のIntel UHD Graphicsより性能的にはかなり有利。従って、多くのノートパソコンはiGPUを利用したものが多く、本機は、その先を狙ったと思われる。おもな仕様は以下のとおり。

「Yoga Slim 750i Pro」の仕様
プロセッサCore i7-1165G7(4コア8スレッド/最大4.7GHz/キャッシュ 12MB/cTDP down:12W(1.2GHz)/up:28W(2.8GHz)
メモリ16GB(LPDDR4X)
ストレージPCIe NVMe/M.2 SSD 512GB
OSWindows 10 Home(64bit)
ディスプレイ14型IPS式2,240×1,400ドット(16:10)、非光沢、sRGB 100、Dolby Vision対応
グラフィックスIntel Iris Xe Graphics、GeForce MX450(2GB GDDR6)
ネットワークWi-Fi 6対応、Bluetooth 5.0
インターフェイスThunderbolt 4×2、USB 3.0、720p対応Webカメラ、IRカメラ、音声入出力
バッテリ/駆動時間4セルリチウムイオン/最大約15.2時間
サイズ/重量312.4×221.4×14.6mm(幅×奥行き×高さ)/約1.33kg
その他Office Home & Business 2019付属
税別価格154,800円から

 プロセッサは第11世代Tiger LakeのCore i7-1165G7。4コア8スレッド、最大4.7GHz、キャッシュ 12MB、cTDP down:12W(1.2GHz)/up:28W(2.8GHz)。ハイエンドノートパソコンに搭載され、ここのところレビューが続いているSKUだ。本機はEvoプラットフォームにも対応している。

 メモリはLPDDR4Xの16GB。PCMark 10/System Informationによると、2,048MB×8となっていた。ストレージはPCIe NVMe/M.2 SSD 512GB。OSは64bit版Windows 10 Home。今回20H2へのアップデートは降ってきていたが、それは適用せず、それまでのアップデートだけ適用して評価した。

 ディスプレイは、14型IPS式2,240×1,400ドット(16:10)。非光沢、sRGB 100、Dolby Vision対応などの特徴を持つ。外部ディスプレイへの出力はThunderbolt 4を使用する。グラフィックスは、プロセッサ内蔵Intel Iris Xe Graphicsに加え、GeForce MX450(2GB GDDR6)を搭載。Tiger LakeのiGPUは強力になったが、さらにdGPUを加え高性能な利用シーンを広げた格好だ。

 ネットワークはWi-Fi 6対応、Bluetooth 5.0。そのほかのインターフェイスは、Thunderbolt 4×2、USB 3.0、720p対応Webカメラ、IRカメラ、音声入出力。Thunderbolt 4は、Power Delivery対応、DC入力、DisplayPort出力機能付きだ。またステレオスピーカーはHarman Kardonとなる。

 バッテリは4セルリチウムイオンを搭載し、駆動時間は最大約15.2時間。サイズ312.4×221.4×14.6mm(幅×奥行き×高さ)、重量約1.33kg。カラーバリエーションはライトシルバーのみ。税別価格はOffice Home & Business 2019付属で154,800円から(Core i5-1135G7/8GBモデル)となる。

パネル中央上に720p対応WebカメラとIRカメラ。縁はかなり狭いものの、カメラの周囲だけ少し出っ張っている
斜め後ろから。色はライトシルバー。メタリックな感じで質感も良い
左側面。Thunderbolt 4×2。パネルは180度傾けることができる
右側面。電源ボタン、USB 3.0、音声入出力
キーボードはテンキーなしのアイソレーションタイプ。オフ/Auto/2段階のキーボードバックライト付き。タッチパッドは1枚プレート型
キーピッチは実測で約19mm。右側[BS]、[Enter]、[Shift]の周囲が狭いのが残念
底面。手前左右のスリットにスピーカー。手前左右に2つ、後ろは1本のゴム足
横から。Type-Cのコネクタからもわかるようにかなりスリム
付属のACアダプタのサイズ約132×52×28mm(幅×奥行き×高さ)、重量304g、出力20V/4.75A、15V/3A、9V/3A、5V/3Aの95W
重量は実測で1,337g

 筐体はオールシルバー。メタリックな感じで質感も良い。重量は実測で1,337gあり、持った時は少しずっしり感じるが、14型なのでほどほどな重量だと思われる。

 前面は、パネル中央上に720p対応WebカメラとIRカメラ。縁はかなり狭いものの、カメラの周囲だけ少し出っ張っている。左側面にThunderbolt 4×2。右側面に電源ボタン、USB 3.0 Type-A、音声入出力を配置。一般的にはコネクタの数は少ない方だろうか。横からの写真からもわかるようになかなかスリムだ。

 付属のACアダプタは、サイズ約132×52×28mm(幅×奥行き×高さ)、重量304g、出力hが20V/4.75A、15V/3A、9V/3A、5V/3Aの最大95Wとなる。このクラスだと65Wタイプが多いなか、dGPUの関係か95Wタイプになっている。他社製のアダプタや電源供給可能なHubを使う場合は注意が必要だ。

 ディスプレイは14型で16:10とフルHDより縦が長く、個人的には見やすいく、非光沢なので、長時間の運用でも目が疲れにくくなっている。明るさコントラスト、発色、視野角すべて良好。sRGB 100%なので安心して色関連の作業もできる。

 i1 Display Proを使い特性を測ったところ、最大輝度386cd/平方m。写真の鑑賞/編集で最適とされる標準の明るさ120cd/平方mは、最大から-2が150cd/平方m、-3が104cd/平方mとなった。従って前者で計測している。黒色輝度は0.086cd/平方mで(目視可能かは別問題で)少し黒が浮く。リニアリティは、ほぼ直線的だ。補正前は若干マゼンタ被りする程度で結構優秀な方だろう。

測定結果1/白色点と黒色輝度
測定結果2/R・G・Bのリニアリティ

 キーボードはテンキーなしのアイソレーションタイプでオフ/Auto/2段階のキーボードバックライト付きだ。ストロークは深めでクリック感もあり個人的には好きな打鍵感。主要キーのキーピッチは実測で約19mm。ただし右側[BS]、[Enter]、[Shift]の周囲が狭いのが残念なところか。

 タッチパッドは物理的なボタンのない1枚プレート型だ。パームレストも含め広く扱いやすくなっている。なお、写真にEvoのシールはないが、本機はEvo対応機となる。

 ノイズや振動、発熱は、ベンチマークテストなど負荷をかけると、本体に耳を近づければ若干ファンの音が、そしてキーボード上側のスペースが暖かくなる程度。なかなかうまく処理されている。

 サウンドは、スピーカーが裏にあるため、机などに音が反射して耳に届く。Harman Kardonを名乗ってるだけあって、音質、パワーもノートパソコンとしては十分。14型で幅があるので、ステレオ感もある。

 前面カメラはリモート会議にも使うため確認したところ、720pなので解像感は低いものの、発色はほどほどで、映像にこだわらなければそのまま使えそうだった。

 以上のように総じて完成度は高く、気になる部分があるとすれば、指摘した右側いくつかのキーだけ。加えて、後半のベンチマークテストからわかるようにハイパフォーマンス。満足度は高いと思われる。

GeForce MX450有無の性能差は最大2倍程度!?

 初期起動時、スタート画面(タブレットモード)は1画面。Lenovoグループがプリインストールとなる。デスクトップは壁紙の変更のみとシンプルだ。第11世代Tiger LakeのCore i7、メモリ16GB、NVMe SSD 512GBと、ノートパソコンとしてはハイエンドなので何をしても快適。ただし、通常使用でiGPUとdGPUの違いは体感では分からない。

 ストレージはPCIe NVMe/M.2 SSD 512GBの「SKHynix HFS512GD9TNI-L2A0B」。C:ドライブのみの1パーティションで約475GB割り当てられ空き412GB。BitLockerで暗号化されている。Wi-FiとBluetoothはIntel製だ。

 NVIDIAコントロールパネルによると、搭載しているGeForce MX450は、CUDAコア896、メモリGDDR6 2,048MBなのがわかる。

スタート画面(タブレットモード)の1画面。Lenovoグループがプリインストール
起動時のデスクトップ。壁紙の変更のみとシンプル
デバイスマネージャ/主要なデバイス。ストレージはPCIe NVMe/M.2 SSD 512GBの「SKHynix HFS512GD9TNI-L2A0B」。Wi-FiとBluetoothはIntel製
ストレージのパーティション。C:ドライブのみの1パーティションで約475GB割り当てられている。BitLockerで暗号化
NVIDIAコントロールパネル。搭載しているGeForce MX450は、CUDAコア896、メモリGDDR6 2,048MB

 おもなプリインストールのソフトウェアは、「Lenovo Vantage」、「DOLBY VISION」、「スマートマイクの設定」、「マカフィーリブセーフ」、「Office Home & Business 2019」など。

 Lenovo Vantageは同社お馴染みのシステム系総合ツールだ。前々回Yoga Slim 950iでHome 2画面を掲載したこともあり、今回はシステムアップデートとマイ・セキュリティーを掲載している。スマートマイクの設定は、リモート会議などで使えば便利そうな、マイクの特性を3パターン(プライベート/共有/環境)選べる。

Lenovo Vantage/システムアップデート
Lenovo Vantage/セキュリティー
DOLBY VISION
スマートマイクの設定

 ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、CINEBENCH R23、CrystalDiskMark、PCMark 10/BATTERY/Modern Office。3DMarkのTime Spyは、dGPUとiGPUの切り替えができるので、両方のスコアを掲載している。

 Yoga Slim 950i@iGPUも同じプロセッサだったこともあり、スコアを並べて見ていると、PCMark 10では、項目によって凹凸はあるが、Rendering and Visualization Scoreがほぼ倍になっている。PCMark 8は全てでスコアが上回っており、Work Accelarated 2.0は約倍。3DMarkはFire Strike Ultraだけ何故か負けているが、他は上回っている。Time Spyは約1.5倍の差だ。総じてdGPUの効果が表れている。

 PCMark 10/BATTERY/Modern Officeは11時間10分。ここのところ、いろいろなTiger Lake搭載機を試用しているが、仕様上最大約15.2時間なので、この実駆動時間はなかなか長い方だ。

PCMark 10 v2.1.2506
PCMark 10 Score5,485
Essentials8,710
App Start-up Score11,280
Video Conferencing Score6,432
Web Browsing Score9,110
Productivity8,837
Spreadsheets Score10,111
Writing Score7,725
Digital Content Creation5,820
Photo Editing Score7,539
Rendering and Visualization Score5,773
Video Editting Score4,531
PCMark 8 v2.8.704
Home Accelarated 3.04,260
Creative Accelarated 3.04,858
Work Accelarated 2.05,540
Storage5,026
3DMark v2.16.7117
Time Spy2,608@dGPU/1,713@iGPU
Fire Strike Ultra614
Fire Strike Extreme2,291
Fire Strike5,295
Sky Diver19,787
Cloud Gate21,743
Ice Storm Extreme103,762
Ice Storm94,893
CINEBENCH R23(R20から)
CPU5,807 pts(9位)
CPU(Single Core)1,374 pts(3位)
CrystalDiskMark 6.0.0
Q32T1 シーケンシャルリード3391.129 MB/s
Q32T1 シーケンシャルライト2914.706 MB/s
4K Q8T8 ランダムリード544.645 MB/s
4K Q8T8 ランダムライト272.628 MB/s
4K Q32T1 ランダムリード288.657 MB/s
4K Q32T1 ランダムライト323.319 MB/s
4K Q1T1 ランダムリード42.249 MB/s
4K Q1T1 ランダムライト121.492 MB/s

 最後にdGPUを搭載、そしてパネルがsRGB 100%ということもあり、SIGMA Photo Pro(6.7.4)でバッチ処理によるRAW現像時間を比較してみた。

SIGMA Photo Proの環境設定/GPU高速化。右側、GPU高速化のオン/オフ、オンの時はIntel Iris Xe GraphicsとGeForce MX450を選択できる

 環境設定でGPU高速化のオン/オフ、オンの時はIntel Iris Xe GraphicsとGeForce MX450を選択できるため、3パターンで5枚のRAW現像時間を測ったところ以下のようになった。

SIGMA Photo ProのGPU高速化の有無による処理速度の違い
OFF30.10秒
Intel Iris Xe Graphics19.46秒(20枚で1分14.35秒)
GeForce MX45018.96秒(20枚で1分13.09秒)

 オフの時は明らかに遅く、Intel Iris Xe GraphicsとGeForce MX450では後者が0.5秒速いという結果となった(手動での測定と言うこともあり、20枚にしたところ1分14.35秒 vs 1分13.09秒。いずれにしてもGeForce MX450の方が少し速い)。

 Intel UHD Graphicsの時はそれなりに差があったものの、Intel Iris Xe Graphicsが優秀と言うことなのだろう。ただ速度差だけでなく、dGPUはグラフィックス用に別途メモリを搭載しているため(本機では2,048MB)、メインメモリに余裕ができ、それにより、アプリの動作が改善されるケースも考えられる。この辺りは総合的に判断したいところだ。

 RAW現像ではさほど大きな差にはならなかったが、先のベンチマークテストの結果を踏まえると、内容にもよるが最大2倍程度の差と言うところだろうか。


 以上のようにLenovo「Yoga Slim 750i Pro」は、Tiger LakeのCore i7、GeForce MX450を搭載した14型2,240×1,400ドットのノートパソコンだ。パネルのアスペクト比が16:10なので、一般的な16:9より画面も見やすい。メモリ16GB、ストレージPCIe NVMe/M.2 SSD 512GBと、容量的にも十分。

 iGPUがIntel Iris Xe Graphicsになったこともあり、dGPUがGeForce MX450だと大きな差にはならないものの、それでもベンチマークテスト結果から+αのパフォーマンスを叩き出している。

 トータル的に気になる部分もなく、第11世代搭載ノートパソコンで、sRGB 100%、そしてあと少しグラフィック性能を求めているユーザーに使ってほしい1台と言えよう。