西川和久の不定期コラム

3万円台からの第8世代「iPad」をレビュー。A12 Bionic搭載で前世代から大きく性能向上

iPad(Apple PencilとSmart Keyboardは別売)

 Appleは9月に新型のiPadを発売した。税別価格はWi-Fi版が3万4,800円からで、Wi-Fi+Cellular版は4万9,800円から。発売から少し経ってしまったが、試用レポートをお届けしたい。

SoCにニューラルエンジン対応のA12 Bionicを搭載

 初代iPadが登場してから約10年、今回のiPadは第8世代となる。10年で第8世代なので、毎年新機種とまではいかないが、比較的早いペースでリリースしているのがわかる。

 第8世代iPadの一番の特徴はSoCがA12 Bionicになったことだ。高性能コア×2と高効率コア×4、そして第7世代にはなかったニューラルエンジンを搭載している。同じSoC搭載機としては、iPhone XR/XS/XS Max、第3世代iPad Air、第5世代iPad miniがあり、そしてSoCの構成が違うものの同じA12系(A12X Bionic)としてはiPad Pro(2018)などが挙げられる。

 筆者は第1/2/3世代まではiPadを連続購入、以降しばらく空いて2018年に第6世代を、2019年に11型iPad Pro(2018年版)を購入して現在にいたっている。おそらく次に買うなら12.9型iPad Proとなるだろう。

 ここで気になるのは第8世代iPadで手持ちの11型iPad Proと同じA12系になったことだ。どの程度の差があるのか、後半のベンチマークテストで検証してみたい。今回手元に届いたのはWi-Fi+Cellular版で、色はスペースグレイ、容量128GBのモデルだった。

 第8世代iPadのおもな仕様は以下のとおり。

【表】第8世代iPadの仕様
プロセッサA12 Bionic
メモリ3GB
ストレージ32GB/128GB
OSiPadOS 14
ディスプレイIPS式10.2型2,160×1,620ドット(264ppi)、最大輝度500cd/平方m
インターフェイスWi-Fi 5(IEEE 802.11ac)、Bluetooth 4.2、800万画素背面カメラ、120万画素FaceTimeカメラ、Lightning、Smart Connector、3.5mmヘッドフォンジャック、第1世代Apple Pencil対応
センサー指紋(Touch ID)、ジャイロ、加速度、気圧計、環境光、電子コンパス、内蔵GPS/GNSS(Wi-Fi+Cellular)
SIM(Wi-Fi+Cellular版)Nano SIM/eSIM(データのみ)
LTEバンド(Wi-Fi+Cellular版)B1/2/3/4/5/7/8/11/12/13/14/17/18/19/20/
21/25/26/29/30/34/38/39/40/41/66/71
サイズ250.6×174.1×7.5mm(幅×奥行×高さ)
重量約490g(Wi-Fi+Cellularは約495g)
バッテリ駆動時間最大10時間(Wi-Fiでのインターネット利用、ビデオ再生、オーディオ再生)
カラーバリエーションシルバー、スペースグレー、ゴールド
税別価格Wi-Fi版 : 3万4,800円~
Wi-Fi+Cellular版 : 4万9,800円~

 SoCはA12 Bionic。7nmプロセスで製造され、先に書いたように高性能コア×2と高効率コア×4、そしてニューラルエンジンを搭載している。メモリは3GB。ストレージは32GBもしくは128GB。OSはiPadOS 14。ディスプレイは最大輝度500cd/平方mで、IPS式10.2型2,160×1,620ドット(264ppi)。

 インターフェイスは、Wi-Fi 5(IEEE 802.11ac)、Bluetooth 4.2、800万画素背面カメラ、120万画素FaceTimeカメラ、Lightningコネクタ、Smart Connector、3.5mmヘッドフォンジャック。Apple Pencilは第1世代のみの対応なので注意が必要だ。

 センサー類は、指紋(Touch ID)、ジャイロ、加速度、気圧計、環境光、電子コンパス、内蔵GPS/GNSS(Wi-Fi+Cellular)。Nano SIMとeSIM(データのみ)に対応している。

 サイズは250.6×174.1×7.5mm(幅×奥行×高さ)、重量約490g。バッテリ駆動はWi-Fiでのインターネット利用などを想定して最大10時間。カラーバリエーションは、シルバー、スペースグレー、ゴールドの3色を用意。

 税別価格はWi-Fi版が32GBで3万4,800円、128GBで4万4,800円。Wi-Fi+Cellular版は32GBで4万9,800円、128GBで5万9,800円となる。

 じつは第7世代iPadも筆者がレビューしているのだが(10.2型に大型化/Smart Keyboardに対応したApple「第7世代iPad」参照)、第7世代と何もかもほとんど同じ。違いはA12 BionicかA10 Fusionであるかと、iPadOSのバージョン、重量が数g重い程度。ディスプレイ、ネットワーク機能、カメラ、第1世代Apple Pencilのみの対応、国内価格などすべて同じだ。つまりSoCの違いがそのすべてとなる。

 いずれにしても第7世代iPadの実績、そしてA12 Bionicを搭載した他機種の性能などを考慮すると、Wi-Fiモデルで3万4,800円からというのは信じがたいコストパフォーマンスの高さとなる。

左側のフチ中央に前面カメラ、右側フチ中央にHomeボタン/指紋センサー(Touch ID)
右上にシングルレンズの背面カメラ。右側の黒い部分にCellular用のアンテナが仕込まれている(Wi-Fiモデルにはない)
左側面にSmart Connector。下側面にLightningコネクタ
右側面に音量±ボタン、SIMスロット(Wi-Fi+Cellularモデルのみ)。上側面に電源ボタンと3.5mmジャック
付属品はACアダプタ(20W)とType-C - Lightning変換ケーブル
パッケージの裏に「8th Generation」の記述
重量は実測で492g
11型iPad Proとの比較。カメラ部分が出っ張っているためパネル面を重ねている。iPad Proのほうが幅が少し広く、奥行きが短いのがわかる

 手元に届いたのはスペースグレイの筐体カラーで、ぱっと見、第7世代か第8世代か区別がつかない。代り映えしないのはつまらないが、ビジネス向けや教育向けを考えた場合、外部的に変わらないのが重要ということもあるだろう。Mac miniも長らくかたちやおもなコネクタの位置が変わっていない。これはサーバー用途でラックマウントするとき、外部仕様が変わるとそのままマウントできないためだ。同じことがiPadに当てはまるケースもあると思われる。

 付属品はACアダプタとケーブルだが、第7世代では10WでType-A - Lightning変換ケーブルだったものが、第8世代からは20WでType-C - Lightning変換ケーブルに変わっている。ここは地味だがうれしい改善点だ。もちろん他社製も含め従来のものでも充電できる。

 耐指紋性撥油コーティング、最大輝度500cd/平方mの10.2型IPS式2,160×1,620ドット(264ppi)ディスプレイや、ステレオスピーカーなども変わっていない。3万4,800円からという価格を考えると、ディスプレイ、サウンドともに他社が追従できない品質だ。iPadだけ触っている分にはまったく不満はない。

 第7世代のiPadではカメラがおまけ程度の写りなので、そのときのレビューでは詳しく触れなかったが、第8世代ではA12 Bionicを搭載し、ニューラルエンジンが使えるようになった。そのため、iPhone XRのように、シングルレンズでも顔認識してのポートレートモードが追加されたかなと確認したところ、前面/背面ともに利用できず、写りも相変わらずだった。iPhoneを持っていればAirDropで簡単に転送できるので、同社としてはコストの関係もあり、とくに品質を上げる気がないのだと思われる。

iPadOS 14搭載でさらに使いやすく

 初回起動時のiPadOSは14.0だったが、試用するタイミングで14.2がリリースされたので、アップデートし、今回の評価はすべて14.2で行なっている。14.2の改善/修正点は別の記事にまとめられているので、興味のある方はご覧いただきたい。iPadはほかの機種より改善点が少ないようだ。

 初回起動時のホーム画面は以下の画像のように2画面構成。ウィジェットは縦表示時は単独画面、横表示時はホーム画面左側に置くことができる。中央あたりを上から下へスワイプで通知画面、右上あたりを上から下へスワイプでコントロールパネル。Split ViewやSlide Overももちろん利用可能だ。このあたりはiPadOS 14が出て少し経っているので、とくに説明の必要はないだろう。ストレージは初回起動直後、128GB中13.6GBが使用済みとなっていた。

ホーム画面1
ホーム画面2
縦表示時のウィジェット
横表示時のウィジェット
コントロールパネル
初回起動時128GB中13.6GBが使用済み

 ベンチマークは簡易式で、Geekbench 5とGoogle Octane 2.0を利用。バッテリベンチとして、Wi-Fi接続で音量、明るさともに50%で動画の全画面連続再生を行なった。

 結果は以下のとおりで、カッコ内に11型iPad Pro(2018年版)の値を書き込んである。

Geekbench 5 Single-Core 1,117(1,119)/Multi-Core 2,661(4,628)
Geekbench 5 Compute 5,167(11,090)
Google Octane 2.0 41,280(42,301)
約10時間で残24%

 iPadに搭載しているSoCは冒頭に書いたとおりA12 Bionic。高性能コア×2、高効率コア×4。対して11型iPad Pro(2018年版)搭載のSoCはA12X Bionicで高性能コア×4、高効率コア×4。つまりベンチマークテストに使われる高性能コアが倍になっている。

 したがってGeekbench 5のSingle-Coreは同等、Multi-Coreがざっくり倍になるのも頷ける。しかし2年前のモデルとは言え、iPad ProのSingle-Coreと同じなのは少し悔しい感じだ(笑)。そしてGPU性能のComputeもほぼ倍違う。

 Google OctaneはWebブラウザのJavaScript処理速度を測るもので、そのJavaScript自体がMulti-Core非対応のためSingle-Core性能=同等となっている。参考までにブラウザはChromeだが、Core i5-10210Uを搭載する筆者所有のIntel「NUC10i5FNH」のスコアは43,391と同クラスだ。これだけでも第8世代iPadでSafariを使ったネットアクセスが快適なのがわかる。

 冒頭で触れた第7世代iPadとの比較だが、当時のスコアはGeekbench 4なので使えず、OSやSafariのバージョンが異なるためあくまで参考値となるが、Google Octaneでは26,784。第8世代のほうが約1.54倍速いことになる。これだけ違えば体感上でもわかるはずだ。

 バッテリのテストでは約11時間で電源が落ちた。仕様上はWi-Fiでのインターネット利用などで最大10時間となっているので、1時間ほど上回っている。第7世代では約9時間だったため、結構延びているのがわかる。

 このように第8世代iPadはA12 Bionicを搭載したことにより、性能が大幅に向上し、バッテリ駆動時間も延び、いいこと尽くしだ。ほかが変わらない分、この差が目立つ格好となっている。

Apple PencilとSmart Keyboard

 第8世代のiPadは、第7世代iPad同様、第1世代Apple Pencilのみの対応なので要注意だ。充電とペアリングでLightningコネクタに差し込む方法も変わらず。

 iPadOS 14で追加された機能として「スクリブル」が挙げられる。手書き入力の一種なのだが、専用のパレットなどは使わず、アプリ内の文字入力が可能な部分であれば、どこでも手書き入力可能。画面キャプチャのように、枠からはみ出してもまったく問題ない。

 書いた文字と変換後が異なっていたら、「該当する変換後の文字をグルグルっと適当に塗りつぶす」と、その範囲の文字が削除される。

 このように、「従来の手書き入力って何だったの?」と思ってしまう画期的な機能だが、現在英語と中国語のみの対応で日本語が使えない。日本語への早い時期での対応を望みたい。

Apple Pencil使用中
Safariの検索で手書き入力。枠からはみ出しても問題ない
手書き入力の変換後

 第8世代iPadは、第7世代同様、Smart Connectorを追加したことにより、Smart Keyboardが使えるようになった。今回はiPad Pro 10.5用のものが同時に届いたが、冒頭の写真からもわかるように、サイズ感も含めまったく問題なく使用可能だ。

 重量は単体で246g、iPadと合わせて735g。一部を折り曲げて背もたれを作るためパネルの傾きは特定位置での固定となる。

 打鍵感はクリック感もあり悪くないが、キーピッチは中央付近は約18mmが確保されているものの、左端/右端は極端に狭くなっている。中央付近と同じ感覚で両端のキーを打とうとして間違えることがあった。約10型の幅にフルキーを詰め込んでいるのだから仕方ない部分とは言え、個人的には使いづらかった。

 じつは冒頭でiPad Pro 12.9が欲しいと書いた理由の1つにこれがある。11型iPad ProのMagic Keyboardを買ってはみたものの、iPad用のSmart Keyboard同様、左端と右端のキーピッチがどうにも狭く使いづらい。店頭で12.9型のMagic Keyboardを試したところこうした問題はなかったので、今回のiPadを含めて実際に確認することをおすすめする。

Smart Keyboard(10.5型iPad Pro用)
キーピッチは実測で約18mm
カバーとして使ったところ。キーボードの部分だけ少し厚みがある

 第7世代iPadのレビューでは、裏技的にマウスポインタを表示する方法などを解説したが、2020年3月にリリースされたiPadOS 13.4で正式にタッチパッド対応となった。したがってiPadOS 14では当然使うことができる。これを使うとまるでmacOSのようにタッチパッドだけでスムーズにいろいろな操作が可能になる。

 ただし純正品としては、iPad Pro/AirのMagic Keyboardしかなく、iPadの場合はLogicool Combo Touch Keyboard Case with Trackpad for iPad(第8世代)といったサードパーティ製のものを用意しなければならない。一応Bluetooth接続でMagic Mouse 2やMagic Trackpad 2も使えるが、筆者が持っているのはその前の初代バージョンだからか、うまく動作しなかった。

Logicool Combo Touch Keyboard Case with Trackpad for iPad(第8世代)

 先のキーピッチの件も含め、さまざまなサードパーティ製のタッチパッド付キーボードケースを物色してみるのもおもしろいだろう。


 以上のようにApple「第8世代iPad」は、第7世代iPadのSoCをA12 Bionicへ変更したのが最大の特徴だ。そのほかの部分は数g重い程度で、国内価格も含めすべて同じ。しかしこの変更がかなり効いており、性能は大幅に向上、バッテリ駆動時間も時間単位で延びている。これだけ違えば体感も結構変わるはずだ。付属のACアダプタがパワーアップしているのもうれしい改善点だ。

 半面、カメラの写りは相変わらずイマイチ。昨今Androidも含めミドルレンジ程度のスマートフォンで撮ったほうがずっと良い。またニューラルエンジンを使ったシングルレンズで顔認識によるポートレートモードもなく、ちょっと残念な部分でもある。

 いずれにしても高コストパフォーマンスなタブレットであることは言うまでもなく、新規購入はもちろん、古いモデルからの買い替えでもおすすめ。また第7世代を所有していて、あともう一歩パワーが……と思うユーザーにも推せるiPadと言えよう。