西川和久の不定期コラム

Tiger Lake搭載で12万円台からのデル製2in1「Inspiron 13 7000 2-in-1」

Inspiron 13 7000 2-in-1(7306)

 Dellは10月2日、Tiger Lakeこと第11世代Coreプロセッサ搭載機を計13機種発表した。今回はそのなかから13.3型2in1の「Inspiron 13 7000 2-in-1(7306)」の試用レポートをお届けしたい。

Core i5のTiger Lakeを搭載する2in1

 今回手元に届いたのは、直販サイトで「New Inspiron 13 7000 2-in-1【即納】プレミアム(アクティブペン付)」として販売されているものと同構成だ。クラムシェルのInspiron 13 7000も販売されているが、仕様的にはほとんど同じで、2in1であるかとタッチパネルを備えているかどうかがおもな違いとなる。また構造上クラムシェルのほうが若干軽く、価格も安い。

【表1】Dell「Inspiron 13 7000 2-in-1」の仕様
プロセッサCore i5-1135G7(4コア8スレッド、2.4GHz~4.2GHz、キャッシュ 8MB、コンフィグラブルTDP 12W(900MHz)/28W(2.4GHz)
メモリLPDDR4x-4266 8GB(4GBx2)
ストレージM.2 PCIe NVMe SSD 512GB
OSWindows 10 Home
ディスプレイ13.3型フルHD(1,920×1,080ドット)、光沢、タッチ/アクティブペン対応、300cd/平方m、sRGB 100%カバー
グラフィックスIris Xe Graphics
ネットワークWi-Fi 6対応、Bluetooth
インターフェイスThunderbolt 4、USB 3.0、HDMI 2.0、microSDカードスロット、音声入出力
バッテリ60Whr
サイズ/重量305.19×206.4×15.94~16.74mm(幅×奥行き×高さ)/1.274kg
直販価格12万6,980円~

 プロセッサは第11世代のCore i5-1135G7。4コア8スレッドでクロックは2.4GHzから最大4.2GHz、キャッシュ8MB。仕様を見るとTDPにコンフィグラブルTDPが加わっており、これにより軽さや長時間バッテリ駆動優先か性能優先かなど、設計の違いで同じプロセッサでもベンチマークテストの結果が異なるケースが出てくる。このプロセッサならこの程度、というおおよその目安にならないのは痛いが、その分、いろいろなバリエーションが出ることを期待したい。

 メモリは4,267MHz駆動のLPDDR4X 8GB(4GB×2)。ストレージはM.2 PCIe NVMe SSD 512GB。OSは64bit版のWindows 10 Home。

 グラフィックス機能は、プロセッサ内蔵のIris Xe Graphics。従来のIntel HD Graphicsよりかなり速くなっており、後半に掲載している3DMarkの結果では、Comet Lake搭載機と比較して圧勝している。外部出力用にHDMIとThunderbolt 4(DisplayPort)を装備。ディスプレイは、光沢ありの13.3型フルHD(1,920×1,080ドット)。タッチ/アクティブペン対応だ。最大輝度300cd/平方m、色域はsRGB 100%カバーする。

 ネットワーク機能は、Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)、Bluetooth。そのほかのインターフェイスは、Thunderbolt 4、USB 3.0、microSDカードスロット、音声入出力。写真からもわかるように、結構あっさりしている。

 そして本機はIntelが提唱するEVOプラットフォーム対応だ。その要件としては、フルHDでバッテリ駆動9時間以上などいくつかあるが、一番大きいのは「Wi-Fi 6とThunderbolt 4の実装」というところだろうか。興味のある方は、山田祥平氏のコラム「コンシューマは先に行って待っているね」に詳しく書かれているのでご覧いただきたい。

 サイズは305.19×206.4×15.94~16.74mm(幅×奥行き×高さ)、重量1.274kg。60Whrのバッテリを内蔵し、直販価格は今回の構成で12万6,980円。サイトにカスタマイズのボタンがあるにはあるが、実際はソフトウェアなどだけで、メモリやストレージなどの変更はできない。

 なお、Core i7の構成も用意されており、最大だと、Core i7-1165G7、メモリ16GB、ストレージM.2 PCIe NVMe SSD 512GBで18万2,150円となる。

パネル中央上にWebカメラとその上にプライバシーシャッター。左右はそれなりに狭額縁
メタリックな感じでなかなかカッコいい
HDMI、Thunderbolt 4
USB 3.0、音声入出力、microSDカードスロット
キーボードはバックライトつきのアイソレーションタイプ。右上の電源ボタンは指紋センサー兼。タッチパッドは1枚プレート式。上部中央あたりのへこみがペン収納スペース
キーピッチは実測で約19mm
裏面の手前左右のスリットにスピーカー。足は手前の2つ
パネルの下が足代わりになり、キーボードが手前に傾いているのがわかる
テントモード
スタンドモード
タブレットモード
スタンドモードで付属のアクティブペン使用中
付属のACアダプタ。USB PD対応で出力は最大65W
重量は実測で1,324g

 筐体はエレメント ブラックと呼ばれるスペースグレイ調の濃い黒。メタリックな感じでとてもカッコいい。2in1のテント/スタンド/タブレット各モードもヒンジの部分がしっかりしており、ピタっと止まりかつぐらつかない。

 重量は実測で1,324gと、仕様より若干重く、また持ったときにズッシリ重い。その分、重厚感があるので痛し痒しか。いずれにしても1kgを超えるとタブレットとして手で持ち続けるのは厳しいだろう。

 パネル中央上にWebカメラ。写真ではわかりにくいがその上にプライバシーシャッターがある。左右はそれなりに狭額縁だ。左側面にHDMI、Thunderbolt 4。右側面にUSB 3.0、音声入出力、microSDカードスロットを配置。ポートが少ない分、スッキリしている。

 加えてキーボード上部中央あたりのへこみがペン収納/充電スペースとなっている(磁石で固定)。扉の写真はペン収納中なので参考にしていただきたい。若干取り出しにくいが、これならペンが行方不明になることもなさそうだ。

 裏面は手前左右のスリットにスピーカー。ゴム足は手前に2つだけで、後ろは写真からわかるように、パネルの下が足代わりとなり、キーボードが若干傾く機構になっている。

 付属ACアダプタのサイズは約110×50×270mm(幅×奥行き×高さ)、重量202g、出力は最大65W。USB PDものなので、別の対応製品でも利用できる。

 ディスプレイは、最大輝度300cd/平方m、sRGB 100%カバー。Dolby Visionにも対応する。光沢ありなので映り込みは気になるものの、明るさ、コントラスト、発色、視野角、すべて良好。ノートパソコン用としては、結構いいパネルを使っているようだ。

 i1Display Proを使い特性を測ったところ、最大輝度287cd/平方m(仕様上は300cd/平方m)。写真の鑑賞/編集で最適とされる標準の明るさは120cd/平方mであり、輝度最大の設定から-3が157cd/平方m、-4が121cd/平方mとなった。したがって後者で計測している。黒色輝度は0.000cd/平方mの真っ黒。リニアリティは、ほぼほぼそろっているが、補正前は若干緑被りしている。

白色点と黒色輝度
R・G・Bのリニアリティ

 キーボードはテンキーなし、オフ+2段階バックライトつきのアイソレーションタイプだ。電源ボタンが指紋センサーを兼ねている。主要キーのキーピッチは実測で19mm。ほぼこのピッチが確保され入力しやすい。

 気になるとすれば[¥]と[Backspace]、[む]と[Enter]キーが狭く、ファンクションキーが小さいこと。打鍵感自体はクラス相応で悪くない。タッチパッドはボタンのない1枚プレート式。パームレストも含め、13.3型なりのスペースが確保されている。右下のEVOシールが目新しい。

 付属のアクティブペンは、4,096段階の筆圧検出、傾き検出に対応でクイックキー消去ボタンを装備。Bluetooth接続で、Microsoft Pen Protocol 2.0に対応している。形状が鉛筆の様に6角形なので個人的には持ちやすく、普通に扱うことができた。ペンを使うときは写真のようにかなり傾けたスタンドモードが書きやすいだろう。

 動作時のノイズや振動は試用した範囲ではまったく気にならず。発熱はベンチマークテストなど負荷をかけると、キーボード上のスペースが若干暖かくなる程度。また興味深い機能として、スマートセンサーによるプロファイルコントロールが挙げられる。

 これは、手に持っているか、ひざの上か、机の上にあるかを把握。温度プロファイルを状況に合わせてインテリジェントに適応させるものだ。今回はすべて机の上に置いて評価しているため、基本フルパワーで動いている。

 サウンドはEVOプラットフォームで「スピーカーの音圧レベルが78dB/50cm以上およびベース周波数が353Hz以下」と定義されており、とりあえずこのシールが貼ってあれば、出力が小さく聴きにくいなど、基本的な部分で気落ちしなくて済む。

 スピーカーが裏にあるため机などに反射した間接音が耳に届く。13.3型としては今年(2020年)一番かもというほどパワーがあり、声などの抜けも良く低音もそこそこ出る。これなら、本体だけで音楽、映像などを十分楽しめるだろう。

同クラスのComet Lake機と比較して圧倒的なグラフィックス性能

 初回起動時、スタート画面(タブレットモード)は1画面。Dellグループがプリインストールとなる。デスクトップは壁紙の変更のみとシンプル。

 ストレージはM.2 PCIe NVMe SSD 512GBの「KIOXIA KBG40ZNS512G」。あまり見たことのないデバイスだが、仕様によると、シーケンシャルリード2,200MB/s、シーケンシャルライト1,400MB/s。CrystalDiskMarkのスコアもほぼそのまま出ている。ストレージ容量は約462GBで空き426GB。BitLockerで暗号化されている。

 Wi-FiとBluetoothはIntel製。Wi-FiはIntel Wi-Fi 6 AX201 160MHzを使用。ディスプレイアダプターにIntel Iris Xe Graphicsの文字があるのは新鮮だ。

スタート画面(タブレットモード)
起動時のデスクトップ
ストレージはM.2 PCIe NVMe SSD 512GBの「KIOXIA KBG40ZNS512G」。Wi-Fi(Intel Wi-Fi 6 AX201 160MHz)とBluetoothはIntel製。ディスプレイアダプタにIntel Iris Xe Graphicsの文字
ストレージのパーティションは約462GBが割り当てられている。BitLockerで暗号化

 おもなプリインストールソフトウェアは、「Dell CinemaColor」、「Dell Customer Connect」、「Dell Digital Delivery」、「Dell Mobile Connect」、「Dell Power Manager」、「Dell Update」、「My Dell」、「SupportAssist」など、おもにツール系となる。

My Dell / Home
My Dell / Cinema
Dell CinemaColor
Dell Power Manager

 ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、Cinebench R20、CrystalDiskMark、PCMark 10 BATTERY Modern Office。

 参考までにノートパソコンではないが、Comet Lakeの同クラスと思われるCore i5-10210Uを搭載したIntel「NUC10i5FNH」のスコアも併記する。一部劣っている部分もあるものの、全体的にワンクラス上。さらに3DMarkは圧倒的に速くなっているのがわかる。

【表2】ベンチマーク結果
Inspiron 13 7000 2-in-1NUC10i5FNH
PCMark 10 v2.1.2506
PCMark 10 Score4,1153,963
Essentials9,1928,024
App Start-up Score12,14410,460
Video Conferencing Score7,6266,370
Web Browsing Score8,3877,754
Productivity5,6826,335
Spreadsheets Score4,8776,792
Writing Score6,6215,909
Digital Content Creation3,6213,325
Photo Editing Score5,3133,972
Rendering and Visualization Score2,2142,260
Video Editting Score4,0394,098
PCMark 8 v2.8.704
Home Accelarated 3.04,1643,630
Creative Accelarated 3.04,4983,715
Work Accelarated 2.03,0414,936
Storage4,9944,964
3DMark v2.15.7078
Time Spy1,444482
Fire Strike Ultra1,069306
Fire Strike Extreme2,009587
Fire Strike3,7821,205
Sky Diver12,2614,870
Cloud Gate15,1949,790
Ice Storm Extreme72,02447,713
Ice Storm85,09868,713
Cinebench R20
CPU1,378pts1,806
CPU(Single Core)397pts418
CrystalDiskMark 6.0.0
Q32T1 シーケンシャルリード2310.092MB/s-
Q32T1 シーケンシャルライト1306.712MB/s-
4K Q8T8 ランダムリード729.067MB/s-
4K Q8T8 ランダムライト367.594MB/s-
4K Q32T1 ランダムリード324.216MB/s-
4K Q32T1 ランダムライト387.327MB/s-
4K Q1T1 ランダムリード39.080MB/s-
4K Q1T1 ランダムライト128.812MB/s-

 Tiger Lakeの場合、コンフィグラブルTDPということもあり、マシンの設計に性能が依存するものの、おおむね特徴の出た比較となった。逆に言えば筆者のようにテキストを扱うのが中心で、ちょっとPhotoshopを使うといった用途の場合、仮にTiger Lake搭載のNUCが出ても慌てて買い換える必要はなさそうだ。

 PCMark 10のバッテリテストは12時間10分(キーボードバックライトオフ。明るさ、バッテリモードなどはシステム標準)。EVOプラットフォームの要件9時間以上の12時間越え。このクラスとしては十分だと思われる。


 以上のように「Inspiron 13 7000 2-in-1」は、Tiger LakeのCore i5、メモリ8GB、ストレージ512GB、13.3型タッチ対応のフルHDを搭載した2in1だ。噂どおり内蔵GPU性能もなかなか。筐体の質感なども良く、全体的に満足度の高い製品に仕上がっている。Tiger Lake、そしてEVOプラットフォーム対応の13.3型2in1を探しているユーザーにおすすめしたい1台と言えよう。