西川和久の不定期コラム
69,800円ほどで買える堅実な出来のRyzen 5搭載ノート「Huawei MateBook D 15」
2020年4月7日 11:00
華為技術日本株式会社(ファーウェイ・ジャパン)は3月24日、Ryzenを搭載した15.6型狭額縁ノートPCを2モデル発表、4月10日より順次販売を開始する。今回はその下位モデルの試用レポートをお届けしたい。
Ryzen 5 3500U/8GB/256GB搭載の15.6型
ここのところComet LakeやIce Lake搭載ノートPCラッシュはもちろんだが、加えてRyzen搭載機もいろいろ発表されている。RyzenはIntelの内蔵GPUより強力なRadeon Vegaを備え、搭載製品は少し価格が安めで提供されているため、期待している方も多いのではないだろうか。
今回ご紹介する「MateBook D 15」は、非常にシンプルでオーソドックスな15.6型ノートPCだ。Ryzen 5搭載機とRyzen 7搭載機の2モデルあるなか、手元に届いたのは、Ryzen 5 3500U、メモリ8GB、SSD 256GBを載せたの下位モデルだ。
【表1】MateBook D 15の仕様 | |
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プロセッサ | Ryzen 5 3500U(4コア8スレッド/2.1~3.7GHz/L3キャッシュ4MB/TDP 15W) |
メモリ | DDR4-2400 8GB |
ストレージ | 256GB PCIe SSD |
OS | Windows 10 Home |
ディスプレイ | 15.6型IPS式フルHD(1,920×1,080ドット)、非光沢 |
グラフィックス | Radeon Vega 8 Graphics |
ネットワーク | IEEE 802.11ac対応、Bluetooth 5.0 |
インターフェイス | USB 3.0、USB 2.0 Type-C(USB PD対応)、USB 2.0×2、HDMI入力、100万画素Webカメラ、音声入出力、指紋認証センサー、NFC |
バッテリ駆動時間 | 約8.2時間 |
サイズ | 約358×230×16.9mm(幅×奥行き×高さ) |
重量 | 約1.53kg |
カラー | スペースグレイ |
税別店頭予想価格 | 69,800円前後 |
プロセッサはRyzen 5 3500U。4コア8スレッドでクロックは2.1~3.7GHz。L3キャッシュは4MB、TDPは15W。メモリはDDR4-2400の8GB。ストレージは256GB PCIe SSD。OSは64bit版Windows 10 Homeを搭載している。
グラフィックス機能はプロセッサ内蔵Radeon Vega 8 Graphics。外部出力用としてHDMIを装備。ディスプレイは非光沢の15.6型IPS式フルHD(1,920×1,080ドット)。画面占有率87%と狭額縁だ。
ネットワーク機能は、IEEE 802.11ac対応、Bluetooth 5.0。有線LANは非搭載。この時期のPCとしてはWi-Fi 6でないのは残念なところだが、価格を考えれば妥当ではある。
そのほかのインターフェイスは、USB 3.0、USB PD対応のUSB 2.0 Type-C、USB 2.0×2、100万画素Webカメラ、音声入出力、指紋認証センサー、NFC。このNFCはHuawei Shareに使用する。筐体が大きいわりにSDカードリーダがないのは残念だ。
狭額縁のためWebカメラはポップアップ式でキーボード側に装備。電源はUSB Type-CからUSB PDで供給し、65W出力のUSB Type-C充電器が付属する。加えてバッテリを30分で最大53%まで充電できる急速充電にも対応している。
サイズ約358×230×16.9mm(幅×奥行き×高さ)、重量約1.53kg。カラーバリエーションはスペースグレイのみ。バッテリ駆動時間は約8.2時間。税別店頭予想価格は69,800円前後だ。内容を考えると結構安いと言えよう。あと少し軽ければベストなんだが……。
なお上位モデルとして、Ryzen 7 3700U(Radeon RX Vega 10 Graphics)、512GB PCIe SSDも用意され、こちらは税別店頭予想価格89,800円前後となる。
筐体はスペースグレー。15.6型のわりには写真のとおり薄く見た目も良い。ただし実測で約1.5kgあるため、片手で持ち上げたりすると、ズッシリ重く感じる。またフルアルミニウムではないため、質感は若干低い。このあたりは価格相応と言ったところだろう。
前面は画面占有率87%の狭額縁だ。15.6型とフットプリントを稼げるため、キーボード用に余分なフチを加える必要もない。左側面にUSB 2.0 Type-C、USB 3.0、HDMI。右側面にUSB 2.0×2、音声入出力を配置。底面中央の左右スリットにスピーカー。
付属のUSB Type-C ACアダプタはサイズ約60×60×28mm(幅×奥行き×高さ)、重量151g、出力5V/2A、9V/2A、12V/2A、15V/3A、20V/3.25A。
ディスプレイは非光沢で非常に見やすく、発色、コントラスト、視野角も良好。パネルの傾きは左右の写真が最大となる。ブルーライトカットにも対応している。
キーボードはアイソレーションタイプだ。テンキーがないため、非常に素直にレイアウトされ、気持ちよく操作できる。主要キーのキーピッチは実測で約19mm。見事なまでに均一だ。打鍵感は押し込む途中にクリック感があり、適度なストロークとなかなか良い。ただキートップが少しザラザラしているのと、これだけのキーボードにバックライトがないのが少し残念だった。コスト的に仕方ない部分かもしれない。
狭額縁のためWebカメラはファンクションキーの並びのまんなかにポップアップ式で仕込まれている。機械的には合理的なのだが、ローアングルになるため顔の写りは上のフチにWebカメラがあるのと比較してかなり悪くなる。とくに女性は嫌ではないだろうか。
タッチパッドは1枚プレート式だ。引っかかりなどもなく、指の滑りもいい。パームレストも含め十分面積が確保され扱いやすい。加えて電源ボタンが指紋センサーとなっており、ワンタッチでログインできる。パームレスト右側にあるHuawei Shareエリアに関しては、この後のソフトウェアの章を参考にしてほしい。
振動やノイズは試用した範囲ではまったく気にならなかった。発熱は、ベンチマークテストなどプロセッサに負荷をかけると、キーボード左側と左上のスペースが暖かくなる。パームレストまで熱は降りて来ないものの、ギリギリと言ったところだろうか。
サウンドはスピーカーが裏にあり、机などに反射して音が前に出るタイプだ。このため、ダイレクトに耳に届くタイプと比較するとどうしてもクリアさは一歩劣るが、とにかく鳴りっぷりがいい。このクラスでこれだけ鳴るのはめずらしいのではないだろうか。音楽も動画も本体だけで十分楽しめる。
このように15.6型としては非常にシンプル。デザインもキーボードもスッキリ。価格内にうまくまとめられており、「これはちょっと……」的なものがない。言葉は悪いが「とくにこれと言って魅力がないのが最大の魅力」と言った感じだ。
下位モデルでもComet Lateに十分に対抗できる性能
初回起動時、スタート画面(タブレットモード)は1画面。右ブロックの名前がないグループがインストール済みとなる。デスクトップは、壁紙の変更とPC Managerへのショートカットが1つ追加とシンプルだ。最近、メーカー製PCの初期設定が個人設定/色/白が多いのは流行りだろうか。
AMD Ryzen 5で4コア8スレッド、メモリ8GB、ストレージSSDの構成なので、ストレスなくサクサク使え、画面も15.6型と大き目なので扱いやすい。
ストレージは256 GB PCIe SSDの「SAMSUNG MZVLB256HAHQ」。仕様によると、シーケンシャルリード3,000MB/s、シーケンシャルライト1,300MB/s。後述するベンチマークテストもそのまま出ている。Cドライブのみの1パーティションで約222.86GBが割り当てられ空き197GB。Wi-FiとBluetoothはRealtek製だ。
おもなインストール済みのソフトウェアは、「HDD Free Fall Protection」、「PC Manager」と、いくつかのドライバ系とあっさりしている。搭載しているのはSSDなのだが、HDD Free Fall Protectionは必要なのだろうか。
PC Managerは、名前のとおりPCを管理するソフトウェアだ。加えて本機の特徴である「Huawei Share」のコントロールも含まれている。
Huawei Shareとは、Huaweiのデバイス同士で各種ファイルのやりとりを簡単に行なえる機能だ。対象となるスマートフォンはEMUI 10以上となっているが、アプリの表示ではEMUI 9.1以上とあったので、手持ちのdocomo HUAWEI P20 Pro HW-01K(EMUI9.1.0)を使って試してみたた。
ペアリングは簡単。W-Fi/Bluetooth/NFCをオンにした状態で、スマートフォンをHuawei Shareのエリアに近づけるとペアリングがはじまるので(もしくはPC Manager / 通知パネルの右下のアイコンをクリック)、PC/スマートフォン双方のパネルから接続すれば準備は完了だ。
あとは転送したい写真などを表示するか、複数選択した状態で、PC側のHuawei Shareのエリアへスマートフォンでタップすればファイルが転送される。転送先はデフォルトでCドライブ直下のHuawei Shareフォルダ。写真だけでなく、PDFやOfficeドキュメントなども転送可能、クリップボードの共有もできる。
ただしP20 ProはEMUIが9系なので、10系が必要なマルチスクリーンコラボレーション(スマートフォンの画面をPCで操作する機能)は試すことができなかった。おもしろそうな機能なだけに残念だ。
サクッと使った感じだが、対応している同社のスマートフォンなどを持っていれば、ネットの有無に関係なくファイル転送などができ便利だ。とくに外ではパケット量を気にすることなく好きなだけ転送できる。もちろんUSBケーブルなどで接続すれば転送は可能だが、さすがにワンタップとはいかず、少々手順がめんどうとなる。
反面、室内などすでにネット環境があるときは、OneDriveなど、クラウドストレージと自動同期できるため、あってもなくても困らない機能と言えるだろうか。
ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、CINEBENCH R20、CrystalDiskMark、PCMark 10/BATTERY/Modern Office。結果は以下のとおり。
以前掲載したCore i7-10510U(4コア/8スレッド、1.8~4.9GHz、UHD Graphics)を搭載するiiyama PCの「STYLE-14FH056-i7-UCDX」と比較しているが、PCMark系は多少の差があるもののほぼ同等。3DMarkはRadeon Vega 8 Graphicsが効いて、2倍から数倍のスコアとなっている。これは価格差も含めかなり健闘していると見ていいだろう。
バッテリ駆動時間はシステム標準のままで7時間12分。画面の明るさも問題なく、実際でもこの程度は動作すると思われる。
MateBook D 15 (Ryzen 5 3500U) | STYLE-14FH056-i7-UCDX (Core i7-10510U) | |
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PCMark 10 v2.1.2177 | ||
PCMark 10 Score | 3,731 | 3,719 |
Essentials | 7,382 | 8,014 |
App Start-up Score | 8,160 | 11,945 |
Video Conferencing Score | 7,417 | 6,599 |
Web Browsing Score | 6,648 | 6,531 |
Productivity | 5,580 | 6,484 |
Spreadsheets Score | 7,191 | 7,949 |
Writing Score | 4,331 | 5,290 |
Digital Content Creation | 3,422 | 2,688 |
Photo Editing Score | 5,109 | 3,513 |
Rendering and Visualization Score | 2,971 | 1,562 |
Video Editting Score | 2,642 | 3,540 |
PCMark 8 v2.8.704 | ||
Home Accelarated 3.0 | 3,446 | 3,335 |
Creative Accelarated 3.0 | 3,404 | 3,544 |
Work Accelarated 2.0 | 4,528 | 5,054 |
Storage | 5,044 | 5,033 |
3DMark v2.11.6866 | ||
Time Spy | 840 | 377 |
Fire Strike Ultra | 525 | 231 |
Fire Strike Extreme | 1,064 | 405 |
Fire Strike | 2,314 | 841 |
Sky Diver | 8,085 | 3,643 |
Cloud Gate | 13,375 | 6,564 |
Ice Storm Extreme | 55,772 | 35,720 |
Ice Storm | 66,512 | 54,382 |
CINEBENCH R20 | ||
CPU | 1,468 pts | 1,093 pts |
CPU(Single Core) | 337 pts | 389 pts |
CrystalDiskMark 6.0.0 | ||
Q32T1 シーケンシャルリード | 3,545.603 MB/s | 1,841.911 MB/s |
Q32T1 シーケンシャルライト | 1,539.336 MB/s | 971.238 MB/s |
4K Q8T8 ランダムリード | 570.867 MB/s | 341.116 MB/s |
4K Q8T8 ランダムライト | 1,379.156 MB/s | 358.115 MB/s |
4K Q32T1 ランダムリード | 330.110 MB/s | 339.440 MB/s |
4K Q32T1 ランダムライト | 250.026 MB/s | 422.431 MB/s |
4K Q1T1 ランダムリード | 42.207 MB/s | 48.976 MB/s |
4K Q1T1 ランダムライト | 130.752 MB/s | 136.945 MB/s |
PCMark 10/BATTERY/Modern Office((明るさ、バッテリモードなどはシステム標準)) | ||
7時間12分 | 8時間11分 |
以上のようにHuawei「MateBook D 15」は、Ryzen 5 3500U、メモリ8GB、ストレージ256GBを搭載した15.6型の薄型狭額縁ノートPCだ。Comet Lake搭載機と比較してもCPUは見劣りせず、内蔵GPUはRadeon Vega 8 Graphicsのパワーが炸裂。筐体もオーソドックス、価格も安め……と、非常に魅力的に仕上がっている。さらに同社の対応スマートフォンを持っていればHuawei Shareが使えて便利。
個人的にSDカードスロット、Wi-Fi 6/有線LAN、キーボードバックライトがないのは残念だが、このあたりは個々で考え方もあるだろう。低価格で堅実なノートPCを探しているユーザーにおすすめしたい製品だ。